藍坊主・藤森真一が選ぶ「もっと田舎が好きになる本」
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藍坊主・藤森真一が選ぶ「もっと田舎が好きになる本」

更新:2016.3.19 作成:2016.3.19

こんにちは。先月のhozzyに続き、今月も藍坊主から藤森真一が紹介をさせていただきます。テーマはズバリ!「もっと田舎が好きになる本」。神奈川県の小田原市でバンドの結成をした僕は、年を取るごとに地元が好きになりつつあります。10代の頃は「下北沢のライブハウスへ進出するぞー!」なんて意気込んでいましたが、最近は、田舎には都会と同じくらい、ワクワクするものが落ちている気がしてなりません。

hozzy、藤森真一(藍坊主)プロフィール画像
ロックバンド
hozzy、藤森真一(藍坊主)
hozzy(Vo)、藤森真一(Ba) 神奈川県小田原市出身の4人組ロックバンド。ジャンル、サウンドのスタイルを様々に変化させながらも、秀逸なメロディーと2人のソングライターにより表現される「日常」と「実験的」な世界観の歌詞、確かな演奏力と透明感のあるボーカルが魅力のバンド。 2004年のメジャーデビュー後は数々のフェスやイベントに出演し、2011年5月には自身初の日本武道館公演を開催し大成功に収める。2015年には自主レーベルLuno Recordsを設立しより精力的に活動範囲を広げている。2016年9月14日(水)には『ココーノ』以来、1年9ヶ月ぶりとなる自身8枚目のアルバム『Luno』をリリース。 Vo hozzyは「MUSIC ILLUSTRATION AWARDS 2014」にてBEST MUSIC ILLUSTRATOR 2014を受賞する等、ジャケットデザインの描き下ろしの他にも映像作品の制作、レコーディング機材の制作や楽曲のトラックダウンを自身で行う等、アーティストとして様々な魅力を発揮している。2015年7月からよりパーソナルでコアな表現活動のためのプロジェクト「Norm」をスタート! Norm HP norm.gallery Ba 藤森真一は関ジャニ∞「宇宙に行ったライオン」や水樹奈々「エデン」等への楽曲提供を行う。 藍坊主公式HP http://www.aobozu.jp
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こんにちは。先月のhozzyに続き、今月も藍坊主から藤森真一が紹介をさせていただきます。テーマはズバリ!「もっと田舎が好きになる本」。神奈川県の小田原市でバンドの結成をした僕は、年を取るごとに地元が好きになりつつあります。10代の頃は「下北沢のライブハウスへ進出するぞー!」なんて意気込んでいましたが、最近は、田舎には都会と同じくらい、ワクワクするものが落ちている気がしてなりません。

田舎は落ち着くから好き。ということではなく、田舎には都会にない刺激があるから、改めて好きになったのです。例えば、何もない広ーい原っぱ。10代の頃は『何もない』だったのが、30代の現在は『「何もない」が在る』と思えるようになりました。

障害物がないから、降り注ぐ太陽がある。
ガスがないから、星がはっきり見える。
音がないから、息吹が感じられる。
新たな刺激が少ないから、古くからの文化や人間関係がある。

とはいえ、今も首都高3号線沿いのマンションに住んでいます。正直なところ、毎日感じる喧噪も悪くないです。都会と田舎どっちが好きかと聞かれたら「同じくらい」と答えるでしょう。ただ、これから40代、50代と年を重ねると、さらに田舎が好きになって、いつかは田舎に移住するかもしれません。だから、今しかないアンバランス感が、たまらなく愛おしくなります。

10代からある都会への憧れが残っている30代だからこそ、古くからある田舎の文化が斬新なアイデアだと思える感覚!「田舎って攻めてるな」「田舎ってエネルギッシュだな」。そう思えるような高揚感を孕んだ2冊と、少し目線を変えた田舎の話を1冊紹介します。まずは田舎の中でも東北を舞台にしたお話から。そうそう、僕の父親は岩手県大東町、hozzyの父親は同じく岩手県大槌町出身です。「東北の人って穏やかでいいですよねぇ」なんて言われますけど、そのイメージを覆すお話です。それでは、ウェルカム!田舎の世界へ!

