「あ~海に行きたい!!」そんな気分になったとき、すぐにでも日常を忘れさせてくれそうな、波の音が聞こえてくる絵本を紹介します。お子さんと夏の海水浴気分を楽しむのもよし、一人ゆっくりと海へ想いを馳せてリラックスするのにもおすすめです。
双子の野ネズミ、ぐりとぐらが浜辺で砂遊びをしていると、波間にキラリと光る葡萄酒の空瓶を見つけます。その中には海ぼうずからのお手紙と地図が入っていました。
手紙で頼まれた真珠灯台へ行くために、ぐりとぐらは初めての海水浴に挑戦します。浮き輪を使いのんびり泳いでいると海ぼうずが現れ、二匹をグイグイ引いて灯台まで連れていくのですが、その泳ぎの速いこと!
海ぼうずの頼みを叶えたぐりとぐらは、お礼に泳ぎ方を教えてもらうことにします。「くらげ・およぎ」「くじら・およぎ」「ひらめ・およぎ」……。二匹の海水浴はとっても楽しそうです。
- 著者
- なかがわ りえこ
- 出版日
- 1967-06-01
ぐりとぐらは青と赤の色違いのつなぎと帽子でお馴染みの野ネズミですが、この海辺でのお話では青と白、赤と白のストライプの水着を着ています。いつもと違う装いがキュートで、海水浴気分がますます盛り上がります。海ぼうずも緑と白のストライプの水着で可愛らしく、まるで少年のようです。
海ぼうずに手紙で誘われた真珠灯台へ向かうために、ぐりとぐらは浮き輪を膨らませて海に入ります。初めての海なのに、二匹がリラックスしてのんびりと海面に浮かぶ姿はとても気持ちがよさそう!「あ~海に入りたいなあ」とうらやましい気持ちにさせられます。
キャンティの瓶のような、ずんぐりとした形の葡萄酒を開けようとする場面では、ぐりとぐらが貝殻を固いコルクにねじり込んでいます。二匹の小ささがよくわかる可愛らしいシーンです。こんなに小さな二匹ですから、海ぼうずが穴に落としてしまった真珠を拾ってくるお手伝いにピッタリですね。
泳ぎが上手な海ぼうずが披露する「かえる・およぎ」「ひらめ・およぎ」はそれぞれ平泳ぎ、横泳ぎのことだな、とすぐにわかりますが、ぐりとぐらが特別に教えてもらった「うみぼうず・およぎ」とは、いったいどのような泳ぎ方なのか見てみたくなります。
赤い三角の旗を掲げた船、オセアノ号が出航です。たくさんの船や人々がオセアノ号の出帆を祝うその海の下には、魚や海の底に落ちたゴミが見えています。
オセアノ号の航海は青い海や北極海を探検し、嵐を乗り越えて静かな入り江へ向かっていきます。それぞれの海中では、クジラの親子やアザラシ、小魚やサンゴ礁などの美しい自然が精密なポップアップで表現されていて、その色合いも見事です。
- 著者
- ["アヌック ボワロベール", "ルイ リゴー"]
- 出版日
素晴らしいアイデアとデザインに感心させられる、海がテーマのしかけ絵本です。メモ帳や便箋に描かれていそうな女性好みのイラストと形が長細くお洒落な装丁は、ページを開いて部屋に飾っておきたくなるような雰囲気があります。子どもたちが読むなら、見たこともないような斬新なしかけにくぎ付けになるでしょう。
それぞれのページ上部が海の上のストーリーになっていて、本をぐっと開くと海の中の様子が立ち上がってくる上手い作りになっています。読む人の目線で海の上や中に行き来することができるので、読み聞かせよりも一人読みが断然おすすめです。
オセアノ号が出航する港では、ブイからのチェーンが海底へ長く繋がり自転車や瓶などのゴミも落ちていて、海の中が全体的に暗く汚れているように描かれています。嵐の海では荒れ狂う海面の様子がうまく立体的に起き上がり、静かな入り江では海中に美しい珊瑚が連なって色とりどりの生命であふれています。作者が伝えたいであろう自然への敬意と美しさを、驚きのしかけで感じることができる作品です。
「子育てが大変でなかなか絵本を買いに行く時間もない」「読み聞かせの時間がなかなか取れない」「家で仕事をしている間、1人で絵本を読めるようになってほしい」。絵本をたくさん読んで欲しいとは思いつつ、なかなかそんな環境を整えるのも難しいですよね。
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『海へさがしに』は、「あたし」がママと二人で海について話したり思ったりしたことを、優しい口調で綴っているお話です。「海はね 願いをきいてくれるのよ お願いしたら探してごらん 欲しいものがみつかるから」というママの言葉に、あたしが海にお願いして見つけたものは、貝殻やガラスのかけら、ペリカンの羽、遠い国の木の靴……。どれもあたしの大事な宝物になるのです。
でもママが海にお願いする、おひさま、水、月の銀色の光や波の音などは大きくて持って帰ることができません。それはお願いしなくてもいつでもあるもので、普段は忘れてしまいがちだけれど大切なものなのだとあたしは気づきます。
