長く愛されるロングセラーの絵本。愛され続けるにはそれなりの理由や魅力があります。今回はみんなに昔から愛され続ける定番絵本を、対象年齢ごとに紹介していきます。「まだ読んだことがない」という人は、定番の魅力を一度試してみてはいかがでしょう。
もこ、もこもこ。
何かが生まれて、そして食べて、大きくなって、はじけて、ふわふわして……。
ストーリーではありません。何を描写しているのかも定かではありません。
でも「何か」が生まれて、はじけて、元に戻って、また「何か」が生まれます。
- 著者
- 谷川 俊太郎
- 出版日
- 1977-04-25
不思議な絵本です。ですが多くの乳幼児がとりこになる絵本でもあります。
谷川俊太郎のリズミカルな文章と、元永定正の原色がたっぷり使われた、わかりやすくシンプルな、でもどこか魅力的な絵柄に惹かれる定番の絵本です。
不思議な「現象」が繰り返し起こり、起承転結があるお話ではありません。だからこそ0歳の赤ちゃんでも静かにお話を聞いていることが多いのかもしれませんね。
とにかく読んでいて不思議な感覚になる絵本です。読んだことがなければ、ぜひ一度お試しください。お子さんの最初のお気に入り絵本になるかもしれませんよ。
夜、お空は暗くなります。
しばらく待っていると、屋根の上に黄色い大きなまん丸の顔。
「あ、おつきさまだ!」
おつきさまこんばんは。やっと見れたのにおつきさまの前に、くもさんがやってきます。
- 著者
- 林 明子
- 出版日
- 1986-06-20
単純な絵柄と、黄色の優しい光を放つ大きなおつきさまの描写が美しい絵本です。
お話も簡素で、1歳の子どもでも入りやすい内容となっています。
指差しを始める頃なので、「これはおつきさまだよ」「これは猫ちゃんだね」などと指をさしながら読み聞かせてあげるのもおすすめです。
また物の名前も少しずつ覚えてくる頃でもあるため、知っている名詞を増やしてあげるのにも役立ちます。
まだまだ絵本を最後まで読むのは大変な時期ですが、大きな丸いおつきさまに惹きつけられて、最後まで読めるかもしれませんよ。
しろくまちゃんがホットケーキを作ります。
ホットケーキに必要な材料をそろえて、ボールに入れて……いよいよフライパンでホットケーキを焼きますよ。
ふつふつ、ぐつぐつ、おいしそうなホットケーキが焼けてきました。お友達のこぐまちゃんを呼んで、いただきます!
- 著者
- わかやま けん
- 出版日
- 1972-10-15
2歳といえば、ホットケーキが大好きなお子さんも多いのではないでしょうか。
と同時に自分で色々とやりたがるようになる年齢でもあり、親御さんは毎日「自分でー!自分でー!」攻撃にさらされている頃だと思います。
「しろくまちゃんのほっとけーき」は、まさにそんな「自分で」と言い張る子ども達の気持ちを、満足させてあげることができる一冊です。
ホットケーキが焼ける詳細な描写もあり、どんな風に焼けていくのかが良くわかるようになっています。これを読んでホットケーキを焼いてみたくなったら、子どもと一緒に作業しても楽しいかもしれませんね。
お片づけのシーンもあるので、お料理をしたらお片づけをするという習慣も教えられます。
昨日の夜「僕」のところにはクマの子が来ました。その子はよるくまといい、ママを探しに来たのです。
僕はよるくまのママを探しに、はちみつ屋さんや公園、よるくまのお家に出かけました。でもママは見つかりません。よるくまはだんだん悲しい気持ちになって、真っ黒な涙を流すので、僕のまわりも真っ暗になってしまうのでした……。
- 著者
- 酒井 駒子
- 出版日
夜に遊びに来るかわいいクマのおともだち「よるくま」。
よるくまは、ママがいなくて不安なのか、大好きな車のオモチャを手にしています。片手に車のおもちゃ、片手に僕の手。かわいいよるくまの描写がたまりません。
背景の描写も、紺色や紫色で構成され、美しく読みやすいです。
誰もいないお店や公園、お家の中の様子など、寂しいはずの様子がどこか幻想的に描かれています。よるくまのママが星を釣り上げる描写なども綺麗で、全体的に気持ちよく読み進めることができる絵本です。
よるくまが真っ黒な涙を流してしまうところはとてもかわいそうで、悲しい気持ちになります。3歳くらいの子どもは、夜に隣にママが寝ていないと気付くと、探し回ることがありますよね。
子どもはもちろん楽しめる「よるくま」。保護者にとっても、黒い涙を流してしまうよるくまを見て、「悲しい思いはさせないぞ」と気持ちを新たにできる1冊です。
ラチはパイロットになりたい男の子です。でもとても弱虫の男の子でもあります。暗い部屋には行けないし、お友達と話すのだって苦手です。だから部屋で絵本ばかり読んでいました。
そんなある日ラチがベッドから起きると、小さなライオンがいるではありませんか!
