ハードボイルド文庫小説おすすめ12選!日本作家を厳選

更新:2021.12.21

スリリングなストーリーにハラハラしたり、主人公の魅力に惹きつけられたりと、面白いハードボイルド小説には心底わくわくさせられますね。ここでは、己の信念を曲げずに闘う男たちがかっこいい、おすすめの作品をご紹介していきましょう。

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世界観に酔いしれる王道ハードボイルド小説!

神奈川県の横須賀・横浜、そして米軍基地を舞台として、大きな事件に巻き込まれていく主人公の姿を描いた長編小説『THE WRONG GOODBAY ロング・グッドバイ』。本作は、矢作俊彦によって執筆されました。

著者
矢作 俊彦
出版日

神奈川県警の刑事である主人公の二村永爾は、ある日の仕事帰り、どぶ板通りの裏路地で、明るく陽気な酔っ払いビリーと出会います。一緒に酒を飲んでいたところ、「夜間飛行をしなければいけないので車で送ってほしい」と言うビリー。

その頼みを受け入れ、彼を米軍キャンプまで送り届けた二村でしたが、ビリーはそれっきり消息を絶ってしまいます。

後日、ビリーの車から女性の遺体が発見されました。殺人事件の重要参考人となる、ビリーの逃走を助けたと疑われた二村は、捜査一課から外され閉職に異動となります。

そんな中、国際的に活躍する美人ヴァイオリニスト、アイリーン・スーの義母が失踪。二村は、横須賀署の先輩刑事から、彼女を捜索してほしいと頼まれるのですが……。

この作品は、アメリカの作家レイモンド・チャンドラーのハードボイルド小説『ロング・グッドバイ』を下敷きとして描かれています。

登場人物たちの魅力的なセリフの数々や、自分を信じて淡々と事件に立ち向かう主人公の姿がとてもかっこよく、王道とも言えるようなハードボイルドの世界観に、無性に惹きつけられてしまうでしょう。

横須賀や横浜の街並みが丁寧に描写されており、風景を思い浮かべながら読むことができる作品です。やがて2つの事件が複雑に絡み合い、様々な真実が明らかになっていく様子から目が離せなくなっていきます。

作品全体には、どこかノスタルジックな哀愁のようなものも漂い、その空気感に酔いしれながら読むことができる、素敵な1冊になっています。
 

手に汗握る展開にドキドキが止まらない大ヒット小説

真保裕一によるベストセラー小説『ホワイトアウト』は、ダムを占拠したテロリストたちから人質を救うべく、単身立ち向かっていく男の姿を描いたアクション・サスペンスです。映画化もされたことでたいへん話題になりました。

著者
真保 裕一
出版日
1998-08-28

真保裕一によるベストセラー小説『ホワイトアウト』は、ダムを占拠したテロリストたちから人質を救うべく、単身立ち向かっていく男の姿を描いたアクション・サスペンスです。映画化もされたことでたいへん話題になりました。

主人公の富樫輝男は、日本最大の貯水量を誇る「奥遠和ダム」の運転員。11月のある日、同じ職場に勤める親友の吉岡和志とともに、遭難した登山者の救助に向かいました。

ですが、その途中ホワイトアウトに巻き込まれてしまい、足に怪我を負った吉岡は死亡してしまいます。「ホワイトアウト」とは、吹雪などによって視界が白一色となり、平衡感覚を失ってしまう現象のことです。

富樫が後悔の念に駆られる中、吉岡の婚約者だった女性、平川千晶が奥遠和ダムを訪れました。そしてちょうどその時、武装したテロリスト集団「赤い月」がダムを占拠し、ダムの職員と千晶は人質にされてしまいます。

「赤い月」は、政府に身代金50億円を要求。1人拘束から逃れた富樫は、極寒の雪山に孤立するダムで、職員や千晶を救い出すため、テロリストたちに立ち向かっていくのです。

心理描写や情景描写が細かく丁寧に綴られているため、緊張感がひしひしと伝わってくる作品です。テンポも良いので、1度読み出したら止まらなくなってしまうことでしょう。

ダムに関するあらゆることを熟知した主人公と、テロリストとの手に汗握る攻防にはハラハラさせられます。そして仲間と、親友の愛した女性を命がけで守ろうとする強い思いに心を打たれるのです。

