他人の個性をヒントに己を探求ーー作者の素顔が見える本
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他人の個性をヒントに己を探求ーー作者の素顔が見える本

更新:2016.5.27 作成:2016.5.27

ジメジメするこんな季節は、20歳の頃住んでいた湿度MAXの安アパートで本棚を丸々1つ緑色にカビさせ、大量の本を処分したことを思い出してちょっぴりブルー。BURNOUT SYNDROMESのギター/ヴォーカル、熊谷です。連載2回目はエッセイや対談集など「作者の個性が見える本」をご紹介。事実は小説より奇なり、ですよ。

熊谷和海プロフィール画像
バンド「BURNOUT SYNDROMES」Vo/Gt
熊谷和海
平均年齢23歳、大阪出身・在住の3ピースバンド、BURNOUT SYNDROMES(バーンアウトシンドロームズ)のVo/Gt。バンドメンバーは熊谷の他、石川大裕(Ba/Cho)、廣瀬拓哉(Dr/Cho)。2005年結成。日本語の響き、美しさを大切にした文學的な歌詞やヴォーカル、その世界を彩る緻密に計算されたアレンジ。スリーピースの限界に常に挑戦している。2016年3月にメジャーデビュー・シングル「FLY HIGH!!」を発表。10月には2ndシングル「ヒカリアレ」をリリース。11月に1stアルバム『檸檬』を発売した。2018年2月21日、2ndアルバム『孔雀』がリリースされた。 http://burnoutsyndromes.com/
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清野とおるさんの『そのおこだわり、俺にもくれよ!』という漫画があります。一風変わったこだわりを持って日々を楽しく過ごす「おこだわり人」(なんだそりゃ)を紹介していくエッセイ風漫画ですが、その中に「小説を一ページずつ破りながら読む人」が紹介されておりました。

そんなヤツいるかっ!!と思うでしょう。しかし僕が思い出したのは、昔カフェでバイトしていた時に屑篭で見た、丁寧に破られた小説のページの山……当時は猟奇的なものを感じぞっとしましたが、今になって嗚呼あれは「おこだわり人」の仕業だったんだなア……としみじみ思い出しました。

さすがに「おこだわり人」は極端にしても、人は誰しも個性的な一面を持っているハズ。しかし意外と自分では気付かないため我々は人生に迷うのではないでしょうか。

ということで今回はノンフィクションな、作者の個性が見える3冊を紹介。他人の個性をヒントに、自分の個性を見つけにいきましょう。

声優魂

著者
大塚 明夫
出版日
2015-03-26
凄い言葉です。これが帯のキャッチコピーなのだからそれはもう気になって手に取ってしまいます。声優・大塚明夫と言えば現在最も有名な男性声優の一人であり代表作はゲーム「メタルギア」シリーズのスネーク役など。名前を聞いたことがない方でも洋画の吹き替えやTVのナレーションなどでその渋い声や演技を耳にした事がある方は多いハズ。

ここ数年の声優志望者の増加を受け、ベテランである氏による彼らへの注意喚起として書かれたこの本。声優という仕事がいかに儲からないか。需要と供給がいかに釣り合っていないか。自分で仕事を作れないことの恐ろしさ……等々。とにかく将来の職業として声優を選ぶのは余りにも危険だからやめておけ、ということが延々書かれていますが、何故か読めば読むほど「声優」という職業が魅力的に思えてしまうから面白い。それは著者の「声優」という仕事にかける情熱とプライドが文章から滲み出ているからに他ならないでしょう。

「夢を追う」とは綺麗ごとではなく「生き方」の選択であり、潜むリスクを十分に理解した上で、それでもその道を選ぶ理由が君には本当にあるのか? そう問いかけるこの本は、音楽家という如何にも不安定な道を行く僕にとっても耳の痛い一冊。しかし同時に夢を追うことの素晴らしさも再確認させてくれるバイブルでもあるのです。

夢見る皆様には勿論、自分の夢をまだ見つけていない人にもゼヒ読んで頂きたい。

存在の耐えがたきサルサ

著者
村上 龍
出版日
こちらは作家・村上龍がこれまでに行った対談を一冊にまとめたもの。

作家、批評家、映画監督、音楽家、社会思想学者、免疫学者等々、実に多様な職種の14名を相手に繰り広げられるこの対談集。話題も実に様々で、文学、戦争、経済、心理学、夢、果ては当時社会を騒がせた援助交際まで、実にフリーダムに展開していく。そして何故か大体の対談相手が作家・村上春樹氏に対してのコメント(苦言?)を残していくのはご愛嬌。

彼らプロフェッショナルのボキャブラリーは半端ではなく、難解な言葉がそのまま登場しますが、そこはめげずに一語一語お手元のスマートフォンで調べていきましょう。するとアナタの知識も増えていき、彼らが伝えようとしている事の本質が理解できていくはず。次第に自分も知識人の仲間入りをしたような錯覚に陥るのがこの本の面白さ。

あらヤだやっぱり「対談集」って何か敷居が高くて難しそうだワ、と若干引いてしまった方がいらっしゃるかもしれませんが、この本には『エヴァンゲリオン』の監督・庵野秀明氏、元YMO・坂本龍一氏など、国民的著名人との対談も収録してあるので、まずは人物像が想像しやすい彼らとの回から読んでみてはいかがでしょう。そのうち面白くなって全員分読んでしまうハズです。

自分の考えていることを相手に伝える事のエキサイティングさを知る一冊。この本を読めば語彙も増えてプレゼンテーションは勿論、口喧嘩にも強くなる事間違いなし!!

我が闘争(上)(下)

著者
アドルフ・ヒトラー
出版日
“戦争体験なき世代こそ、この書を読むべき”。

かのアドルフ・ヒトラーがドイツ国首相となり独裁政権を敷く10年前(当時35歳)、ミュンヘン一揆の首謀者としての罪で禁固刑に服した後、執筆した自伝的政治哲学書。冒頭の一文は翻訳者による前書きからの抜粋。

自伝「的」というのは、この本は実は単なる自伝ではなく、より政治的プロパガンダとしての機能を高めるために、著者ヒトラーによる巧妙な嘘が散りばめられているからです。

例えば、過激な反ユダヤ主義者として有名なヒトラーですが、本文によると少年期まではむしろユダヤ人への差別に批判的であったと記されています。それが青年期に彼らの主義に触れ、動向を観察するうちにユダヤ人こそがドイツの文化や政治を腐敗させている原因であると気づいたヒトラー青年は、「感情ではなく理性に基づき」彼らを排除しなければならないという結論に「葛藤しながら」辿り着いた……というようなことが情感たっぷりに描かれています。

しかし、巻末の注釈によればこの部分はまったくの嘘であり、実はヒトラーは父親と教師の影響で根っからの反ユダヤ主義者だったことが近年の研究で分かったそうです。この注釈が無ければ、ヒロイックなエピソードを絡めたヒトラーの主張に不思議と説得力を感じてしまう読者は多いはず。「魔術」とも称されるヒトラーの人心掌握術の片鱗が窺えます。

結果としてユダヤ人の迫害、他国への侵略政策により第二次世界大戦を引き起こしたことで20世紀最悪の独裁者として歴史の教科書に載ることになったアドルフ・ヒトラー。しかし彼の純粋な愛国心、初志を貫徹する行動力と知能は間違いなく世界最高峰のそれであり、学ぶべきこともきっと多いはず。

特に最近巷でも囁かれ始めた移民問題などにこれから直面していく世代の我々にとっても、批判的必読の一冊と言えるのではないでしょうか。