時代小説を読んでいると、自分がその時代に入り込んでいるような気持ちになりますよね。まるで自分が登場人物になった感じで、時間も忘れてどんどん読みすすめてしまいます。今回は、そんな時間を忘れて読める面白いオススメ時代小説を5つご紹介します。
古代日本に神道が現れたとき、同じく土着の思想として生まれたもの、それが「鬼道」でした。しかし、鬼道は信者たちの狂信ぶりのせいか、ときの幕府に忌み嫌われ続けてきました。激しい迫害を受けるうち、鬼道宗は人々の記憶から消えてしまいます。
しかし、徳川幕府8代将軍・吉宗が将軍を退いたとき、再び彼らが動き出しました。
彼らの行く先々には必ず戦乱が起こり、女子供ら弱者の怨嗟の声が響き渡ること間違いなく、今、ここから破壊と再生の物語が始まります。
- 著者
- 半村 良
- 出版日
著者の半村良は、この作品の他に『戦国自衛隊』なども書いており、著書の多くが時代ものにSFの要素を足した新感覚の作品が多いです。この小説もまた、時代ものというより伝奇ものという内容で、読んでいるとその不思議な世界観の虜になること間違いなしです。
半村良自身はSF作家ということもあって、物理や天文学の知識は半端なものではありません。この小説も、一部のファンからは「物理学の教科書」と呼ばれるほど緻密な検証のもとに書かれています。それだけではなく様々な宗教についても書かれており、半村良の見識の広さに驚くばかりです。
荒唐無稽な内容でありながら、どこかリアリティがあるのは著者の不断の努力から来るものでしょう。一読する価値のある本です。
どん底の状態から米沢藩を立て直し、今もなお名君として知られる男がいました。それが上杉治憲、またの名を上杉鷹山です。
彼の政治手腕は多くの政治家が真似するところであり、日本人だけでなく外国陣にも人気があります。あのケネディも、尊敬する日本人に彼の名を挙げるほどです。
そんな彼が、どのようにして最悪な状態だった米沢藩を立て直し、そして今もなお語り継がれるような人間になっていったのかが描かれているのが本書です。
現代の日本人、特にリーダーとなる人間にとっては必読といってもいい本でしょう。
- 著者
- 童門 冬二
- 出版日
- 1995-11-01
日本人から尊敬される日本人は数多くいますが、その中でもリーダーとしての資質が優れた人物として挙げられるのがこの上杉鷹山です。上杉家といえば、武田信玄と川中島の戦いで激戦を繰り広げた上杉謙信が有名ですが、鷹山はその謙信の子孫でした。
鷹山は江戸中期、米沢藩の藩主に就任します。米沢藩だけでなく、多くの藩が幕府への借金や度重なる飢饉に悩まされていました。そんな現状を改善すべく、彼は藩政改革に取り組みます。
その改革は大きな成果を上げ、民衆の生活を向上させ、藩の借金を無くすことにも成功しました。それも無理矢理なやり方ではなく、民衆や藩の部下たちを上手く使い、着実に行っていった改革でした。
日本が不景気になったり、社会情勢が不安定になったりすると必ず紹介される本です。日本人なら、ぜひ一読するべき本と言えます。
時は幕末、海外からの圧力や、国内の情勢不安から幕府を守るべくして作られた浪人集団・新選組。
その中核にあって、「鬼の副長」と恐れられたひとりの男がいました。その名は土方歳三。元はしがない薬売りの家の息子でしたが、近藤勇らとともに武士になった男です。
そんな彼が、どのようにして武士になり、そして新撰組を結成するかに至ったのか。そして、どのような最期を遂げたのか……。
この小説では、土方が多摩で暮らしていた頃から、戊辰戦争の終結の地・箱館で死を迎えるまでが描かれています。
- 著者
- 司馬 遼太郎
- 出版日
新撰組を描いた小説は数多くありますが、この作品を外して新撰組を語ることはできません。
作者の司馬遼太郎といえば、著作が何回も映画化されるなど時代小説の大家といってもいい人物です。この作品も、何度も映像化されその度に話題を呼びました。