加えて主人公には、自然の脅威が容赦なく襲いかかります。雪山の過酷さがこれでもかとリアルに描かれ、寒さ、冷たさ、痛みまでもがこちらにも鮮明に伝わってくるようです。

大自然を前にして人間の無力さを痛感してしまいますが、決して諦めることのない主人公の精神力の強さに驚嘆するばかり。圧倒的スケールで描かれた、壮大なハードボイルド小説を、ぜひ堪能してみてくださいね。
 

それぞれの人生が濃密に描かれた重厚な1冊

史上初となる、江戸川乱歩賞と直木賞のダブル受賞を果たした、藤原伊織による『テロリストのパラソル』は、多くの被害者を出した爆破事件の真相を追う主人公の姿や、様々な登場人物たちの交差する人間ドラマを描き出した、ハードボイルド小説です。

著者
藤原 伊織
出版日
2014-11-07

バーの雇われマスターを勤める主人公の島村圭介は、晴れた日には、公園で酒を飲むのが習慣になっています。重度のアルコール中毒のため、震える手でウイスキーを飲みながら、近づいてきた小さな女の子と少し話をしました。

その後、島村がウトウトとしていると、突如公園に爆発音が響きます。爆発に巻き込まれた多くの人たちが倒れ、辺りが激しい混乱に陥る中、島村は先ほどの女の子を助け出した後、その場を去りました。

彼は過去のある出来事が原因で、名前を変えひっそりと隠れて生きてきたのです。警察に居場所を知られるわけにはいかないのですが、公園に指紋のついたウイスキーの瓶を置き忘れてきたことに気がつきました。

指紋が採取されれば、警察は疑いの目を自分に向けてくるかもしれません。そんなとき、1人の若い女性が現れたことをきっかけに、島村は消していた過去と向き合い、事件の真相を追っていくことになります。

過去に主人公が関わった事件と、公園の爆破事件が、徐々に交差していくストーリー展開はとても読み応えがあり、周りを固める登場人物たちもとても魅力的に描かれています。

知的で行動力のあるヒロインの塔子、何かと助け船を出してくれるヤクザの浅井、そして悪人たちでさえどこか清々しさが漂い、読んでいてなんとも言えない爽快感を感じる作品です。

アルコール中毒の中年男性が主人公という斬新な設定ですが、何があっても、淡々とのんびりした様子で真相を追っていく姿は、独特の魅力があり好感が持てるでしょう。

小気味の良いセリフの応酬にも引き込まれ、展開もスピーディーなので一気に読めてしまいます。それぞれの人生が色濃く描き出された世界観に、魅了される傑作です。
 

孤高の主人公が巨大組織に立ち向かうスリル満点の物語

『追いつめる』は、神戸を舞台に、巨大な組織に立ち向かう男の執念の戦いを描いた1冊です。ハードボイルド小説の先駆者とも言われている作家、生島治郎によって執筆された作品で、直木賞を受賞しました。 

追いつめる

生島 治朗
光文社文庫

主人公の志田司郎は、兵庫県警の刑事です。神戸を拠点として、日本中に勢力を広げようとする暴力団組織「浜内組」を撲滅するべく操作を続けてきた結果、企業舎弟(暴力団の資金獲得用の企業・従業員)である会社の社長、青谷の尻尾を捉えました。

ところが、同僚の刑事とともに事務所に乗り込んだ際、志田は同僚の刑事を誤射してしまいます。

警察を辞職し、妻子とも別れ、全てを失い孤独な生活を送る志田は、たった1人で巨大な組織に立ち向かうことを心に誓い、命がけの戦いに挑んでいくのでした。

1967年に執筆された作品ですが、スリル満点のストーリー展開は、今読んでも十分に面白く、哀愁漂う一匹狼として戦う主人公の姿が、たまらなくかっこよく感じてしまいます。

暴力団組織の仕組みや、警察内部の腐敗した様子など興味深く読むことができ、リアリティーのある世界観に惹きつけられることでしょう。

裏切りや妨害に屈することなく、自分のモラルを貫いていく生き様に熱いものがこみ上げる、男のロマンが凝縮された作品です。

多くの作家に影響を与えたであろう、ハードボイルド小説の原点を見て取れるこの名作に、1度触れてみてはいかがでしょうか。
 

傑作ハードボイルド小説!ダークヒーローを生み出した作品

金と武器、そして己の力のみを信じ、完全犯罪を遂行していく主人公の姿を綴る、大藪春彦による『野獣死すべし』。デビュー作となった表題作の他、シリーズ作品となる『復讐編』『渡米編』が収録された作品です。

