いつの時代も普遍的な男女のあれやこれや。そのズレこそが相手を求めたり、許したかったり、そして「思いやり」という優しさが結果的に生まれるように、うまくできているものではないでしょうか。好き嫌いから始まってはしまうものの、もっと斜め上の向こう側で発展し繰り広げられる独特の距離感と最終的にたどり着くであろう人間愛。僕は男中心の家庭で育ち、漠然と異性に対してはフランクなイメージはなく絶対的な象徴としているとびきりの面倒クサ男。語弊を恐れず書くと、いつだって女性は未知の生物なのです。
食べる女
台所に行儀悪く立ったまま卵かけ御飯をシャバシャバ流し込む女性。料理ができず振られた女性が肉じゃがを作る復讐劇。父のために作り続けるポテトサラダや、父の謎が解けた時の冷奴。大人で、どこか冷静で、女性の清々しいエロスも心地よい、美味しい食に付いてくる美味しいストーリーを描いた短編集です。「食べる男」と題して書かれている3編も対照的で秀逸。男女の味に舌鼓。イチオシです。
働く女
女優業、外商、一般事務、コンビニ、フリーライター、エステティシャン、総合職、呉服屋、元銀行員、ラブホテルの店長と題名通り十人十色の働く女性を活写した短編集。女性が働くということはただ手を動かしたりすることだけではない。男性の想像を遥かに超えた仕事本来とは関係ない、いらないストレスや珍事件とともに皆それぞれの事情の中で健気に懸命に励んでいる。働く女性は強さ勢いも桁外れだが、実はそうしていないとやってられないからなのかもしれませんね。