2016年に1巻が発売してからどんどんファンを増やし続ける『鬼滅の刃』。独自の世界観がありつつも全て正統派なこの作品は久々にヒットの予感がある王道漫画です。今回はその魅力、そして最新7巻の面白さをご紹介!ネタバレありなのでご注意ください。
最近の飽和した漫画市場では設定が凝ったものや風変わりなものが数多く見られます。王道作品はすでやりつくされており、一度名作が出てしまうとなかなか同じジャンルで成功するのが難しいからかもしれません。
少年漫画の王道の代名詞「週刊少年ジャンプ」もその例にもれず、なかなか王道の作品でヒットを飛ばすことが少なくなってきた印象です。
そんな中、久々に少年漫画の王道を抑えたおすすめ作品が『鬼滅の刃』です。
本作の魅力は、成長する主人公と可愛いヒロイン、魅力的なサブキャラたち。そして復讐劇や憎みきれない敵に、曰くありげな過去などなど。
どこかで聞いたことのあるものばかりかもしれません。しかしそれでも本作がつまらなくならないのは、作者・吾峠呼世晴(ごとうげこよはる)がこの作品に向き合い、努力している熱量が感じられるからでしょう。
『鬼滅の刃』の様々な場面から感じられる吾峠呼世晴作品の、王道なのに独特な魅力をご紹介します!
2019年4月にアニメ化され、大ヒットでアニメの放送は終了しました。
そんな話題の本作が、スマホの漫画アプリにて期間限定で1巻まるまる無料で読めるんです。下のボタンから簡単にインストールできるので、気になっている方はぜひこのチャンスをお見逃しなく!
- 著者
- 吾峠 呼世晴
- 出版日
- 2016-08-04
人を喰う鬼たちがはびこる世界が本作の舞台。彼らの血は人間の血に混じるとその人を鬼にしてしまいます。そんな鬼たちの頂点に立ち、血の大もとであるのが鬼舞辻無惨(きぶつじむざん)という最強の鬼です。
主人公の竈門炭治郎(かまどたんじろう)は彼が留守の間に家族を鬼舞辻に殺されてしまいます。唯一助かった妹の禰豆子(ねずこ)も鬼になっているのでした。
しかし今まで類を見ないことに彼女は人を喰わない鬼でした。そこで炭治郎は禰豆子を連れて鬼滅隊という鬼を成敗する組織に入隊し、彼女を人間に戻す方法を探りながら、鬼舞辻に復讐を誓います……。
- 著者
- 吾峠 呼世晴
- 出版日
- 2016-10-04
鬼舞辻に家族を殺され、禰豆子を鬼にされてしまった炭治郎。彼はそんな凄惨な事件を経てもなお、優しい主人公です。
人を喰うことなく、むしろ炭治郎を守ろうとする妹を人間に戻す方法を探すため、そして鬼舞辻を殺すために彼は「鬼殺の剣士」として旅をします。その途中で出会う鬼たちは人を喰うことを何とも思いません。
しかしそれは最初だけ。彼らももとは人間で、過去の記憶が無かったり、薄れたりしているだけなのです。
炭治郎はそんな鬼たちがどれだけひどいことをしようと、最期まで人として扱います。鼻が良い彼は鬼たちの感情を嗅ぎ取り、彼らの悲しさや寂しさ、恐れに気づきくのです。そして今度生まれ変わる時には鬼になりませんようにと、死にゆく彼らのために祈ります。
その優しさに触れた鬼たちの過去回想シーンには涙腺崩壊。怖がりでいつも夜にお兄ちゃんに手を握ってもらっていた少年、生涯認められることのなかった小説家、徐々に鬼になっていき、家族との絆を途切れさせた病弱な少年……。
吾峠呼世晴は2巻以降ずっと欠かさず巻末のおまけを描いてくれるのですが、そこからはキャラクターたちへの愛情が感じられます。それぞれに練られた設定があり、その愛情が鬼たちにも行き渡っているのでしょう。だからこそ彼らの過去に泣けてしまうのです。
細部まで考えられた登場人物たちは、薄っぺらでない本当にどこかに存在するかのような作品世界の広がりをつくっています。
『鬼滅の刃』は作画からも分かるように独特の雰囲気を持った作品です。最初は見慣れぬ世界観に戸惑うかもしれませんが、読めば読むほどはまっていきます。
バトルシーンはその設定、綺麗さが魅力。炭治郎は修行によって相手の「隙の糸」の匂いを嗅ぎつけるという特殊能力を得ました。その糸は彼の刃と相手の隙を繋げており、見えた瞬間に張り詰め、炭治郎の剣を引きつけ、相手を仕留めます。
