枕元に置きたいショートストーリー5選

枕元に置きたいショートストーリー5選

更新:2021.12.13

モノブライトのギター、松下省伍です。今回は寝る前のちょい読みで、いい夢を見れそうな短編集をご紹介させていただきます。

2006年、桃野陽介(Vo / Gt)を中心に、松下省伍(Gt)、出口博之(Ba)の北海道・札幌の専門学校時代の同級生でバンド結成。2007年、「未完成ライオット」でメジャーデビュー。2009年、2ndアルバム『monobright two』をリリースし、10月には大阪・なんばHatch、東京・日比谷野外音楽堂でのワンマンライブ『BRIGHTEST HOPE』を開催。ギターロックの表現の幅を広げるべく、様々なサウンドメイキングに意欲的に挑戦。その集大成として3rd アルバム『ADVENTURE』を2010年10月にリリース。2012年にはデビュー5周年を迎えてのワンマンツアー『LIVE-RALLY』を全国7カ所にて実施。2013年にはキャリア初となるベストアルバム『Remain in MONOBRIGHT』もリリース。。翌年、2014年3月にはZepp Tokyoでのワンマンライブも開催された。2015年6月にデビュー当時からのメンバーでもあったドラムの瀧谷翼が脱退。夏に、メンバーのソロ活動を経て、同年10月に新体制で新境地を目指す。2016年4月20日には、2年半ぶりとなるオリジナルアルバム『Bright Ground Music』をリリースした。また、現在4:52からフジテレビにてオンエア中の新作アニメーション『ぼのぼの』の主題歌に、モノブライトの書き下ろし楽曲「bonobonoする」が使用されている。6月には地元・北海道を含むワンマンツアー『Bright Ground Music ~B.G.M~ Tour』を開催した。10月にはデビュー10周年を記念した初のセルフカバー・アルバム『VerSus』がリリースされた。2017年11月より全国ツアー モノブライトTOUR2017「monobright × MONOBRIGHT × モノブライト 2007-2017」を開催。ツアー終了後、無期限の活動休止に入る。 http://www.monobright.jp/
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今さらですが文字が好きです。“彼は自宅にいた”という一文だけでも読み手によっては縁側で猫が寝ているような昼間の木造一軒家を想像する方がいるかもしれませんし、夜景を眺めながらワインでくつろぐ夜のおしゃれで硬質なタワーマンションを想像する方もいるでしょう。

突飛な人は蛍光色の宇宙船の一室を想像するかもしれません。クルッと脳が半回転してあれこれ余計な想像する。未確認の余白が作る可能性という部分が僕は好きです。そんな風にあくまで自分勝手に想像させてくれる文字がやっぱり好きだなと再確認するのが短編小説やショート・ショート集を読むときです。

描写を意識しなくても、こんな顔してるだろうなとあなたの頭の中には登場人物の顔がきっと作られているでしょうし、物語の解釈がどうこうということではなく(本当の答えは誰にも解らないはずですし)、その自分だけに見える情景とストーリーの真意を想像すること自体がとても楽しい時間だと思います。

そんなわけで、今回は寝る前のちょい読みで、いい夢を見れそうな短編集をご紹介させていただきます。

未来いそっぷ

著者
星 新一
出版日
1982-08-27
ショート・ショートという分野を作り上げた星新一さんの作品との出会いは小学校の国語の教科書です。もはや原体験です。

短編と言われるものよりさらに短くカラフルでユニークなSFが多いですが、どこか社会風刺が含まれていて考えさせられる話もあります。寓話とか昔話、言い伝えなどに通じるような部分が後味を良くしているのでしょうか。人を騙したりする話であっても嫌な気分にはならない。

星新一さんの文章は、時代や地域が限定されないように書かれていて、とあるセールスマンの話では売り物の金額を「安くはなかったが、買えないほど高い値段でもなかった」と書いたりしています。そして機会があるごとにそのような修正を繰り返していたようです。

スローグッバイ

著者
石田 衣良
出版日
2005-05-20
高校時代、池袋ウエストゲートパークがドラマで放送されていたのでそのイメージが強かったのですが、この短編集はテイストが結構違うと思ってます。

街中で溢れている恋愛の一部をスプーンですくい取ったみたいな、どこにでもありそうな物語がつるりと口当たりよく書かれている恋愛短編集です。そのせいか1話の読み終わりで変にラストに引っ張られない。なんでもない話が無理なくそこにある。

そんな風にサラサラ進んでいくのですが、ラストの話ーー別れが決まっている二人が最後にデートをする「スローグッバイ」で、何かモヤモヤしたものが……。同じ感想を抱いた方がいたら、僕を飲みに誘ってください。

つめたいよるに

著者
江國 香織
出版日
1996-05-29
江國香織さんによる、ひらがな多めの柔らかい文体で綴られる21編。最後の解説を読み直してハッとしたのですが、冷静に考えたら幽霊や怪談といった類のお話が多めなんです。恐ろしいことでもそんなことなら起こって欲しいと感じる不思議な世界。

90パーセント説明しているのに、最後の答えは読み手に委ねるギリギリの余白が好きです。手を引かれて歩いているのに、いきなりその手を離されるように鮮やかに物語は去っていきます。

ボロボロになった人へ

著者
リリーフランキー
出版日
題名から何か良い話だろうなと想像した方は、きっと裏切られると思います。予測不可能なストーリーに振り回されて、「痛快」「面白い」の一言でサクサク読めてしまいます。

ただ、奇をてらうように振り幅広く書かれているわけではないと思います。この本のように常識や世間から自覚もなくズレたものを客観的に見て面白いということは、どこかで僕たちは日常ボケみたいなものを少なからずしているからではないか、とも感じます。

画一的ではなく変な人で溢れかえる方が人間っぽいのかもしれませんね。そう思った時、このタイトルがとても優しさに包まれたものだと思いました。僕はきっと面倒臭い読者なので。

最期のメッセージ

著者
阿刀田 高
出版日
2009-01-15
こちらも短編よりさらに短いショート・ショート集。オチを準備して読んでいても、最後の一文だけでこれまで読んできた世界がひっくり返しってしまう話が多くて、気持ちいいです。ぜひ思いっきり騙されて欲しいと思います。

ショート・ショートというジャンルは手法が一見限定されてるように感じますが、そうでもない。ストレートに目を慣れさせてからカーブを投げてきたりする。適当に本を開いて、そこから読んでも楽しいジャンルですが、表題の「最期のメッセージ」は最後に読むことをオススメします。

1話読んだ後、のんびりと余韻に浸ってみる。ジャンクフードを食べる時に感じるような、少し後ろめたい気持ちでもう一回読み直したって別にいいと思います。急がない。急いで読む必要がない。何でもかんでも急ぎすぎだと思いませんか?

今日も皆様にどうか良い夢を。おやすみなさい。

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