でもラチは、こんな小さなライオンじゃ役にたたないよ!と笑いました。するとその言葉に怒ったライオンは……。
- 著者
- マレーク・ベロニカ
- 出版日
- 1965-07-14
4歳になると、自分と相手との区別がよりついて、人と人との関係性が以前よりぐっと複雑に理解できるようになります。
それだけに、怖いものが増えたり、お友達との付き合い方が難しくなったりと、課題もたくさん出てくる年齢です。
勇気を振り絞らなくてはいけない場面にも、多く遭遇することでしょう。そんなとき、誰かがそばにいてくれたら……。
この絵本は、そんな子どもの気持ちに寄り添うことができるお話となっています。ライオンは、ラチの心の中のお友達だったのかもしれません。
しかしたとえ心の中であろうと、何かを乗り越えるために一緒にいてくれたことには変わりありません。
子どもが何か壁にぶつかっているときに読んであげると、乗り越えるきっかけになるかもしれない1冊です。
冬が近い秋、野ねずみたちは一生懸命働いていました。でもフレデリックだけは別でした。
みんなが冬に備えて食料を備蓄している中、お日様を集めたり、色を集めたり、言葉を集めたり……。一見すると働いていない野ねずみのように思えてくるでしょう。
しかし冬になり、他の野ねずみたちが豊富に蓄えてあった食糧も尽きてきてしまいます。そして寒くて凍えてしまいそうになるのです。そんなとき彼らは、フレデリックがお日様や色を集めていたことを思い出したのでした。
- 著者
- レオ・レオニ
- 出版日
- 1969-04-01
この絵本は、誰しもがそれぞれの役割があるのだということを学べるお話になっています。
みんなが働いているところで、さぼっているようにしか見えないフレデリック。でも、食料がなくなったとき、みんなの心を温かくしたのは、フレデリックの蓄えていた「モノ」でした。
同じことばかりしていては、みんないっせいに倒れてしまうけれど、違う役割をするねずみがいることで救われる道ができることもあります。それぞれの特性に合わせた役割を請け負っても良いのだということを学べるお話です。
これを読み聞かせてもらった子は、「みんなと同じじゃなくてもいいんだ」と自分に自信をつけられるかもしれません。
人の持っている役割は色々なんだと、広い心を持てるようになる一冊です。
ねこは死んでも生き返り、100万回生きたことがありました。
ねこは王様の猫だったことも、サーカスの猫だったことも、小さな女の子の飼い猫だったこともあります。
ねこはあるとき、野良猫でした。野良猫のねこは、100万回生きた猫として、まわりの猫たちの尊敬を集めていました。
でも1匹、白い猫だけは、この100万回生きた猫に無関心だったのです。ねこは一生懸命白い猫の気を引こうとします。
- 著者
- 佐野 洋子
- 出版日
- 1977-10-19
この絵本は、何のために生きているのかを考えさせられる1冊です。そして低学年の子どものみならず、大人が読んでも楽しめます。
100万回生きたり死んだりを繰り返しているねこは、まだまだ無感動で生に対して無頓着です。
読んでいる方はといえば、ねこを亡くして悲しんでいる飼い主の方に感情移入してしまいます。それだけに、ねこの生きることへの無関心ぶりが際立つのです。
後半、ねこが悲しむ側になったとき、読んでいる私たちも一緒に泣いてしまうほどの感動が押し寄せてくるでしょう。
年齢が上がっていくほど、ねこの悲しみが胸にせまる絵本です。お子さんに読み聞かせるとき、親御さんの方が先に泣いてしまうかもしれませんね。
地球の誕生から、現代までをたどれる絵本です。改訂版が出る前までは、現代科学とは違う記述があったのですが、今回の改訂版で適宜修正されています。
