サン=テグジュペリが書き下ろした小説『星の王子さま』。1943年にアメリカで出版されて以来世界各国で翻訳され、子どもはもちろん様々な解釈ができる奥の深い小説として大人にも愛されています。今回は出会いの1冊としておすすめの絵本をご紹介します。
原作の魅力を凝縮し、子どもが理解しやすい言葉で描いた作品です。サン=テグジュペリが描いた、見る者の心にすっと入ってくる優しい挿絵も原作よりも大きく描かれているので、子どもにも親しみやすいですよ。
登場人物はパイロットの僕と小さな王子さま、そしてそれぞれの星に住む少し変わった大人たち。
ある日、飛行機が故障して砂漠に不時着した僕は、一人の男の子に出会います。突然、ひつじの絵を描いてほしいと言う男の子。これが僕と王子さまの出会いでした。
毎日バオバブの芽が出ていないかを見て回り、寂しくなると夕日を見て、綺麗な花の世話をしながら小さな惑星で暮らしていた王子さま。そして、たくさんの星を旅しながら地球にやってきたと言うのです。
彼が語るそれぞれの星の住人は皆変わった大人ばかり。命令好きな王様に星の計算ばかりしているビジネスマン、小さな星で1分ごとにガス灯を点けたり消したりしている点灯夫に、自分の星の地理を何も知らない地理学者。
そんな大人達に驚きながらも地球にやってきた王子さまが出会ったのは、ヘビやバラにきつね。それに、飛行士の僕。偶然出会った僕と王子さまは、次第に仲良くなっていきます。しかし、王子さまには自分の星に帰る日が近付いていたのです。
仲良くなった2人にやってきた別れ。王子さまが僕に残していった思いとは……。
- 著者
- アントワーヌ・ド サン=テグジュペリ
- 出版日
- 2006-10-26
サン=テグジュペリが描いた『星の王子さま』は児童文学と称されている小説。大人が読んでも様々な解釈ができるストーリーは子どもにとっては難しい言い回しもあり、ある程度の年齢にならないと読み辛い部分があるのも事実です。しかし、幼い頃に読むからこそ純粋な気持ちで感じられるのもまた事実。
そんな時に、子ども達にも分かりやすい言葉で魅力を凝縮して描いたこの絵本は子どもが初めて読む『星の王子さま』としてぴったりです。
星の王子さまが語る、滑稽とも思える大人達との出会い。そして僕と王子さまの交流を通して、子ども達は多くの事を感じ取ることでしょう。きっとその時に感じた思いは子ども達の宝物になるはずです。
シンプルで子どもに語り掛けるように綴られる文章の一つひとつが優しさに溢れた作品です。
小さな王子さまが住んでいる星のこと、その星を出ようと思ったきっかけ、そして色々な星の住人との出会い。それから、友達になることについて学んだ地球での出来事。原作の中でも子どもにも分かりやすい章を抜粋して、詩人である訳者工藤直子の言葉で綴った物語は題名の通り『星の王子さま』と出会う絵本をして最適です。
それぞれの挿絵の下に、呟くように書かれた一言が子どもへのメッセージの様にも感じます。幼稚園くらいからの子どもでも十分に楽しめますので、ぜひゆっくりと読んであげてくださいね。
- 著者
- サン・テグジュペリ
- 出版日
- 2015-11-16
原作に登場するパイロットの僕や地球で出会うヘビは登場しませんし、一目で分かるハッピーエンドの終わり方は原作を知っている大人には物足りなく感じるかもしれません。
しかし、幼い子どものために描かれたこの作品は、『星の王子さま』という名作に触れるきっかけ作りにはぴったりの絵本であることは間違いありません。どんな名作も年齢や興味に見合っていなければ、途中で飽きてしまいます。
まずは興味を持って読み進めることから。そして、大きくなった時に子どもの頃に読んでもらった記憶から、原作の物語にも手を伸ばすことができるはずです。幼い頃から名作に触れるきっかけを作ってあげたいですね。
小さな子どもでも持ちやすい小さなボードブックの絵本です。
『ぼくはおうじさま』『ぼくのおともだち』『おうじさまのいちにち』『おうじさまの1・2・3』の4冊セットになっていて、それぞれ『星の王子さま』に登場する絵にシンプルな言葉が描かれています。
『ぼくのおうじさま』は、星の王子さまと暮らしている星についての紹介。『ぼくのおともだち』は王子さまのお友達がそれぞれタグ付きで紹介されています。『おうじさまのいちにち』は王子さまが暮らす星での1日を描いたお話。『おうじさまの1・2・3』は原作の絵の中で数を数えながら楽しめる作品を掲載し、最後のページは仕掛け絵本になっています。
- 著者
- 出版日
- 2000-11-15
それぞれのページに綴られる文章は、ほんの一言ですが原作の一場面を凝縮して表しているので、赤ちゃんに読んであげながらも大人も楽しめますよ。
原作に描かれている柔らかな絵は全てそのまま描かれ、赤ちゃんに優しく語り掛けます。子どもの小さな手でも持ちやすい大きさ、破けにくい厚紙で作られていますので、自分でページをめくれるようになったら何度もめくりながらお気に入りのページを探してみても楽しいですね。また、子どもが大好きな仕掛けも魅力の1つです。
ぜひ、星の王子さまと親子で仲良くなってみてくださいね。
ページを開くと渡り鳥に掴まって飛んで行く王子さまが飛び出してきて目を奪われます。ページをめくるごとに、『星の王子さま』の世界が飛び出して来るような感覚に陥る仕掛けの数々には思わずため息が出るほど。
星を覆う大きなバオバブの木や火山を掃除する王子さまが絵本の中から飛び出し、パイロットのぼくが書いた象を飲み込んだヘビの絵はめくる仕掛け。原作を読んだことのある読者にとっては、仕掛けの絵を見ているだけでストーリーが頭の中で語られるような気持ちになります。
もちろん初めて読む読者も大丈夫。原作に忠実に翻訳された物語が描かれていますので、内容を楽しみ、仕掛けを楽しみ何度でも読みたくなる作品です。
- 著者
- アントワーヌ・ド・サンテグジュペリ
- 出版日
- 2016-10-13
日本でも美術館があるほど、サン=テグジュペリが描いた『星の王子さま』の世界観は多くの人に愛されているので、物語は読んだことがなくても絵を見たことがあるという方もいるのではないでしょうか?
平面の絵でも十分に魅力的な『星の王子さま』。その世界が立体的な仕掛け絵本として作り上げられてことによって魅力は倍増。見ているだけで、物語の中に入り込んだ様な気持ちになれます。絵や美しい仕掛けから物語の魅力を感じ、ストーリーを楽しむきっかけとなる作品でもありますね。
ぜひ1人でじっくりと、そして大切な人へのプレゼントとしてもおすすめの1冊です。
出版から70年以上経った今でも、多くの読者に愛され続けている名作『星の王子さま』。その原作の魅力をギュッと凝縮した絵本は、子ども達が名作に出会うきっかけとして、また大人が作品の世界に浸る1冊として最適です。子どもの年齢や興味に合わせて絵本を選ぶこともできますので、ぜひお気に入りの1冊を見つけてみてくださいね。きっと子ども達の心に生き続けるはずですよ。