『蜃気楼家族』の自伝と思えない日常がやばい!【ネタバレ注意】

更新:2021.11.23

アスペルガー症候群、風俗店での仕事経験、バイセクシャルの公言などで注目を浴びる沖田×華の自伝漫画『蜃気楼家族』。彼女の波乱万丈な人生のルーツが描かれた作品です。今回本作の個性豊かな登場人物をご紹介!ネタバレを含みますのでご注意ください。

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『蜃気楼家族』の深いい話が沁みる!【見どころネタバレ】

著者
沖田 ×華
出版日

発達障害、整形、AV出演、バイセクシャルのカミングアウトなど、波乱万丈の人生を来る沖田×華の自伝漫画『蜃気楼家族』。

富山県魚津の小さな中華料理店で生まれ育った沖田×華のはちゃめちゃな成長期が描かれた、ノンフィクションとは思えない作品です。

そこに出てくるのは一度見たら忘れられない人物ばかり。そしてそんな人々に囲まれて沖田×華の家族は蜃気楼のようにゆらゆらと揺れ、消えていくのです。

今回はそんな嵐のような彼女の幼少期の日々の様子を少しだけご紹介します。


沖田×華のおすすめ作品を紹介した<沖田×華おすすめ漫画ランキングベスト5!障害をコミックエッセイで描く>の記事もおすすめです。気になる方はぜひご覧ください。

パンチパーマがトレードマークの暴走父ちゃん!

沖田家の大黒柱の父はパンチパーマがトレードマークの北島三郎似の男。外面はいいタイプですが、家ではなかなかのハチャメチャっぷりを見せます。

父の始末に最も困るのが酔っ払った時。彼は酒を飲んだ時におならをすると必ず「ミ」まで出てきてしまうのです。そしてそれは漏らすというレベルどころの量ではありません。

そして恐ろしいのはここから。父はその危険物いっぱいになったパンツをこともあろうにカラーボックスの裏に隠すのです。そして忘れ去られるパンツたち……。大掃除の時に発見したその山は惨状となっていました。

父はとにかく衛生観念がなく、トイレに行ったあとに手を洗わずにそのまま餃子を作ったり、週に2回しか風呂に入らずその理由を「カゼひくからや」と犬のようなことを言ったり。見ている分には楽しいですが、彼の作る中華料理……あまり食べたくないです。

著者
沖田 ×華
出版日
2011-07-26

真面目で気が強い、でも案外素直で可愛いお母さん

そんな無軌道な父に比べ、母はまっすぐな性格。ある日、沖田×華は家の手伝いで近所のいかがわしいお店に出前の皿を回収しに行き、店内の独特な匂いに慌てて帰ってきます。

そして父に「『かぐや姫』(店の名前)って変な臭いするねー」と言うと父はあっさりと「ありゃザーメンの臭いやちゃ」と言ってのけるのです。そこにやってきたが母は怒り心頭。「なんで子供にそんなとこ行かすんがー!あと変な言葉教えられんなー!!」と父に激怒します。

性への嫌悪が強く、潔癖症で常にどこかしらを掃除している、父と正反対のタイプ。そしてかなりの教育ママで、ヤクザ映画を見ているだけで教育に悪いと後ろから殴るような、真面目なのはいいですが、ついついやり過ぎてしまう気の強さがあります。

しかしそんな彼女、結構涙もろく、世界名作アニメがやっていると必ず泣いてしまうのです。特に『みなしごハッチ』がやっていると100%落涙。それがたとえ営業中で客への配膳途中でもおかまい無しに泣いてしまいます。怖いけれどどこか憎めない、生真面目な母です。

著者
沖田 ×華
出版日
2013-03-29

変な客、「醤油のっさん」

そんなキャラが濃いふたりが営む中華料理屋にくる客はこれまた濃い人ばかり。今回はそのうちのひとりをご紹介します。

20代のヤンキーでいつもジャージ姿の女性、「醤油のっさん」。父が最も心配していた客で、いつもチャーハンをオーダーします。チャーハンがくるとレンゲでそれを円状に潰しまくり、醤油をかける彼女。

父の作るご飯もののメニューはすべて少し味付けが薄くされていたので、醤油をかけること自体は問題ありません。しかし彼女はその量が半端ない!長い時間上からかけ続け、チャーハンからは大量の醤油が湧き出ます。しかも食べている途中で何度も繰り返すので、その食事中の音はもはやチャーハンとは思えません。