そして「水の呼吸」というものを身につけた彼の必殺技のシーンは美しいもの。壱から拾まである剣術の型で、水のようにたおやかに鬼を倒すのです。
出典:『鬼滅の刃』1巻
そして本作はギャグも独特で、テンポが変わっています。シリアスなシーンにいきなり入ってきたり、分かりやすい爆笑のものではないので笑うところなのか戸惑わせられることもしばしば。しかしどんどんその独特さを心待ちにしてしまうのです。
3巻24話での炭治郎の言葉をご紹介しましょう。一難去ってまた一難で、怪我を負いながらもすぐ次の鬼が出没した場所に向かうことになった彼は敵と戦いながらこんなことを考えています。
出典:『鬼滅の刃』3巻
「長男だから我慢できたけど次男だったら我慢できなかった」www
なんだそれ。次男差別です。長男として育つとあばらが折れてる時も立ち回りができるほど強くなれるのでしょうか?みんな長男として育つべきですね。
こんなギャグがゆるっと登場し、読者をつい吹き出させてきます。
- 著者
- 吾峠 呼世晴
- 出版日
- 2016-12-02
作者・吾峠呼世晴は『鬼滅の刃』が初連載です。それゆえに作画や設定の荒さが目立つ時も。また、本作は1話、1巻での展開の弱さがあり、そこで離脱してしまう危険性もあります。
しかし、そんなウィークポイントを克服してこの作品はどんどん良くなっていくのです。
癖のある作画はどんどん独特の味として定着し、独自の世界観を構築しています。特に女性キャラが秀逸で、ヒロイン・禰豆子や人気キャラ・しのぶは可愛い上に、分かりやすいエロシーンがないにも関わらずどこか色気が漂います。
また、先ほども言ったように2巻以降巻末のおまけを無くさず、扉絵やカバーを外した表紙にも裏話やギャグを盛り込むなどサービス精神満載。そしていつも巻末の言葉では感謝の気持ちを忘れずに読者に伝えるのです。
もともと才能がある上に、努力している跡がはっきりと感じられる吾峠呼世晴はどこか応援したくなる魅力があります。
- 著者
- 吾峠 呼世晴
- 出版日
- 2017-05-02
4巻から続く十二鬼月の下弦の伍の位の鬼との戦い。十二鬼月とは鬼舞辻直属の鬼たちのこと。格段に実力が高く、上限と下弦でそれぞれ6人に分けられ、壱から陸までの数字で数字が上がるほど強いことになります。今回は下のグループの下から2番目の敵ということですね。
しかし下の方であるとはいえ他の鬼とは比べ物にならないほど強い鬼に、鬼殺の剣士になったばかりの炭治郎は殺されそうになってしまいます。
そこに現れたのは「柱」の胡蝶しのぶ。柱とは鬼殺隊の中でも最も位の高い9人の剣士たちを指します。少し説明が多くなってしまいましたが、どちらも6巻で説明されることなのでご容赦ください。
炭治郎の前に現れたしのぶは敵を殺すと、妹の禰豆子が鬼だということに気づき、彼女を殺そうとします。そこに1話から登場する炭治郎の理解者で柱でもある冨岡義勇が現れ、ふたりはことなきを得ます。
しかし鬼を殺すための鬼殺の剣士が鬼と一緒に行動を共にしているということで炭治郎は鬼殺隊の本部に呼び出されてしまいました。鬼というものを嫌悪する柱たちにひどい目にあう炭治郎と禰豆子。
そこに鬼滅隊の当主で、「お館様」と呼ばれる産屋敷耀哉(うぶやしきかがや)が現れます。そして「炭治郎と禰豆子のことは私が容認していた そして皆にも認めてほしいと思っている」と語るのです。
無事に禰豆子が安全な存在だと証明できた炭治郎はそのまましのぶの屋敷で休養し、訓練することになります。
同じ頃、下弦の伍の鬼が殺されたことで鬼舞辻が激怒していました。上弦に比べ、代替わりが激しい下弦の鬼たちが弱すぎるので皆殺しにしようと彼らのもとへ向かいます。しかしその中で下弦の壱の鬼だけが鬼舞辻の機嫌を良くし、生かされるのです……。
十二鬼月に9人の柱、しのぶの屋敷にいた栗花落(つゆり)カナヲやサブキャラだけど人気が出そうな3人娘・なほちゃん、きよちゃん、すみちゃんなど一気に新しい人物が増えた6巻。今後彼らがどう関わってくるかが楽しみです!
