ジャングルの近くに住むちびくろ・さんぼの身の回りでは色々な事件が起こります。今回は有名な1作目の『ちびくろ・さんぼ』をはじめ、続編も合わせて紹介しています。どの物語もドキドキする展開が待っていますので、楽しみながら読んでみませんか。
『ちびくろ・さんぼ』は約100年以上前にヘレン・バンナーマンによって書かれた子供向けの物語です。彼女はイギリスの植民地だったインドの奥地で、伝染病予防の仕事を夫ともにしていましたが、夏の暑さに慣れない自分の子どもたちを、夏の間だけ別の所で生活をさせていました。離れて暮らす子どもたちのために絵手紙を送り、時には手作りの絵本も作って送っていました。その中の1つが『ちびくろ・さんぼ』です。
イギリスで発売されて以来世界中で翻訳された『ちびくろ・さんぼ』ですが、日本では1988年から始まった黒人差別の抗議を受け、絶版されてしまいました。
その後1999年に灘本昌久翻訳により、初版と同じ装丁と内容で『ちびくろさんぼのおはなし』が復刊されました。灘本は同じ年に『ちびくろサンボよ すこやかによみがえれ』という差別についての本も出版し『ちびくろ・さんぼ』の物語をフォローしました。
そしてついに2005年、17年ぶりに『ちびくろ・さんぼ』がシリーズで復活。再び子どもたちの心を楽しませてくれる物語として、語り継がれる物語となりました。
お母さんに作ってもらった服を着て、お父さんが市場で買ってきてくれた靴を履き、傘をもってジャングルへ散歩に出かけたさんぼ。
しかしジャングルに行くとトラが出てきて、さんぼを食べようとします。さんぼは自分の身の代わりに、お母さんに作ってもらった服をトラに渡しますが、この後もジャングルではトラが次々に出てきて身に着けていたものをすべてとられてしまいます。
- 著者
- ヘレン・バンナーマン
- 出版日
- 2005-04-15
さんぼはとうとう自分がトラに食べられてしまうと思いますが、トラたちはさんぼにもらった服や靴、傘を身に着けたトラはそれぞれ自分がジャングルで一番立派だ!とケンカがはじまっていました。
そのうちトラはさんぼから取り上げた服などを脱ぎだし、木の周りを回り始めました。さんぼがトラに声をかけても耳に入らない様子でぐるぐる回りだし最後には溶けてバターになってしまいます。
大人の方ならご存知の方も多いこの物語。瑞雲舎出版の絵本では赤、黄、緑を中心にした色鮮やかなはっきりとした挿絵が使われており、さんぼの住む暑い国を想像させます。
『ちびくろ・さんぼ』より先に、1999年には初版から100周年を記念して径出版から手のひらサイズの『ちびくろさんぼのおはなし』も出版されました。こちらは、作者のヘレン・バンナーマンが挿絵を描いており、女性らしいタッチの絵は表情も豊かで可愛らしさも感じます。ぜひ『ちびくろさんぼのおはなし』も手に読んでみてください。
『ちびくろ・さんぼ2』ではさんぼに可愛い双子の弟が生まれます。さんぼは弟たちを「うーふ」と「むーふ」と名付けとても可愛がり、2人の誕生日にさんぼはプレゼントを渡しました。1度目の誕生日にはミルクを飲む入れ物、2度目の誕生日にはうーふに赤いおび、むーふに青いおびを腰に巻いてやりました。
ある日さんぼは、お母さんから晩のごちそうに、羊の肉を焼くためのたきぎをジャングルへ取りに行くように言われ、弟たちを残して出かけます。そこに家の近くの高いヤシの木のはやしに住んでいた悪いサルたちがやって来て、さんぼの弟2人をさらってしまい……。
- 著者
- ヘレン・バンナーマン
- 出版日
- 2005-09-10
ジャングルから帰ってきたさんぼは、可愛がっていた弟たちがさらわれたことを知り、お母さんと一緒にヤシの木のはやしへ弟たちを探しに出かけます。
あっちの木、こっちの木を見上げながら弟たちを探しますが、なかなか見つかりません。そうこうしていると、木の下にさんぼが弟たちの誕生日にプレゼントをした入れ物を見つけます。そして木の上からぽたり、と大きい涙が落ちてきました。
しかしヤシの木はとても高くて、足をかけて登れそうな枝もありません。さんぼは、家から長い釘と金づちを持ってきて打ちつけますが、空に近くなるほど細くなるので途中で上れなくなってしまいます。
長い釘と金づちを持ってきたさんぼの発想力のすごさを感じ、これで助けられると期待感が高まる場面ですが、残念ながら助けだすことはできませんでした。
この後、さんぼの弟たちはどうなってしまうのでしょう。1作目の『ちびくろ・さんぼ』の物語はとても有名ですが、続編は意外と読んだことがない方も多いのではないでしょうか。ぜひお子様と一緒にドキドキしながら読んでみてください。
ジャングルにはちみつをとりに行くことになったさんぼは、道ばたで毛糸の玉が転がっているのを見つけます。糸はずっと先まで続いていて、さんぼがたどっていくとおばあさんが編み物をしていました。おばあさんはさんぼにお礼のコインを1枚渡します。
さんぼは再びジャングルに向かって歩き出すと、今度は古い本をたくさん並べ、その横で寝ているおじいさんの前を通りかかりました。さんぼはその中の1冊が気になり、手に取って読み始めますが、おじいさんから「売り物だから買わないのに読んではいけない」と言われ、さっきお礼にもらったコインを渡します。
- 著者
- こじま よしみ
- 出版日
- 2008-04-10
さんぼが読んでいたのは最後のページが破れた「もうじゅうをねむらせるものがたり」でした。おじいさんはさんぼからコインを受け取ると、この本と一緒に1匹の赤いカエルも渡してくれました。
やっとジャングルに着いたさんぼは、はちみつをとることも忘れて、大きな声で本を読みだしました。するとさんぼの声を聞きつけてトラたちが次々にやってきたのです。トラたちはさんぼが読んでいる本がおもしろいので、読み終わったらさんぼを食べようとします。
トラたちに食べられたくないさんぼですが、とうとう本を読み続けられなくなってしまいます。その時にさんぼのズボンのポケットから赤いカエルが飛び出して……。
『ちびくろ・さんぼ3』では再びトラが登場します。一体どんな展開になるのかとても気になりますね。子どもたちの想像力をかき立てる展開がとても楽しみな『ちびくろ・さんぼ』のシリーズ。3作目では女の子にもおすすめのファンタジーな展開が待っています。気になる方は実際に読んで確かめてみてくださいね。
『ちびくろ・さんぼ』の特集はいかがでしたか。意外に2作目以降を読まれていない方もいらっしゃるのではないでしょうか。ぜひ1作目とともに2作目、3作目も読んでみてください。