「御手洗潔」シリーズのおすすめ推理小説ランキングベスト5!

更新:2021.12.21

天才的頭脳を持つ人気キャラクター、御手洗潔をご存知でしょうか?和製シャーロック・ホームズと呼ばれることも多い名探偵です。ここでは、読者を魅了して止まない「御手洗潔」シリーズの中から、おすすめの推理小説をランキングでご紹介していきましょう。

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島田荘司が描く名探偵、御手洗潔とは?

島田荘司のデビュー作『占星術殺人事件』で、主人公として登場したキャラクターが御手洗潔です。作品はミステリーファンからの大絶賛を受け、以後、多くのシリーズ作品が発表されてきました。女性読者からの人気も非常に高いシリーズです。

御手洗潔はルックスが良く、IQ300以上という天才。その一方非常に癖の強い人物で、風変わりな言動で周囲を困惑させることも多い奇人です。それでも人を見た目で判断することをせず、優しく公平な態度を見せる彼に、惹きつけられる人間は少なくありません。親友の石岡和己もその1人。シリーズ作品のほとんどは彼の視点から描かれます。ホームズとワトソンを彷彿させるこの2人のコンビの虜となっているファンは多いことでしょう。

ここでは、そんな個性的な探偵、御手洗潔の魅力が存分に描かれている作品を厳選してご紹介していきます。

5位:圧倒的な世界観に引き込まれる世にも恐ろしい物語『暗闇坂の人喰いの木』

人間を呑み込んだという伝説を持つ、樹齢2千年の大楠を巡り、次々に恐ろしい事件が発生する長編小説。驚愕のトリックと、衝撃的な真相、そして作品全体を覆う怪奇な世界観に引き込まれてしまう作品です。

さらし首の名所として知られる、暗闇坂の上にある藤並家。嵐の中、長男の卓が、自宅の屋根に跨った状態で死亡する、という不可解な事件がありました。さらには卓の母親、八千代までもが屋外で負傷し、意識不明の重体に陥っています。御手洗潔はこの奇妙な事件に大いに興味を持ち、藤並家の調査を開始します。

著者
島田 荘司
出版日
1994-06-06

藤並家には卓の他に、弟の譲と妹のレオナがいます。父親はイギリス人のジェイムズ・ペイン。現在は離婚してイギリスに戻っており、八千代は三本照夫と再婚して、連れ子の幸子と共に同じ敷地内で暮らしています。藤並家の一角にある楠の巨木は、かつて少女を呑み込んだと伝えられ、人を喰う木として恐れられていました。近所では、卓の奇妙な死に方も、あの木が関係しているのではと噂されていたのです。

物語の序章には、世にも恐ろしいスコットランドのお話が展開され、童話のように綴られる残酷すぎる内容に、思わず背筋が寒くなってしまいます。読者は、どんな凄惨な出来事が待ち受けるのかと、一気に物語の世界に引き込まれていくことでしょう。章の合間には、謎が深まるような生々しい回想が巧みに織り交ぜられ、先を読まずにはいられなくなります。

作品全体が陰鬱で怪奇的な雰囲気に覆われているのですが、至って常識人である御手洗の親友、石岡には心底和まされます。御手洗の理解不能な行動が面白く、時折見せる優しさにも好感が持て、惹きつけられる方も多いのではないでしょうか。事件の異常さに戦慄し、大胆なトリックやスリル満点のストーリーに魅せられるおすすめの1冊になっています。

4位:島田荘司が実際の事件をモチーフにして描いた衝撃作!『龍臥亭事件』

津山で実際に起きた大量殺人事件をモチーフに、山奥にある因縁深い村で発生する、連続殺人事件を描いた大作。御手洗潔に代わり、石岡和己が探偵役をつとめた作品です。

御手洗がアパートを去ってからというもの、石岡は酷く虚ろな生活を送っていました。そんな石岡の元に、悪霊払いをしたいので同行してほしいという、なんとも奇妙な依頼が舞い込みます。依頼者の名前は二宮佳世。彼女に助言した霊能力者の話では、佳世には悪霊がとりついており、それを払うためには、どこかに埋もれているはずの手首を探し出す必要があると言うのです。

こうして石岡は、渋々彼女に同行することとなり、岡山の山間にある、龍臥亭という旅館を訪れたのでした。ところが着いて早々、旅館の部屋で火災が発生。火はすぐに消し止められたものの、その部屋に滞在していた菱川幸子が、頭に銃弾を受け死亡しているのが発見されます。

著者
島田 荘司
出版日
1999-10-01

閉鎖感の漂う小さな村で、次々と起こる殺人事件の真相を暴かなければいけないのですが、天才探偵は不在。そんな中、心細さを感じながらも奮闘する石岡の姿に、応援の声をかけたくなってしまいます。御手洗のようにスマートに謎解き、とはいきませんが、最初は為す術もなく振り回されていた石岡が、徐々に真相に近づいていく様子にハラハラドキドキさせられ、夢中になって読み進められるでしょう。

実際に起こった事件とフィクションを、巧みに織り交ぜて構成されるストーリー展開は読み応え十分。明かされる真相には大きな衝撃が走ります。石岡を激励する御手洗からの手紙には、なんだかこちらまで勇気付けられてしまい、2人の絆に微笑ましさを感じずにはいられません。御手洗の謎解きとはまた一味違った魅力がありますから、ぜひその活躍を見届けていただければと思います。

3位:結末に心が震える!「御手洗潔」シリーズの傑作『異邦の騎士』

記憶喪失の男を取り巻く、様々な謎に迫るミステリー小説です。時系列的には、御手洗潔が出会った最初の事件になります。思わずほろりとさせられる感動の物語であり、ファンの間でもたいへん人気の高い1冊です。

