ドクター・スースのおすすめ絵本5選!『グリンチ』など映画化も多数

更新:2021.12.20

1991年に亡くなった後に作品が映画化される等、長くにわたって愛され続けるドクター・スースの作品。その独特の画風とどこか飄々をした言い回しは、出版から50年以上たった今でも読者の心を掴み続けています。今回は5作品を厳選してご紹介します。

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独特の世界観で読者を引きつける作家、ドクター・スース

ドクター・スースは、1904年にアメリカで生まれた絵本作家です。

高校時代から美術に興味を持っていた彼はダートマス大学に入学後、風刺画や短編漫画を手掛け、卒業後は広告会社に入社。殺虫剤の広告を担当する中で描いた独特の絵は、絵本を描く中でもそのまま残されています。

1937年に『マルベリーどおりのふしぎなできごと』で絵本作家デビュー。その後46作品を発表しています。子ども達が楽しみながら英単語を覚えられるようにという思いから、1957年に出版された『キャットインザハット』以降の作品を数名の絵本作家と共に「ビギナーズブック」シリーズ(字の読み書きを始める子どもの為の本)としての出版を始めました。子ども達への思いと工夫が詰まったこのシリーズは注目を集め全米で人気のシリーズとなったのです。

独創的で一度見ると記憶に残るキャラクター達と幻想的な色遣い、韻を踏んだリズミカルな文章は子ども達の心と頭にすっと入ってきたのでしょうね。

児童文学の発展に大きく貢献したことで1980年にはローラ・インガルス・ワイルダー賞を、1984年にはピューリッツァー賞特別賞を受賞しました。自身の作品に一切の妥協を許さずに何度も書き直して完成した作品は、1991年に亡くなった後も愛され続けています。

クリスマスってどんなもの?映画化され多くの人々の心に響いた名作

1957年に『いじわるグリンチのクリスマス』として発表され、2000年に映画化された映画版『グリンチ』の原作として改めて刊行された作品です。

主人公は、人間か動物か分からないキャラクターグリンチ。ダレモかれもクリスマスが大好きなダレモ村のすぐ北に住んでいます。しかし、グリンチはクリスマスが大嫌い。なぜかって子どもがおもちゃに殺到する声がうるさいし、クリスマスのごちそうやみんなして歌をうたう姿が嫌いだから……。そこでグリンチは考えました。今年こそはクリスマスを台無しにしてしまおうと。

サンタクロースに変装して、クリスマスの楽しみをどんどん盗んでいくグリッチ。みんなさぞがっかりしているだろうと楽しみにしていたグリンチが見た光景とは……。

著者
ドクター・スース
出版日

出版されて50年近く経ってからアメリカで映画化された、子どもにも大人にも愛され続けている作品です。

みんなが楽しみにしているクリスマス。それはおもちゃがもらえるから?ごちそうが食べられるから?綺麗な飾りがたくさんあるから?でもきっとそれだけではありませんよね。何もなくても楽しむ気持ちがあれば、クリスマスは素敵な日になる、何事も気持ち次第だと教えてくれる村の人たちの姿が心に響きます。

かなり独特で変わったキャラクター、グリンチですが、初めはしかめっ面ばかりしていたのに最後には穏やかな顔になっていて、なんだか可愛く見えてきますよ。

ビギナーズブックシリーズ第一弾、子どものための絵本

アメリカの子どもがいる家には必ずあるとも言われているほど人気の作品です。

登場人物は、留守番中の男の子と女の子、突然家に入って来たキャット・イン・ザ・ハットとしゃべる金魚。金魚が止めるのも聞かずに、玉乗りをしながら傘を持ちその上に金魚鉢を乗せ、頭の上にはケーキ、足の上にはミルクを乗せたキャット・イン・ザ・ハット。その姿はかなり笑えます。更には、大きな箱の中から、モノ1ゴウとモノ2ゴウという遊び相手を出してきたものだから、さあ大変です。はしゃぎまわる2人に部屋の中はめちゃくちゃ。

そこへ、お母さんが帰ってきてしまったから男の子と女の子、金魚は大慌て。お母さんが部屋に入ってくる前に、このはちゃめちゃを元に戻すことはできるのでしょうか?

