『太陽にほえろ!』や『探偵物語』などで人気を博した松田優作。役で演じていたハードボイルドなイメージは、今も尚多くの人々に影響を与え続けています。そんな彼について記した書籍を紹介します。
松田優作は1970年代後半から1980年代にかけて活躍した俳優です。刑事ドラマ『太陽にほえろ!』で柴田純(通称・ジーパン)刑事役を演じたことで人気を獲得しました。
ジーパン刑事が殉職したシーンはとても衝撃的なシーンで、多くの人が自分の腹に手をやり「なんじゃこりゃぁぁ!」とモノマネする人は多かったですね。その後も東映セントラルフィルム作品や角川映画作品でアクションスターとして人気を博しました。
1980年代からは演技派俳優として認められ、主演したドラマ『探偵物語』ではスタイリッシュでコミカルな演技をしていたことで、ファンをさらに獲得しています。
『探偵物語』の放送が終了した後でもSMAPのバラエティ番組でオマージュされたコントが行われたり、探偵物語ボイススタンプがLINEで配信されていたりなど、現在でも影響力は強いです。
1:松田優作の韓国名は金優作だった
彼は山口県下関市で、日本人の父と韓国人の母との間に生まれました。当時父親には別に妻子がおり、父母との間には婚姻関係が無かったために「在日韓国人」として生活しています。 当時の韓国籍の名前は「金優作」で、その後『太陽にほえろ』に出演中に日本に帰化して「松田優作」となりました。
2:黒沢明に弟子入りを志願して断られていた
優作は、大学生の時に黒沢明監督の自宅を訪問し、弟子入りを志願しています。そのとき自宅前で3日間座り込みをしましたが会ってもらえず、断られました。 その後役者になった彼は、役者仲間に「有名になっても黒沢明の映画には出ない」と語っています。
3:松田優作は傷害の容疑で逮捕されていた
彼は1976年の『俺たちの勲章』の鹿児島ロケ打ち上げの時、傷害事件を起こしたとして逮捕され、その後1年間番組出演を自粛しています。 実際には優作は襲われた方で、揉みあっているうちに相手に重傷を負わせてしまった事件です。この件は示談になっており、慰謝料も払ったのに逮捕されてしまいました。
4:アドリブ芝居が多かった
松田優作はアドリブ芝居が多く、芝居のバリエーションも豊富でした。そのため台本とは全く別のことを優作が芝居の時に話すと、共演する相手も優作の芝居のバリエーションに合わせて、ただセリフを覚えるのではなくアドリブに対して答えをいくつかある中で選んで演じていました。
実際には台本通りの方が良かったと思えることも多くあり、先輩俳優から台本通りに演じるように怒られたことも多かったようです。
5:『蘇える金狼』の撮影時、実はは無免許だった
『蘇える金狼』ではたくさんのスポーツカーが登場しますが、その運転をする彼は当時免許を持っておりませんでした。そのため運転シーンは合成画面で運転しているように撮影し、走行シーンはスタントマンが運転していました。
6:憧れの原田芳雄の家のとなりに引っ越した
長らく原田芳雄に憧れており、若いころは原田芳雄の真似ばかりしていました。その後、渋谷の大山町にある原田邸裏の洋館が空き家になった時、優作はそこに引っ越しています。
7:松田優作が残したボトルナンバーが命日と同じ
彼は下北沢にあるバー「LADY JANE」に「アーリー」というお酒をボトルキープしています。それが最後のボトルとなりましたが、ボトルナンバーの「116」は優作の命日11月6日と一緒でした。
8:松田優作の墓には「無」と刻まれている
西多摩霊園には優作のお墓があります。そこには妻で女優の松田美由紀さんの「最も優作らしい言葉」という想いから、「無」と刻まれています。
在日コリアンとして生きてきた学生時代から、下積み時代を経て、スターになった松田優作について、妻であった松田美智子自身が様々な人に取材を行って、まとめた一冊です。
- 著者
- 松田 美智子
- 出版日
- 2010-06-29
『太陽にほえろ! 』『探偵物語』『ブラック・レイン』など時代を熱狂させ、ハリウッドに渡った矢先、40歳の若さで逝った伝説の俳優松田優作。栄光とともに語られるその人生の裏側には、壮絶な苦悩と葛藤があったことが記載されています。
在日韓国人という強烈なコンプレックスがあり、また俳優として常に刺激や変化を求め、妻を捨てたこと。そして晩年には宗教に走り、癌で短い生涯を閉じたその背景で明かされることのなかった人間・松田優作の真実の姿が描かれた傑作評伝です。
特に熊谷美由紀が現れたあと、彼が自宅に帰らなくなり、松田美智子は一年間悩み待ち続けたが、最終的に離婚を決意したこと。離婚後、美由紀夫人に宝飾品や豪邸を贈ったことを発言する優作に悔しかったこと。それらのことに松田美智子自身の言葉で記されているので、とても思いの強い作品となっている印象を受けます。
