アニメ化『ヴィンランド・サガ』のあらすじと魅力を考察!【最新26巻】ネタバレ注意

更新:2022.8.8

11世紀初頭の北欧には、人々から恐れられる戦士、ヴァイキング達がいました。『ヴィンランド・サガ』はそんなヴァイキングの1人である少年が、成長して新たな世界を切り拓いていく壮大な叙事詩です。 この記事では、2019年7月からはテレビアニメの放送も始まる本作の魅力をご紹介します!

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『ヴィンランド・サガ』の魅力を考察します!【アニメ化】

著者
幸村 誠
出版日
2006-08-23

『ヴィンランド・サガ』の舞台となるのは11世紀初頭の北欧。今日、いわゆるヴァイキングと呼ばれる人々を題材にした漫画です。 2019年7月からは、待望のテレビアニメが放送開始!キャストには石上静香・上村祐翔・松田健一郎などが抜擢され声優を務めます。

幸村誠の作品で有名なのは、スペースデブリの掃除業が主役という異色のデビュー作『プラネテス』でしょう。同作もアニメ化もされたヒット作です。そんな作者が、近未来SF漫画から北欧の歴史漫画へと転向を果たしたことは、驚きを持って迎えられました。

ヴァイキング――当時はノルド人、デーン人、あるいは「北方の人」という意味のノルマンニと呼ばれていました(世界史に登場するノルマン・コンクエストのノルマンですね)。今では荒くれ者の海賊の代名詞となっていますが、実際に彼らは当時の北欧世界を荒らし回る恐怖の蛮族でした。

本作はただただ、そういったヴァイキングを描くことに終始する作品ではりません。当時の習俗を出来るだけ尊重しつつ、歴史の大きな流れを描く大河漫画です。同時に、1人の青年の成長を描くビルドゥングスロマン(成長譚)でもあります。

それでは、『ヴィンランド・サガ』の諸要素を解説しつつ、その魅力に迫っていきたいと思います。

登場人物:激動の人生を歩む主人公【トルフィン】

著者
幸村 誠
出版日
2008-06-23

本作の主人公で、フルネームはトルフィン・トルザルソンと言います。これは「トールズの息子のトルフィン」という意味。ノルド文化では家名を持たず、父親の名前、あるいは父祖の名前を名乗るという習慣がありました。

父親のトールズはかつて、北海最強の傭兵軍団「ヨーム戦士団(ヨムスヴァイキング)」の無敵の大隊長でした。そして母親ヘルガはヨーム戦士団首領シグヴァルディの娘。トルフィンは由緒正しい戦士の血筋というわけです。

トルフィンは典型的な猪突猛進のデーン人戦士ですが、トールズは違いました。デーン人の誰も知らないような不思議な体術を使い、彼らの思考にはない「傷つけない」ことを実践する人でした。戦わずに勝つではなく、誰とも戦わない、戦う必要がないというのがトールズの本質です。

トールズの元同僚にして、トルフィンの大叔父に当たるトルケルは、そんなトールズのあり方を「本当の戦士」だと言います。

少年期のトルフィンは父親の形見である二振りのナイフを巧みに使い、身長差、筋力差をものともせずに大の男相手に立ち回ります。成長した青年期には父親譲りの徒手空拳で、「戦わずに戦う」ことが信条に変わっていきました。

ところで、アイスランドの伝説的な探検家にソルフィン・ソルザルソンという人物がいます。これは日本語における読み方、表記法の問題で、綴りはトルフィンとまったく同じ。彼こそトルフィンのモデルで、歴史に登場する実在の人物なのです。ソルフィンの生涯、冒険については「グリーンランド人のサガ」、「赤毛のエイリークのサガ」で語られています。

その「グリーンランド人のサガ」と「赤毛のエイリークのサガ」は2編を合わせて「ヴィンランド・サガ」と呼ばれています。そう、本作のタイトルはまさにこれに由来するものなのです。

史実の「ヴィンランド・サガ」は、ソルフィンがその仲間を率いて大西洋を渡り、ヴィンランドと名付けたアメリカ大陸への入植を目指すという物語です。かの有名なコロンブスのアメリカ大陸発見が1500年頃ですから、それに先立つことおよそ500年前、すでにアイスランド人によって見つけられていたということになります。

