小栗虫太郎のおすすめ作品5選!3大奇書の1つ『黒死館殺人事件』の作者

更新:2017.7.7

極度の衒学趣味で有名な小栗虫太郎の作品は、その独特の世界観で他のどんな作家にもない魅力を持っています。様々な世界に通じ、没後何年経っても色あせない小栗虫太郎の作品の中から、特におすすめの5冊をご紹介します。

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小栗虫太郎とは

小栗虫太郎(本名:小栗栄次郎)は、1901年3月14日、東京千代田区外神田にて酒問屋の分家の子供として生まれました。

父親は虫太郎が10歳の時に亡くなりましたが、本家からの仕送りや賃貸収入があったため生活に困った事はなく、1918年に京華中学校を卒業後、樋口電気商会に入社し、小説とはかかわりのない生活を送ります。

1920年の結婚後に立ち上げた四海道印刷所が閉鎖されるまでの4年の間に執筆に目覚め、発表の予定もないままに短編集「或る検事の遺言」「源内焼六術和尚」と長編『紅殻駱駝の秘密』『魔童子』を完成させました。印刷所が閉鎖されてからも6年間はデビューする事無く、下積み時代を続けます。

1933年の春、1つの作品を編集長に持ち込んだ所、たまたまその時期に執筆していた横溝正史が結核悪化の為続きが書けず、掲載本に穴が空くためピンチヒッターとして小栗虫太郎の小説が掲載される事になりました。それこそが小栗のデビュー作となる『完全犯罪』だったのです。

こうして没後も注目され続ける作家、小栗虫太郎が誕生する事になりました。

日本3大奇書の1つ 読んでおきたいミステリー

神奈川県にある黒死館と呼ばれる降矢木家には、幼少期に降矢木算哲によって家に連れてこられた、4人の弦楽演奏者がいました。館の創設者である算哲には息子がいましたが、彼は自殺の間際に4人の弦楽演奏者を養子にし、相続権を与えていたことがわかります。

不穏な空気の中、門外不出の弦楽四重奏の1人であるダンネベルク夫人が毒殺された事から、連続殺人が幕を開けるのでした。

次々と起こる連続殺人を、主人公の探偵法水麟太郎が解決していく、小栗虫太郎を象徴する作品です。

著者
小栗 虫太郎
出版日
2008-05-02

日本で唯一のゴシック・ロマンとも言われている今作は、小栗虫太郎を語る上で外すことの出来ない長編探偵小説です。

小栗を象徴するような、特殊な専門用語の多用や神秘的思想、占星術、心理学、犯罪学や暗号学などの知識をこれでもかと言わんばかりに詰め込んだ、推理小説の1大神殿と称される内容になっています。

また日本の3大奇書の1つと言われ、読むと精神に異常をきたすと言われるほどの魅力を持っている所も、長く愛され読み続けられる理由の1つでしょう。

ミステリーマニア垂涎の『黒死館殺人事件』は、ミステリーとしてだけではなく、様々な分野と多岐にわたる知識欲をも満たしてくれる......。そんな1冊になっています。

様々な秘境へと足を踏み入れる期待と恐怖を描く「人外魔境」シリーズ

世界中にある人類未踏の魔境に挑み続ける日本人探検家、折竹孫七は、各地で今まで聞いたことも見た事もないような生き物に出会う事になります。

人間とチンパンジーの雑交種かと思われるようなシッポのある「有尾人」、肩甲骨が大きく翼が生えているように見える「有翼人」、水の中に住んでいる「水棲人」などの存在と出会い交流していく中で、その土地や民族独特のちょっと変わった問題にぶつかるのでした。

様々な出会いと危機を経験しながら、その土地の謎を紐解いていく冒険ストーリーです。

著者
小栗 虫太郎
出版日

1939年から2年間、博文館発行の雑誌や新青年にに掲載されたシリーズです。

最初は単発作品であったものの、第2話の「大暗黒」から「人外魔境小説」という角書き付きで掲載される事になります。その後1940年から、主人公を折竹孫七を主人公とする「人外魔境シリーズ」として連載されることとなりました。

また「大暗黒」は第2回新青年賞を受賞しており、数年後には当時人気週刊誌にも紹介され、何度も日の目を見る事になります。1969年には手塚治虫、水木しげる、松本零士などの著名な漫画家が作画を担当したこともあり、小説を読んでいない人も、漫画の方で名前を聞いた事があるかもしれません。