見知らぬ公園のベンチで目を覚ました主人公の男は、自分が誰で、いったいなぜこんなところにいるのかまったく思い出せず愕然とします。途方に暮れる中、主人公は1人の女性と出会い、一緒に暮らすようになりました。なぜか自分に尽くしてくれる彼女が、心の拠り所となり、戻らぬ記憶に不安を感じながらも、幸せな日々が過ぎていったのです。

自分の過去をどうしても知りたい彼は、藁にもすがる思いで占星術師の御手洗潔の元を訪れました。このことがきっかけで、2人はたびたび交流することになります。そんなある日、引き出しの中に自分の免許証が入っているのを見つけた主人公は、記載された住所へ行き、とんでもない事実を知って……。

著者
島田 荘司
出版日
1998-03-13

物語は記憶喪失の主人公の視点から描かれているため、こちらも何も分からないまま、物語の世界をさまようことになります。大いに感情移入してしまい、徐々に明らかになる過去には、主人公と一緒になって驚愕するのではないでしょうか。巧妙に仕掛けられた犯罪計画に翻弄されながら、怒涛のクライマックスへと突入していく構成は圧巻。息もつかせぬジェットコースターのような展開に心を揺さぶられてしまいます。

御手洗潔の格好良さを十分に堪能することができる本作は、その秀逸な結末も話題になりました。思わず涙してしまうほどの感動が味わえますから、読んだことのない方にはぜひ手に取っていただきたい作品です。

2位:壮大な密室トリックに感動する本格ミステリー『斜め屋敷の犯罪』

斜めに傾いた奇妙な西洋館で起こる、連続殺人事件を描いた本格推理小説。奇想天外な密室トリックで、多くの読者を驚かせてきた傑作です。

北海道の宗谷岬に建つ「流氷館」は、わざと斜めに傾けて設計されており、その風変わりな見た目から、人々に「斜め屋敷」と呼ばれていました。

1983年12月25日。流氷館の主人、浜本幸三郎と末娘の英子はクリスマスパーティーを計画し、取引先会社の社長や秘書、英子の大学の友人など、全部で13名の男女が館に集められています。

その日の夜、一同は解散し割り当てられた部屋で休んでいましたが、3階の1号室で眠っていた社長秘書の相倉クミが、窓の外に不気味な男の顔を見て大きな悲鳴をあげました。駆けつけた幸三郎たちでしたが、足場もない3階のため、夢でも見たのだろうという話で落ち着きます。ですが翌朝、鍵のかかった部屋で、社長の運転手を務める上田一哉が殺されているのが発見され……。

著者
島田 荘司
出版日
2016-01-15

屋敷内では次々と人が殺されていき、いつ誰が殺されるかも分からない状況はスリル満点です。どう考えても犯行が不可能な状況に謎は深まり、読者は読みながら背筋がゾクゾクしてくるでしょう。後半になり、御手洗潔と石岡和己がようやく登場したところから、物語は一気にスピードを上げ、華麗な謎解きがスタート。奇抜な言動で周囲を困惑させながらも、天才探偵としての本領を発揮する姿に心底痺れわくわくさせられます。

解明される、大胆で壮大な仕掛けの数々に驚嘆することでしょう。推理小説を読む上での醍醐味が、ぎゅっと凝縮された素晴らしい作品です。作品内には、作者の島田荘司から読者に向けての「挑戦状」が挿入されていますから、自信のある方は謎解きに挑んでみてはいかがでしょうか。

1位:御手洗潔、衝撃の初登場作品!『占星術殺人事件』

島田荘司のデビュー作であり、御手洗潔の初登場作品となりました。1981年に発表された本作は、日本のミステリー界に多大な影響を与え、多くのミステリーファンを虜にしてきた作品です。

1979年、占星術師の御手洗潔の元に、飯田美沙子という女性が訪ねてきました。御手洗が、探偵としての才能も持っているという噂を聞きつけたのです。43年前に起きた「占星術殺人事件」と呼ばれる事件に関して、刑事だった父親が驚くべき手記を残しており、その調査を依頼したいとのことでした。

1936年、画家の梅沢平吉が、密室状態のアトリエで殺害されました。その平吉が遺した手記には、6人の処女の身体を一部分ずつ切り取って合体させ、完璧な「アゾート」を完成させるという恐ろしい計画が記されており、平吉の死後、その手記に沿うように6人の姉妹が殺害されたのです。事件は迷宮入りとなり、これまで謎が解かれることはありませんでした。そしてこの事件に、御手洗潔が挑んでいくことになるのです。

著者
島田 荘司
出版日
2013-08-09

事件は恐ろしく猟奇的ですが、御手洗と石岡のキャラクターや、軽妙でテンポの良い文章が心地よく、楽しんで読み進めることができるでしょう。なんと言っても、1度読んだら忘れられない、その鮮烈なトリックに目を見張り、嬉しい驚きが存分に味わえる作品です。

読者には細かく丁寧に情報が提示され、2度にわたる「読者への挑戦」が挟み込まれている構成も嬉しいところ。怒涛の解決編へと向かっていく、エンターテインメント性抜群の流れに魅了させられ、御手洗のスマートで巧妙な推理に、うっとりとしてしまいます。とても読みやすく面白い本ですから、ミステリーは読み慣れていないという方でも、十分楽しめるのではないでしょうか。読めば得したような気分になれる、極上の1冊。興味のある方はぜひ読んでみてください。

大人気の御手洗潔シリーズから、おすすめの作品を5つ選んでご紹介しました。キャラクターの魅力溢れる傑作ばかりですから、ぜひその世界観を体験してみてくださいね。

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