著者
大薮 春彦
出版日

敗戦によって満州からの引き揚げ者となった伊達邦彦は、戦争によって心に傷を負い、何も信じることができなくなっていました。容姿端麗で頭脳明晰。一見物静かにも見える彼の内側には、怒りや憎悪が渦巻いていたのです。

大学時代に、緻密な完全犯罪を計画してきた邦彦は、心の闇と類稀なる能力を解放させ、計画を実行に移します。仕事帰りの警官を殺害し、拳銃と警察手帳を奪った邦彦は「野獣」と化し、復讐のため破壊と殺戮の人生をスタートさせたのです。

なんと言っても、孤高のダークヒーロー伊達邦彦の魅力が随所で綴られ、その姿から目が離せなくなる作品です。

戦争の過酷さや戦後の混乱についても読むことができ、ぶつけようのない怒りや虚無感を抱えた主人公が、野獣のように行動を起こすまでの心情が、熱を帯びたような文体で切々と描かれています。

1958年に、第1作目となる『野獣死すべし』が発表されて以降、伊達邦彦を主人公として数々のシリーズ作品が生み出されてきました。当時としては、かなりセンセーショナルなキャラクターだったのではないでしょうか。時を経て、今もなおたくさんの読者から愛される名作です。
 

二転三転するストーリー展開から目が離せない

新宿で起きた爆発事件を皮切りに、殺し屋「百舌」や刑事たちの姿を、緻密な構成で描き出す『百舌の叫ぶ夜』。1986年逢坂剛によって執筆された本作は、「百舌シリーズ」の第1作目となる作品です。

ドラマ化されたことでも話題になり、2014年改訂新版が刊行されました。
 

著者
逢坂 剛
出版日
2014-03-20

たくさんの人たちが行き交う新宿の街で、爆発事件が発生しました。爆弾を持っていたのはフリーライターの筧俊三。

爆発が起きたその時、警視庁公安部の公安第3課巡査部長を務める明星美希は、殺し屋の新谷和彦を尾行していました。そして新谷は、暴力団組織の豊明興業から筧の殺害を依頼され、後をつけ殺害の機会を伺っていたところだったのです。

一方、公安刑事の倉木尚武は、妻の珠枝が爆弾事件に巻き込まれ、死亡したことを告げられます。私情が交じることを避けるため、事件の捜査から外された倉木でしたが、独自に爆発事件の捜査に乗り出すのでした。

公安の倉木と明星、捜査一課の大杉、そして新谷和彦を中心に、視点や時間軸を次々と変えながらストーリーは進んでいきます。徐々に物語の全容が見え出す、圧巻の構成力にわくわくさせられ、一気に物語の世界へと引き込まれてしまうでしょう。

警察組織の巨大な陰謀にも踏み込むことになり、二転三転する息もつかせぬ展開に夢中になってしまう作品です。

ハードボイルドな登場人物たちが続々と現れ、それぞれの秘められた過去や闇が明かされていきますが、どのキャラクターもとても魅力的に描かれています。

ハードボイルド小説が好きな方だけでなく、ミステリーやサスペンスが好きな方なら存分に楽しめる1冊となること間違いなしです。
 

平凡な会社員が変わっていく、ハードボイルド小説

北方謙三によって執筆された『擬態』は、ごく普通のサラリーマンだった男が、鍛え上げた肉体を武器に、平凡だった日々を壊していくハードボイルド小説です。

著者
北方 謙三
出版日

主人公の立原章司は40歳の会社員。4年前に妻と離婚したことをきっかけに、ふと「身体の中で何かが止まった」感覚に陥ります。立原はそれからボクシングジムに通うようになり、身体を鍛え上げ日々強くなっていきました。

内側で眠っていた本来の自分が目覚めようとする中、立原はビルの立ち退きを巡るトラブルに巻き込まれ、このことをきっかけに、凶器と化した肉体と精神力を武器にして、暴力団との抗争へと飛び込んでいくことになるのです。

