気軽に本を読み始めたい時や、長編小説はちょっと……という方に、手に取りやすい短編集をジャンル別にご紹介します。一つの物語が数十ページ程度ですので、気軽にその作者の世界をいくつも味わうことが出来るのでおすすめです。
本書は自衛隊を舞台にした有川浩のラブコメシリーズの第2弾です。
胸キュン恋愛小説でありながら、あまり描かれることのない自衛隊員やその家族の日常を垣間見させてくれ、また、自衛隊という組織について知れる機会にもなる一冊です。笑わせも、泣かせもしてくれる作品が揃っております。
普通の恋愛小説には飽きてしまったという方におすすめしたい、人気作家・有川浩の自衛隊ラブコメ短編集です。
- 著者
- 有川 浩
- 出版日
- 2012-06-22
表題作の「ラブコメ今昔」では、自衛隊の広報誌に載せるコラム「自衛官の恋愛と結婚」の情報収集のため、上官に「奥様との馴れ初め」を聴き込む女性記者が登場します。そんなみっともないことを記事にさせるか!と上官は怒りますが、2人の攻防戦の行方は……。2人のやり取りも然ることながら、この物語にはそれだけではない楽しみが隠されています。ぜひ驚きのラストまで読んでいただきたい作品です。
5作目の「秘め事」は上官の愛娘と恋に落ちた自衛官が主人公です。どうやって恋人の父親である上官に打ち明けるか悩む中、ある出来事をきっかけに事態が動き出します。甘い恋愛を描くだけでは終わらせず、自衛官という職業ならではの悲しい現実も描かれているその作品の魅力にきっと引き込まれるでしょう。
読んだ後、恋がしたくなるような、また今ある恋をもっと大切にしたくなるような、そんな物語が詰まった一冊です。
有川浩の作品を他にも読んでみたい方は、こちらの記事もおすすめです。
人気No.1恋愛小説家・有川浩のおすすめ文庫作品ランキングベスト10!
有川浩の作品はあらゆる世代からの人気が高く、映像化したものも数えきれないほど。本好き読者による2011年の好きな作家ランキング女性編では、堂々の1位を獲得している作家。そんな有川浩の人気作品をご紹介します。
この小説は、越谷オサムの初めての短編集で、5作品が収録されています。ユーモアたっぷりだったり、少し叙情的だったり、一編ごとに作風も文体も変わっていますが、共通のテーマは愛すべく「バカ」について。
しっかり笑えて、切なくも、懐かしくもなれる、一冊で五度美味しく、得した気分になれる本です。思わず吹き出してしまうようなユーモアに溢れているため、周りに誰もいない場所で読まれることをおすすめします。
- 著者
- 越谷 オサム
- 出版日
- 2012-11-22
表題作の「金曜のバカ」は、女子高生と気弱なストーカーのお話です。2人の間で何が起こり、お互いの気持ちにどんな変化が起こるのか、予測のつかない作品になっています。とってもおバカな2人のはずなのに、読んでいると少し羨ましいような気持ちになってしまうから不思議です。
「ゴンとナナ」は老犬ゴンと女子高校生ナナのそれぞれの視点でストーリーが語られており、よく計算された作品です。
「案外、生涯の友というのはある日ひょっこり現れるもんだよ。ミイがそうだったように。」
(『金曜のバカ』「ゴンとナナ」から引用)
言葉の通じない歯がゆさを感じながらもゴンがナナに伝えようとしたメッセージは、私達読者に向けられたもののようにも思えてるでしょう。
キュートな世界観を持った5つの作品からなる『金曜のバカ』は、それぞれが自由な解釈で楽しめるようになっています。ぜひ手にとって頂きたい一冊です。
『そばかすのフィギュア』は菅浩江がデビューした1981年から1993年までの初期作品短編集です。切なくも美しい8作品が収録されています。
どこまでがリアルで、どこからがフィクションかかわらない、そんなSFの舞台装置を使いながら、人間の内面をじっくり見つめて描いたような素晴らしい作品が詰めこまれています。
- 著者
- 菅 浩江
- 出版日
- 2007-09-21
「雨の檻」はなんとも言えない後味が残る切ないお話です。雨の景色しか見えない無菌室に隔離された少女の唯一の家族はロボットのフィー。そのフィーの様子がおかしくなってしまい……。印象的な結末をお楽しみください。
表題作「そばかすのフィギュア」は、自在に動き感情も持つフィギュアとそのフィギュアに想いを重ねる少女の物語です。成長していく主人公の姿には胸を打たれるでしょう。
SF作品といいつつ、設定はさほど難しくないので、SF初心者の方にもおすすめしたい短編集です。
『ZOO』は乙一の傑作短編集です。2冊にわけて文庫化されています。今回は『ZOO1』をご紹介。5作品が収録されており、それぞれテイストが違うので、飽きずに読むことができます。
ページ数は少ないですが、乙一の世界観に十分引き込まれてしまう作品ばかり。彼の作品を初めて読む方にもぴったりの一冊です。
- 著者
- 乙一
- 出版日
ある日突然見知らぬ部屋に監禁された僕と姉。同じような部屋が計7つ。そこでは、一日に一回、監禁されて一週間経った者が殺されるというおぞましい事が行われていて……。
「SEVEN ROOMS」のあらすじですが、とにかく設定が怖いのです。緊張感があり、ドキドキしながらも一気に最後まで読んでしまう作品となっています。
表題作「ZOO」は動物園からの帰り道、些細なことが原因で恋人を殺してしまった男が主人公のお話です。現実を受け止めきれず、自分が殺したにも関わらず犯人探しをする主人公。自分を誤魔化し続ける主人公の姿は滑稽でありながら、切ないものを感じられるでしょう。読者を引きずり込むような狂気の世界は、乙一作品が持つ魅力です。
5作品、どれも粒ぞろい。『ZOO1』に収録された5編は映画化もされていますので、そちらもあわせて楽しみたい短編集です。
6つの物語が収められた米澤穂信の短編ミステリー『満願』。どの作品も外すことが出来ない、ハイレベルな本格ミステリとなっています。
ここからどうなるの?と読み進め、そうだったのか!に辿り着く過程を存分に楽しめるおすすめの短編集です。選び抜かれた言葉で表現された、滲み出るような狂気を感じてください。
- 著者
- 米澤 穂信
- 出版日
- 2017-07-28
「こんなはずじゃなかった。うまくいったのに。」
(『満願』「夜警」から引用)
死の直前につぶやかれた言葉が意味するものは、そして事件の真実の姿とは……?1作目「夜警」の物語は殉職した新人警官の葬儀で幕をあけます。事件の謎解きだけではない、人間の卑小さや滑稽さが描かれたこの作品はさすが米澤穂信、という感じです。
6作目は表題作の「満願」です。主人公の弁護士は、学生時代の恩人である内儀が起こした殺人事件の弁護をすることになるのですが、それまで盛んに控訴を望んでいた内儀が突然「もういいんです」と断念したことに主人公は疑問を持ちます。彼女にとって大事なものは何だったのか、守りたいものは何だったのか……主人公がある発想に至った時、読者の皆様にも戦慄がはしるのではないでしょうか。
ぜひ、磨き上げられた美しい文章で描かれた珠玉のミステリ小説『満願』をお楽しみください。
ジャンル別に5冊ご紹介いたしました。ジャンル毎に様々な作者の作品を読むも良し。お気に入りの作者の作品を網羅するも良し。自由な楽しみ方で読書をしていただきたいと思います。