もちろん、史実と漫画『ヴィンランド・サガ』では事情が異なります。ソルフィンは復讐のために半生を賭けたこともなければ、ヨーム戦士団縁の人間というわけでもありません。漫画に登場するトルフィンは今まさにヴィンランド行をはじめたばかり。タイトルから考えれば、物語はここからが本番ということになります。

ちなみにヴィンランド=アメリカ大陸の発見者はレイフ・エリクソン。本作にも登場する幸運者レイフも実在の人物です。

登場人物:宿敵にして導き手【アシェラッド】

著者
幸村 誠
出版日
2006-10-23

ここからは主人公トルフィンに特に影響を与えた重要人物をご紹介したいと思います。

作中屈指の人気と魅力を誇るキャラクターが、このアシェラッド。年齢はおそらく40代ほどでしょうか。人生の酸いも甘いも知り尽くし、清濁両面を備えた深い人物です。非常に優れた戦士にして、鋭い観察眼を持った将軍気質。奸計を巡らす知略家でもあります。

少年期のトルフィンが所属する海賊団の首領ですが、ある理由で彼に命を狙われています。とは言っても、トルフィンはアシェラッドを正式な決闘で討ち果たすことを望んでおり、それを熟知したアシェラッドはトルフィンを体のよい部下としてこき使っています。

いざ決闘となっても、普段通り飄々と受け流し、一枚も二枚も上手の技量でトルフィンを圧倒するアシェラッド。海賊というイメージからすれば面倒な部下は斬り捨てればよいだけなので、聞き分けのない部下を叩きのめすというよりは、決闘を通して何かを教え諭しているようにも映ります。

その出自からアシェラッド・ウォラフソン(ウォラフの息子のアシェラッド)と名乗りますが、本当の名前は不明です。父親が奴隷に生ませた庶子のため、名前を与えられなかったのです。アシェラッドとは「灰まみれ」を意味する渾名でしかありません。

父親はデーン人の豪族ウォラフ。母親のリディアは奴隷の身分でしたが、元はウェールズからさらわれて来られた王女です。この血筋がアシェラッドの複雑な人物像を形作る大本になっています。

実は王女リディアはケルトに名高い名将、アルトリウス公の子孫。アシェラッドはかの有名な円卓の騎士の王、アーサー王のモデルとなったルキウス・アルトリウス・カストゥスの血筋なのです。

アルトリウス公の治めた国ブリタニアは、アングロサクソン人に滅ぼされ、そのアングロサクソンもデーン人に滅ぼされました。アシェラッドは我が物顔で故郷を蹂躙しようとするデーン人を心底憎んでいます。が、そんな彼の体には半分デーン人の血が流れているという皮肉。

アシェラッドはトルフィンに説きます。本当に憎い相手を殺したいのなら、本心を押し殺し、油断させて懐に入り込み、絶好の時期を待つのだと。彼自身が実践しているように。

登場人物:覇道の王が夢見るのは理想か、暴虐か【クヌート】

著者
幸村 誠
出版日
2009-02-23

クヌートはデンマーク王スヴェンの次男で、第2位の王位継承権を持つ王子です。少年期のトルフィンと出会った頃は、女性と見紛うほどの中性的な美しさを持った美少年でした。

王子でありながら、性格は控え目で臆病。付き人にして養育係のラグナル以外には口を開くこともありませんでした。それは蛇が相争うとも言われる王室の権力争いが原因。その王子らしからぬ軟弱な態度は、次代の権力を狙う勢力の板挟みとなる生活環境の中で、彼が生き残るために辿り着いた処世術だったのです。

元々この時代に広がりつつあったキリスト教徒だったのですが、デンマーク軍のイングランド遠征において敵軍の人質になって後、自分の身を賭けて争うヴァイキング達を前にして空しさを覚えました。そして同じく捕らえられていたヴィリバルド修道士との問答を経て「神の愛」の本質に気付きます。

世界の全てのものは神に愛されているが、人間にだけは愛がない。人間だけが不完全な存在。その真実に至ったクヌートは王の資質に目覚め、文字通り人が変わります。彼は自ら権力を手にして、神に変わって人間の理想郷を築くことを誓いました。

