宇宙の声
素晴らしいSFやショートショートの作品で知られる星新一さんによる宇宙の物語。「宇宙の声」と「まぼろしの星」という二つの物語が収録されており、どちらも誰もが心に持つイマジネーションの部分を刺激してくれる作品だ。
学校帰りのミノルとハルコは、宇宙特別調査隊のキダに宇宙での仕事の手伝いをお願いされる。宇宙で起こる不思議な現象の正体を探しに行くのだ。ロボットのプーボも仲間に加わり、幾つもの星を巡る冒険が始まる。それぞれの星にはまだ誰も見たことのない生き物がいて、主人公たちは知恵と工夫で困難を乗り越えていく。
少年少女向けの本であるが、大人が読んでも十分に楽しめる作品である。星の景色や驚異に立ち向かう主人公たちの姿が、まるで絵本のように映像として浮んでくるのだ。時々ある挿絵の手伝いもあり、宇宙の中で目まぐるしく展開される言葉の映像は、読者を最後まで楽しませてくれるだろう。親子で読むのも面白いかもしれない。
初めて長い本を読んだのはいつだっただろう。最後に音読をしたのはいつだっただろう。初心に戻り、心をフルで活動させてくれる本だ。
カシオペアの丘で 上・下
直木賞をとった『ビタミンF』やドラマ化された『流星ワゴン』をはじめとする、数々の名作の著者である重松清の長編小説。北海道、北都と呼ばれるかつて炭鉱で栄えた街で、4人の小学生がボイジャー1号2号を見つけるため夜空の下に集まった。そこで満天の星空を見上げ、4人はその丘に「カシオペアの丘」という名前をつける。そしていつかここに遊園地を作ろうと約束をするーー。
実はこの作品、紹介するかどうかすごく迷った。なぜならこの作品を読んだ方は、きっと泣いてしまうだろうと思ったからだ。この作品は命の物語である。病気と闘う命の物語だ。命の中で、許されたいと願い続ける人と、許したいと願い続ける人の思いの交錯。4人の幼なじみの時を超越した心の繋がり。不変の家族への愛。
涙を流してしまうかもしれないが、この作品は今大切にしなければいけないことは何かと考えさせてくれる。今の自分の幸せにも気づかせてくれる。上下巻に分かれていてボリュームのある本でもあるが、決して忘れることのない経験になるだろう。勇気を出して手にとってみて欲しい本だ。
小説内でも出てきた星のエピソードの一つを紹介しよう。オレンジに輝くアークトゥールスと青い光を放つスピカは古くから夫婦星として親しまれてきた。現在肉眼で見ても少し離れているが、アークトゥールスは今も秒速100km以上の速度でスピカへ近づいているそうだ。約五万年後には二つの星は仲良く並んで見えるようになるという。春の夫婦星とも呼ばれているそうで、これからの季節に夜空を探してみるのもいいだろう。
宙の名前
今回初めて、小説以外の本も紹介してみようと思う。すべての宇宙ファンへ送る、天体図鑑ともいえる本だ。ページをめくると美しく、鮮明に写された星々の写真がずらりと並ぶ。この本の特筆すべきところは、タイトル通り、写真と共に星々の名前が記されているところだ。夜天光、星野光、明けの明星、立待月、居待月、火星の和名である夏日星。聞いたことのある言葉から、まったく聞いたことのない名前まで、時間や季節で分けられ宇宙の名前が整理されている。さらに昔の歌人が詠んだ俳句までも掲載されているのだ。
宇宙の名前は美しい。この本はただの天体図鑑ではなく、文学がちりばめられている。最初に星の名前をそう呼んだ人は誰なのだろう。星のその姿を見て、自然と唇から出てきた言葉が名前になったのだろうか。
ふと壮大な宇宙の旅をしたくなった時には、そっとページをめくってほしい。この本が宇宙と、その言葉の美しさの世界へ連れて行ってくれるだろう。