レオナルド・ダ・ヴィンチを知る5冊!あらゆる分野に精通した天才芸術家

更新:2021.12.20

『モナ・リザ』や『最後の晩餐』などの作者として知られるレオナルド・ダ・ヴィンチ。彼は単なる芸術家でなく様々な分野に精通した人物でした。彼のことをもっと知ることができる本を5冊紹介します。

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レオナルド・ダ・ヴィンチとは

レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452~1519)は、イタリアのルネサンス期を代表する芸術家です。人によっては、彼のことを史上最高の呼び声の高い画家とみなす場合もあり、また人類史上もっとも多才な人物とみなす場合もあります。いずれにせよ、彼がルネサンス期のみならず、世界の歴史の偉人の中でも多くの才能を持ったたぐいまれなる人物として認知されているようです。

彼は1452年にフィレンツェ郊外のヴィンチ村で誕生しました。彼の名前に「ダ・ヴィンチ」とつくのはこのためです。彼の幼少期についてはあまり記録がなく、むしろ推測に基づいた諸説が目立つため謎に包まれています。

彼の画家としてのキャリアは1466年、14歳のころにフィレンツェの画家であるヴェロッキオの弟子になったことでスタートを切りました。ヴェロッキオのもとで修行に励む彼の才能は優れており、1472年までには聖ルカ組合からマスターの資格を得たほどです。まもなく彼は、独り立ちして自らの工房を運営するようになりました。

その後、彼は1482年から1499年にかけて、イタリア北部のミラノ公国で活動しています。この時期に描かれた絵の1つが有名な「最後の晩餐」でした。しかし、1499年にフランス軍が北イタリアに侵攻したため、彼は友人とともにヴェネツィアに逃れます。そこで軍事技術者として雇われたのです。

1502年には当時のイタリア屈指の軍人であるチェーザレ・ボルジアの軍事技術者として雇われ、この頃チェーザレの命で彼の戦略上重要な土地の地図を作成しています。

その後再びイタリア各地を歴訪したのち、1513年から16年にかけてヴァチカンの地で過ごしました。その間にフランスのフランソワ1世が軍を率いてイタリアに侵攻した際、フランソワ1世の招きに応じてフランスのクルーの館に移り住みました。晩年の彼の作品が「モナ・リザ」です。

そして、1519年、ダ・ヴィンチはクルーの館で病没しました。ここまで見てきたように、彼は単なる画家としてだけでなく、軍事技術者や発明家(ヘリコプターなど)などの様々な才能を持ち合わせ、当時の多くの王侯にその才能を買われていました。

レオナルド・ダ・ヴィンチ、驚くべき天才の秘話9選

1:天才の彼にも欠点があった

レオナルドは芸術、都市工学、機械工学、建築学、植物学、解剖学、物理学と様々な分野において天才と称されています。しかし、その好奇心ゆえに一つのことに専念することができず、未完の作品が多いともいわれています。

2:彼の絵画人生の起因は父の勧めだった

レオナルドが本格的に絵画を学ぶようになったのは、金遣いが荒かった彼を心配した父の勧めが起因だったといわれています。近所に住んでいた画家のアンドレア・デル・ヴェロッキオのもとに赴き、彼の絵画人生はスタートしました。

3:幼少期に性的虐めにあったことがあるといわれている

レオナルドは書記として、「小さいころ夢の中で、自分は横たわって寝ていると鷲が飛んできて自分のことをくちばしで何度もつついてきた」というものを残しています。精神分析学者のフロイトにより、これは、小さいころ彼が叔父に性的に虐められたのではないかと分析されています。

4:同性愛者だったといわれている

レオナルドは幼少期の様々なコンプレックスの影響と好奇心旺盛な性格から、同性愛者になったのではないかといわれています。

5:彼の視界は変わっていた

彼は13,000ページに及ぶ書物を残しています。そこに書かれた文字はすべて鏡文字でした。普通の視界ではなかなかできる技ではないことから、彼の視界は普通の人が見える世界ではなかったのではないかと言われています。

6:彼の一番の関心事は水だった

彼は生涯通し、水に関心をもち、考察し続けました。その証拠として多くの書物や絵画作品に何かしらの形で水について描かれています。

7:死刑囚をデッサンして人々を驚かした

彼は27歳のころ、壁に吊るされた死刑囚の絵をデッサンし、人々を驚かしたといわれています。解剖学に興味を示していた証拠とも言えます。

8:回転する橋をつくり軍事に貢献した

彼が軍事用機器の発明に一役買ったことは有名でしょう。その中でも興味深いのが、回転する橋を作ったことです。イタリアは国中運河が流れており、敵の侵攻から身を守るために、回転する橋で敵を振り落とし、各領域を守ったといわれています。

9:空が青いことを最初に証明したのはレオナルドだった

彼は空が青く見える理由として、上空(宇宙)の暗闇が原因だと結論付けました。これは彼の書記に残るもので、彼は実際に実験し、それを証明しました。

非常にわかりやすく楽しみながら理解できるダ・ヴィンチの生涯

ダ・ヴィンチの生涯をイラストや多くの彼にまつわるものの写真を通じて理解できるようにまとめられているのが本書。この本の内容としては、彼の様々なエピソードや彼の作品の鑑賞ポイントに触れられているなど、彼の生涯を頭だけでなく、視覚を通じて楽しみつつ理解できるようになっています。

