「猫鳴り」
平和に暮らしている夫婦のもとに現れた一匹の子猫。怪我をしている子猫の手当をしてやったものの、二人は子猫を飼う決断ができず捨てることにします。しかし、子猫は驚くべき生命力でもって何度も二人の家に戻ってくるのです。かつて待望の子供を流産によって失ってしまった夫婦は、子猫を見る度に失われてしまった子供の命について思いを馳せ、複雑な心境のまま子猫を飼うことに決めます。成長し老いていく猫とそれをとりまく人間達の日々を描いた作品です。なんというか、ほのぼのしていないのが良いです。少しだけホラーの匂いがするような独特の文体もおすすめポイントです。
「黒猫」
ポーの作品の中で一番好きな作品です。大切に可愛がっていた猫が自分に懐かないことに腹を立てた主人公は、ある日発作的に猫を絞殺してしまいます。すると主人公の家は火事にみまわれ、一部の壁を残して燃え尽きてしまいました。焼け残った壁には絞首された猫のような模様が残っていました。その事件をキッカケに、殺してしまった猫に対する罪悪感を抱え続けていた主人公ですが、偶然にもかつての愛猫そっくりの猫と出会います。罪滅ぼしの意味も込めて猫を飼うようになる主人公ですが、そのまま「めでたし」とは行かないのがポーです。猫を侮ると怖いぞー。
「ねじまき鳥クロニクル」
猫の描写はそれほど多くありませんが、飼い猫の失踪をキッカケにして展開してゆく物語です。義兄の名前をつけた飼い猫のワタヤノボルが突然失踪し、その行方を追っていた夫。妻の指示で占い師の女に猫の居場所を聞きに行くのですが段々と非現実的な出来事に巻き込まれていきます。追い打ちのように妻までもが失踪し、猫に加えて妻の行方までも探すハメになった主人公ですが、追いかけてゆくうちに失踪の鍵を握るのが、義兄「ワタヤノボル」であることを突き止めます。不思議な出来事と散りばめられた謎について楽しく推理しながら読み進められる一冊。