『ビートルズ英語読解ガイド』とは真逆の1冊がこれ。こちらも「2冊完結」だが、画期的なのは、アルファベット順に掲載されていること。上巻(1)には「アスク・ミー・ホワイ(Ask Me Why)」から「夢の人(I've Just Seen A Face)」までの80曲、下巻(2)には「君はいずこへ(I'm Looking Through You)」から「悲しみはぶっとばせ(You've Got To Hide Your Love Away)」までの76曲が掲載されている(数曲未掲載で、原詞はなし)。
「まさか」と思うかもしれないけれど、ビートルズのオリジナルの歌詞がレコードに初めて掲載されたのは、67年の『サージェント・ペパーズ~』が初めてのことだった。それ以前の日本盤はすべて聴き取り――歌詞の「耳コピ」だったので、当然、明らかなミスがあちこちに見られる。たとえば「アイ・アム・ザ・ウォルラス」のようなナンセンスな歌詞を「普通」の英語に置き換えるのが、いかにたいへんなことだったか。いま改めてその日本盤シングルの歌詞を見ると、その苦労の跡がうかがえて微笑ましくもなってしまうけれども。あるいは「ヒア・ゼア・アンド・エヴリホエア」の最後の一節“I will be there”が“To be there”になっていたがために、その歌詞で歌っている日本のミュージシャンもたくさんいたりしたのも、今ではあまり考えにくい話だ。その一方で、70年代には「イエロー・サブマリン音頭」のような自由で大胆な解釈の曲も生まれたが、その曲を手掛けた川原伸司さんにお聞きしたところ、現在はビートルズの曲を日本語訳では歌えないし、勝手に曲名を変更することもできないという。