必殺技が超人的なおすすめスポーツ漫画5選!ありえないけどやっぱ面白い名作

更新:2021.12.21

CG技術の隆盛著しい昨今、漫画でも写実的な描写がもてはやされているように思えます。しかし、リアルさと面白さは別。漫画には漫画の、現実的にはあり得ない魅力があります。今回は漫画的に面白い必殺技の登場するスポーツ漫画5作品をご紹介します。

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コートの中ではどんなことでも起こる!『テニスの王子様』

テニスの名門校、青春学園(青学)中等部に入学した越前リョーマ。日本では無名の選手ですが、アメリカ各州のテニスジュニア大会で4連続優勝を果たした実力者です。そしてまた彼は、日本テニス界を変えるとまで言われた名プレイヤー、越前南次郎の息子でもありました。

父を越えるためにテニスを続けてきたリョーマは、青学テニス部に入部したことで、学校の仲間や他校のライバルと切磋琢磨し、変化と成長を遂げていきます。

著者
["許斐 剛"]
出版日

本作は1999年から「週刊少年ジャンプ」で連載されていた許斐剛の作品。

スポーツ漫画、テニス漫画と言うより、テニスを用いた超人格闘技漫画と言った方が近いかも知れません。試合形式はテニス、舞台はテニスコート。ルールもテニスに準じますが、その試合内容はテニスのような別物の何か。

連載当初こそ、奇抜なテクニックの飛び交うテニスで通用しましたが、連載が続くにつれて、現実のテニスとはどんどんかけ離れたものに変化していきました。

リョーマをはじめ、登場する強豪プレイヤーはそれぞれ独自の技を持っています。全て挙げるとキリがありませんが、バウンドしない打ち返せないショットや、ボールを真っ二つにする技、受けた相手を骨折させる技など、致死力を備えたまさに必殺技の数々。打ったボールが速すぎて引火したり、会場が砕け散ったりすることもあって、もうやりたい放題です。

ここまで来ると、本作でもはやテニス云々を論じる意味はありません。これはテニスなどではなく、「『テニスの王子様』のテニス」という未知のスポーツ。次にどんな展開が待っているのか、どれほど予想と本来のテニスの枠を飛び越えてくるのかを、座視して楽しみに待ちわびる他ありません。

技を極めて、目指せ全国!『黒子のバスケ』

創設2年目ながら全国を狙う誠凛(せいりん)高校バスケットボール部。そこに期待の新人2名が入ってきます。1人はアメリカからの帰国子女、計り知れない潜在能力を秘めた火神大我(かがみたいが)。もう1人は、中学バスケの超強豪校、帝光中学バスケ部出身で存在感の薄い黒子テツヤです。

黒子の世代の帝光中学は無敗を誇り、天才的なレギュラー5人は「キセキの世代」と呼ばれていました。実はそこに、キセキの世代のレギュラーに紛れて、誰にも気付れずにボールを操るパス回しの天才がいたのです。その「幻の6人目」こそが、黒子。誠凛高校バスケ部は、各地に散らばったキセキの世代と鎬を削り、全国制覇を目指します。

著者
藤巻 忠俊
出版日
2009-04-03

本作は2009年から「週刊少年ジャンプ」で連載されていた藤巻忠俊の作品。

バスケ漫画として有名なのは『SLAM DUNK』ですが、本作はそれ以来久々にヒットしたジャンプバスケ漫画です。『SLAM DUNK』が写実的とも言える展開だったのに対して、『黒子のバスケ』は少年漫画らしい派手な展開が魅力です。その本作の特徴を一言で言えば、特殊能力。

特殊能力とは言っても、現実的にあり得ない、物理法則を完全に無視したような技は登場しません。練習を積み、試行回数を繰り返せば一応再現可能ではあります。バスケの本場アメリカのNBAスター選手、それも限られた一握りの選手が狙っても出来るか出来ないか、というレベルですが……。

例えば主人公黒子が得意とするのが「視線誘導」。自分以外のプレイヤーに注目を集めさせることで存在感を消し、敵のマークを外します。フェイントの応用みたいなものでしょうか。

他には相手の動き、癖を再現する「模倣」。阻止不能の「超長距離シュート」。未来予知にも似た「先読み反応」など。

各校に散らばったキセキの世代と、それに感化された強豪選手達。まさに群雄割拠。劇的な試合が繰り広げられ、超高校級のスーパープレイが目白押しです。

世界に羽ばたく夢の翼!『キャプテン翼』

南葛市、南葛小学校に転校してきたサッカー少年の大空翼。ちょうどその頃、南葛小サッカークラブは同市にある修哲小学校とグラウンドの使用権で揉めている最中でした。翼は渦中の修哲小キーパー、若林源三と出会い、勝負することに……。

翼は元ブラジル代表ロベルト本郷の指導を受け、チームメイトや日本全国の強豪対戦相手と競い、やがて名前の通り世界へ羽ばたいていくことになります。

著者
高橋 陽一
出版日

本作は1981年から「週刊少年ジャンプ」に連載されていた高橋陽一の作品。完結後も、現在まで断続的に続編が発表されています。

当時はまだプロリーグもなく、マイナースポーツだったサッカー。「ボールは友達」をキャッチコピーにして、アニメ化を機に日本でサッカーブームを巻き起こした伝説的漫画です。従来のスポ根漫画とは異なり、つらく厳しい修行に耐える展開ではなく、楽しく練習してライバル達と熱く燃える試合が描かれました。

