すでにアジアやヨーロッパに限らず日本の結構マニアックな漫画まで翻訳され、輸入されていることはみなさんご存知かと思いますが、台湾で驚いたことのひとつに、なんとコンビニエンスストアにもボーイズラブ漫画が並んでいる点があります。バンドデシネやアメリカン・コミックなど、海外にも多くの「漫画」に類する文化があり、こうした作品から影響を受けた日本の作家が多いように、日本の漫画もまた海外に大きな影響を及ぼしているのでしょう。
現在、私達の身の周りには「国際化」「グローバル化」といった言葉があふれていますが、私たちは社会がどうなることをもって「グローバル化」したと言えるのでしょうか? 輸入した食材を食べること、海外の映画を見ること、SNSで外国語を使ってコミュニケーションすることは、すべて「グローバル化」の賜物とも言えます。だとしたら、とくに今、殊更騒ぐことでもないのでは……とお思いの方もいらっしゃるでしょう。「グローバル化」の簡単な定義は、ヒト、モノ、お金、情報が国境を超えること、またその量が増加すること、ですから、「いつから」と定めるようなものではないことも確かです。
- 著者
- 大河原 遁
- 出版日
- 2004-01-05
寒村で老いた父母とともに住み、パチンコ屋に務める42歳の男・岩男は、あるきっかけから何やら怪しい国際結婚の仲介会社をつてに、フィリピン人の少女・アイリーンを娶(めと)ります。保守的な農村を体現する存在である母・ツルにとって、日本語もままならない外国人の「嫁」の出現は受け容れられるものではありません。ツルはアイリーンを陥れ、目の前から消そうとするためにあらゆる謀略を尽くします。
- 著者
- 新井 英樹
- 出版日
- 2010-12-15
フランス料理のシェフ・ケンが戦国時代にタイムスリップし、織田信長の料理人になる――という、設定だけを聞くとどこかにありそうな物語ですが、「食」という日常性の高いトピックがダイナミックな物語のトリガーとなっていて、壮大な物語や歴史物が苦手な方にもおすすめできます。とりわけ、「制約」が上手に効いているため、アイディアの奇抜さや伏線が映えていて、演出面でも際立つ作品です。
- 著者
- ["梶川 卓郎", "西村 ミツル"]
- 出版日
- 2011-08-09
「現在地球には数百種類の異星人が行き交い生活している 気づいていないのは地球人だけなのだ」――こうしたモノローグから始まるこの漫画は、多種多様な宇宙人たちが織り成す事件に巻き込まれる地球人との「異文化交流」をめぐるトラブルによって成り立っていますが、読み手をハラハラさせつつも、全体的に非常に落ち着いたトーンで進んでいきます。狂言回しの役割を果たす主人公・バカ王子がもつ間が抜けた雰囲気のせいか、全体に冷めたムードのキャラクターが多いためでしょうか、すごく感情移入できるようなお話では決してありませんが、彼らの「交流」をどこかから傍観している気分になれます。
- 著者
- 冨樫 義博
- 出版日
- 2010-09-17
代表作『テルマエ・ロマエ』など、異文化や異なる社会に対する感性が豊かに発揮されているヤマザキマリの作品群。その一方で、北海道の地方都市を舞台にした『ルミとマヤとその周辺』など、ローカルな社会を情感豊かに綴った作品群も魅力的です。おそらく著者自身のキャリアや生い立ちに基づく「ローカル」と「グローバル」を繋ぐ作品が、『涼子さんの言うことには』。母親の命により、14歳の主人公・ルミは夏休みに母親の友人を訪ね歩きながら、ヨーロッパの周遊旅行を行うことになります。もちろん、ホームシックあり、トラブルありで、彼女の旅はなかなかうまくいくものではありません。
- 著者
- ヤマザキ マリ
- 出版日
- 2010-07-13
「国際社会を捉え直す」という観点から見た5冊、いかがだったでしょうか?あえて今回は、具体的な国や地域にフォーカスするのではなく、技術の伝播や観光、対人コミュニケーションなど、国際社会一般に見られる現象をいかにして考えるべきかという観点から漫画を選んでみたつもりです。海外に行かなくても、異言語を学ばなくても、私達が国際的でありえることが分かってもらえればいいなと思って選びました。次回もぜひお楽しみに。
マンガ社会学
立命館大学産業社会学部准教授富永京子先生による連載。社会学のさまざまなテーマからマンガを見てみると、どのような読み方ができるのか。知っているマンガも、新しいもののように見えてきます。インタビューも。