- 著者
- 吾峠 呼世晴
- 出版日
- 2017-08-04
束の間の休息回を終え、しのぶの屋敷から旅立つ時が来た炭治郎。怪我が回復し、身体能力を高める「全集中の呼吸」を常時すること会得したので以前より強くなっています。強さと優しさを兼ね備えた彼はその人柄の良さを活かして屋敷の女子たちをきゅんとさせます。
まずはしのぶの屋敷で救護や訓練に付き合ってくれていたアオイです。別れの時だと言われても「お気をつけて」とあっさりと挨拶をかわし、いつも通りの仕事をし続ける彼女。炭治郎は「忙しい中俺たちの面倒をみてくれて本当にありがとう おかげでまた戦いに行けるよ」とにこやかに言います。
その顔を見て作業の手を止め、何やら考える様子のアオイはこう返します。
「あなたたちに比べたら私たちなんて大したことはないのでお礼など結構です
選別でも運良く生き残っただけ
その後は恐ろしくて戦いに行けなかった腰抜けなので」
どうやらアオイは選別を合格したものの、その後鬼殺隊としての仕事ができない、おちこぼれとも言える隊員だったよう。しかし炭治郎は何も気にしていないようにけろりとこう返すのです。
「そんなの関係ないよ
俺を手助けしてくれたアオイさんはもう俺の一部だから
アオイさんの想いは俺が戦いの場に持って行くし」
その言葉に心を射抜かれるアオイ。炭治郎は自分が人に影響を及ぼしたことなど全く気づかずに「また怪我したら頼むねー」と言って去っていきます。ニクい奴です。
そしてお次はカナヲ。屋敷に初めて来た時に庭で会った彼女ですが、全く言葉を話さず、不思議な印象を持った子でした。彼女はシノブの継子で、柱が直々に育成する未来を有望視された人物です。
お別れの日もいくら炭治郎が話しかけてもニコニコとしているだけで何も話さない彼女。しかし急にコインを出し、それで面が出ると「師範の指示に従っただけなので お礼を言われる筋合いはないから さようなら」とすらすらと話すのです。話ができない子ではなかったのですね……。
会話の端々に「さようなら」と付け加えて早く帰れオーラ満々の彼女ですが、もちろんそんなオブラートなやり方、炭治郎には通じません。
ずかずかと質問してくる彼に、自分は全部がどうでもいいから指示されたこと以外はコインを投げて裏表で行動を決めるのだと言うのです。
それに対して炭治郎は「この世にどうでもいいことなんて無いと思うよ きっとカナヲは心の声が小さいんだろうな」と言って彼女のコインを借ります。そして表が出たらカナヲが「自分の心の声をよく聞くこと」とゲームをするのです。
風に飛ばされてギリギリのキャッチになったものの、コインは炭治郎の手の上で表をあらわします。その勢いのまま、彼はカナヲにこう言うのです。
「頑張れ!!
人は心が原動力だから 心はどこまでも強くなれる!!」
そして嵐のように彼女の前を去ろうとします。投げる手元を見ていてなぜズルをしていた訳ではないことが分かっていたカナヲは彼を引き止め、なぜ表が出せたのか聞きます。炭治郎はあっけらかんと偶然だよ、出なくても何度も投げようと思っていた、と笑いかけるのです。
彼がいなくなったあと、そっとコインを胸に抱きしめるカナヲ。そしてすぐにそんな行動をした自分に驚きます。可愛らしいですね。
ちなみにそんな彼女のことを予想したかのような幼少期の裏話が巻末に収録されているのでそちらもお見逃しなく。それにしても炭治郎は息をするように人の心を動かしてしまう天性の人たらしですね〜。
6巻で唯一下弦の鬼の中から生き残った下弦の壱の鬼。彼は鬼舞辻にその残虐性を見込まれ、血を分けられて力を増します。そして柱たちと炭治郎を殺すよう命じられるのです。
下弦の壱の鬼は人に夢を見させて、夢の外側の無意識の領域にある「精神の核」というものを壊そうとしてきます。それを破壊されると持ち主は廃人になってしまうというものです。
彼は下弦ではあるものの、段位が壱だっただけあり、協力者の人間を何人か使い捨てで操ったり、日輪刀で切ると夢見ている者が死んでしまう縄で眠っている者の手首を縛ったり、移動中の汽車自体と融合して進化したりと罠をかいくぐってもかいくぐってもなかなか死にません。
しかし炭治郎たちも負けてはいません。炭治郎は狂人な精神力でいちはやく夢から覚め鬼のもとに向かい、柱のひとりである煉獄は夢を見ながらも自分の危機を本能で察知して精神の核を壊されることを免れ、目を覚ました後は的確に状況を把握し、伊之助たちに指示を出します。
そして今回は水を得た魚のように活躍が期待されるのが善逸。彼は無意識状態になった時に本領を発揮するのでこの巻では眠りながらも禰豆子のために鬼本体と化した汽車の中で活躍します。
徐々にレベルアップする敵に、成長した炭治郎たちは勝てるのでしょうか?手に汗握る展開は作品でお確かめください!
王道の設定が独特の魅力で仕上げられた『鬼滅の刃』。作者・吾峠呼世晴の人柄の良さも滲み出る、これからが楽しみな作品です。
束の間の休息と説明回だった6巻が終わり、7巻からはいよいよより鬼舞辻に近い敵と戦うことになっていきます。果たして彼らの戦いはいかに!?8巻が待ちきれません!