成田空港の書店で見つけた“日本を知る本”【KUSHIDA】

更新:2021.11.7

距離を置いて初めて見えてくる物事の本質、今回は出国前、成田空港の書店で出会った、日本という国が誇らしく思える本をご紹介します。

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夏休みです。海外旅行のチャンスです。日本を離れ異国に行くことは、自分が「日本に生まれ日本に育った日本人であること」を自覚できる貴重な機会。現地に着くと、すぐ日本食を食べたくなってしまいます。
現在、ROH世界TV王座というベルトを保持しているため月に一度アメリカに渡っています。スーツケースを預け、出国手続きをして機内で読む本をドサッと買い込むわけですが、成田空港の書店には不思議な磁場が働いているような気がします。高確率で良い影響を受ける本と出会えるのです。「これでも読んで、旅の浮いた気持ちを引き締めていけよ!」という旅の神さまからのメッセージだと思っています。

がんで余命ゼロと言われた私の死なない食事

著者
神尾 哲男
出版日
2017-03-09

海外に滞在して、まずカラダが欲してくる筆頭がお茶です。
海外のプロレス団体は試合開始が遅いため、たいていの場合、大会終了が深夜0時を回ってしまい、食事の選択肢が限られてきます。向かう先はドライブスルーで、悲しいかなハンバーガーとフライドポテトが現実だったり。「さて、ドリンクはどうしましょう?」といったときにやっぱり水以外に気軽に飲めるものがなく、最終的にはゼロカロリーのコーラをチョイスするわけですが、そのたびに手軽に自動販売機でお茶が手に入る日本が恋しくなります。

本書はフランス料理のシェフである著者が「食」が持つパワーを信じ、がんのなかった昔の日本食こそ治療に効果的である!ということを実証した一冊です。生きている場所のものを食べるのがいちばんカラダに良い、といわれる「地産地消」の考え方や、近くで採れた旬のものが健康に良い「身土不二」の考え方は、ボク自身も積極的に信じ、コンディション調整の要の一つとなっています。プロレスラーという職業は季節ごとに全国を訪れ、その土地のご飯を頂けることも多いのでそういった自覚を持って命を頂いています。

季節の果物も大好きなのですが、その点からも日本に四季があることを誇りに思います。列島が東西南北に伸びている地形だからこそ、地域ごとに収穫物に変化があったり、名産品の存在をサービスエリアで眺めたりするだけでも「日本って豊かだなぁ」なんて。

「日本(食)って、やっぱスゴイ!」。ハンバーガーをかぶりつきながら、いつも日本を思います。

「空気」と「世間」

著者
鴻上尚史
出版日
2009-07-17

数年前の朝日新聞に「いじめられている君へ」という連載があり、鴻上尚史さんの「逃げろ。逃げることは恥じゃない。とにかく逃げろ」という趣旨の原稿が掲載されていました。当時、すごく感銘を受けました。

本書では、おもしろい角度から日本独特の空気や間について考察されています。それが見事に日本人を浮き彫りにしていて、仮に会社などで対人関係に困っている人がいたら解決のヒントというか、スッと胸のつっかえが取れる本です。「多様性の容認」と「同一性の強制」の中で、果たして日本人はこれからどう生きていくんでしょうか? 現代の日本人を見事に現した研究書だと思います。

この世界はあなたが思うよりはるかに広い

著者
鴻上 尚史
出版日
2015-06-28

もう一冊、鴻上尚史さんの本をご紹介します。
週刊SPA!での連載「ドン・キホーテのピアス」をまとめたものです。駅のキオスクで買うと一番最初に読み始めるのがこの連載。読みやすく、いつも何かしらの気付きをもたらせてくれます。

「日本人はお釣りを自分で数えない」。これは確かにそうだと思います。信頼しきっている、もしくはお店の人がチョロまかすわけがないと思い込んでいます。それこそが日本人の固定観念なんだということを、ボクも大学生の頃に初めてメキシコに行ったとき認識しました。そして、その固定観念は一瞬にして粉々になりました。たとえばタクシー。乗車する前に目的地を告げ値段交渉。法外な金額を吹っかけられ、値段交渉が始まります。目的地を知らない可能性もあるし、わざと遠回りしてメーターを稼いだりする運転手がいることだってあります。それゆえ、渡されるお釣りも鵜呑みにできるわけありません。心をタフにしなければ世界を渡り歩いてはいけない、そんな実体験を20代前半で経験できたのは大きな財産です。

鴻上尚史さんはあとがきで「今の自分が面白いと思うものは、今の自分を変えません」というメッセージを残しています。自分を含め、スマホ中毒に陥りがちな現代人にとって「そんなに情報を集めてどうすんの?」「明日覚えてない情報、意味ある?」と顔面をぶん殴られたかのような痛烈なメッセージでした。ダラダラと目的なくスマホ画面を覗いて時間を潰している……それはただ、人生の足踏みをしているだけなのかもしれない。

池上彰の世界の見方

著者
池上 彰
出版日
2015-11-06

歴史上の人物で好きな人を挙げてくださいと言われたら、伊能忠敬と答えます。
地図が好きです。地球儀をただ眺めるのも好きです。新日本プロレス選手バスのボクの座席シート前ポケットには日本の地図を忍ばせてあり、いつも眺めながら試合会場に向かっています。

本の冒頭から、知らなかった世界地図の見方に唸らせられます。読了した瞬間、そろそろ部屋に置く用のMY地球儀を買いたいなと思いました。池上彰さんおすすめの地球儀があったら欲しいのに。
世界を知ることは日本を知ること、まだまだ知らないことがたくさんあります。

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