新撰組の中でも、局長・近藤勇、副長・土方歳三の名前を一度は聞いたことがあるという人は多いと思います。常におおらかで笑って隊員の支持を集める近藤と、裏から隊の規律をまとめあげ、ときに非情な命令を下すことで隊としての風紀を守る土方の対比が、新選組の魅力の一つです。
この作品では、土方にスポットライトを当て、彼の考えや苦悩を克明に描いています。作品全体としては土方を好戦的な人物として描きますが、芸術を嗜んだり女性にアプローチをかけたりする様子も描写することで、彼の人間としての魅力を最大限に引き出しています。
新撰組ファンにはぜひ一度読んで欲しい一冊です。
舞台は清朝の中国。当時、清王朝の力が弱まり、諸外国の侵略を受けた中国は疲弊しきった状態でした。そんな状況の中、李春雲は家族のため宦官になって西太后に仕えるようになりました。時を同じくして、彼の義兄弟である梁文秀は、当時の国家試験であった科挙に合格し、役人としての人生を歩み始めることになります。
その頃の清朝は派閥が真っ二つに別れて、政治を動かしていた西太后を主軸とする后党と、当時の皇帝・光緒帝の直接統治を実現しようとする帝党が激しく覇権争いをしていました。
そんな状況の中、義兄弟であった李春雲と梁文秀はそれぞれ后党と帝党に分かれてしまいます。激しい内部対立によって滅亡に向かっていく清朝の中で、懸命に生きる二人の姿が描かれた作品です。
- 著者
- 浅田 次郎
- 出版日
- 2004-10-15
滅亡直前の清朝が舞台の小説です。厳密には日本人もかかわっていますが、基本的に中国国内の話です。
この頃の中国は、アヘン戦争の敗戦などで国力がないに等しく、諸外国に好き放題されている状態でした。このような状態にもかかわらず、国内では権力争いが行われる体たらくです。
そんな絶望的な状況の中、国民はただその日を生きるためだけに必死になっていました。主人公の李春雲と梁文秀もそうです。
そのような状況の中にあっては、友情や愛などといったことを言っている余裕はありません。たとえ友であっても、敵に回ってしまえば倒すよりほかないです。そんな悲しい定めの二人の物語を、ぜひ読んでみてください。
大阪にある寒天問屋「井川屋」の主人・和助は仇討の場面に出くわします。建武玄武という男が、彦阪数馬という男を斬り、それを数馬の息子・鶴乃輔が守ろうとします。
その様子を見かねた和助は、玄武に銀2貫を納めさせることで、仇討を「買い取り」ました。その後数馬は死んでしまいますが、鶴乃輔を和助が引き取ることになりました。
こうして鶴乃輔は、井川屋で働くことになり、名前も松吉と変え生きていくことになります。この作品は、そんな松吉の数奇な人生を描いた物語です。
- 著者
- 高田 郁
- 出版日
- 2010-08-05
2014年にNHKで連続ドラマ化され、2015年には宝塚歌劇団によって舞台化されました。さらに、2017年には松竹によって舞台化されました。
物語はひとりの男の仇討から始まります。最初はなにも関係のないただのエピソードのように思えるこの部分ですが、後の展開でかなり重要な要素です。
ひょんなことから井川屋で働くことになった主人公・松吉の人生は困難の連続であり、自分だったら心が折れてしまうと思わずにはいられません。父が仇討で殺され、済んだところはことあるごとに火事に見舞われてしまう……。
そんな逆境の中でも、松吉は決して諦めることなく前向きに生きようとします。そんな中で、自分は周りの人間に助けられていることに気づき、感謝の気持ちを忘れようとしない彼の姿に心打たれ、感動すること間違いなしです。松吉がどう成長していくのかも注目です。
本書から、江戸に生きる庶民のリアルな生活を感じとってみてください。
本当に面白いと言える時代小説を5つご紹介しました。どの作品も文庫本としては少し長いものばかりですが、それを感じさせないほどサクサク読めて、本当にあっという間に時間が経ってしまいます。ぜひ一度読んでみてください。