書をよこせ草刈り鎌をぶん投げるぞ【山本裕子】

書をよこせ草刈り鎌をぶん投げるぞ【山本裕子】

更新:2021.12.2

作中の世界にハマる、というのは、立派な中毒。続きを読みたい。新作を読みたい。次も読みたい。もっともっと読みたい。読みたくて読みたくて震える。はいアナタもジャンキー認定。ヤク(新刊)をくれ~~!ちょー個人的な願望を殴り書き。

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はい、梅雨入りしましたー。ジメジメどんより湿気と気圧でこちとらいまいちテンション上がりませんが、生命力みっちみちの2歳児男子そんなの関係ねぇ、朝から長ぐつ履いて畑へ飛び出してゆきます。畑の畝で傘持って、種から芽が出るおまじないに余念がない。せめてパジャマ着替えてからにしてくれれば。これもすべてトトロのせい。ジブリめ、なんてことしてくれた。

ううう~~~ん、ぶわッ! ポンポンポンポンポンッ! ほい、出た、雑草の芽。蒔いたパクチーはなかなか顔を出さないが、雑草だけはすくすく伸びる。抜いても伸びる、踏んでも伸びる、切っても伸びる。うちが緑に飲み込まれるのもそのうちです。憎まれっ子世にはばかる。Weeds never die!

できればすべて見なかったことにして部屋に引きこもりたい。
草むしりなんてやってられっか。どうせ3日もすりゃ元通りだ。雑草だらけの庭は忘れて本でも読もうぜ。

本、読むのってね、目から取り込んだ文字情報を頭の中で情景として立ち上げて楽しむ、なんだろ、超個人的な脳内映画館? バーチャルリアリティ? いつでもどこでも、本開くだけで、現実世界からお手軽ランナウェイ。
だから、すてきな本に出合うともう、離れらんないの。片時も手から本を離さず、読み終わるや否や次の本へ。その様はもはやチェーンスモーカーかジャンキーか。シリーズものならさらに加速、延々ネバーエンディング。食事も睡眠もそっちのけ、落ち窪んだ眼窩からただ目だけがギョロギョロと。こうなるとすでに日常生活に支障が。魅力的な登場人物がいようもんなら、字面だけでも顔真っ赤、へえ~こういう時この人こんなことしちゃうんだ~キュン、あらこんなこと言っちゃって~キュンキュン、なにこれ擬似恋愛か、いやいや一方的に人の動向をひたすら注視、ページを捲るたびあのひとの名前を探す、文字相手にストーカーだ。ジャンキーで、かつストーカー。恐怖!

ずっと読んでいたいの。会えないと震えちゃうの。手が。これって禁断症状。お薬ください。はい、お薬コチラ、ドン。われが今渇望する本たち。手前勝手で恐縮ですが、暑苦しい愛だけでどーんといきますよ。

10DANCE

著者
井上 佐藤
出版日
2013-02-16
鈴木信也と杉木信也はそれぞれラテンダンスとスタンダードの日本チャンピオン。互いの専門ダンスを教え合い、10種類のダンスで競う「10ダンス」に挑戦することになったが……。
もともと竹書房の『麗人』というバリバリのBL誌で連載されていた作品が、なんやかんやあって1年以上連載を中断、その後、講談社の月刊誌『ヤングマガジン サード』に移籍、連載再開中。

はい、いきなりのBL、恐縮です。
4年前たまたま書店で、出たばかりの1巻をジャケ買いしたところ、絵柄の美しさと世界観にぞっこんフォーリンラブ、既刊の井上佐藤作品を一気に買い揃えました。ヨッ、大人買い!