何気ない日常を送っていた主人公が、どんどん自分を解放させ変わっていく様子には、思わずドキドキさせられてしまいます。ボクシングや暴力シーンには興奮してしまうような迫力があり、警察までが絡んでくるようになってから、物語は俄然面白くなっていくのです。

今までの自分を壊したい、変わりたいと思ったことのある方には、たまらない作品となるのではないでしょうか。主人公がなぜこんな行動をとったのか、明確な理由がないことにも逆にリアリティーを感じてしまいます。

読み応え十分の作品ですから、気になった方はぜひ読んでみてくださいね。
 

個人が国家に立ち向かう極上ハードボイルド小説

志水辰夫のデビュー作である『飢えて狼』は、ソ連とアメリカによる、熾烈な暗闘に巻き込まれた男の、孤独な戦いを描いた作品です。

著者
志水 辰夫
出版日

かつて有名な登山家であった主人公の渋谷は、今では三浦半島で小さなボート屋を経営しています。恋人の順子は、渋谷との登攀中に死んでしまった登山仲間、高梨の元恋人だった女性で、彼は今でも高梨が死んだことを引きずりながら、静かに穏やかに暮らしていたのです。

ところがある日、2人の怪しい男たちが現れたことをきっかけに、平和な日々が一変します。ボートで夜の海に出たところを正体不明の大型船に襲撃され、気付けば自分のボート屋も炎上していました。

従業員の北原までもが殺害され、渋谷は失意に襲われます。ですがそんな彼の元に、ある依頼が舞い込んできて……。

物語は3部構成になっています。切なげな哀愁を漂わせつつ、自らの持つ能力を最大限発揮して困難に立ち向かう主人公の姿はまさにハードボイルド。

1981年に執筆された作品で、今では世界情勢も変化していますが、リズムの良い熱い文体に引き込まれ、古さを全く感じることなく読むことができるでしょう。

たった1人で国家に立ち向かっていく、スリル満点の壮大なストーリー展開は興奮必至。緊迫感漂うシーンの連続に、ページをめくる手が止まらなくなってしまいます。

ソ連軍が主人公を執拗に狙う本当の理由はなんなのか。最後まで目が離せない、極上のサスペンスにもなっているおすすめの作品です。
 

スピード感たっぷりの攻防戦が魅力的な人気小説

渋谷の街を舞台に、ストリートギャングと強盗犯、そして暴力団も加わった、大金を巡る激しい攻防を描く『ヒートアイランド』。垣根涼介によって執筆された本書は、後にシリーズ化や映画化もされた人気作品です。

著者
垣根 涼介
出版日

渋谷のストリートギャング達を束ねる組織「雅」を結成し、ファイトパーティーを開催することで金を稼いでいるアキとカオルは、ある日、仲間が持ち帰ってきた鞄の中身を見て驚愕します。

ふとしたトラブルからケンカになり、男を暴行して奪い取ったと言うその鞄の中には、大量の現金が入っていたのです。

実は仲間が襲った男は、政治家や暴力団の裏金を狙う強盗グループの一員であり、その金は暴力団が経営する裏カジノから奪ったものでした。

こうして、金を取り戻したい強盗グループ、金を奪われ憤慨する暴力団「松谷組」に、ある計画を目論むもう1つの暴力団「光栄商事」、そしてアキとカオルが仕切る「雅」による壮絶な攻防戦が幕を開けることになりました。

様々な駆け引きを繰り広げながら、物語は疾走感たっぷりに展開されていきます。僅か数日間の内に起こったスリリングな出来事が濃密に綴られ、最後までまったく飽きることなく読み進めることができるでしょう。

主人公のアキとカオルの魅力もさることながら、緻密な計画を立て、スマートに金を奪う強盗グループもとても魅力的。それぞれに存在感を発揮し、練りに練られたストーリーをどんどん盛り上げていきます。

めまぐるしく状況が変わり、先の読めない闘いが繰り広げられる中、知力と体力の全てを賭けた、命がけの闘いを制するのは誰なのか。ラストには爽やかな読後感を味わえるこの作品を、ぜひ一読していただければと思います。
 

