漫画『ばらかもん』の優しい人々に癒される!最新15巻の魅力ネタバレ紹介!

更新:2021.12.2

人付き合いの苦手な天才書道家の半田清舟と、人懐っこい元気な少女の琴石なる。年齢も性格もまるで違う2人が、五島の豊かな自然と人々に接して送る、スローライフな日々。そんな毎日が、半田を人間としても書道家としても成長させていきます。

ブックカルテ リンク

『ばらかもん』はぜひ『はんだくん』とセットで!

著者
ヨシノ サツキ
出版日
2009-07-22

2008年に「ガンガンパワード」で連載が始まったハートフル田舎日常コメディ『ばらかもん』。2013年に「月刊少年ガンガン」で連載され始めた学園ギャグコメディ『はんだくん』。意外と知られていないのですが、この毛色の違う2作には深い関係があります。

それぞれの主人公は半田清舟(はんだせいしゅう)と半田清(せい)。清舟とは雅号で、2人は正真正銘同一人物です。ちなみに雅号とは文化人が仕事上名乗るペンネームのようなもの。『はんだくん』は『ばらかもん』のスピンオフ――と言うか、時系列的に前日譚に当たります。

『ばらかもん』に登場する半田清舟は23歳。肉体的には成人でも、精神的には未熟な点のある青年です。精神的に未熟なのに大人になってしまっている分、柔軟性に欠けて頑固なところも。そんな彼が田舎の島で、否応なく近隣の住人と触れ合い、人間的に成長していきます。あまりに馴染みすぎて図々しい一面が出るように。

一方の『はんだくん』は本編の6年前、まだ東京に住む半田清は高校2年生。極度の人見知りで被害妄想持ちという厄介な少年です。周囲からは美形かつ若き書道の天才として畏敬の目で見られ、それどころか崇拝までされているのですが、本人はまったく気付いていません。そんな半田清が勘違いと空回りで起こす騒動が微笑ましくも面白い。

『ばらかもん』と『はんだくん』は特に重要なストーリー上の繋がりを持ちません。ですが、半田清舟というキャラクターの性格が、どのようにして育まれたかを知る貴重な手段でもあります。『ばらかもん』にハマって、その世界を100%以上に楽しみたいのであれば、若き半田清や、東京の友人である川藤鷹生(かわふじたかお)の出てくる『はんだくん』は必読!

ちなみに「ばらかもん」とは舞台となる五島列島の方言で、「元気者」という意味だそうです。

『ばらかもん』あらすじ

著者
ヨシノ サツキ
出版日
2010-02-22

有名な書道家を父に持ち、自身も新進気鋭の書道家として期待される半田清舟。彼はある日、栄華賞受賞パーティで書道展示館館長に自作を酷評されたことに腹を立て、思わず館長を殴ってしまいます。半田の父、清明(せいめい)は謹慎と自分を見つめ直す機会として、彼を東京から遠く離れた長崎の五島へと送り込みました。

五島は東京と比べて不便な田舎でしたが、そこには都会にはない自然が溢れていました。なぜか半田に懐いた琴石なるという少女や、大らかで親身な島民達。彼らと接するうち、半田の凝り固まっていた人間性にも変化が現れます。戸惑いながらも半田は島に順応し、書道家として新しい境地を切り拓いていきます。

人嫌いの可愛いヤツ【半田清舟】

著者
ヨシノサツキ
出版日
2014-09-22

弱冠23歳の若き気鋭の書道家、半田清舟。本名を半田清と言い、同じく書道家の半田清明の息子で、書道家元の後継ぎです。高校生の頃からその腕前には一目置かれており、本人も自信の実力、家柄にかかるプレッシャーを自覚しつつ、書道に専念してきました。

物語の発端となる暴力事件からもわかるように、実力に反して精神面が未熟で、打たれ弱いところがあります。高校時代には妄想いじめられっ子でもあり、大声などで驚かされると途端に尻込みしてしまいます。

書道の腕の方は当初「教科書通り」、「型にはまっている」と芸術作品としては面白味がないと評されるものの、家元の血筋、本人の努力の賜物でかなりの高レベル。

プライドが高くて気難しく、しかも自信家で天才肌。家事一般のスキルは壊滅的ですが、書道にかけては天下一品。常人には理解出来ない天才の感性を発揮し、書道中に気分が乗ってくると不気味な笑い声を漏らすことも。

高校時代のとあるエピソードから人付き合いを苦手としており、自分から積極的に人間関係を築こうとはしません。『ばらかもん』時代には見られませんが、『はんだくん』当時は「半田ウォール」と呼ばれる見えない心の壁を張り巡らせ、交流を拒絶するほどの徹底ぶりでした。

そんな人と距離を置こうとする半田に対して、なるをはじめとする島民はお構いなしに距離を詰めてきます。言われなくても訪ねてくるし、世話を焼いてくれるし、あっという間に懐に入り込んでくるのです。仮に半田ウォールが健在でもすぐ壊れることでしょう。半田にとってそれは東京にはなかった煩わしさであり、同時に人間味のある嬉しい交流でもあります。

