動物好き必読の本 ―― なぜ僕らは動物に対して優しくなれるのか

動物好き必読の本 ―― なぜ僕らは動物に対して優しくなれるのか

更新:2021.12.13

どうも! WEAVERの河邉徹です! これでもう連載4回目になります。いつも読んでくださってありがとうございます。先日全国9カ所のホールをまわるツアーが、東京NHKホールにてファイナルを迎えました。ツアーが終わって早速ですが6月からは全国14カ所のライブハウスをまわるツアーも決まっていて、今はその準備に忙しくしています。 人は忙しくなってくると癒しが欲しくなってくるものですよね! 癒し。さて誰にとっても癒しになるものといえば……そうです、可愛い動物たちです!

2004年、兵庫県にて杉本雄治(Piano/Vo)、奥野翔太(Ba/Cho)と共にWEAVER結成。。2007年、現編成の3ピース・ピアノバンドとしてライブハウスで活動をスタート。2010年4月より本格的に活動を開始するため上京。6月にリリースした「Hard to say I love you~言い出せなくて~」はサウンドプロデューサーに亀田誠治を迎えての初めてのパッケージシングルとなった。同年にはアルバム『新世界創造記・前編』『新世界創造記・後編』と2作連続でリリース。2012年3月からは全国31カ所33公演、『WEAVER Live House TOUR 2012「Piano Trio Philosophy ~do YOU ride on No.66?~』を開催。2013年にはアルバム『Handmade』を発表。その後、半年間の英ロンドン留学(2014年1月~7月)や、全国ツアー2本、また2015年夏は全国各地のフェス・イベントにも約10本出演するなど、精力的な活動を行ってきた。同年10月からは全国10カ所のホールツアーを敢行。2016年2月には待望のオリジナルアルバム『Night Rainbow』をリリース。12月にはWEAVER初の自主企画対バンツアー『Music Holiday vol.1 〜対バン始めました〜』を開催した。2017年春にはリリース&ライブハウスツアーが決定している。 http://www.weavermusic.jp/
泡の子
なぜあんなにも僕らは動物に対して優しくなれるのでしょう。言葉が話せないことも大きな理由でしょうか。動物たちと言葉を話せたらどんなに楽しいだろうと想像したことは誰しもあると思いますが、逆に話せないことが動物が人の心の為になっている大事な要素であるとも言われています。つまり言葉とは違うところで通じ合いたいのが、人なのかもしれませんね。

ということで、今回は動物好き必読の、動物好きの為の本を5冊おすすめさせていただきます。

午後からはワニ日和

似鳥鶏さんによる動物園を舞台にしたミステリー小説。主人公は同僚から桃と呼ばれている飼育員の桃本。園内にはモモという名前の動物もいる為、「人間の方のモモ」と呼ばれることもあるからユニークだ。物語の中では様々な動物たちが登場し、物語を通してその豆知識に触れたり動物園の裏側を覗けたような気持ちになるのが動物好きにはたまらない。

そんな平和そうな空気に包まれた小説の冒頭だが、なんと園内の動物が盗まれるという事件が起こる。しかも、「怪盗ソロモン」という書き置きまでされているのだった。いったい誰がどんな目的で動物を盗んだのだろうか。読み進めていけば、個性豊かな飼育員の仲間と共に、その謎へと近づいていくことができる。

動物園が舞台になっている小説もなかなか珍しいだろう。動物たちの可愛いらしさや飼育員たちの動物への愛が物語の随所に見られ、ほっこりしながらもミステリーを楽しむことができる一冊だ。

ある小さなスズメの記録

イギリス人であるクレア・キップスさんによる全世界で訳されベストセラーとなった実話。第二次世界対戦中、夫に先立たれたキップス夫人は家の玄関前で一羽の瀕死の雀と出会う。キップス夫人は親切にもスズメを家に連れ帰り、世話をし、このクラレンスという名前の雀と12年間共に生活をしたのだった。その12年間の予想もできなかった発見と驚き、そして愛がこの本には詰まっている。

公園などにもいる、とても身近な生き物であるスズメ。しかし、そのスズメの生態については知らないことばかり。ピアニストであったキップス夫人は、何度もスズメにピアノを聴かせていた。するとある日、不思議なことが起こったのである。クラレンスは歌の練習を始めたのだ。そして彼はピアノの伴奏に合わせ歌うことも覚え、美しい旋律を作曲することもできた。嬉しいことや嫌なことなど意思を伝えることはもちろん、一緒に寝たり音楽を楽しんだり、スズメは私たちが想像するよりも人と共に暮らし励ます力を持っていたのだ。

