ミステリーやハードボイルド、ファンタジー、児童文学など、海外小説の中には面白いものがたくさんあります。中には日本語だけでなく、何か国もの言語に翻訳されている世界的な人気を誇るものもあるので、ぜひチェックしてみてください。
私立探偵のエルキュール・ポワロは、仕事を終え帰宅するため、イスタンブール発カレー行きのオリエント急行に乗ることにしました。予約客のキャンセルなどの偶然が重なり、一等車両に乗り合わせることになったポワロは、そこでサミュエール・エドワーロ・ラチェットという初老の男性と出会います。
ラチェットはポワロが探偵であることを知ると、自分のことを護衛してほしいと依頼してきました。実は、ラチェットは何者かから脅迫状を送り付けられていたのです。しかし、一見すると人当たりの良いラチェットにどこか不愉快な印象を受けたポワロは、その依頼を断ってしまいました。
ところがその後、刺されて殺されたラチェットの死体が発見されたのです。彼の側には燃やされた手紙が落ちており、かろうじて読み取ることができたのは、デイジー・アームストロングという名前で……。
- 著者
- ["アガサ クリスティー", "Agatha Christie"]
- 出版日
- 2011-04-05
「ミステリーの女王」として名高いアガサ・クリスティの代表作の1つで、1934年に発表されました。「エルキュール・ポワロ」シリーズの8作目にあたります。
名前のエルキュールとは、神話に登場する英雄「ヘラクレス」のフランス語形なのですが、怪力の大男として知られるヘラクレスとは違い、ポワロは小男で口髭を蓄えた物腰の柔らかな男性として描かれ、世界中から愛されています。
アガサ・クリスティの名前は、誰もが一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。クリスティは様々な名作を残していますが、その中でも特に有名な代表作が本作です。ドラマ化も多くされているので、そちらから本作の名前を知ったという方も多いかもしれません。
刊行年は1934年と古典ミステリーの類に入りますが、時代を超えて今でも読み応えがあるのは、色褪せぬ魅力ある名作だからこそ、と言ってよいでしょう。列車の中で起きる殺人事件から始まり、予想外の結末まで持っていくストーリーは良い意味でシンプルなので、謎解きに集中しながら物語を楽しむことができます。純粋に謎解きやミステリーに没頭したい方や、海外ミステリーや古典ミステリーの最初の1冊としてもオススメの作品です。
1984年、世界は3つの超大国によって分割統治されていました。超大国とは、すなわちオセアニア、ユーラシア、イースタシアの3つの国です。
ウィンストン・スミスは、オセアニアの最大都市であるロンドンに住む男で、テレスクリーンを管理している真理省記録局に勤務しています。テレスクリーンとは双方向テレビジョンのことで、その他にも町中に設置されたマイクによって、国民は常に監視される生活を送っているのです。この国では、体制に疑問を持つことや党の方針に反する思想は徹底的に排除されました。
そんな中、スミスは現体制に疑問を持ち、監視の目を盗んでは密かに自分の考えをノートに記録しています。しかし、その行為は、もし見つかれば極刑にされるほどのもので……。
- 著者
- ジョージ・オーウェル
- 出版日
- 2009-07-18
イギリスの作家であるジョージ・オーウェルの代表作で、1949年に発表されたディストピア小説です。ディストピアとは、ユートピア(理想郷)の反対の意味を持つ言葉で、日本語では暗黒郷と訳されることもあります。SF作品などで、近未来を舞台に見せかけの自由や格差など社会問題を描き出すことが多く、本作も後に思想や文学に様々な影響を与えることになりました。1998年には「英語で書かれた20世紀の小説ベスト100」、2002年には「史上最高の文学100」に選出されるなど、世界中で高い評価と人気を誇っています。
監視と弾圧の世界は、もし自分がこんな所に生きていたら嫌だなと思う世界観ですが、そう思うのも、刊行から50年前以上経つ現在の世界に共通する世界観だからかもしれません。ディストピア小説は、上記したように現実社会の問題を風刺したり炙り出したりすることも多いジャンルなので、実際に自分達の身と重ね合わせて考えることも容易で、余計に深く考え込みながら読むことができるでしょう。