その王の資質、「神の愛」すなわち完全なる愛の考え方は、トルフィンの父トールズと酷似していました。トルフィンも知らない「本当の戦士」に似た思考です。

少年期のトルフィンはクヌートの護衛役を務めました。その時のトルフィンがクヌートと過ごした時間は長くはありませんでしたが、後に成長した2人は思わぬところで再会します。見違えるように変わった2人は、互いに影響を及ぼして、再び別々の道へと進んでいくことになります。

このクヌートも実在した歴史上の人物。デンマーク王スヴェン1世の子で、父の死後、イングランド侵攻を果たしてデンマークとイングランド両国の王となりました。トルフィンの元になったソルフィンとは同時代の人物ですが、もちろん史実で両者が対面したという事実は残っていません。

『ヴィンランド・サガ』これまでのあらすじ

トルフィン少年期:旅立ち編【1巻〜2巻あらすじ】

著者
幸村 誠
出版日
2007-10-23

ここからはストーリー面の魅力をお伝えするために、各編のあらすじからその魅力に迫っていきたいと思います。見出しの各編は正式な分け方ではなく、独自のものであることをお断りしておきます。

西暦1002年のアイスランド。トルフィンは父親のトールズ、母親のヘルガ、そして姉のユルヴァと暮らしていました。土地は貧しく、近隣でもめごとはあるものの、それでも慎ましく平和な日々でした。

ある日、その平和を壊す一隻の軍船が現れました。船に乗っていたのは、北海最強を誇る傭兵団ヨーム戦士団のフローキとその部下でした。フローキは近々イングランドとの大規模戦争が始まることを告げ、トールズに帰隊を促しました。トールズは戦いの日々に嫌気が差し、自分は戦死したように見せかけて、妻子を連れて戦士団を出奔していたのです。

出奔の罪を帳消しにする代わりに、イングランド戦線に参加せよ、というのが戦士団首領の命令でした。背けばアイスランドの住民の命はない。渋々了承したトールズは、最低限の人員を募って船で出港します。

年頃の少年らしく戦士に憧れ、冒険譚に目を輝かせていたトルフィンがこの機会を見逃すわけがありません。彼はこっそり乗船していました。トールズがトルフィンを見つけた時には、もう引き返せないほど進んだ後でした。

一路、目的地の中継地点であるフェロー諸島に向かう一行。そこでは密かに、フローキからトールズ暗殺の命を受けたアシェラッド兵団が待ち受けていました。戦士団で出世を狙うフローキにとって、トールズ帰隊は邪魔でしかなかったのです。

一行の無事だけでなく、彼の不殺の信念によって敵の一団も傷つけたくなかったトールズは、首領アシェラッドに対して決闘を申し込みます。トールズは激戦の末、見事にアシェラッドを下しますが、先走った部下によってトルフィンを人質に取られてしまいました。

トールズはアシェラッドに対して決闘の勝利を宣言し、一行の無事を保証させてから自ら命を差し出し、事態を収めました。

残った者達は無事に解放されますが、トルフィンは1人でアシェラッド兵団の船に乗り込みます。目の前で自分のために殺された父親の復讐を果たすために。

トルフィン少年期:ブリテン編【3巻〜8巻あらすじ】

著者
幸村 誠
出版日
2009-09-23

10年後、トルフィンはアシェラッド兵団の一員となっていました。アシェラッドの下で働き、軍功を上げて褒賞代わりに決闘を挑むためです。戦士の誇りを持った彼は寝首をかくことを良しとせず、正々堂々と戦い、トールズの仇を討つことだけが望みでした。

アシェラッド兵団はヨーム戦士団などとともにスヴェン王のイングランド攻略線に参加。最も過酷な戦地ロンドンでは、デーン人でありながら裏切ったトルケルが、守勢の将軍として彼らを阻みます。アシェラッドの一計でトルケルと対決するトルフィン。圧倒的なトルケルに対して傷を負わせますが、善戦虚しく敗北。

時を同じくしてイングランド攻略本隊はロンドンを離れます。

ロンドンに残されたスヴェン王の軍はわずか4000人。それを統率するのは若き第2王子クヌートでした。本隊でも困難だった攻略を4000人でこなせるはずもなく、攻撃に転じたトルケルの手勢によってあっさり壊滅。クヌートと付き人のラグナル、ヴィリバルド修道士が捕虜となります。