無謀な計画に挑む型破りな3人組に惹かれる作品

黒川博行の『迅雷』は、ヤクザの幹部を誘拐して身代金を奪うという無謀な計画に挑んでいく、3人の男の姿を描いた痛快ハードボイルド小説です。

著者
黒川 博行
出版日
2005-05-01

工場の鉄屑を回収して回る「ダライコ屋」をしている友永章一は、交通事故に遭い全治1ヶ月の重症を負いました。

それまで曲がりなりにも真面目に働いていた友永でしたが、入院先で同じ病室にいた稲垣という男から、とんでもない誘いを受けたことで、人生が変わります。

「極道は被害届を出さない」という理由から、ヤクザを拉致して身代金をせしめるという、大胆不敵な考えを思いついた稲垣。そしてそんな稲垣といつも行動を共にする、拳法の達人ケン。

この2人に友永が加わり、3人はこの危険すぎる「儲け話」を実行していくことになるのです。

登場人物たちのテンポの良い関西弁での会話は、読んでいてとても気持ちが良く、笑いを誘うようなセリフが随所に散りばめられているため、つい楽しくなり時間を忘れて読み耽ってしまうはず。

面子を掛けて追ってくるヤクザたちとの駆け引きは、臨場感たっぷりでとても読み応えがあります。

めちゃくちゃなことを言っていても、頭の回転が速い稲垣がとても印象深く、人付き合いの嫌いだった友永が徐々に変わっていく様子には、微笑ましさを感じてしまうことでしょう。

登場人物は悪党ばかり。それでも不思議と嫌悪感を感じることはなく、爽やかな読後感に浸れる、後味の良い魅力的な作品になっています。
 

殺し屋たちの苦悩を描く

復讐を横取りされた男・鈴木、仕事で殺してきた人々の霊に苦しめられる自殺専門の殺し屋・鯨、名を上げるべく奔走するナイフ使いの若き殺し屋・蝉が、押し屋と呼ばれる殺し屋を追う「殺し屋」小説。

主人公である平凡なサラリーマン鈴木の妻が、突然殺されてしまうことから物語が始まります。復讐を誓った鈴木は、平凡だった日常を捨て、裏社会にその身一つで飛び込んでいくのです。しかし、妻を殺した犯人は押し屋と呼ばれる殺し屋に殺されてしまいます。鈴木は上司の命令で押し屋を追いかけますが、さらにまったく違う思惑で別の殺し屋達が押し屋を追い、交わることのなかったはずの3人が交わり、物語は予想をはるかに上回る展開を迎えることに。

著者
伊坂 幸太郎
出版日
2007-06-23

鈴木はとりわけ強いわけでもなく、私たちの身近にいるような男。そんな彼の目線で語られるストーリーを読んでいると、読者自身も裏世界に入り込んでいくような感覚に陥れます。また、各々苦悩を抱える殺し屋の鯨や蝉の視点で語られる場面もあり、三者三様の、全く世界観の違う視点で同じ人物を追っていくこの物語は、最初から最後まで疾走感溢れ、一気に読みたくなる小説です。

人生は何度でもやり直せる

主人公、城見は、父親が経営していたスーパーの粉飾決済によって服役していました。それが原因で妻と別れ、服役後に唯一残されていたバッティングセンターを経営しています。

ある日、服役中に知り合った仲間に銀座のバーに呼びつけられるのです。そこから彼はたくさんの事件に巻き込まれていきます。

著者
藤田宜永
出版日
2012-11-15

 

主人公は、父親から譲り受けた会社をなんとか保とうとして、粉飾決算に手を出してしまった、城見という50歳のおじさんです。妻から別れを告げられ、子どもからは恨まれていました。

古いバッティングセンターには様々な人が集まってきます。主人公はその生活に満足しながら、そして集まってくる客や古い知り合いの様子を見ながら、人生をやり直していくのです。

50歳の男性で、お金も無くて家族もいなくて、ただバッティングセンターがある、という状況だけでも、哀愁漂うリアルさを感じることでしょう。悲しい話かと感じますが、それは違うと分かるはずです。主人公の温かい人柄から、トラブルに見舞われるたびに思わず「がんばれ!」と声をかけたくなってしまうでしょう。

昔は頑張ってきた人だからこそ、こんな第二の人生があってもいいな、と思える作品です。

 

おすすめのハードボイルド小説をご紹介しました。どの作品の主人公もとてもかっこよく、闘う男たちの姿に心惹かれてしまいます。興味のある本があれば、ぜひ読んでみてくださいね。

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