ストーリーは不条理や理不尽も含んでおり、中には救いのない部分もあるのですが、サスペンス調の流れは読者を一気に引き込んでくれます。設定的にもやや重たく暗めな印象のある物語ですが、重厚な内容は読み応えたっぷりです。他作品にも様々な影響を与えている作品なので、古典SFの1作品としても読んでおきたい作品です。
紀元前のアラブに、数々の商人から尊敬されるハフィッドという名前の大商人がいました。貧しい幼少時代を過ごしていた彼は、その後、大商人へと成長をしたのですが、そこにはある秘密がありました。
時は流れ、年老い、自らの最期を感じ取ったハフィッドは、最も信頼する召使いのエラスムスを、誰も入れたことのない部屋へ連れて行きます。そこにあるのは、10本の巻物。それこそがハフィッドを大商人へと育てあげた秘密だったのです。
- 著者
- オグ・マンディーノ
- 出版日
- 2014-11-22
著者であるオグ・マンディーノは、波乱万丈の人生の末、1968年に本作を発表しました。この本は小説ではなく、小説のようなストーリーを持った自己啓発書になっています。ストーリー仕立てである分、普通の啓発本よりも読みやすく、また分量もそれほど多くないので、あっという間に読み終えることができるでしょう。
最強の大商人であるハフィッドは、貧しい少年時代から一代で大商人へとなったのですが、その成功の陰には秘密の巻物の存在がありました。かつてひょんなことからその巻物を譲り受けたハフィッドは、巻物に書かれている教えを守り、実践していくことで大商人へと成長していったのです。
巻物には、1つ1つに人の習慣や物事を続けることについてなどの教えが書かれています。巻物の教えは、それを読むだけでなく実践をすることが大切ということは、作中のハフィッド自身がそうしてきたことからもわかるのですが、だからこそ読者も読むだけではなく、実践しなくてはいけないと思えてきます。そのため、読者は読み終わって勉強になったと思うだけでなく、何度でも読み返したくなるでしょう。
一方、自己啓発書がメインではありますが、ストーリー部分も感動できるところは多く、単純に小説としても面白く読むことができます。仕事で成功したい方はもちろん、生活の質をあげたい、人として成長したいなど、今の自分より少しでも上にいきたいと思っている方は、ぜひ手に取って巻物の中身を確認してみてください。
バスチアンは、容姿にも勉学にも自信がなく、臆病な性格の少年でした。学校では毎日いじめられ、家では母を亡くして父親と2人暮らし。その父親とも折り合いが悪く、ほとんど口をきいていません。
ある日、バスチアンはいじめっ子から逃げて飛び込んだ本屋で、「はてしない物語」というタイトルの本を見つけました。何故かその本に強く惹かれたバスチアンは、いけないことだとわかっていながらも黙って本を持ち出してしまいます。
それからこっそりと隠れて本を読み耽るバスチアンでしたが、次第に物語の中の主人公が探している人物が自分と重なっているような気がしてきて……。
- 著者
- ミヒャエル・エンデ
- 出版日
- 2000-06-16
ドイツの作家、ミヒャエル・エンデが1979年に発表した児童文学のファンタジーです。本作を原作に「ネバーエンディングストーリー」というタイトルで映画化もされていますが、映画版と原作ではラストシーンが異なることでも知られています。
物語は、前半はバスチアンが「はてしない物語」を読み進めるという形で進んでいきます。読者は物語の中でさらに物語が展開されていく形になるのですが、まるでバスチアンと一緒に「はてしない物語」を読んでいるような気分になるでしょう。一方、「はてしない物語」の中の主人公は、アトレーユといいます。ファンタジーエンという世界に危機が訪れ、その危機を救うために「救い主」を探す旅に出るのです。
全26章の大長編なので、普段あまり本を読み慣れない方には長く感じられるかもしれませんが、前半は上記のようにバスチアンと一緒に「はてしない物語」そのものを楽しみ、中盤以降はバスチアン自身が冒険をしていく物語へと変わっていくので、1つの本の中に2つの物語があるようで、あまり長さを感じることがありません。
