公営競技である競馬は、案外おじさんの嗜みと思われがちですが、そこには老若男女問わず熱中できる熱いドラマが存在します。今回はそんな競馬を題材にしたおすすめ漫画をご紹介したいと思います。
競馬学校の騎手課程に所属する上杉圭の、競馬学校最終学年から、騎手生活二年目までを描いた作品です。ある日、上杉圭は、競走馬への不適性を理由に殺処分されそうになっていた練習馬、フラワーカンパニーを発見します。その馬には並々ならぬ能力があると看破した上杉は、競馬学校の過程である模擬レースに、フラワーカンパニーに乗って出場。優勝目前まで行くもののフラワーカンパニーは骨折、結局殺処分されることになってしまいました。
失意にある上杉は騎手への道を諦めかけますが、フラワーカンパニーの馬主に、フラワーカンパニーの弟馬トビオを見せられたことで、騎手になることを再び決意し、騎手としてのキャリアを着々と進めていくことになるのです。
- 著者
- ["武 豊", "一色 登希彦"]
- 出版日
「ダービージョッキー」とは、ダービーで勝ったことのある騎手の事。おそらく日本競馬界で最も有名な騎手であろう武豊が原案を務めている作品で、現役ジョッキーが何を考えながらレースに臨むのか、競馬学校での養成の様子などを垣間見ることができます。
スポーツ漫画としても、魅力的な数々の登場人物たち、才能のある人間とそうでないものとの差の描き方、また最終巻で行われるダービーには、それまでに登場した数々のキャラクターの心情が交錯するなど、非常に熱い展開が待ち受けています。
レースシーンよりも調教しているシーンの方が多いという、競馬漫画としては異色な作品で、全体を通して伝えられるのは、武豊の人生観や人間観。熱いだけでなく、理知的な作品としても仕上がっている1作です。
ある日、北海道の小牧場に、金色の毛並みを持った馬「スピーディワンダー」が生まれます。めでたい状況に沸く牧場ですが、そんな中、スピーディワンダーの兄馬である「スーパーキングオー」はデビューから8戦未勝利、次戦で勝たないと引退という危機にさらされていました。騎手を務めるのはかつてはスーパージョッキーとして名をはせた講神。
彼はスーパーキングオーの実力に気が付き、彼を乗りこなし見事勝利。そして講神とスーパーキングオーは、その実力をいかんなく発揮して、中央競馬、GIレースに参戦していくこととなるのです。
- 著者
- 綱本 将也
- 出版日
- 2010-10-20
上記のようにスピーディワンダーの兄であるスーパーキングオーの活躍を描いた1部目、タイトルにもなっているスピーディワンダーの活躍を描いた2部と分けることができる作品で、競馬漫画としても珍しいと思うのですが、『スピーディワンダー』では馬の血統というものが最も重要視され、そこに焦点を当てて作品が描かれているのが最大の特徴と言えるでしょう。
原作者の綱元将也は、今でこそ『GIANT KILLING』(ジャイアントキリング)の作者として非常に有名な漫画家ですが、若い頃は競馬で生計を立てていたらしく、競誌予想コラムを掲載していたほどの競馬好き。そんな彼が原作に集中して作り上げた『スピーディワンダー』、競馬好きにはたまらない作品となっています。
馬を見ただけでその馬の父馬を言い当てたり、適性を見極めたりすることができる二階堂駿は、その能力を活かして馬商(馬喰)として名声を得ていました。ある日、中山競馬場にて、自分と同じく恐るべき相馬眼を持っている外国人に出会います。
その外国人こそ、二階堂の生まれ育った牧場を奪い取り、父を自殺に追いやったアイルランド人でした。彼はアイルランドで牧場「ウイニング・スタッド」の経営を行っており、日本競馬界に進出しようとしていたのです。他の人たちを父と同じ目にあわせないため、二階堂の取った対抗策は「自身も牧場を経営し彼らに対抗する」こと。二階堂の、プライドをかけた因縁の勝負が始まりました。
- 著者
- 小松 大幹
- 出版日