まず、絵柄から漂う色香がね、たまんねえのですよ。中でもこの作品はダンサーの話なので、均整の取れた骨格としなやかな筋肉、肉体美っつーの、細マッチョっつーの、人体の美しさが際立ってます。それが踊っているシーンで見開きどーんと飛び込んできた日にゃもうあんた、ふーるーえーるー、つーの。
何より、どっかで読んだことあるような話、というのが、ないのです。きっちりストーリーで勝負、絵で勝負、作品によってはがっつりエロでも勝負という、もうほんとたまらん作家さんです。

翌2014年に待望の2巻発売。そこから待てど暮らせど続きが出ないなあと思っていたら、本誌で連載中断とな。ヘイヘイ。2巻終了時点でまだチューしかしてへんぞ。中断の理由も掲載されず、ご本人のTwitterも1年以上更新されず、こういう時、読者って、ただただ座して待つほかないんですよね。ああ無力なり。じっと手を見る。

そうしましたら昨年の秋、一般誌で連載再開とのお知らせがTwitter上に。ありがたや、電脳社会。つーかまさかの一般誌ですってよ、奥さま! それってBL大丈夫なの? やけに濃ォ~い友情話になってたらアタイ泣いちゃう!

私は基本的にマンガは単行本出るまで我慢派ですが、その辺心配なので、とうとう月刊誌に手を出しました。だって続きが気になって気になって、単行本待ってらんないんだもーん。
いやしかしまさか、齢42で月刊誌の発売日を指折り数えて待つ日が来るとは。高校の時の『花とゆめ』以来っすよ。発売日の数日前からそわそわしちゃう。思春期か。

でも、たまにはいいもんですね、月刊誌。あー、もう今月も終わりか、なんてね。あっという間に過ぎていく日々に、メリハリがついた気がしますですよ。

今のところ、もはやBL風味の本格競技ダンスマンガですが、でも全然いいの。読めるだけで幸せなの。10ダンスの道のりもまだまだ長そうだし、ゆっくりじっくり描かれることを祈っております。この夏ついに3巻が出るらしい。さらには講談社から新装版の1、2巻も刊行予定。祭りだわっしょい! ずっと長く待ちすぎたせいで、何だか全部夢みたい。早く夏にな~あれ。あはははは、うふふふふ。ほらこのイタい感じも思春期フォーエヴァー。

愚か者死すべし

著者
原 りょう
出版日
2007-12-01
もう、新作は書かれないのかしら。私立探偵・沢崎シリーズ。長編第2作『私が殺した少女』では直木賞もとりましたね。
第2作から第3作の『さらば長き眠り』が出るまで約5年、そこから第4作となる本作が出るまで9年。ほんとにここまで長かった。やっと出たこの本の帯には大きく
『新・沢崎シリーズ、第1弾 伝説の男が、帰ってきた』
おかえりィ~~~、沢崎ィ~~~! 三軒茶屋の書店で平置きされたこの本見つけたとき、マジでその場で小さく飛びました。第1弾ということは、次も、ある。わーいわーい、欣喜雀躍。人って飛べるのね。空も飛べるはず~~~。

あれから13年。帰ってきたはずのあの人はそのままどこへ。わたし、沢崎の年齢をも飛び越えてしまいそうよ。このままでは次作で沢崎は、ヨボヨボ要介護探偵になっているやも。そんなの、いやいや!

ジャンルとしては、ハードボイルドですが、本格ミステリとして読みごたえあり。とても緻密に、綿密に、練り上げられています。面白いぞ。なんつっても、主役の沢崎(四十代・男性)の佇まいが、すげかっこいいんすよ。揺るがない芯を持つ男。生活臭がなくて、いつも平静。しかし別にかっこつけてるわけでもない。古いブルーバードに乗り、両切りの缶入りピースを吸っている。わたし、この人に憧れて、昔タバコ吸ってた頃その銘柄はピースでした。

……と、今ふと違和感を覚え、画像検索しましたら、間違えてずっとホープを吸ってたことが判明。まじでか!

邪魅の雫

著者
京極 夏彦
出版日
2009-06-12
古書肆で拝み屋の京極堂が憑き物落としの作法で事件を解く、百鬼夜行シリーズの長編作品。現時点での最新作。え、これ2006年? もう10年以上経ってますやん。最終ページにしれっと次のタイトル『鵼の碑』とか書いてるからさ。すぐ出るかと期待しますやん、もお~~。

