インドア派もアウトドア派も必見!本で巡る魅惑の「珍スポット」3選

更新:2021.12.13

旅行に行ってみると、観光地化しているエリアよりもふらりと立ち寄ったところのほうが印象に残っているということがしばしばあります。なかでも「珍スポット」や「B級スポット」と呼ばれる一風変わった観光施設は、くだらないと思いながらもなんとなく足を踏み入れてしまう魅惑のスポットとも言えます。私もいくつかの珍スポットに赴いたことがありますが、まるでタイムスリップしたような不思議な感覚に毎回襲われます。今回は、そんな珍スポットを独自の視点で紹介している3冊をご紹介します。旅行先に困っている方必見(?)ですよ!

ブックカルテ リンク

初級編:全国の珍スポットを概観する

著者
都築 響一
出版日

全国のガイドブックには載っていない「珍スポット」は一体どれくらいあるのでしょうか? この本によると、およそ341ヶ所あるようです。とはいえ、2000年当時(取材そのものは1990年代)の数なので、現在はこの半分くらいしか現存していないと思われます。今からすれば「なんでこんなもの作ったの?」と思わず失笑してしまいそうなものばかりですが、これを大真面目に作ってそこへ赴いていた人々がいたこともまた事実です。フルカラーでかなりのボリュームがある一冊ですが、現代人が忘れている(ブラック・)ユーモアを思い出させてくれる、そんな場所を本で巡ってみてはいかがでしょうか。

ちなみにこちらは西日本編もあるので、東日本と西日本の珍スポットの比較などをしてみても面白いかもしれません。各地の土着性なども垣間見えて文化人類学的にも面白いです、きっと。

中級編:珍スポットのなかの珍スポット・秘宝館に触れてみる

著者
出版日
2009-06-20

秘宝館とは、性風俗や人間の性・生物の性に関する古今東西の文物を収蔵した施設のことを指します。主に蝋人形や大掛かりな機械仕掛けを用いたエンターテイメント系秘宝館(レジャー系秘宝館)と、性風俗に関係した物品を収集・展示したコレクション系秘宝館の二種類に分けられます。

1970年前後に温泉街など大規模な観光スポットを中心に全国で作られるようになり、団体旅行(バスツアー)全盛の1970年代後半から1980年代頃に最盛期を迎えました。主なターゲット層は旅行に来た男性客でしたが、1970年代後半以降になると、男性客だけでなく女性客も視野に入れ、東宝などの映像・舞台美術業者の制作によるアミューズメント型の展示を行う施設なども多く見られるようになりました。

しかし、団体旅行の減少や「クリーン」な社会へとなっていくにつれて、秘宝館は減少の一途をたどるようになります。現在では「秘宝館」の名を持つところは熱海秘宝館のみとなってしまいました(ちなみに私は熱海秘宝館には行ったことがあります)。

この本では2009年当時まで存在していた秘宝館の取材や、失われてしまった秘宝館のグラビア、そして全国の「性地」に関するアレコレを余すとこなく紹介しています。「秘宝館=エッチなところ」とは思わず、意外と奥深い世界を覗き見てみてはいかがでしょうか。

上級編:学術的に「珍スポット」を考察してみる

著者
妙木 忍
出版日
2014-03-21

上でも秘宝館について簡単に紹介しましたが、これを「身体の観光化」という視点から成立過程と消費されてきた実態を考察している一冊です。

模造身体を見せるという点でいうと、江戸時代の生人形や、明治時代後半から昭和40年代前半頃まで、約70年にわたって日本各地で催されていた衛生思想啓蒙のための展覧会が挙げられます。この時代は伝染病に始まり性病などといった重大な病が世界を襲っていました。それゆえ、患者の治療だけでなく、まだ病気に罹っていない健康な人びとを守る予防衛生もまた重要であり、その一環として衛生思想を啓蒙するための催しとして「衛生博覧会」が行われていました。この名残が、秘宝館文化発祥の地である「元祖国際秘宝館」内にあった「いのち誕生」の展示に見受けられます。

このように、身体への眼差しが医学から娯楽へ接続していった歴史と、珍スポットの誕生を照らし合わせていくと、意外な事実や知らなかった世界が浮き彫りになること間違いなしです。性を真面目に学問したいという方におすすめです。

いかがでしたか? これらの本を読んでいくと、意外にも私たちが住んでいる近くにも珍スポットがあることに驚かされます。今年の夏休みはそんな珍スポットめぐりをして、作られた当時の人々の気持ちに思いを馳せてみても面白いかもしれません。みなさん、書を持ち旅に出ましょう!

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