著者
ドクター・スース
出版日
2001-01-05

簡単な単語を使った繰り返しの多いリズミカルな文章は、言葉を読み始めの子どもでも楽しく読むことができます。その魅力は、いとうひろみによって日本語訳をされた作品でも健在。絵本としては、長いお話ではありますがスムーズに読み進めることができるのでおすすめです。

ひょうひょうとしたキャット・イン・ザ・ハットとしっかり者の金魚の掛け合いも面白く魅力的。2003年には『ハットしてキャット』の題名で実写映画化もされ、50年経った今でも子ども達に愛され続ける、ドクター・スースの代表作の1つです。

優しい象と小さな村との交流を描いた心温まる物語

周りの人にどんなに信じてもらえなくても、小さな命を守ろうとする象の優しさと強さが描かれたお話です。

物語の主人公はジャングルで暮らす象のホートン。ある日水浴びをしていると、小さい小さい声が埃から聞こえたのです。なんと埃の中に「だれそれむら」という小さな村があってたくさんの小さなだれそれが暮らしているというのでびっくり仰天。心の優しいホートンは、だれそれを守ってあげることに決めました。

しかし、村の動物達はホートンの言うことを全く信じてくれずに嘘つき呼ばわり。なぜならだれそれの声が小さくて他の動物には聞こえなかったからです。ついにはホートンを檻に閉じ込めて、だれそれむらがある埃を煮立った油の中に放り込むとまで言い始め……。

皆で大声を張り上げて、自分たちの存在を主張するだれそれ達。それを応援するホートン。だれそれの声は動物たちに届くのでしょうか?

著者
ドクター・スース
出版日

小さなだれそれ達が一生懸命叫んで自分と仲間たちの身を守ろうとする姿と、だれそれ達を信じて応援し続けるホートンの切実な姿に胸を打たれる作品です。どんなに危機的な状況にあっても諦めなければ、覆すことができると教えてくれているように感じます。

そして、「どんなに小さかろうと、いのちはだいじ」と言うホートンの言葉。本当にそうですよね。どんなに小さな命でも平等に扱い守ること、そして何よりも自分の命を大切にすること、子どもに伝えたいメッセージが分かりやすく描かれているので、親子でぜひじっくりと読んでみてくださいね。

こんな人たち周りにいない?ラストのどんでん返しが笑える一冊

お人よし過ぎる!と言いたくなるほど優しいオオシカと、なんとも図々しい動物たちの掛け合いが楽しくリズミカルに読める作品です。

主役は、人の好いオオシカ。わがままで図々しい動物たちがどんどんオオシカの角の上に集まってしまって大変なことに。虫のビングルにキツツキ、りすの家族までもが住み始めてしまいます。それぞれの動物たちは自分の権利を主張して、好き勝手を言う始末。それでもオオシカは断ることができません。

なんとか、穏便に居候の動物と離れる事は出来ないものかと考えながら読み進めて行くと、最後はオオシカならではのどんでん返しが待っていました。なかなかシュールな笑いを誘うラストが見どころです。

著者
ドクター・スース
出版日

オオシカの迷惑を考えず、自分の主張ばかりする動物たちの様子とそれを断れないオオシカ。モヤモヤする読者もいるかもしれません。でも大丈夫。ラストでしっかりと、ちょっとブラックな笑いを取り入れながらもまとめてくれます。

なんでも「いいよ」と言ってしまう人、自分の主張をぐいぐい通そうとする人。どちらが良いということはありませんよね。ただ度が過ぎてしまうと、こんな事態に陥ってしまうことも……。何事も限度が大切ですね。

迷いながらも挑戦し成長していく子ども達に向けたメッセージ

外の世界に向かって自分の足で歩み出す子ども達に向けてのメッセージが詰まった作品です。

主人公は、この本を読んでいる子ども自身。一本道や曲がりくねった道、時には空も飛んでみたりでこぼこ道を進んで行ったり……。

君の前には無数の道が広がっていて、自分の好きな道を選ぶことができる。もちろんん間違えることももあるし、迷うこともある。ただ待つだけの時間もある。それでも君は、勇気をもってもう一度自分の一歩を踏み出すことができるのです。頭を働かせて、賢く、素早く進み続けます。そしてそれは必ず成功しますよ。君は何だってできるんですから。

ドクター・スースからの子ども達に向けての温かい愛に溢れた言葉の数々は、きっと子どもが自分の道に迷った時の手助けになってくれるはずです。

著者
ドクター・スース
出版日

色鮮やかで一見すると抽象画のような道の数々は、想像力にあふれていて、不安定さや迷い、恐怖、楽しい夢もいっぱい詰まっていて、まるで子ども達の頭の中のようです。まさしく子どもがこれから自分で考えて自分で進んでいく人生の道も、きっとこんな風に夢に溢れていて、時には怖いことや迷う場面もあって一つとして同じ道はないのでしょうね。

子ども達が、一歩踏み出す勇気がない時にそっと背中を押して「大丈夫だよ」「がんばれ」と励ましてくれるような作品。ぜひゆっくりと読んであげてくださいね。

アメリカで生まれたドクター・スースの絵本。独創的な絵とリズミカルな言葉の数々で子どもの心を掴み続ける作品の人気は、アメリカのみならず世界各国に広がり、出版から長い年月を経ても色褪せる事はありません。また、子ども達が楽しく言葉の勉強ができるように、自分で勇気を持って一歩が踏み出せるようにと全ての作品は子どもへの愛で溢れています。

ぜひ、親子でお気に入りの一冊を見つけてみてくださいね。きっと子どもへの素敵な贈り物になるはずです。

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