構成としても、彼の少年期・青年期・壮年期・晩年期というようにきちんと時期で区切りながら彼の事跡についての説明がなされているため、この点においても非常にわかりやすいものです。

著者
杉全 美帆子
出版日
2012-09-19

また、「万能の天才」といわれる一方で、極度の完璧主義者でもあったために、途中で作品制作の依頼を投げ捨てて契約不履行で訴えられたり、他人に丸投げしたりするといった人間味あふれる彼の姿を知ることができます。

そして、最初にも書いた通りイラストや写真がふんだんに使われていることから、小学生や中学生から普通の大人に至るまで、どの世代の人間でも楽しみながらダ・ヴィンチのことを理解できるという意味で良書といえるでしょう。
 

画家としての究極さを追求したダ・ヴィンチ

ダ・ヴィンチが残した絵画や手稿を徹底解剖しているのが本書。ダ・ヴィンチが残したとされる絵画の中でも、確実に彼の作品であると断定できる13点に注目しています。

そして、絵画以外の軍事学や飛行学、地図、舞台など様々な分野の研究をまとめた手稿を紐解くことで、人間としてのレオナルド・ダ・ヴィンチの真相に迫ろうというものです。
 

著者
ペン編集部
出版日
2009-07-01

ページもわずか112ページで、かつ非常にわかりやすいため、西洋美術史の観点からダ・ヴィンチのことを知るための入門書として扱いやすくなっています。そのうえ、ペンブックスシリーズは基本的に画像の配置からして非常に見やすいことにも定評があり、彼の絵画をそのまま鑑賞して、記憶しておくことが容易です。

ダ・ヴィンチのことをよく知らない人や、彼のことに興味を持っている人には特におすすめの一冊といえます。
 

ダ・ヴィンチが味わった失敗と挫折に向き合える一冊

天才といわれているダ・ヴィンチが実はかなり失敗や挫折を味わっている人間であることを教えてくれるのが本書。彼の生誕にまつわる事情から、なかなか世に認められなかった彼の苦悩がそこに描かれています。

そのためか、万能の天才の中に隠れている人間臭さが彼の生涯の随所に表れているため、読者はよりダ・ヴィンチという人物に共感を覚えずにはいられなくなるはずです。
 

著者
コスタンティーノ ドラッツィオ
出版日
2016-07-25

私生児として誕生した生誕にまつわる事情や、それゆえに環境に恵まれなかった幼少期、画家としての活動を開始して以来、自らの完璧主義のゆえに途中で依頼を放棄したり、果てには各地を転々としたりする日々。天才と呼ばれた彼が、挫折や失敗だらけの人間だったという神話とはかけ離れた真実に驚かされることも多いでしょう。

彼の真実の姿を見たいという人には特におすすめしておきたい一冊といえます。
 

本当の彼の思いがここに

ダ・ヴィンチの手記を扱ったのが、『レオナルド・ダ・ヴィンチの手記』です。上巻と下巻とに分かれており、上巻には「人生論」「文学論」「絵画論」が、下巻には「科学論」が収録されています。

この本で取り上げられている対象はともかくあまりにも広範囲です。人生法や文学、遠近法、解剖、美、戦争、経験、数学、天文学、軍事技術などとても常人が持つことのできる興味の幅をすでに逸脱しそうなほどといえます。おそらくそれも彼の知的好奇心が尋常ではないことを示しているのでしょう。
 

著者
レオナルド ダ・ヴィンチ
出版日
1954-12-05

パラパラとななめ読みしても、実はとても刺激に満ち溢れているといえます。というのも、彼はあまりにもいろいろなことを考えており、それを手記という形で書き残しているためです。その分読者の方もダ・ヴィンチという人物が非常にいろいろなことに知的好奇心を持っており、その足跡をたどることで彼という人物の本質に迫ることができます。

また、本書を通じて彼が絵画を書く際に対象というものを科学的視点に立ってじっくりと観察していたことにも驚かされるでしょう。
 

絵画の中に見えるダ・ヴィンチの芸術の思想

映画「ダ・ヴィンチコード」でも取り上げられるように、ダ・ヴィンチの絵画には様々な謎が込められているものです。そのため、ダ・ヴィンチに関する研究は一見しつくされたように見えても、またいろいろな謎が噴出してきます。その彼の絵画の中に隠されたメッセージや芸術の思想に迫っているのが、『レオナルド・ダ・ヴィンチ 芸術と生涯』です。

構成としては、ダ・ヴィンチの生涯を追いつつ、その中で彼が描いた絵画作品を取り上げ、その作品に込められたダ・ヴィンチの思想に迫るというものです。中には、性についての考え方や生命や自然への興味、本人の同性愛的な思考といったことが出てきますが、それさえも本書の中では学問的な分析がなされています。
 

著者
田中 英道
出版日
1992-02-05

また、本書ではダ・ヴィンチに関する新説も目白押しという意味では面白く読める本です。例えば「三王礼拝図」にしても2人ずつをセットに書いたのではないかといったものや、「モナ・リザ」についても通説に一石投じるようなモデルを示すというように書いています。

このように、西洋美術史におけるダ・ヴィンチにまつわる通説に対してどんどん新しい説が披露されていきますので、学問書にしては非常に刺激的で興奮に満ちた内容の本であるため、楽しんで読むことができるでしょう。
 

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