人類未踏の秘境で謎の珍獣とに会うというロマンと、冒険へのワクワク感を詰め込んだ1冊を、是非1度読んでみて下さい。

孤島で起きた殺人事件 想像するのも恐ろしいトリックとは

「失楽園」と呼ばれるハンセン病の研究所で、兼常博士と助手の河竹博士が殺されたのが発見されました。

事件解決の為に呼ばれた法水麟太郎は調査を進める中で、失楽園の中で行われていた兼常博士と河竹博士による、恐ろしい人体実験について書かれている手記を渡されます。さらに手記の最後には謎のメモと共に、スペードの女王のトランプが貼られていました。

2人を殺した犯人は誰なのでしょうか。そのトリックと動機に、法水麟太郎が迫ります。

著者
小栗 虫太郎
出版日

1934年に発行された、法水麟太郎シリーズの短編小説です。

機械的で大がかりな上に複雑なトリックが多く使われ、全ての要素を取りこぼさないために何度も読み返したくなるような、読み応えのある内容になっています。

難解と言われる小栗虫太郎の世界ですが、作品の持つ吸引力は強く、読み手に理解させる文章力は圧巻です。事件を読みながら推理に挑戦する類の物ではなく、小栗ワールドをいかに理解し読み解くかという所が大きなポイントになってきます。

非道な人体実験の理由や殺人の動機、トリックのどれをとっても一級品な事には違いありません。レトロな雰囲気に包まれた、ホラー要素のかなり強い作品に戦慄してください。

贅沢に詰め込まれた小栗ワールド

小栗虫太郎が世に送り出した作品のうち、5作品が収録された本書。

小栗のデビュー作である「完全犯罪」を始め、名探偵法水麟太郎シリーズである「後光殺人事件」「聖アレキセイ寺院の悲劇」「オフェリア殺し」、加えて日本三大奇書の1つであり代表作の「黒死館殺人事件」が1冊にまとめられています。

巻末には息子の小栗宣治の書いた「小伝・小栗虫太郎」も収録されており、小栗虫太郎ファンには見逃せない1冊です。

著者
小栗 虫太郎
出版日
1987-11-01

小栗虫太郎を象徴するような作品を閉じ込めた、とても魅力的な作品集になっています。

鬼才と言われた小栗作品に興味がある人や、これから読もうと思っている人に是非手にとっていただきたいです。傑作の数々が集められていますし、なにより『黒死館殺人事件』が収録されているのが、大きなおすすめポイントとなっています。

読み解くのが難しいとされる小栗ワールドですが、1度コツを得てしまえば、そのどれもが語り継がれる価値がある作品だと納得出来てしまう......。そんな魅力を、一冊で堪能してください。

小栗虫太郎が描く黄金郷の謎

和人でありながら、極寒のベーリング海ににあるラショワ島を根城にしている海賊の兄弟がいました。

ある時2人は、見つけた船に攻め込もうとしたところ、その船から次々死体が投げ落とされているのを目撃します。しかし投げ落とされた中に生きている女性を見つけて助け出すと、その女性から「伝説の黄金郷」の話を聞きくことになります。

女性を助けた後から兄弟は病気になり始め、臥せっているところを殺されてしまいます。2人を殺した犯人の謎に、残された暗号の答えとはいったい.....。はたして、黄金郷は本当に存在するのでしょうか。

著者
小栗 虫太郎
出版日
2016-07-20

1935年に発行された、小栗虫太郎傑作選5に収録されているうちの1つです。

読みやすく、もちろん衒学的な所はあるものの、「伝説の黄金郷」という目的を目指すストーリー展開から理解しやすい作品といえます。海賊や謎の美女の登場などで、今までとはまったく違った雰囲気の中ではありますが、暗号や犯人捜しなどといった、安定の小栗ワールドも広げられているのです。

まだ海外との交流が一般的とは言い切れない昭和初期の時代に異国情緒の溢れるミステリーを描く小栗虫太郎の手腕は、流石としか言えません。

小栗虫太郎が考える世界の風景を覗くつもりで、挑戦してみてください。

昭和初期、鬼才と言わしめた小栗虫太郎の誕生は、本当に様々な偶然の重なりでした。衒学的で読みにくいと有名ですが、その特異なトリックや内容は他の追随を許さないからこそ、読みにくいと言われてしまうのかもしれません。そんな小栗作品の数々は、どれも本格的でさらに知識欲を満たしてくれます。是非1度、小栗ワールドにはまり込んでみて下さい。

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