こんにちは。先月のhozzyに続き、今月も藍坊主から藤森真一が紹介をさせていただきます。テーマはズバリ!「もっと田舎が好きになる本」。神奈川県の小田原市でバンドの結成をした僕は、年を取るごとに地元が好きになりつつあります。10代の頃は「下北沢のライブハウスへ進出するぞー!」なんて意気込んでいましたが、最近は、田舎には都会と同じくらい、ワクワクするものが落ちている気がしてなりません。
田舎は落ち着くから好き。ということではなく、田舎には都会にない刺激があるから、改めて好きになったのです。例えば、何もない広ーい原っぱ。10代の頃は『何もない』だったのが、30代の現在は『「何もない」が在る』と思えるようになりました。
障害物がないから、降り注ぐ太陽がある。
ガスがないから、星がはっきり見える。
音がないから、息吹が感じられる。
新たな刺激が少ないから、古くからの文化や人間関係がある。
とはいえ、今も首都高3号線沿いのマンションに住んでいます。正直なところ、毎日感じる喧噪も悪くないです。都会と田舎どっちが好きかと聞かれたら「同じくらい」と答えるでしょう。ただ、これから40代、50代と年を重ねると、さらに田舎が好きになって、いつかは田舎に移住するかもしれません。だから、今しかないアンバランス感が、たまらなく愛おしくなります。
10代からある都会への憧れが残っている30代だからこそ、古くからある田舎の文化が斬新なアイデアだと思える感覚!「田舎って攻めてるな」「田舎ってエネルギッシュだな」。そう思えるような高揚感を孕んだ2冊と、少し目線を変えた田舎の話を1冊紹介します。まずは田舎の中でも東北を舞台にしたお話から。そうそう、僕の父親は岩手県大東町、hozzyの父親は同じく岩手県大槌町出身です。「東北の人って穏やかでいいですよねぇ」なんて言われますけど、そのイメージを覆すお話です。それでは、ウェルカム!田舎の世界へ!
独立を宣言した村の2日間を描いた傑作SF小説
東北訛りの文章は、幼少期に行った祖父の家を思い出します。信念という苦い薬を、優しさというオブラートで包んだような、吉里吉里人の「心」の描かれ方が好きです。切実なメッセージを「下ネタ」で包む感じはもっと好きです。
ストーリーは、東北にある人口約4千人の吉里吉里という集落が、日本から独立するというもの。吉里吉里国VS日本国の戦争を描いた話です。上、中、下の全3巻ですが、たった2日間の物語だからものすごく濃いです。テーマは幅広く、医療制度や人体実験、脳死、食料やエネルギーの自給率、国際政治や国籍問題、金融、金本位制、法学などに深く切り込んでいきます。
自衛隊や国防の話も出てくる中で「文化武装」という言葉を学びました。日本人らしい、否、東北人らしい、否、井上ひさしらしい考え方。理想論といわれようが、世の中にこういう人がいてくれると僕は安心します。同じく井上ひさし作の『1週間』に引けを取らない呆気ないオチも含め、最後まで楽しんで読める本。別ジャンルだけど『平成狸合戦ぽんぽこ』との共通点も感じます。ジブリ好きの方にもオススメです。
小田原発、地域からはじまるエネルギーの話
続いて紹介するのは、僕らの地元・小田原のかまぼこ屋さんが書いた本。タイトルどおり、「経済からエネルギーを考える」のではなく「エネルギーから経済を考える」ことを、対談を通して共に勉強していこうというスタンスの本。対談相手は幅広く、コンサルタント、銀行の方から、自民党員、小田原市の現役市長も参加しています。
小田原出身である二宮尊徳の報徳思想に倣い、エネルギーを限りある物として、その中で今は何が出来るかと必至に考えるギラギラしたかまぼこ屋さんの姿に、小田原で生まれたことを誇りに思いました。ここで考えている経済とは、エコノミーの意味ではなく、経済の語源の「経世済民」じゃないかと思います。この対談後、地元の山の中に市民出資でメガソーラーが出来ました。テンション上がって見に行ってしまいました。何もなかった広ーい原っぱがあったから出来たこと。都会の土地じゃ出来ないもんな。田舎って凄い! と興奮しました。