僕にとって東京は不思議なところです。知らない仕事、知らない文化や暗黙のルール、知らない最先端技術、知らない人種(性格の持ち主とも言えますが)、札幌育ちではありますが、それは名ばかりで山と川が遊び場だった世間知らずの僕には上京時、外国そのものでした。
以後、たくさんの経験をさせてもらいましたが、それでもここは絶えず新しい刺激という強風が吹き晒していて、そういった意味では僕は相変わらずまだまだ知らない人です。けれど、ようやくその強風が当たり前の日常として受け止めることできて、傘を飛ばされず歩けるようになったのは最近のことだと思います。
何か特有の引力に吸いこまれるように日本各地から多くの人がここにやってくる。そのダイソンよろしくの吸引力でこの地に人を留めようともする。なぜか正月にだけその回転はピタリと止まり、今度は逆回転を始めて、溜め込んだ人を故郷やら外国やらに吹き飛ばして街をスッカラカンにする摩訶不思議生物都市。人の夢を喰らって生きる莫奇、東京をお楽しみください。
三軒茶屋星座館
田園都市線、世田谷線乗り入れの三軒茶屋駅。そこにある細い路地の飲み屋が密集する三角地帯にあるビルの6階でプラネタリウムを経営する主人公の物語です。このビルもそうですし(本当にガタガタなる怖いエレベーターも)、実際ある建物や街の描写がリアリティ満点で本当にそんなことが起こっていそうだし、同じでなくともそんな誰かの日常があるはずと思わせてくれます。もちろん行ったことない方々には読んでいただいて、ぜひ聖地巡礼を楽しんでほしいです。シリーズで他にも出版されてます。
東京吉祥寺田舎暮らし
中央線、井の頭線乗り入れの吉祥寺駅。在住20余年の井形慶子さんの吉祥寺への地域愛が詰まってます。住みたい街ナンバーワンに何年も連続で選ばれる吉祥寺とはどんな場所なのか、どんな街だったか、そしてこれからどんな街になるか、とそれぞれにある願いをさまざまな角度からジャンル分けして書かれてます。確かに住んでみたい街、けれど住んだとして好きな場所を守るのもまた自分の日常だったりする。例えば、商店街でものを買うようにするとか小さなことでも。好きに対して貢献しなければ好きは守られないのだと思います。