本格ファンタジー漫画『オーバーロード』の魅力を徹底紹介

更新:2021.11.10

主人公が、ログインしていたRPGゲームの終了とともに、RPGの設定のまま異世界に転移してしまったことから始まる、重厚な本格ファンタジー。そんな『オーバーロード』の魅力とともに、コミック版ならではの魅力も紹介していきます。

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漫画『オーバーロード』の魅力を紹介

著者
深山 フギン
出版日
2015-06-26

『オーバーロード』は丸山くがねのWEBファンタジー小説です。書籍化、アニメ化され、さらに深山ギフンによりコミカライズされました。

主人公が、ログインしていたRPGゲームの終了とともに、RPGの設定のまま異世界に転移してしまったことから始まる、重厚な本格ファンタジー。『このライトノベルがすごい!』2017年版では単行本・ノベルズ部門第1位を獲得しました。

今回は原作、ライトノベル、コミック、アニメと、それぞれ大人気の『オーバーロード』の魅力とともにコミック版ならではの魅力も紹介していきます。

『オーバーロード』の原作版について詳しく知りたい方は<小説『オーバーロード』の魅力をあらすじから全巻ネタバレ紹介!>の記事もご参考に!

『オーバーロード』あらすじ

22世紀、主人公(プレーヤー名モモンガ)は、長らく続いた体感型RPG「ユグドラシル」のサービス終了に伴い、かつてゲーム内で栄光を誇った本拠地で最後の時を待っていました。
 

魔王型モンスターとしてプレーをしていたモモンガは、ギルドに配置された家来モンスターを前に、サービス終了のカウントダウンの中、ゲームの思い出を回想していました。しかし、どういうわけか、サービス終了を迎えても強制ログアウトしません。そればかりか、プログラムでしか動けないはずの家来達が自分の意志で動き出したのです。

RPGのキャラクターとしてのまま、別の世界に転移してしまったことを理解したモモンガは、アインズと名を変え、個性豊かな家来達を従え暗躍を始めます。転移先の世界に散らばる謎、ユグドラシルとの奇妙な共通点、いまだ姿が見えない強大な敵対勢力、慎重な姿勢ながら、剣と魔法の世界で身も心も悪の化身「オーバーロード」となったモモンガの冒険がはじまりました。

著者
深山 フギン
出版日
2015-07-25

重厚な世界観が魅力的

『オーバーロード』の魅力は、なんといってもその重厚な世界観です。剣と魔法の世界、RPGの世界、現実世界から異世界への転移、とそれぞれがライトノベルにありがちな設定ですが、この作品はそれらを絶妙なバランスで組み合わせることで、見事に本格ファンタジーとして仕上げています。

まず、体感型RPGゲームのサービス終了時に異世界にスライドするという発想が、もう凄いです。

RPGの世界にそのまま転移するのでは、登場キャラクターがプログラムなので、どうしても軽くなってしまいます。また、単純に異世界に転移するのでは、一般人がいきなり活躍するのには無理があるため、いわゆるチート能力を設定しなければならなくなり、やはり軽くなってしまいます。

しかし、『オーバーロード』は、転移先はあくまで未知の剣と魔法の異世界です。それぞれの勢力が、それぞれに戦力を保持しているので、主人公が何から何まで思い通りにできる世界ではありません。しかし、一方でRPGの能力は家来ともども引き継いでいます。そのため、敵勢力と互角以上に渡り合えることに十分な説得力があるのです。

そして、憎い演出として、異世界と元のRPGとで微妙に設定を変えています。異世界ではRPGにはなかった能力が普及しており、強大なはずの主人公勢力でもその能力に苦戦します。また、RPGの能力が異世界でも使えるとしても、効果が異なって発動される場合があり、むやみに乱発するのを躊躇させます。

このように、絶妙なバランスで、安易な主人公無双を制限することで生まれる重厚さが、『オーバーロード』の魅力なのです。

著者
深山 フギン
出版日
2015-12-22

練りこまれた世界観が魅力的

そして、その世界観は、これでもかというほど細かく練りこまれています。国家や地名にそれぞれ設定が施されているのはもちろん、なんと作中でわずかばかり触れられた神話にまで設定が練りこまれているのです。

ある冒険者が「私が持っているこの剣は、神話にでてくる英雄にちなんだものなんですよ。」と言いました。作中で触れられるのは、ここまでです。

しかし、その神話は、英雄とその仲間数人が強力なモンスターを倒したというお話であること。その神話は数百年前に、実際に起きた英雄たちとモンスターの闘いが元になっていること。英雄とその仲間たちそれぞれの名前とその設定があり、さらに、実際の闘いと神話としての伝承には齟齬があること、にまで設定があります。

練りこみ方が半端じゃないです。

そして、その設定は後になって伏線として機能してきます。

あるところで出会った戦士が、実は超長寿の種族で、神話の英雄たちの仲間の一人だったということが判明します。そして、その口から、神話が実際の闘いが元になっていること、神話の伝承と実際の闘いは微妙に違うこと、英雄のリーダーは主人公と関係があることが語られる、という具合です。

こういう仕掛けがあると、読者としては、一字一句をドキドキしながら読み進められ、また、この設定は後でどういう風に生かされるのだろうかと想像を膨らませて楽しむことができます。

著者
深山 フギン
出版日
2016-06-23

キャラクターが魅力的

個性豊かなキャラクターも『オーバーロード』の魅力のひとつです。まず、とにかく設定があるキャラクターの数が膨大です。

自陣営の家来だけでも名前ありキャラだけで20名を超える大所帯です。さらにそれぞれの敵勢力の幹部クラス、兵士に加え、街の人々まで、その魅力的なキャラクターは300人を超えます。

その中でも、特に魅力的なのは主人公直属の部下である階層守護者たちです。階層守護者とは、モモンガの本拠地が階層式のダンジョンになっているため、それぞれの階層を守っているという設定の家来です。

ちなみに階層守護者たちは、それぞれまったく異なった設定、性格なのですが、それにもちゃんと理由があります。それは、元のRPGで家来を作成、設定したプレイヤーが異なるため、それぞれが自分の趣味全開で作成したから、という説得力のあるものです。設定の練りこみに抜かりがないですね。

階層守護者たちは、主であるモモンガに忠誠を示し、それぞれ個性的な方法で忠義を実行に移していきます。知略をめぐらす者、戦力を行使する者、行き過ぎた愛情を表現しようとする者。彼らの活躍から、目が離せません。

著者
深山 フギン
出版日
2016-08-23

漫画ならではの魅力

『オーバーロード』は掲載媒体ごとにストーリー、設定が異なっているのです。ただでさえ複雑に練りこまれた設定があるのに、それを掲載媒体ごとにズラしたうえで破たんしないなんて、作者の頭の中はいったいどうなっているのでしょうか。
 

そんなわけで、複数のストーリーをもっている『オーバーロード』という作品ですが、掲載された順では、コミックが最も遅いです。

そのため、コミックでは、それまでに発表された掲載媒体の、良いところを抽出してストーリーを構成しています。

魅力的なのに初出のネット小説版ではいなかったキャラクターも、コミックでは登場しています。時間の関係からか、アニメではカットされてしまったシーンも、コミックではちゃんと載っています。コミック版は、いわばリマスター版なのです。

『オーバーロード』という作品にまだ触れていない方、まず初めに読むならコミック版がおすすめですよ。

著者
["深山 フギン", "大塩 哲史"]
出版日
2016-12-26

本格ファンタジー漫画『オーバーロード』。コミック版で、そのファンタジー世界を冒険してみませんか。

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