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戦国時代のプー太郎【結城洋平】

更新:2020.12.2 作成:2017.7.3

前回の忍者特集の勢いをそのままに、今回も忍者をテーマにした3冊。 忍者ものだからと言って、ただのアクション小説と思うなかれ。 やはり忍者ものの小説の中には人の心の移り変わりや、気持ちの動きが沢山。時代小説が苦手な方にもオススメの3冊です。

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忍びの移り変わり、時代の移り変わり

この本を読んで、とてつもなく瓢箪(ひょうたん)を育てたくなりました。
瓢箪にはこんな力があるんだ!?
忍者と瓢箪の激動の戦国ファンタジーにとても心踊らされました。

今、自宅では“ウンベラータ”という品種の観葉植物を育てています。
この夏の時期は成長速度が一段と早くなり、グングンと伸びていく姿を観ていると清々しい気持ちになります。
“ウンベラータ”という品種なので“ウンベちゃん”と名付け、毎日のように呼びかけているのも急成長の要因でしょう。(そうなのか!?)
「とっぴんぱらりの風太郎」では夏のこの時期に成長していく瓢箪(ひょうたん)の因心居士(いんしんこじ)が主人公の風太郎や、登場人物を翻弄していきます。
そんな姿にびっくりさせられ、ハッとさせられ、納得させられました。
忍者が主人公の小説といえば、超人的な能力を持った忍者が、華麗に屋根を飛び、人とは思えない術を使い、誰にも知られずに世の中を動かしていく。そんな格好良い姿を描く物語が頭に浮かびます。
著者の万城目学さんが書いたこの作品は少し、いや大きく違いました。
著者
万城目 学
出版日
2016-09-02
著者
万城目 学
出版日
2016-09-02
伊賀の地を追放された忍者、風太郎。現代で言えば仕事がないプー太郎。
そんな風太郎がプー太郎になっていく場面から描かれている冒頭にまんまと吸い込まれていきました。

主人公の風太郎を時には惑わし、時には導く、瓢箪の因心居士の奇天烈な登場や行動に風太郎だけでなく読者の自分までも翻弄されてしまいました。気がつくと因心居士の登場はまだかまだかと期待している自分が。こんな奇妙な瓢箪がいたら……と想像が膨らみワクワクさせてもらいました。

風太郎は忍者として生まれてきた自分が忍者として生きていない日々に苦悩し葛藤している姿には切なさを感じ、同時にこの時代から忍びが世の中で力を失っていった渦中にいる青年の悩みをリアルに感じることができました。
本書の中で“もう、伊賀は忍びの国ではない。忍びよりずっと役に立たぬ侍の方が、よほど偉い国になってしまった。”という台詞がとても印象的でした。

忍者を通じて時代の移り変わりを目と頭で感じ、瓢箪に翻弄される貴重な体験をした一冊でした。

因心居士と果心居士

著者
司馬 遼太郎
出版日
1977-11-01
上の記事で書いた「とっぴんぱらりの風太郎」で主人公の風太郎を惑わす瓢箪の因心居士(いんしんこじ)。
そして因心居士の相棒として描かれていたのがこの果心居士(かしんこじ)で、どこかで聞いたことある名前だなぁと思いこの本を手にとりました。
古くから伝わる幻術使いの果心居士は忍者のルーツであったり、忍者にとっての憧れであったりと、忍者よりも現実味が薄く、奇妙な存在として知られています。

とっぴんぱらりの風太郎で登場した因心居士の相棒に思いを馳せながらいろんな想像が膨らむ一冊でした。