独立を宣言した村の2日間を描いた傑作SF小説

著者
井上 ひさし
出版日
1985-09-27
東北訛りの文章は、幼少期に行った祖父の家を思い出します。信念という苦い薬を、優しさというオブラートで包んだような、吉里吉里人の「心」の描かれ方が好きです。切実なメッセージを「下ネタ」で包む感じはもっと好きです。

ストーリーは、東北にある人口約4千人の吉里吉里という集落が、日本から独立するというもの。吉里吉里国VS日本国の戦争を描いた話です。上、中、下の全3巻ですが、たった2日間の物語だからものすごく濃いです。テーマは幅広く、医療制度や人体実験、脳死、食料やエネルギーの自給率、国際政治や国籍問題、金融、金本位制、法学などに深く切り込んでいきます。

自衛隊や国防の話も出てくる中で「文化武装」という言葉を学びました。日本人らしい、否、東北人らしい、否、井上ひさしらしい考え方。理想論といわれようが、世の中にこういう人がいてくれると僕は安心します。同じく井上ひさし作の『1週間』に引けを取らない呆気ないオチも含め、最後まで楽しんで読める本。別ジャンルだけど『平成狸合戦ぽんぽこ』との共通点も感じます。ジブリ好きの方にもオススメです。

小田原発、地域からはじまるエネルギーの話

著者
鈴木 悌介
出版日
2013-11-06
続いて紹介するのは、僕らの地元・小田原のかまぼこ屋さんが書いた本。タイトルどおり、「経済からエネルギーを考える」のではなく「エネルギーから経済を考える」ことを、対談を通して共に勉強していこうというスタンスの本。対談相手は幅広く、コンサルタント、銀行の方から、自民党員、小田原市の現役市長も参加しています。

小田原出身である二宮尊徳の報徳思想に倣い、エネルギーを限りある物として、その中で今は何が出来るかと必至に考えるギラギラしたかまぼこ屋さんの姿に、小田原で生まれたことを誇りに思いました。ここで考えている経済とは、エコノミーの意味ではなく、経済の語源の「経世済民」じゃないかと思います。この対談後、地元の山の中に市民出資でメガソーラーが出来ました。テンション上がって見に行ってしまいました。何もなかった広ーい原っぱがあったから出来たこと。都会の土地じゃ出来ないもんな。田舎って凄い! と興奮しました。

「辺境の民」日本人のナショナルアイデンティティとは何か

著者
内田 樹
出版日
僕らが住んでいる日本。その語源は「日本」、「日ノ本」、「日出づる処」。ということは「あるところから見て東方に位置するところ」ということになります。日本というのは「中国から見て東にある国」ということです。この本は日本全体を「辺境」、言葉を変えると「田舎」として捉えて、日本人のナショナルアイデンティティを記している本だと思います。『鞍馬天狗』と『張良』という能楽の2曲を紹介し、日本人の「学び」の姿勢を説明してくれているのですが、僕がこの部分に共感しました。日本人としてもミュージシャンとしても。著者は以下のように言っています。

「努力を始める前にその報酬についての一覧的開示を要求しないこと。こういう努力をしたら、その引き換えに、どういう「いいこと」があるのですかと尋ねないこと」

この構えを集団的な「刷り込み」によって民族的エートス(習性・特性)にまで高めようと無謀を冒したのは、日本人(とユダヤ人)くらいでしょう。師弟関係については、師匠が命じた意味のない事に、弟子が「私が愚かだから意味が分からない」と成長し意味を見いだすものもあると言っています。これを受けて、ただ努力することに快楽を感じたバンド結成当時の自分を思い出しました(どうやら僕は典型的な辺境人だったようです)。

世の中に溢れているものすべてが師匠になり得て意味を見いだせる。要は学ぶまえから意味があるわけじゃない。だから僕は、新しく始める「一歩目」に意味なんて求めてはいけないと思う訳です。まだまだ皆様へこの本の素晴らしさを伝えたいところですが、あまり長くなってしまうのも良くないのでこの辺で終わりにしようと思います。具体的なところは実際に読んでもらって、僕の感想の要点は、藍坊主の「宇宙が広がるスピードで」を聴いてくれれば分かると思います。

以上。僕が好きな「もっと田舎が好きになる本」を紹介しました。是非読んでみて下さい。では、またお会いしましょう。藍坊主の藤森真一でした。