物語自体も、登場人物のカラフルさも、語り口も、戦後すぐという時代背景も、妖怪や怪異が絡むところも、もーいちいち好きなとこついてくるというか、一度読み始めるとずっと読み続けていたい、終わりの頁が永遠に来なければいいのに、と毎回思うもはやジャンキー製造機と申せましょう。
さらに、本の構成の視覚的な美しさがすてきです。
「殺してやろう」「亡くなった」「死んでいる」「死にそうだ」「死のうかな」「殺したよ」「殺される訳じゃあるまいに」「殺す以外にない」
例えばこちら全て各章の始まりの言葉ですが。どうよ、この言葉遊びのようなシバリ。なんだかぞくぞくしませんか。わたしはにやにやしますよ。
文章がすべて次のページに跨がない、とか。講談社ノベルスで1頁が2段組なのですが、上の段から下の段にさえ文が跨がない。そのシバリで824ページの腕が筋肉痛になるようなぶ厚い本書き上げるわけで。すげえな、職人。

さて近年、京極先生公認の『薔薇十字叢書』として、百鬼夜行シリーズの登場人物や世界観をまんま生かして、他の作家さんが書いたオリジナル作品が続々刊行されています。ヘイヘイ、ちょっと待って、登場人物と世界観を生かしたオリジナル作品って、それってつまり構造としては、同人誌よね?

いや、別に同人誌を否定するわけではなく。ジャンキーたちの「もっとチョーダイ! もっと! もっと!」欲を補完してくれるのが同人誌。ありがとう同人誌。一定のクオリティを保証された同人誌が、本屋さんで買えると思えば大変ありがたい話なのですが。同人誌だと印刷代やらなんやらで価格バカ高いし。玉石混交だし。夏コミ並ぶのしんどいし。
しかしなんだろな、私の感じるこの違和感。
言葉は悪いけども、ニセモノをニセモノとして『ごっこ遊び』で楽しんでいたのが、ホンモノが公認することで、かえって非ホンモノ感が増した、というか。
まあ別にいいのか、そんなホンモノ・ニセモノの線引きなんかなくても。面白ければ。
でもそれは、作ってる側の気持ちであって、読み手側としてはどーなの。そりゃどうしたってホンモノが教典でしょうよ。でもいいのか? 面白ければ?

頭が痛くなってきたので、閑話休題。
早く本家の新作を読みたいものです。
とはいえ京極先生は本当は何人いるんだと思うほど、どんどんどんどん本出してらっしゃるので、新作『鵼の碑』もきっとそのうち。わたし、諦めない。諦めたらそこで試合終了ですよ。いいこと言うわあ!

占星術殺人事件 改訂完全版

作家ご本人公認のパロディを出版、といえば御手洗潔シリーズ。パロディについてはとりあえず棚上げ、本シリーズの中でも最も好きな作品を、どん。
著者
島田 荘司
出版日
2013-08-09
名探偵・御手洗潔を生んだデビュー作。6人の若い女性が行方不明となり、その後、体の一部を切り取られた姿で日本各地で発見される。事件から40数年、未解決の猟奇殺人のトリックとは。
未解決・猟奇殺人・名探偵、これでシロ飯3杯いけちゃう。ミステリ好きの方には言わずもがなの超有名作ですが、もし未読というラッキーな方いらっしゃったらこの機会にぜひどうぞ。

この頃ほほえましかった御手洗・石岡コンビは、シリーズが続くにつれどんどん依存に陥り、関係性は悪化し、ついには別居、かたや北欧で脳の重要研究、かたや横浜馬車道でコンビニご飯、という、もうね、そっちが気になっちゃってミステリとか全然頭に入ってこないっすよ私。事件よりもこの長年にわたる大河ドラマを、はよ解決してやってプリーズ。
つーか、御手洗いつウプサラから帰ってくんねん! 石岡はぐだぐだ言うてんと御手洗追っかけてとっとと外国行け! あんたら、もう六十代後半やぞ!

またこの2人が対等にコンビ組んで事件を解決する日なんて、来るのかしらん。
でも私、あきらめない。諦めたらそこ(以下略)。

ね、暑苦しかったでしょ。愛ってほんと、傍から見ると、ただただうぜーな。
諸先生方におかれましては、くれぐれも健康に留意され、すてきな作品をいつまでも書き続けていただきたいと心から願う次第であります。かしこ。
ではまた草むしってきます。行くぞ、2歳児~~~。

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