児童文学の名作ということで、子供の頃に読んだ方も多くいらっしゃるかもしれませんが、本作は大人になってから読むと、子供の頃にはわからなかった意味がわかってくるでしょう。それだけ奥深いメッセージの込められた物語なので、未読の方はもちろん、既読の方ももう一度読み返して頂きたい作品です。
両親のいない少年、ハリー・ポッターは、伯父と伯母の家で暮らしています。しかし、伯父と伯母、それに従姉弟はハリーのことを邪険に扱い、物置を彼の部屋にするなどひどくいじめていました。
ある日、11歳の誕生日を迎えたハリーは、自分宛ての不思議な手紙を受け取ります。それは、ホグワーツ魔法魔術学校という魔法の学校への入学案内でした。その時になって、ハリーは自分や、そして亡くなった両親が魔法使いだということを知り……。
- 著者
- J.K.ローリング
- 出版日
- 2012-07-03
イギリスの児童文学作家、J.K.ローリングにより1997年に発表された児童文学です。子供のみならず大人にも高い人気を誇り、その人気は世界中に広まりました。世界でのシリーズ累計発行数は4憶を超えており、ハリーポッターシリーズを原作とした映画も世界歴代興行収入第2位となるなど、その人気は留まるところを知りません。
主人公のハリー・ポッターは、赤ん坊の頃に闇の魔法使いヴォルデモート卿に両親を殺され、さらに自分も殺されかけますが、からくも生き残ります。それまで、魔法の世界でヴォルデモート卿に狙われ生き残った者はいなかったため、ハリーは「生き残った男の子」として有名な存在になりました。しかし、ハリー自身は学校に入学するまで、魔法の世界とは関係ない人間の世界で暮らしていたため、魔法や両親のことはもとより、自分のことも何も知りませんでした。
本作に登場するハリーをはじめ、ハリーの親友となるロン・ウィーズリーやハーマイオニー・グレンジャーはもちろんのこと、ハリーの命を狙うヴォルデモートなど闇の魔法使い達のキャラクターは、いずれも等身大の気持ちが丁寧に描かれており、それゆえに共感できる部分も多く、子供に限らず大人も物語に引き込む一因となっています。
設定や人物関係図もそれほど複雑ではなく、ただ物語を楽しみながらスルスルと読み進めることができます。普段、あまりファンタジーに馴染みのない方も、学校という場所が舞台になっていることによって異世界を想像しやすくなっているので、ぜひ一度読んでみてください。ファンタジーの入門書としてもオススメです。
スペインに暮らす少年のサンチャゴは、羊飼いとして日々羊の世話をして暮らしていました。ある日、サンチャゴは夢を見ます。それは、ピラミッドで子供と出会い、サンチャゴがピラミッドに来れば宝物を見つけられるというものでした。
その後、サンチャゴは本を取り替えるために訪れた市場で、メルギゼデックという王様と出会います。自分の見た夢と王様との出会いをきっかけに、サンチャゴは羊飼いの仕事も今の生活も全て捨て、ピラミッドへ宝物を探しに行く旅へ出ることにしました。
- 著者
- パウロ コエーリョ
- 出版日
ブラジルの作家であるパウロ・コエーリョの代表作で、1988年に発表されました。ブラジル国内にとどまらず、数々の言語に翻訳され、世界的ベストセラーとなった作品。宝物を探して旅をする少年の話です。
物語自体はとてもシンプルで童話のような印象もありますが、内容は哲学的な部分もあり、メッセージ性も強くなっています。人生とは何か、自分の人生をどう生きるかなどを、主人公のサンチャゴを通して考えさせられる部分も多いでしょう。面白いというよりも、どこか興味深い作品になっています。
分量的にはそれほど多くありませんが、ついじっくりと考えながら読みたくなるので、読むのに時間がかかることもあるかもしれません。また、読む年齢によって違う感想を抱くこともあるでしょう。ふと思いついた時に、何度でも読み直すことのできる作品です。
1970年のロサンゼルス。人工的に冬眠に入れる技術が実用化された世界で、機械技師のダニエル・ブーン・デイヴィス、通称ダンは、親友のマイルズと共に会社を興して経営していました。
