清野とおるさんの『そのおこだわり、俺にもくれよ!』という漫画があります。一風変わったこだわりを持って日々を楽しく過ごす「おこだわり人」(なんだそりゃ)を紹介していくエッセイ風漫画ですが、その中に「小説を一ページずつ破りながら読む人」が紹介されておりました。
そんなヤツいるかっ!!と思うでしょう。しかし僕が思い出したのは、昔カフェでバイトしていた時に屑篭で見た、丁寧に破られた小説のページの山……当時は猟奇的なものを感じぞっとしましたが、今になって嗚呼あれは「おこだわり人」の仕業だったんだなア……としみじみ思い出しました。
さすがに「おこだわり人」は極端にしても、人は誰しも個性的な一面を持っているハズ。しかし意外と自分では気付かないため我々は人生に迷うのではないでしょうか。
ということで今回はノンフィクションな、作者の個性が見える3冊を紹介。他人の個性をヒントに、自分の個性を見つけにいきましょう。
声優魂
- 著者
- 大塚 明夫
- 出版日
- 2015-03-26
凄い言葉です。これが帯のキャッチコピーなのだからそれはもう気になって手に取ってしまいます。声優・大塚明夫と言えば現在最も有名な男性声優の一人であり代表作はゲーム「メタルギア」シリーズのスネーク役など。名前を聞いたことがない方でも洋画の吹き替えやTVのナレーションなどでその渋い声や演技を耳にした事がある方は多いハズ。
ここ数年の声優志望者の増加を受け、ベテランである氏による彼らへの注意喚起として書かれたこの本。声優という仕事がいかに儲からないか。需要と供給がいかに釣り合っていないか。自分で仕事を作れないことの恐ろしさ……等々。とにかく将来の職業として声優を選ぶのは余りにも危険だからやめておけ、ということが延々書かれていますが、何故か読めば読むほど「声優」という職業が魅力的に思えてしまうから面白い。それは著者の「声優」という仕事にかける情熱とプライドが文章から滲み出ているからに他ならないでしょう。
「夢を追う」とは綺麗ごとではなく「生き方」の選択であり、潜むリスクを十分に理解した上で、それでもその道を選ぶ理由が君には本当にあるのか? そう問いかけるこの本は、音楽家という如何にも不安定な道を行く僕にとっても耳の痛い一冊。しかし同時に夢を追うことの素晴らしさも再確認させてくれるバイブルでもあるのです。
夢見る皆様には勿論、自分の夢をまだ見つけていない人にもゼヒ読んで頂きたい。
存在の耐えがたきサルサ
- 著者
- 村上 龍
- 出版日
こちらは作家・村上龍がこれまでに行った対談を一冊にまとめたもの。
作家、批評家、映画監督、音楽家、社会思想学者、免疫学者等々、実に多様な職種の14名を相手に繰り広げられるこの対談集。話題も実に様々で、文学、戦争、経済、心理学、夢、果ては当時社会を騒がせた援助交際まで、実にフリーダムに展開していく。そして何故か大体の対談相手が作家・村上春樹氏に対してのコメント(苦言?)を残していくのはご愛嬌。
彼らプロフェッショナルのボキャブラリーは半端ではなく、難解な言葉がそのまま登場しますが、そこはめげずに一語一語お手元のスマートフォンで調べていきましょう。するとアナタの知識も増えていき、彼らが伝えようとしている事の本質が理解できていくはず。次第に自分も知識人の仲間入りをしたような錯覚に陥るのがこの本の面白さ。
あらヤだやっぱり「対談集」って何か敷居が高くて難しそうだワ、と若干引いてしまった方がいらっしゃるかもしれませんが、この本には『エヴァンゲリオン』の監督・庵野秀明氏、元YMO・坂本龍一氏など、国民的著名人との対談も収録してあるので、まずは人物像が想像しやすい彼らとの回から読んでみてはいかがでしょう。そのうち面白くなって全員分読んでしまうハズです。
自分の考えていることを相手に伝える事のエキサイティングさを知る一冊。この本を読めば語彙も増えてプレゼンテーションは勿論、口喧嘩にも強くなる事間違いなし!!