少し前の時代が舞台のノスタルジックな3冊【橋本淳】

更新:2021.12.21

どうも橋本淳です。いきなり気温もあがり、いきなりな夕立が来る季節になりましたね。さて、そんな季節とは関係なくこちらのテーマでご案内。

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今月は、現代社会から離れ、少し前の時代が舞台の作品をご紹介。
昭和であったり、少しほんわかとノスタルジックな雰囲気や、刺激的な作品を読むことで日頃の世界からぱっとトリップしてみては如何でしょう。

ワタクシ橋本は、今月より始まります舞台『君が人生の時』、

http://www.nntt.jac.go.jp/play/performance/16_007982.html

こちらの稽古を毎日しております。この作品の舞台が1939年のアメリカが舞台、第二次世界大戦の時代です。そういうこともあり、現代から少し離れた作品たちを紹介したくなったのだと、自己分析です。
それでは、どうぞ。

「風の歌を聴け」

著者
村上 春樹
出版日

1970年の夏、海辺の町に帰省した僕は、友人の鼠とビールを飲み、介抱した女の子と親しくなって、退屈な時を送る。村上春樹のデビュー作にして、群像新人賞受賞作。

“完璧な文章などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね”

この一文から始まるこの作品。詩的な運びのなかにも、それぞれの人物の存在感が大きく、グングン引き込まれる。至る所に散りばめられた伏線を探りながらどんどん潜っていく。果たしてこの解釈であっているのか、はたまた違うのか。読むタイミングが違えばまた違う読み方が出来る奥深い作品です。僕は、読後、また頭に戻り、すぐに二巡目に入りました。
気になることが多い。贅沢な一冊。

心に刺さった一節
”あらゆるものは通りすぎる。誰にもそれを捉えることはできない。僕たちはそんな風にして生きている”

「悦ちゃん」

著者
獅子 文六
出版日
2015-12-09

悦ちゃんは、お転婆でおませな10歳の女の子。父 柳碌太郎のことを「碌さん」と呼ぶもんだから悦ちゃんは相当なおませぶり。碌太郎は売れないレコードの作詞家、いつもフラフラとのんびりとしている。母親は早くに亡くしていた。そんなところに突如、再婚話が持ち上がったことから物語が動き出す。東京中を奔走し、周りを巻き込み最後には大事件。

獅子文六のユーモアに満ちた初期作。
こましゃくれた悦ちゃんとのんびり屋の碌さんのコンビが堪らなく愛おしい。テンポ感もあり、どんどん先へ先へと進む作品。懐かしい……といっても僕自身経験した時代ではないですが、なんだかノスタルジックな暖かい気持ちになりました。

7月からはNHKでドラマとして放送が始まります。NHK時代ドラマ「悦ちゃん」、7月15日スタート。

http://www.nhk.or.jp/jidaigeki/etchan/

(はい、こちらに私出演します。原作にも登場します人物として)
宣伝が横入りしましたが……小説、ドラマ共に、ぜひお勧めいたします。

心に刺さった一節
“毒矢が肉に刺さったように、いつまでも痛みが残るのである”

「限りなく透明に近いブルー」

著者
村上 龍
出版日
2009-04-15

米軍基地の街、福生の一室に集まる若者たち。そこでは音楽に彩られながらドラッグとセックスと嬌声が満ちていた。そんな退廃の向こうには、空虚さを越えた希望がきらめく。言わずと知れた有名小説ですね。

この作品でデビューし、同時に群像新人賞と芥川賞を受賞されました。
兎にも角にも描写が凄い。その生々しさに驚きます、本を読んでいると言うより、映画が目の前で繰り広げられている感覚に(過去にこの作品は映画化もされています)。
“僕”が常に客観的にみているのもポイントです。そしてこのタイトルも見事で、読み進めていくとなるほどと、んんん、と低い声が思わず出てしましました。

心に刺さった一節
“そういう輝く自分は沈んでいく美しいオレンジの光とも仲良くできるのだと思った”

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