ダンはその会社で家事用ロボットの文化女中器(ハイヤード・ガール)を開発し、会社はどんどん盛り上がっていきます。美人秘書のベルとの結婚話も持ち上がり、ダンはまさに幸せの絶頂にいました。しかし、ロボットの質を追求したいダンは、会社の業績を早く伸ばしたいマイルズと対立、その末にダンは会社から追い出され、全てを失ってしまいます。
失意のどん底に落とされたダンは、愛猫のピートと共に人工冬眠に入ろうと決意しますが……。
- 著者
- ロバート・A. ハインライン
- 出版日
- 2010-01-30
アメリカのSF作家で、SF短編小説の名手と言われるロバート・アンスン・ハインラインの作品で、1956年に発表されました。日本にも多くのファンがおり、後世のSF作品に大きな影響を与えることになった作品です。
SF作品として人気の高い作品ですが、聞き慣れない用語やその説明が延々と続くようなものではなく、ストーリーの中でしっかりと世界観を伝えてくれるので、普段SF作品に馴染みのない方でも、物語を楽しみながら自然に読むことができるでしょう。あちこちに張られた伏線や、テンポの良い展開などはハラハラするサスペンスのような楽しみもあり、どんどんページをめくらせてくれます。
また、婚約者に裏切られ、親友に罠にはめられてしまった主人公が、愛猫と共に困難を乗り越えていく様は、冒険活劇のような痛快さもあり、読み終わった後はスッキリした気持ちになれるでしょう。刊行年は50年以上前ですが、その面白さは現在にも通用します。スピード感溢れるストーリーの中を魅力あるキャラクターが縦横無尽に活躍する様子は、さながら映画を見ているような気分になれます。SFはあまり読まない方、古典SFを読んだことの方でも、つい一気読みしてしまう面白さがあるので、ぜひ手に取ってみてください。
激しい戦火にさらされているとある国。<大きな町>で暮らしていた双子の少年達は、食べるものにも困るほど生活に困窮し、母親に連れられて<小さな町>にやってきます。その町の外れには母親の母、つまり双子の祖母が暮らしており、双子はそこに預けられ、生活することになりました。
しかし、祖母は人から魔女と呼ばれるほど厳しい人で、働かざる者食うべからずと、実の孫である双子に対してさえも働かなければ食事を与えませんでした。そんな厳しい環境の下、双子は農作業を覚えたり、時には盗みを働いたりしながら生き延びていきますが……。
- 著者
- アゴタ クリストフ
- 出版日
ハンガリー出身の作家、アゴタ・クリストフが1986年に発表したデビュー作です。続編に、『証拠』、『第三の嘘』と続く全部で三部作になっていますが、本作だけでも物語に区切りは付けられるラストになっているので、まずはぜひ本作を手に取ってみてください。
作中に登場する双子の少年が書いた作文という形で構成されており、過酷な環境の中で生き延びる2人の少年が、自分達の生き抜く術を身に付けていく様子を淡々とした文章で描き出しています。また、作中には地名や人名などの固有名詞が一切登場しません。寓話のような雰囲気ですが、淡々としているぶん想像力をかきたてられる物語になっています。
戦争という状況の下、感情を捨てて生き抜く力を付けていく子供達の姿と、平和な場所では見えない人間の暗いところがえぐり出すように描かれている様は、一度読みだすとなかなか止めることができなくなってしまうかもしれません。読み進めるうち、この作品がフィクションなのかノンフィクションだったかわからなくなってしまうような、それくらい引き込まれていく作品なので、ぜひまとまった時間に一気読みしてみてください。
ジョン・グリア孤児院で暮らすジルーシャ・アボットは、ある日、院長に呼び出されます。訪れた院長室で告げられたのは、ジルーシャの書いた作文を読んだ孤児院の評議員が彼女の才能を見込み、大学進学の援助を申し出てくれたというものでした。
その話を聞いた時、ジルーシャは院長室を訪れた時に見かけた長い人影のことを思い出します。その人が援助をしてくれるのだと知ったジルーシャは、影がとても長かったことから、彼のことを“あしながおじさん”と呼ぶことにしました。
その後、大学に進学したジルーシャは、自らをジュディと名乗り、大学生活のいろいろなことを手紙に記し、“あしながおじさん”へ送り続けました。