恐竜の歴史や、宇宙の歴史、そして文明を持ってからの人類の歩みなど……地球上に生きている生命がどのような歴史を持っているのか、詳細に知ることができる良書です。
- 著者
- バージニア・リー・バートン
- 出版日
- 2015-07-23
生命の歴史について、体系的に知ることができる優れた絵本です。2015年の改訂版では、近年発見された事実が改定されており、より正確な内容となっています。
それぞれの生物の歴史が帯になって解説されており、系統立てて生物の進化の歴史を理解することができるでしょう。
科学に興味のあるお子さんには大変おすすめの1冊です。そして、現時点でそれほど科学に興味のないお子さんにも、科学に興味を持つきっかけに十分なりうる絵本といえます。
親もよくわからない「なぜ?」がたくさん詰まっている『せいめいのれきし』。親子で一緒に学ぶ練習にもなることでしょう。
ヤモの住んでいる村は、自然がたくさんある美しい村。春になるとスモモやさくらんぼなど、たくさんの果物が採れます。
ヤモはお父さんと一緒に、収穫した果物を市場まで売りに行き、売れたお金でヒツジを1頭買ってきました。ヤモはそのヒツジに「春」という意味の名前をつけました。
今は戦争に行っていて、来年の春には帰ってくる予定の兄さんの帰りを願って、そう名付けたのです。
- 著者
- 小林 豊
- 出版日
戦争によって、かけがえのない日常が破壊されていく悲しみを、美しい絵柄と物語で語りかける絵本です。
みずみずしい果物や、活気のある市場、自然豊かな村に温かい家族と村人たち。そんなささやかな生活が、一瞬で破壊されてしまう戦争という存在。
どんな時代になっても戦争は続いています。現在もそうです。日本では今は戦争は起きていませんが、過去にひどい戦争をしました。
戦争の悲惨さと虚しさを、昔から伝えてきた絵本です。美しい絵柄がより戦争の残酷さを物語ります。
小学校高学年という、社会情勢なども理解できる年齢に、戦争という行為について話し合うきっかけとなる絵本です。ぜひ、子どものうちから読み聞かせてあげてください。
この絵本は文字のない絵本です。お話はすべて絵だけで進んでいきます。
ある日、アンジュールは車の窓から放り投げられてしまいます。どんどん走っていく車、急いで追いつこうとするアンジュール。
でも車はとても速くてぜんぜん追いつけません。
アンジュールは途方にくれました。そして途方にくれていろいろな場所をさ迷い歩くのです。
- 著者
- ガブリエル バンサン
- 出版日
アンジュールという名の犬がある日突然捨てられます。車から投げられるというひどい方法です。
どんなに心細かったことでしょう。どんなに心に絶望を抱いたことでしょう。犬を、生命を捨てるというのは、こういうことです。
ひどい現実を前に、生きていくしかないアンジュール。生き物を捨てるという醜い行為が、字のない絵本だからこそ余計に胸にせまります。
生き物と向き合うというのは、大変なことです。もう嫌になることだってたくさんあるでしょう。でもそんなとき、この絵本を開いてみてください。
自分の持っている醜さを、飼われている生き物の悲しさを、きっと容赦なしに突きつけられることでしょう。
親が子どもの頃からずっとある絵本は、魅力があるから読み続けられているのでしょう。まだ読んだことがない本があったらぜひ、手にとってみてください。きっとあなたの知らなかった、魅力的な絵本に出会えるはずです。
絵本というのは不思議で、読む年齢によって印象がまったく違ってきます。子どもの頃に感動しなかった本も、大学生になってから、親になってから読むのではずいぶん印象が違っていて、驚くこともあるでしょう。
そんな自分の年代ごとの違いを楽しみつつ、昔ながらの絵本を自分の子どもに読み聞かせるのもきっと楽しいですよ。