天才気質で気難しく、扱いが面倒なのに、打ち解ければ図々しく振る舞う半田。それはまるで、上手くいかなかった青春時代の空白を、島民の力を借りて取り戻しているようにも見えて、微笑ましく感じられます。

半田大好きな元気っ子!【琴石なる】

著者
ヨシノ サツキ
出版日
2011-05-21

琴石なるは本作のもう1人の主人公。五島の住民で、7歳の女子小学生です。常にTシャツ短パンで野山を駆けまわる野生児のような少女。性格は朗らかで自由奔放、自然を知らない都会っ子の半田とは対称的です。

表情と感情が直結していて、喜怒哀楽に伴って顔がころころと変わります。年齢相応の笑顔を見せたかと思えば、気持ちが沈めばこの世の終わりのように塞ぎ込んだり、はたまた何かを悟ると世界有数の凄腕スナイパーゴルゴのような劇画調になったり。その様はまるで百面相です。なるの顔芸も本作の魅力の1つ。

半田を書道家と知ってからは「先生」と呼び慕い、いつでもどこでも子犬のようについて回ります。元々は、半田が五島での住居として借りた空き家を秘密基地にしており、2人は半田が引っ越してきた際に出会いました。人懐っこくて好奇心旺盛ななるは、無愛想な半田をなぜか気に入って、それ以来半田の家に入り浸っています。

なるの両親については不明な点が多く、普段は祖父の琴石耕作と2人暮らしをしています。祖母はすでに他界していますが、相当なお婆ちゃん子だったようで、祖母直伝の子供らしからぬ渋い豆知識を多数持っています。

その他、時々妙に俗っぽい言葉使いをすることがあり、それは秘密基地(現半田宅)を共有していた親しい中学生、山村美和、新井珠子の影響。彼女達の影響はだいたいろくでもないことが多くて、なるがそれを披露する度に半田をやきもきさせています。こういったなるを心配する場面では半田の父性が感じられます。

半田については本当に良く思っているようですが、年齢的にそれが異性への好意なのか、不在の父親を求める心からなのは微妙なところ。とはいえ、半田が一時的に帰京した時には、廃人同然に落ち込む様子があるので、彼女の中では大きなウェイトを占めていることは確かです。

『はんだくん」からの重要キャラ【川藤鷹生】

著者
ヨシノ サツキ
出版日
2010-10-22

人嫌い、人付き合いが苦手な半田の数少ない友人、川藤鷹生。書家という職業柄、真面目で硬派な見た目の半田とは正反対で、タトゥーを入れたチャラい青年。やや強面な外見とは異なって、その内面は社交的で面倒見の良い人格者でもあります。

半田とは中学時代からの付き合いで、彼のことを最も理解している貴重なキャラです。東京では画商を営み、半田の仕事の仲介やマネジメントもこなす公私共に頼れる人物。いつもは遠く東京から半田と連絡を取り、時に叱咤、時に激励し、何かと彼を気にかけています。

実は半田の人嫌い、人付き合いが悪いという傍迷惑な性格を形成するきっかけになった張本人。そのエピソードは『はんだくん』にて明かされます。当時、川藤が憧れていた先輩に半田との橋渡しを頼まれた彼は、ショックのあまり嘘をついてしまいました。それが発端となり、半田は高校時代に見られるような被害妄想をするように。

川藤は半田のことは本当に大切な友人と思っています。そのため、性格を歪ませてしまったことに申し訳なさを感じつつも、そんな半田の奇行が面白くて誤解を解かない、という少しサディストの気がある人物。

おぼっちゃま半田は自立できるか!?【最新15巻ネタバレ】

著者
ヨシノサツキ
出版日
2017-06-12

東京時代には固定観念に囚われ、教科書通りの「書」を行っていた半田。島の生活、五島の人々が彼の情緒を大きく変化させました。綺麗で整っていても、心に響かない字を書いていた半田は、ついに人の心を動かす境地に辿り着きます。そして半田の血筋、周囲の期待に縛られていた彼は、そこでようやく己の目標を見出しました。

14巻までに偉大な書道家で師もある父、清明と決別した半田は、芸術を生み出す書道家としての自分にピリオドを打つ決意をします。それに代わって彼が胸にした目標とは、書道教室を開くこと。それは芸術だけが書道ではないという心の現れであると同時に、五島での新たな生活の第1歩としての目標でした。

それを知って慌てたのは東京の友人、川藤。彼は半田を思い留まらせるために五島へと飛びます。

川藤はいかにそれが無謀か、と半田の無計画さを指摘するうちに、なぜかそれが結果的に欠陥だらけの書道教室計画に適切なアドバイスを送ることになり……。

紆余曲折を経て、ついに開かれた「半田書道教室」。半田の五島での生活、再スタートが始まります。


おすすめの癒し漫画を紹介した<癒し漫画おすすめ16選!疲れた時は、何も考えずに読めるコレがいい>の記事もおすすめです。

いかがでしたか? 豊かな自然と心地良い人々の交流。田舎暮らしに憧れてしまいますね。実際には田舎も不便が多いのでしょうけど、それ以上に得られる貴重な経験があるのではないでしょうか。本作を読むとそういう気持ちにさせられます。

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena
もっと見る もっと見る