ファンや気になる人にとっては、まず初めに読んでもらいたい一冊です。
あまりにも悲劇的な幼年期で感じた孤独と絶望の中で、鋭い感性が磨かれ、『太陽にほえろ!』のジーパン刑事役で一躍脚光を浴びた松田優作が独得の存在感を以もってスターへの階段を昇っていき、ついに念願のハリウッド映画『ブラック・レイン』への出演を果たします。
- 著者
- 大下 英治
- 出版日
- 1996-11-01
癌に犯されながらも命を賭けて迫真の演技で『ブラック・レイン』に臨んだ松田優作の怒涛の人生を、ドキュメンタリー作家である大下英治の目線で綴られた長編ドキュメント・ノベルです。
親族が語る彼に関するの書籍は多く存在していますが、第三者から見る彼の姿を追った書籍はあまり数がありません。また、政界や芸能界のルポルタージュや小説を執筆していた大下英治の書籍なので、とても俯瞰的に見える内容となっています。
亡くなった翌年に発行されているため、伏せられていた事実もありましたので、『越境者 松田優作』と併せて読むとまた面白いのかもしれません。
妻であった松田美智子が「松田麻妙」というペンネームで、松田優作と出会ってから結婚や離婚を経て、彼が死ぬまでの21年を綴った一冊となっています。
- 著者
- 松田 麻妙
- 出版日
作者である松田美智子が無名時代から全盛期までの21年間を松田優作と一緒に暮らし、サポートし続けていたからこそ綴ることができる内容だと思います。
大下英治が『蘇える松田優作』を執筆する際に取材した際、取材した松田美智子に原稿を見せたところ加筆や削除に作家としての才能を認め、優作との生活を書くよう勧めたことで執筆されたものが本書です。
『越境者 松田優作』と内容がかぶる箇所が多々ありますが、彼が亡くなってからそんなに経過していない時期に書かれたこともあり、主観が強く出た本になっています。
また執筆当時言えないこともあったのか、『越境者 松田優作』では触れられていないところがあり、生々しさを感じることでしょう。
『越境者 松田優作』と一緒に読んで著者の気持ちの変化を楽しむのも良いかもしれません。
松田優作が主演のドラマ『探偵物語』を脚本家に沿って読み込んだ解読本となっています。
これまで彼の人物像に焦点を当てた著書は多かったものの、彼の出演していた作品自体に焦点を当てた書籍はこれだけです。
- 著者
- 李 建志
- 出版日
- 2011-02-11
本書はあえて『探偵物語』を脚本家から見ることにしており、担当した脚本家のうち、複数の話を書き下ろしている6人を取り上げています。
その6人は、当時すでに脚本家として地位を確立していた佐治乾や、演劇の世界で有名だった内田栄一といった年配の作家だけでなく、駆け出しだった丸山昇一や那須真智子といった若手、そして柏原寛司や宮田雪といった当時売り出し中だった作家まで幅広く登場します。
彼らの作品傾向はそれぞれ全く違ったものであり、脚本家によって松田優作演じる「工藤俊作」の描き方がどう違っていたというのが感じる内容となっています。
工藤俊作はお茶の間で理解しやすいハードボイルドではありましたが、優作は本物のハードボイルド探偵を読み取れるような仕掛けをしていました。
研究者として活躍している著者の新しいドラマ論として、多くの人に読んでほしい一冊です。
妻の松田美由紀が4年をかけて、松田優作が出ていた映画やドラマ、音楽などの資料を発掘し、監修・アートディレクションを手掛けた作品集となっています。
- 著者
- 松田 美由紀
- 出版日
松田優作が直筆で演技プランが書き込まれていた台本・ノートや、映画俳優を夢見ていたころに投稿していたシノプシス、出演作品の新聞批評記事のスクラップ、幼年期からの晩年までの秘蔵プライベート写真などが収録されています。
丁寧に年代順で資料が網羅されており、とても充実した作品集です。
家族だからこそ発掘されている作品集となっており、彼の亡き後に刊行された多くの出版物の中でもとても心惹かれるものになっています。
値段は書籍としては少々高額な商品となっています。ですが、その値段以上の価値がある魂を揺さぶられるような作品を本作から見て楽しめます。
この作品集を通して、妻である美由紀の、優作に対する思いを感じると思います。松田優作ファンには、ぜひともご覧になっていただきたい作品集です。
様々な人に愛されていた松田優作。どの本も彼のファンや、古いドラマや映画で見たことある俳優だけど、実際どういう人なのか興味あるという人には読んでもらいたい内容になっています。本屋や図書館で見つけた際には手に取って読んでみてください。