- 著者
- デブラ フレイジャー
- 出版日
フロリダ半島のビーチに住んでいた作者ならではの、着眼点がユニークな絵本です。中を開くと目を奪われるポップな切り絵の花や木、海や雲。そこに浜辺の写真や、海岸で拾った色々な漂流物の写真がうまく組み合わされています。あたしが見つけた海からの宝物がアルバムのように並べられているページは、誰もが見たことがあるものばかりで、なんだか懐かしさを感じるかもしれません。
ハイビスカスが大人っぽい表紙をめくるとすぐにビーチの写真です。お話の主人公はお母さんと娘の二人ですが、人物はすべて黒い切り絵のシルエットだけで登場します。そこに赤や黄色の花が咲き、緑の葉っぱが生い茂り、白い雲や波が切り絵でコラージュされているのです。素敵な写真集のような雰囲気も持っていて、大人にこそ手に取ってほしい海に癒される絵本です。
明るい光を反射する昼間の波や夕陽にキラキラ光る海、ウミガメの足跡などの写真も美しく、波打ち際で小さな泡を作る白い波からは今にも海の音が聞こえてきそうです。巻末の「海の新聞」では海で拾った宝物がそれぞれ何であるのかを説明しており、作者の海の思い出も語られています。
船の上の女の子が大切にしていた着せ替え人形のテンちゃんは、カモメの羽にぶつかって海に落ちてしまいます。テンちゃんは海中に沈んでいく間に、着ていたお洋服やアクセサリー、髪の毛まで取れてどこかになくしてしまい、不思議な泡の中に吸い込まれていくのです。
なんと、泡の下には10階ごとに違う生き物が住んでいる、海の中の100階建ての家がありました。テンちゃんはお洋服やアクセサリーを探すためにどんどん下へ降りていき、次々に楽しい海の家を訪ねます。100階建ての家には、誰が住んでいるのでしょう?
- 著者
- いわい としお
- 出版日
- 2014-06-27
縦に開いて上から下へと読み進める「100かいだてのいえ」、シリーズ3冊目は海の中のお話です。ページいっぱいに広がるのは、海の底へと深く伸びる家のそれぞれ10階部分で、端から端まで見入ってしまう楽しいイラストがあふれ出してきます。
ラッコの家は海藻がからまっていて、いたるところに好物のイカや貝殻があります。イルカの形をしているイルカの家は、どうやら海の郵便屋さんのようです。ウツボの家にはウツボ電車が、カニの家にはワイルドなカニ海賊もいます。ギッシリ詰まったイラストに、次は誰の家なのだろう?とワクワク感が満載です。
テンちゃんは、それぞれの家で自分の服やアクセサリーが違う用途で使われているのを発見します。その使われ方も意外で楽しく、海の中の物を代わりにもらって身に着けたテンちゃんが、どんどん可愛くなっていくのもステキです。貝殻の帽子にクラゲの透明マントを着たお人形だなんて、探してみたくなりますね。
最後にたくさんの海の生き物たちがテンちゃんを船まで連れて行くのですが、縦に開いたページ一面に魚やイルカがワーッと浮き上がる爽快な姿は格別です。子どもも大人も、深い海の家から一気に浮上するような気持ち良さを感じることでしょう。
谷川俊太郎の詩『よるのこどものあかるいゆめ』に、幻想的な海の写真を組み合わせた眠りの本です。「目をつむってごらん……」から始まり、ゆらゆら、うとうとするような優しい詩が、とろける海の色とうまくマッチしています。
眠りの前に読む本としても最適ですが、心や体が疲れたときに眺めるとすっと気持ちが海の中へ入っていき、ヒーリング効果も抜群です。
- 著者
- 谷川 俊太郎
- 出版日
- 2017-02-03
たった一つの詩を一冊にした贅沢なつくりで、一言一言がゆらゆら揺れる海の中でそっと心に触れてくるような本です。明るい海の中の小魚たちや、海の天使クリオネの透明な姿がふんわりと泳いでいて、まるで海の中を散歩している気分になります。
「だれかがねるのを まっている」……。眠そうな顔のクマノミがゆったりとイソギンチャクにもたれていて、読み手を眠りに誘います。幻想的なパステルカラーの優しい写真が、子どもの心も大人の心もリラックスさせていくでしょう。
巻末には「おやすみたいそう」と「本を読む前に準備しましょう」も用意されています。ここでアドバイスしているように、温かいお布団にころんとして、お気に入りのぬいぐるみを横におき、『よるのこどものあかるいゆめ』を読んだならスーッと眠りに入れそうです。
塩分による保湿や波の音などにより、海にはリラクゼーション効果があると言われています。青い海の中にいることを想像するだけで開放感が胸に広がり、ストレスも癒される気持ちになれるでしょう。ここでご紹介した海の本で、楽しい時間、ゆったりした時間を過ごしていただけたら幸いです。