また、戦争中であるという時代背景も忘れてはならない。晩年にクラレンスは病気にかかり、その闘病する姿も描かれている。この本を読めば、誰もがこの小さな命の力を感じずにはいられないだろう。一つ一つの命がかけがえのないものなのだと、改めて気づかせてもらえる本だ。

ノラや

内田百閒さんによって書かれた『ノラや』は1950年代に書き始められた随筆である。夏目漱石を師に持ち、独特のユーモアや文体を持つ作家だ。飼い猫であるノラを溺愛し、その生活を描いた、読めば猫が愛しくて仕方なくなる本である。

その名前の通りノラはもともと野良猫だった。“野良猫を野良猫として飼つてゐるつもりであるが、次第に家の中に這入つて来て、居直つた形である。”とあるように、最初はただ餌をあげていただけの存在が、気がつけばなくてはならない存在になっていたのである。前半の何でもない猫との生活の描写は、猫の自由な生活が活き活きと描かれていて、いかに作者が猫を愛して観察していたのかを感じ取ることができる。

1年半ほど共に暮らし、ある日ノラは失踪してしまう。中盤からはノラを失った作者の悲しみの日々がこれでもかという程描かれていて、ノラを家族のように大切にしていた気持ちが痛ましいほどに伝わってくる。ノラの兄弟ではないかと思われるクルツという猫も登場するが、それでも胸にあいた穴は埋まらず、ノラを想う日々は続く。

ノラへの愛情を中心に、様々な角度から猫との生活を読むことができる。この時代の猫との暮らしをこの時代の文体と共に味わうことができる一冊だ。

アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

動物というくくりに入れるには一風変わった本を紹介する。フィリップ・K・ディックによって描かれたSF小説。第三次世界大戦後の世界が舞台になっており、地球は放射性降下物、死の灰により多くの生物が絶滅していた。この世界では生きている動物を所有することが地位の象徴となっており、主人公のディックも喉から手が出るほど動物を欲しがった。“これでおれも動物の飼い主になれたんだーそう自分にいいきかせた。それも電気じゃない、生きた動物”。こうした主人公の言葉から、いかにこの世界では動物を飼うということが誇らしいことであるかがわかる。

またこの時代はアンドロイド、いわゆるロボットが見た目や会話では人間と区別できない程精巧に作られていて、人とロボットを区別する為のテストが存在する。中には過去の記憶を埋め込まれ、自分がアンドロイドであることを自覚していない者もいる。

これは哲学的な他我の問題も内包している小説である。物語の中でも「感情移入」というキーワードが出てくるが、主人公は生き物ではないはずのアンドロイドに感情移入をしてしまうようになり、それによる葛藤も描かれている。感情移入してしまうことがアンドロイドに心があることの証明にはならないが、精巧に作られたロボットの「心」に読者も共感してしまうだろう。

他にも様々な要素が組み込まれた小説で、前半は訳本特有の読みにくさもあるかもしれないが、読み進めていくと気がつけばこのSFの世界にのめり込んでいるだろう。

三匹のおっさん

果たしてこれを動物のまとめに入れて良いのだろうか。これは動物とはまったく関係のない小説だが、「三匹」と書いてあるということで許してもらおう。以前にも紹介した作家、有川浩さんによる三匹のおっさんシリーズの第1冊目である。

子どもも大人もヒーローが好きである。空を飛ぶヒーロー、怪力のヒーロー、魔法を使うヒーロー、ヒーローには数あれど、こんなにも味のあるヒーローが今までにいただろうか。なんでもない、普通のおっさん達がとにかくかっこいい小説だ。そして世界を救うのではなく、身の回りにいる人たちを救うのである。

清一、重雄、則夫の三人は子どもの頃から「三匹の悪ガキ」と呼ばれていた。三人は還暦の年を迎え、自警団を結成する。それぞれ剣道、柔道、機械の達人で、身の回りの人を悪の手から守るのである。

勧善懲悪の気持ちをスッキリさせくれる小説で、日常の家族に対する不満や上手くいかないことも身近に感じられ、将来こんなおっさんになりたい、という気持ちにさせてくれる。とにかく読みやすいので、元気になりたい人におすすめ。動物は関係ないが、まだ読んだことがなければ是非読んでほしい。

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