ミステリー作家別でみる、おすすめ小説6選!【男性編】

更新:2021.11.7

誰もが知っている大人気ミステリー作家の作品の中から、特におすすめの1冊をセレクトして紹介します。気になってはいたけど読んだことがない、そんな各作家の入門の1冊としていかがでしょうか?

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理系に捧げる本格推理ミステリー【森博嗣】

愛知県にある妃真加島に向かった助教授・犀川創平と学生・西之園萌絵。

妃真加島には、所有者の真賀田家が設立した研究所があります。その中心人物である真賀田四季博士は過去に人を殺した犯罪者で、施設内の特殊な部屋に隔離されていました。

しかし研究所内で、両手足を切断された真賀田四季博士の死体が発見されます。孤立した島内では研究所のシステムトラブルが発生し、博士のスケジュールカレンダーには「すべてがFになる」という謎の一文が。

天才博士の身に何が起きたのか……犀川と萌絵が事件の究明に挑みます。

著者
森 博嗣
出版日
1998-12-11

「天才」が丁寧に描かれているこの作品。森博嗣は、「天才」を何でもできる全知全能ではなく、凡人と思考パターンが違うだけの人間として描写しました。社会に溶け込みながらも異質であるということの葛藤が伝わってきます。

四季や犀川は理系の専門家という設定のため、時々挟まれる理系トークの内容が難しく見えて、苦手意識を持つ人も多いかもしれません。しかしどれも基本的な知識があれば理解できるものばかりなので、分からない単語を検索しながら楽しむのも良いのではないでしょうか。

妻か、娘か……夫婦が抱えた秘密【東野圭吾】

39歳のサラリーマン・杉田平介は妻・直子と11歳の娘・藻奈美との3人家族。ある日、妻と娘が乗ったバスが崖から転落する事故に遭い、妻は死亡し娘は意識不明の重体に陥ります。

奇跡的に目を覚ました藻奈美ですが、なぜか直子の意識が乗り移っているのです。娘の身体と妻の心。平介はどう接していくべきか葛藤しながらも、父娘として接していくことを決めます。

しかしやがて年頃の女の子として青春を謳歌する藻奈美を見ながら、平介に歪んだ嫉妬心が。目の前の人間は妻なのか、娘なのか……平介は再び苦悩することになります。

著者
東野 圭吾
出版日

『転校生』や『君の名は。』など、入れ替わり系作品は定番ではありますが、本作は妻と娘の入れ替わり、それに対する父・夫の苦悩が描かれています。

直子は比較的早く藻奈美の身体を受け入れ、若者としての生活を送っていくことのできる器用さを持っていますが、辛いのは平介です。娘を心配する親心と妻に対する嫉妬心が混じり合い、常軌を逸した行動に出てしまう……。そんな男の脆い感情が丁寧に描かれており、娘を持つ父でなくとも感情移入できるはず。

人気ミステリー作家の東野圭吾が描く感動の長編です。

ミステリーの新時代を築いた傑作【綾辻行人】

角島という島に、奇妙な建物がありました。形が十角形で、名前は十角館。設計者は島内で殺され、現在は無人島に。大学の推理小説研究会のメンバーは、殺人事件が起きたという屋敷と十角館を見学するために角島へ渡ります。

一方、本土では、元会員である中村千織の事故死に関する怪文書が送られてきました。それを見た同じく元会員の江南孝明は、中村の死に不自然な点がないか調査を始めます。

島内で次々に起こる殺人と本土の怪文書……同時に起きた、二つの事件の真相とは?

著者
綾辻 行人
出版日
2007-10-16

本格ミステリー界に新しい波を起こした綾辻行人による衝撃のデビュー作。孤島で起きる殺人事件と怪文書……あえて奇抜な設定を排除し、中盤までは極めて予想通りに話が進んでいきます。

しかし、これはお笑いで言うところの「フリ」の部分であり、「オチ」に向けての準備だったのです。ミステリーというジャンルは馴染み深い存在であるため、読者はどうしても作品に対して先入観を持ってしまいます。

綾辻行人は巧みにそれを利用。終盤では、たっぷりと撒かれた伏線が綺麗に回収され、一気に謎が解決する展開に。そして最後に「やられた!」と思うことでしょう。

妹の幸せを願う兄の「完全犯罪」ミステリー【貴志祐介】

母と妹と三人で暮らしていた櫛森秀一。ある日、平和な家庭を乱す曾根という男が現れます。秀一の母の元夫である曽根は、勝手に家に居座り、傍若無人な振る舞いを続けました。

法律相談も無駄足に終わり、大人や社会を頼るのは無理だと悟った秀一は、家庭を守るための最終手段に出ます。曽根を「完全犯罪で殺す」ために周到に準備を重ね、ついに実行するのです。

秀一は警察の捜査をかいくぐり、完全犯罪を達成することができるのか……。

著者
貴志 祐介
出版日
2002-10-25

『悪の教典』や『黒い家』などホラー小説で馴染み深い貴志祐介が書いたこの一冊。物理的なトリックがしっかりした本格ミステリーでありながら、青春小説の趣向も強い作品です。高校生が人を殺すというショッキングな内容ですが、秀一と同級生の交流が丁寧に描かれており、秀一があくまで「普通の高校生」であることが受け入れられます。

高校生らしくトリックにも所々甘い部分が見えますが、それが手に汗を握る展開を演出し、いつの間にか秀一を応援しながら読んでしまいます。

青春小説とミステリーの見事な融合が感じられる一冊です。

娘を失った男の悲しき暴走【貫井徳郎】

連続する幼女誘拐事件。捜査に進展が無く、若手のキャリア捜査一課長である佐伯は、世論と警察の批判を浴び、さらにマスコミが彼を叩き続けます。

一転して、視点は犯人へ。犯人は自分の娘を失ったことをきっかけに人生に絶望し、怪しげな新興宗教にハマっていきます。そして、娘と似た女の子を次々と殺害していくのです。

追う方と追われる方……二人の視点が交差する時、恐ろしい真相が明らかになります。

著者
貫井 徳郎
出版日

新興宗教の描写は非常にリアルで、犯人が入信していく様子が細かく描かれています。すがるものが欲しい人間はこうも簡単に騙され、そして暴走するのか……と非常に恐怖を感じると共に、現実にもありうるテーマであると考えさせられます。

被害者が子供であること、さらに誰も救われないストーリーで読後感は爽やかではありませんが、解決自体はスッキリとしています。大きな謎に至る伏線も明かされ、最後は思わず唸る展開です。

とある男を中心に巻き起こる不思議な事件【伊坂幸太郎】

『チルドレン』は独自の正義感を持つ家庭調査官・陣内を中心にした5つの短編集です。「バンク」「レトリーバー」「イン」では家庭調査官になる前、「チルドレン」「チルドレンⅡ」では家庭調査官になったその後が描かれています。

陣内はめちゃくちゃな論理で周囲を振りまわし、友人たちと強盗事件に巻き込まれたり、失恋のリハビリに付き合わせたりしますが、なぜか憎めない男。彼の言葉や行動は、あらゆる登場人物に影響を与え、周りの人々が変わっていく様は、とても清々しいです。

続編『サブマリン』も、長編として読み応えのある小説となっています。

著者
伊坂 幸太郎
出版日
2007-05-15

短編として構成されていますが、物語ひとつひとつをじっくり読み上げて行くと、「陣内」という人の長編であることがわかります。まるで陣内という人を、読者自身がその目で見て事件に巻き込まれる、そんな感覚に陥る小説です。

紹介した作品は映像化されていることも多いので、原作を読んでからドラマと見比べる楽しみ方もできそうです。

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