- 2006-12-06
競馬の花形である騎手ではなく、馬喰(作中では馬商と表記)と呼ばれる仲介人やブリーダーに焦点が合わせられた珍しい漫画です。
さらに、レースの開催スケジュールや結果は、作中オリジナルの人物が絡まないものは、実際のものと同じ。さらにディープインパクトやメイセイオペラと言った実在していた競走馬のエピソードを登場させているのも大きな特徴です。
ブリーダーや仲介人という視点から描かれる、競馬界の実情を交えた現実的な競馬漫画で、更に、主人公が相馬眼に長けているという設定なので、論理的に競馬シーンは描かれており、読みごたえは充分。
また1巻始めのシーンでは見捨てられそうな馬を主人公が買い拾ってあげるシーンがあることからもわかるように、単なる論理的な漫画というだけではなく、人情ドラマもきちんと描かれている熱い漫画でもあるので、競馬好き以外にもおすすめできる内容になっています。
北海道にある、みどり牧場で生まれた「うんこたれ蔵」。ある日、母馬であるミドリコが堀江牧場へ売られてしまったため、ミドリコに会いたいたれ蔵は、みどり牧場から脱走し、母を探す旅に出ます。
ネズミのチュウ兵衛との出会いや、さまざまな困難を経て、ついに母馬であるミドリコと再会したたれ蔵。そして、ミドリコの手助けや、後にライバルとなるカスケードとの出会いなどによって、たれ蔵は「ミドリマキバオー」として頭角を現していく事になるのです。
- 著者
- つの丸
- 出版日
アニメ化もなされていた人気作で、続編『たいようのマキバオー』も発表されていた、つの丸の代表作『みどりのマキバオー』。ミドリマキバオーの本名が「うんこたれ蔵」であることからもわかるように、非常に下品な下ネタはこの作品の特徴の1つ。
しかし、そんな下ネタを交えたギャグをやりならも、ミドリマキバオーとライバルであるカスケードの1戦などは手に汗握る非常に熱い戦いが描かれていて、とても読み応えのある競馬漫画となっています。
カバのような頭に犬のような体を持った、非常にアンバランスな体格をしているマキバオーですが、そんな彼が全力で戦うシーンは重厚の一言。笑いあり、涙あり、もちろん熱い戦いありの、名作競馬漫画です。
1位は『優駿の門』。関東地方競馬場の野山厩舎に所属する騎手である光優馬が、幼いころのトラウマからレースで走れなくなっていた馬アルフィーと出会い、その馬のトラウマを克服し、地方馬で中央競馬に参戦、勝利していく様子を描いた作品です。
- 著者
- やまさき 拓味
- 出版日
主人公の騎手である光優馬は非常に天才肌の、人によっては生意気とも捉えられそうな熱血漢な青年。そんな彼の乗る馬アルフィーは才能を秘めていながらも、小さいころの出来事がトラウマでレースで走れない競走馬。
そんな2人が、調教師などとも協力してトラウマを克服、地方馬ながら中央競馬に参戦し、見事地方馬初のクラシックホースとなるのです。もちろん地方馬初のダービー制覇も目指すのですが……。
ダービー後のアルフィーに訪れる最後は、非常に悲しいものです。しかし、そのような展開を描いたからこそ、この漫画が熱いだけでない、きちんとしたリアリティーを持った作品として評価されているのでしょう。
また、上記の『みどりのマキバオー』のように馬が喋るといったギャグ的な要素はないのですが、馬の表情からその感情を読み取ることができる漫画となっているのも魅力の1つで、『優駿の門』に登場する競争馬たちは非常に感情表現豊かで見ていて親近感がわいてきます。
数多くの番外編、続編が執筆され、名実ともにやまさき拓味の代表作であると同時に、競馬漫画の代表作でもある『優駿の門』、是非一度、お読みになってみてはいかがでしょうか。
ギャンブルのイメージが強い競馬ですが、そこには競走馬と騎手の織り成す重厚でドラマチックな物語が展開されています。競馬に興味のない方々も、是非一度足を踏み入れるきっかけに、今回紹介した作品をご覧になってみてはいかがでしょうか。