繰り返しになりますが、当時サッカーは競技としても漫画の題材としても不人気でした。そこで作者が工夫したのは、画作りや展開におけるスーパープレイの数々。ド迫力の必殺技で読者の心をがっちりキャッチしたのです。

オーバーヘッドキックはまだ可能な方ですが、ドライブシュートや、2人同時にキックするツインシュートを決めるとなると、かなり無理があります。翼の中学生編のライバル、立花兄弟の放つ連携技、スカイラブハリケーンに至っては、現実的に不可能な荒唐無稽のシュートです。

しかし、その派手な無数の技がサッカー少年を魅了しました。その力強い面白さは日本を飛び越え、世界的な人気にまでなっています。現在、一線級でプレイしている国内外の有名サッカー選手の中にも、本作のファンは少なくありません。

言わば本作は、サッカー少年の夢の原点と言えるでしょう。

夜空で煌めく星の如く、巨人で輝く星となれ!『巨人の星』

主人公の星飛雄馬は、幼少の頃から厳しい野球特訓を課せられて育ちました。父の一徹は、怪我で球界を去らざるを得なかった悲劇の男。そんな自身の無念をぶつけるように、飛雄馬に徹底的な英才教育を施しました。

一徹に強制された野球は、飛雄馬にとって呪い以外の何者でもありませんでした。しかし、高校野球の仲間やライバルとの出会い、対戦を通し、自分にとっての野球を見直していくようになります。情熱を燃やす飛雄馬はやがて巨人軍の入団テストをパスし、プロ野球選手への道を歩むことに。

著者
川崎 のぼる
出版日
1995-06-02

本作は1966年から「週刊少年マガジン」に連載されていた梶原一騎原作、川崎のぼる作画の作品です。

汗と泥にまみれて、努力と根性で勝利を目指す展開。本作は野球漫画の代名詞にして、スポ根漫画の元祖と言える漫画です。

飛雄馬は非常に小柄な体格です。コントロールは優れていますが、球質が軽いせいで打たれてしまうと長打になりやすいという欠点がありました。その弱点を克服するために使うのが、有名な魔球の数々。

飛雄馬が最初に体得したのは、怪我のハンデを乗り越えるために一徹が編み出した「魔送球」です。しかしこれは決め手に欠けました。この次から会得するのが、有名な「大リーグボール」シリーズ。

大リーグボール1号は絶妙なコントロールで敢えて敵のバットに当て、凡打にする魔球。大リーグボール2号は投球時蹴り上げた足で土煙を作り、高速回転するボールに砂をまとわせて保護色にして見えなくするという、いわゆる消える魔球。

そしてこれら必殺の魔球以外で印象的なのは、なんと言っても一徹特製の「大リーグボール養成ギプス」でしょう。普通に生活をしているだけで、全身に仕込んだ強力なバネが体を鍛える仕組み。現実的に考えると、体を壊すだけで、単なる児童虐待になりかねません。

熱い展開、飛雄馬やライバルの熱血の前に、野暮なツッコミは不要です。野球に賭けた男達の人生がここにはあります。

フィールドを駆け抜ける謎のフットボーラー!『アイシールド21』

主人公の小早川瀬那(こばやかわせな)、通称セナは私立泥門(でいもん)高校に入学したばかりの1年生です。不良に絡まれても逆らえない気弱な少年。彼は護身のために身に付けた足の速さを見込まれ、アメフト部主将の蛭魔妖一(ひるまよういち)によって半ば強制的にアメフト部へ入部させられてしまいます。

当初は嫌々参加していたセナでしたが、試合を重ねるごとにアメフトの面白さに目覚めていき、強い選手を志すようになっていきます。泥門高校アメフト部「泥門デビルバッツ」が目指すのは、全国高校アメフト選手権大会決勝クリスマスボウル!

著者
稲垣 理一郎 (原作), 村田 雄介 (漫画)
出版日
2002-12-01

本作は2002年から「週刊少年ジャンプ」で連載されていた稲垣理一郎原作、村田雄介作画の作品。

アメリカンフットボール、俗に言うアメフトを題材とした漫画で、日本ではメジャーなスポーツとは言いがたく、ルールもあまり浸透していません。本作ではその読者を得る上で不利な点を、各校の特徴的なキャラ付けと、少年漫画らしいキャッチーな必殺技で補っています。

主人公セナの所属する泥門デビルバッツなら「でいもん」、「デビル」といった言葉から悪魔のような雰囲気の部員や技が出てきます。太陽スフィンクスというチームなら、スフィンクスから連想されるエジプト風のキャラデザインに、ピラミッドのような演出、といった具合です。

セナの武器はとにかく足の速さ。黄金の脚と言われる脚力を活かし、相手の予想外の動きをする「デビルバットゴースト」、そこから発展した「デビルバットハリケーン」、俊足から飛び出す弾丸のような「デビルバットダイブ」等々。

光速やその上を行く超光速の走り、その勢いで行う猛烈なタックル。レーザーのような高速長距離パス。荒唐無稽なフォーメーション。

過剰演出で描かれるそれら必殺技は、ただでさえ激しいアメフトの試合展開に拍車をかけ、火花散らす感動の名勝負へと昇華させます。選手達はフィールドを所狭しと駆け巡り、全身全霊を賭けたプレイは読者を否応なくヒートアップさせ、魅了してくれます。

いかがでしたか? 現実にあるスポーツで、非現実的な必殺技を繰り出すというギャップ。その違和感が面白可笑しく思えます。現実的に過ごすのは窮屈な現実だけで充分。広大な漫画の空想世界では自由に楽しみたいものです。

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