しかも彼女が家族で食べにきていた時、身内はノーリアクション。誰も醤油のかけすぎを注意することなく、淡々と食事を済まします。醤油でたぷたぷになった皿を残して去っていく彼女。どうしてそこまで醤油をかけるのかは謎のままのようです……。

日常の一寸先にある闇に背筋がヒヤリ!?「元車屋のTさん」

沖田×華の生まれた街で大人の遊びといえばパチンコ、スナック、そして賭博。特に賭博は一晩で数百万が動く時もあるほど大きなものでした。

その中では当然大負けする人もおり、仲のいい家族が夜逃げしたり、賭博で大負けして逃げてきたホームレスが冬を越せずに亡くなったりするということがザラにあったそう。

そんな辛い状況の中でもとくにしぶとかったと沖田×華が振り返るのが元車屋のTさんです。先物取引で1億円近い借金を負った彼は自宅がわりの車で半年以上生活していました。しかも追われている身であるにも関わらず平然と町内でパチンコ。

「いまさら逃げてもよ〜あんまり状況変わらんやろ」

そう言ってのほほんと暮らしていた彼ですが、ある日ぷっつりとその姿が見えなくなります。ある人はTさんは男たちにボコボコにされて車に乗せられていったところを見たと言いました。

2ヶ月後、隣市で子供達が遊ぶ海水浴場に死体が打ち上げられます。鎖が巻きつき、水でぶよぶよになったそれがのちにTさんだと発覚します。

そんな状況で見つかったものの、死因は自殺扱い。Tさんにまつわる事件はそれっきりで終わりになってしまいます……。

ヘタウマな絵で緩和されていますが、かなりハードボイルド。こんな恐ろしい事件が普通にあったとは、どれだけハチャメチャなお父さんや変な客がいても沖田×華が驚かない理由が頷けます。

切なすぎる現実に泣ける!「2軒隣の中村さん」

沖田×華の店の2軒隣にひとりで住むのが中村さんというおばあちゃんです。彼女は家が近いこともあり、直接店に来て出前を頼み、料理がくると仲良くしている沖田×華の祖母に手土産を渡すというのがお決まりの習慣になっていました。

戦争未亡人で国から特別金をもらって生活している中村さんは、美人でモテていたけれどひとり息子のために再婚しなかったそう。彼女はいつも楽しそうに息子の話をして、彼に会いたがっていました。

しかし徐々にボケてきた中村さん。国からの特別金もすべて息子に渡していた彼女は徐々に身なりが汚くなり、料理の代金も払えなくなり、沖田×華の祖母が彼女にこっそり食べ物をあげるようになります。

しかし大晦日に祖母が彼女のもとへ行くと、「今日息子から電話あってねー正月来てくれるんやってー」と嬉しそうに話していました。

そしてお正月。おせちを持っていった沖田×華の祖母が見たのはコタツに入ってミカンと一緒に凍っている彼女の姿でした。

随分前から電気も水道も止められていたという彼女の家。そこに葬式が終わったあと息子が来ますが、彼は金目のものだけを持っていくと二度と姿を表しませんでした。

『蜃気楼家族』のどの話もそうですが、感情を交えずにただ淡々と進んでいく物語が逆に心を打ちます。この話でも、駐車場になった中村さんの家の跡地の前を通るたびに彼女のことを思い出す、ということだけが書かれて終わります。

悲しい、寂しいなどの感情を直接的に説明せず、余白が多くなることで、より想像が膨らむのも本作の魅力のひとつなのです。

『蜃気楼家族』の衝撃実話①目薬ビール【1巻ネタバレ】

著者
沖田 ×華
出版日

酒に溺れる父に振り回される母。酔っ払っても潰れることがなく、ひたすらに酒を要求されます。

その悩みを近所の寿司屋のおばちゃんに聞いてもらったところ、どうやら「ビールに目薬を入れる」と良いのだとか。当時、目薬で眠くなるというウワサがあったのです。

非常に怪しい説ですが、とにかく言われた通りに試すしかない!とすぐ行動する母の姿をみていると、相当酔っ払いの夫にストレスを抱えていたのでしょう。

さっそく父にビールを渡す前に、数滴垂らしてみます。あまり効果がみられないようなので、次の日には丸々1本分……。結局父は相変わらずの状態で、困り果てた母は「効かないじゃない!」と文句を言いにいきます。

そこでおばちゃんに手渡されたものは、なにやら怪しげな薬で……。さて父の暴走を止めることはできたのでしょうか?