- 著者
- ジーン ウェブスター
- 出版日
- 1954-12-28
アメリカの作家、ジーン・ウェブスターが1912年に発表した児童文学です。物語のほとんどを主人公のジュディが書いた手紙という形を取っており、孤児の女の子が幸せを手に入れるというストーリーと、ジュディ自身のキャラクターの魅力が多くの人を惹きつける作品となりました。
突然、顔も名前もわからない支援者が現れ、大学に進学して希望のある生活を送るという、いわゆるシンデレラストーリーの作品です。作中に登場する“あしながらおじさん”は、日本では子供を支援する基金の名前に使われるほど有名で、本作も名作として多くの人に親しまれています。そんなストーリーももちろん本作の魅力なのですが、本作の最大の魅力はやはり主人公のジュディです。
決して恵まれた環境にいたわけではないジュディですが、孤児院育ちがゆえの世間知らずなところもあり、大学に進学すると、全てに新鮮さを覚えます。そんなジュディがあしながおじさんに送る手紙は明るく快活で、生きる力に満ちており、新しい世界で様々なものや出来事に触れて成長していくジュディの姿は、児童文学らしい明るさを持っています。
一方、前面には出ないものの社会的な問題を散りばめてあるなど、物語の奥深さを感じる一面もあり、そういった点が子供だけでなく大人も惹きつける一因となっているのでしょう。何歳になっても一度は手に取って頂きたい作品です。
私立探偵のフィリップ・マーロウは、ひょんなことからテリー・レノックスを助けます。しかも、偶然にも二度も彼を助けることになったマーロウは、どこか品のある雰囲気のテリーを気に入り、友人となりました。実は、テリーは億万長者のハーラン・ポッターの娘であるシルヴィア・レノックスの夫なのですが、何かと酔いつぶれてはホームレスのように振る舞っていたのです。
ある夜、マーロウのところへ拳銃を手にしたテリーがやってきました。突然の訪問のうえ、さらに自分をメキシコまで送ってほしいというテリー。何とテリーには妻のシルヴィア殺しの容疑がかけられていたのです。マーロウはテリーの無実を信じ、彼をメキシコまで送ることにしました。しかし、テリーを送って帰ってきたマーロウを待ち受けていたのは、テリーを追いかけてきた警官によるひどい尋問で……。
- 著者
- レイモンド・チャンドラー
- 出版日
- 2010-09-09
アメリカの作家、レイモンド・チャンドラーによるハードボイルド小説で、1953年に発表されました。私立探偵フィリップ・マーロウを主人公としたシリーズの第6作目で、本作を含めたチャンドラーの作品は、後のハードボイルド小説に大きな影響を与えました。
主人公のフィリップ・マーロウは、元は地方検事局の捜査官という過去を持った私立探偵で、警察などの権力に従うことを良しとせず、弱いものを見捨てることのできない情に厚い性格をした男です。一方で、事件の捜査は様々な事情や人物関係を鑑みて慎重に行うなど、細やかな面もあります。
ハードボイルドの最高峰とも名高い本作は、分量も多く、読み終えるのには少し時間がかかることもあるかもしれませんが、そんな分量の多さも忘れてしまうほど一気に読み進めてしまう面白さがあります。主人公のマーロウをはじめ、テリーや殺されたシルヴィアなど、様々な人物が絡み合いながらも、個々の心情を追求し過ぎないスタイルはハードボイルドらしいとも言えるでしょう。読み終えた時に、面白いよりもかっこいいと思えてしまう作品で、ハードボイルド小説に興味がある方は、ぜひ一度は手に取ってみてください。
いかがでしたか? 海外小説は翻訳家によっても文章の印象が変わってきます。作品の中には複数の翻訳家が同じ作品を翻訳していることもあるので、お気に入りの作品を見つけたら、ぜひその辺りもチェックしてみてくださいね。
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すっかり生活の一部となりつつあるSNS。読書好きの人のなかには、インスタグラムでおしゃれに本を紹介している人もいるんです。「映え」のポイントなどを解説していきます。目指せインフルエンサー!