こんにちは。藍坊主のベース、藤森真一です。すっかり暖かくなりましたね。スタジオに閉じこもるには少しもったいない季節になってきました。音楽制作の休憩時間は、本棚から数冊ひっぱりだして、窓を全開にして、ソファーにゴロン。そんな感じで本を読んでいます。
さて今回紹介したいのは『14歳の自分に読ませたい本』です。女の子と手が触れただけで顔が真っ赤になってしまうくらいの初心さを持ちながらも「俺はもう世の中の8割ぐらいは知っているぜ! 」と、自分を大人だと思っていたあの頃。知らないくせに、根拠が無いくせに、自信だけはある。こんな矛盾を孕んだ14歳の頃の自分へ、この4冊をぶつけたいと思います。
現実に目を向けさせ、根拠の無い自信を摘み取ることが目的じゃありません。根拠の無い自信をより長く持続させて、根拠のある自信に変えるために必要な情報を注入する本です。「現実=夢から醒めた状態」ではなく「現実=夢に向かう起爆剤がある場所」と知らせたい。ドラゴンボールを探すドラゴンレーダーの点滅音のように、心拍数を羅針盤に出来るように好奇心を刺激したい。この頃までに出来た常識を一度壊してしまいたいのです。
例えば、運動=体育や部活。勉強=国語や算数や理科や社会。この2つの単語は、学校では別のもののようだけど、日常生活では2つで1セットです。
例えば、赤ちゃんがハイハイ(運動)を出来るようになると、目に映る風景が変わって、入力情報(勉強)が増えるように。
例えば、脳味噌という一つの器官が、入力は五感での情報収集(勉強)で、出力が運動で成り立っているように。
例えば、大工さんが(祖父が大工でした)平面の設計図を、頭の中で立体に変換しながら体を動かすように。
「見方が変われば世界は変わる」なんて言ったら、当時の俺に笑われるかもしれないけど、本当にそうなのだから仕方が無いのです。ではまず、そのような発見がある本を紹介します。タイトルはズバリ、『バカなおとなにならない脳』です。少年よ!いざ!ゆかん!!ワンダーランドへ!
対人関係に悩む子どもへ向けた、養老孟司のことば
- 著者
- 養老孟司
- 出版日
- 2011-07-16
「こころは何処にあるのですか」
「人とのコミュニケーションはどうすればうまくできますか」
「何故夢をみるのですか」
「頭の良さは遺伝しますか」
「思うようにいかないのは大人も同じですか」
未成年から沸き上がる質問疑問珍問に、解剖学者の養老孟司さんが真っ正面から答えていく本。読んでいて気になってしまうのが、対人関係で悩んでいる子供が多くいるということ。子供は無邪気だけど、無邪気を演じている部分もあると思うのです。友達はもちろん、親に気を使うこともあるような気がする。誕生日プレゼントを貰いラッピングを開ける時、欲しい物ではなかった時のために喜ぶ準備をした記憶があります。
学校に行けない子、家にも帰りたくない子。そんな子供たちに、著者が一貫して伝えようとしていることは「人間社会がすべてじゃないよ」ではないかと思います。逃げ込む場所も、トイレや図書室やゲームセンターなど、人間が作ったものばかり。都市化した現在、花鳥風月の欠如に警鐘を鳴らしている本なのかもしれません。「逃げ場を作りなさい」と言える大人の優しさに加え、分からないことは分からないと言う正直さ。14歳の自分に読ませたい1冊です。
「正義」への問い、その本質―私たちの正義とは
- 著者
- 小林 よしのり
- 出版日
14歳の頃、僕は反抗期にありました。「子供というのは、罪はない存在。少々のことは許される」と勘違いし悪戯もしました。理由はすっかり忘れてしまったけれど、ある夜父親に向かって「オヤジの稼ぎが少ないからじゃねーか!」と怒鳴った記憶があります。その時、間髪入れず笊(ざる)が飛んで来て僕の顔面を直撃しました。
投げたのは、うどんを食べていた祖父(生前、うどんが好きでした)です。元大工の祖父は「働いたこともねーくせに生意気言うな!」と一喝。「ごめんなさい」という言葉を胸にしまい家を飛び出しました。詫びも入れられない自分に恥ずかしくなるけど、14歳という年齢は上手く気持ちを言葉に出来ないものなのかもしれません。この一連の流れの根本にある「自分は正義の側にいる」という馬鹿げた空想を壊してくれる本を紹介します。
「ごーまんかましてよかですか?」でお馴染みのゴーマニズム宣言より20年前に出版された脱正義論です。薬害エイズ訴訟を支える会に参加して運動し追放された著者が、運動の動機を見つめ直し、追放された原因を探り、訴える本。
何を訴えているかというと「信じ込んでいる自分の正義から抜け出せ!」「自分のやましさにもしっかりと目をむけろ!」ということ。
命がけで働いたことのない子供は「私は善良な市民だから大丈夫」と思ってしまいがち。食っていくという行為自体、ある方向から見たら悪なんだと思います。「批判されたくない。正義の側で生きていたい」というのも人間の性。ただ生きていること自体、悪であるということを知らないと、いつか深い傷を心に受けることになると教えてくれる本です。