『蜃気楼家族』の衝撃実話②弟の万引き事件【2巻ネタバレ注意】

著者
沖田 ×華
出版日
2011-07-26

飲んだくれの暴走父が大黒柱の家族ですから、子どもたちにも少なからず悪い影響があるのでしょう。沖田×華の弟は、万引きの常習犯になっていました。

近くのお店で手当たり次第、万引きしていく弟。万引きしたものは、友達に見せて安く売っていました。なかでもスーパーモーターが人気ということを知り、彼は転売ヤーとして悪事を働かせていくのです。

決して許される行為ではありませんが、幼いながらも商売っ気のあるところは父譲りなのでしょうか。

自分ではバレていないと思っていた弟。あるとき大型のおもちゃを盗もうとして店員に捕まってしまいます。絶対に父にバレたら殺される……!とビクビクしていたところ、迎えに来たのは鬼の形相の父で……。この後弟はどうなってしまうのか、2巻でご確認ください。何としても弟には改心してほしいですね。

『蜃気楼家族』の衝撃実話③父の浮気、家族崩壊か……?【3巻ネタバレ注意】

著者
沖田 ×華
出版日
2013-03-29

3巻では、沖田×華の高校生時代から語られています。彼女が高校2年生のとき、父はスナックの経営をはじめました。しかし、これが軌道に乗らず失敗。本業の中華料理屋の経営も危うくなってきます。

家庭を支えるため、母はバイトをはじめますが、疲労で入院してしまいます。それ以降も具合の悪い状態が続きました。そんななか、父は浮気に走ってしまいます。

元はと言えば、母が倒れたのも不安定な父が原因です。そんな父が他の女にうつつを抜かして、母の精神状態が悪化するのも無理はありません。

子どもたちも、学校にバイトと忙しい日々を送っているため、両親の争いごとには無関心。とうとう父は離婚を宣言してしまい……。沖田家はこのまま崩壊してしまうのでしょうか?

『蜃気楼家族』の衝撃実話④父の暴走は止まらない!【4巻ネタバレ注意】

著者
沖田 ×華
出版日
2014-10-22

3巻で父の浮気騒動がおこるなど、家族崩壊の危機にさらされてきた沖田家。4巻では、さらに父の暴走がヒートアップしています。

幼いころから万引き事件をおこす問題児の弟は、なにやら怪しげな業界に入ってしまいました。拉致された場所から脱走を試みますが……。

さらに看護師として働く沖田×華に、両親の離婚問題が降りかかってきてしまいます。まさかの迷惑料を自分が払わなくてはいけない事態に……?

全部、実話です。家族とは?と問いたくなるほど壮絶な家庭の状況が描かれています。この後、沖田×華は家族とどのように向き合っていくのでしょうか。

『蜃気楼家族』の衝撃実話⑤沖田×華、漫画家を目指す【5巻ネタバレ注意】

著者
沖田 ×華
出版日
2016-07-27

看護師になった沖田×華でしたが、その仕事を辞めて風俗嬢になりました。その時に、漫画に出会います。そこから漫画家を目指すようになったのです。

暴走する父は、大切に守ってきた中華料理屋をたたみ、行方をくらませてしまいます。弟も放浪気味だったと思いきや、突然現れて「金を貸してくれ」と言うように。バラバラになりながらも、弱く脆い繋がりで家族は健在していました。

ここまで自分の家族の話を包み隠さず描くことは、簡単ではなかったでしょう。身内の内容を載せたことによって、親戚から絶縁をせめられたこともあったようです。

信じられないほどの壮絶なエピソードがたっぷり描きこまれたコミックエッセイ。時に笑い、時に涙し、沖田家の人々を見守ってみてください。

漫画『蜃気楼家族』を読んでみよう!

著者
沖田 ×華
出版日


ネタバレを含んでご紹介してしまいましたが、まだまだこの後も両親のハチャメチャな日常は続き、個性豊かなお客さんや近所の人々も続々と登場します。

まるで異世界に潜り込んでしまったかのような沖田×華の自伝は独特な空気感で読むものを引き込んでくるもの。ぜひその雰囲気を作品で味わってみてください!

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