この機会を、名を上げる好機と見たアシェラッド。本隊には無断でトルケル軍を急襲し、クヌートらの奪還を果たしました。アシェラッド兵団は追撃をかわしつつ、本隊との合流を目指します。アシェラッドは様々な手を打ちますが、ついにはトルケル軍に追いつかれてしまいました。

その混乱の最中に、唯一信頼していたラグナルを失ったことをきっかけにして、クヌートが王の資質に目覚めます。追っ手であるトルケル軍を驚くほどの手腕で掌握してしまいます。アシェラッド兵団はトルフィンとアシェラッドを残して事実上壊滅。

新たに手勢を揃えたクヌートは、ロンドン攻略軍として残すことで自身を切り捨てたスヴェン王へ、反逆の意志を固めます。すなわち王位の簒奪。無事に本隊へ合流した彼らは、諸侯を丸め込んで長期戦の構えを取ろうとしましたが……事態は急変します。

アシェラッドの故郷、ウェールズ討伐という次なる命令。動揺を見抜かれたアシェラッドは、スヴェン王から2択を迫られました。クヌートか、ウェールズか。アシェラッドはすでに、クヌートに自身が仕えるべき正しい王の姿を見ていました。どちらを選択しても、生涯を賭けて望んだものの一方が失われることになります。

アシェラッドは乱心に見せかけて、スヴェン王の首をはねました。そしてクヌートに自分の命を取らせることで、次の王位の趨勢を決めたのです。当然、この騒動でウェールズ討伐は白紙。自らの命でクヌートとウェールズどちらも守ったのです。それはくしくも、自身を犠牲にしたトールズと同じ行動でした。

そして最後にアシェラッドは、トルフィンへ将来を示して果てます。

「本当の戦士になれ……トールズの……子……」(『ヴィンランド・サガ』より引用)

トルフィン青年期:奴隷編【8巻〜14巻あらすじ】

著者
幸村 誠
出版日
2010-06-23

数年後、1015年。アシェラッドを亡くしたトルフィンは生きる意味を失い、奴隷身分に落ちていました。アシェラッドの死後、錯乱した彼はその原因となったクヌートに斬りつけたことで、軍を追放されていたのです。

彼が働くのはデンマークの広大な土地を保有するケティル農場。奴隷は死ぬまでこき使われるのが通例ですが、ここの大地主のケティルは例外でした。彼は農場で働く奴隷に土地を開墾させてその成果物を買い取り、その総収益が奴隷購入代金を上回れば、自由身分に戻ってもよいと言うのです。

当初無気力に、言われるがまま働いていたトルフィンですが、新入り奴隷のエイナルに触発されて徐々に生気を取り戻していきます。農場で起こった様々な出来事、そしてアシェラッドの遺言を胸に、トルフィンは「本当の戦士」の道へと歩き始めました。

「本当の戦士」とは戦わない者、戦う必要のない者。この世に争いが絶えず、戦いの芽がなくならないなら、争いのない世界を作る。そう決心します。

不殺、非暴力を誓う彼らの前には、それでも理不尽なことが次々と起こりました。奴隷アルネイズとその夫ガルザルの死。そしてそれ以上の、強大な暴力そのものといえる戦争。

1018年。デンマークだけでなくイングランドの王となっていたクヌート。イングランド駐留軍維持費捻出のため、彼は過酷な決断を下します。それは支配地で経営されている農場の接収でした。白羽の矢が立ったのは、ケティル農場です。

無残にも死んでいく戦士、殺されていく無辜の民。トルフィンは己の信念の下に立ち上がり、ケティル農場の特使としてクヌートに謁見しました。

数年振りに再会した2人は、己の信念、理想を共有します。手段は違えど、両者の目的は争いのない世界を作ること。それを確認した2人は、互いを唯一の理解者として別れます。トルフィンの説得に応じたクヌートは農場の接収を撤回し、そして駐留軍の撤収を決めました。

トルフィン青年期:冒険編【14巻以降あらすじ】

著者
幸村 誠
出版日
2014-10-23

ケティル農場を出たトルフィンとエイナルは、理想の国作りを目標に掲げます。その場所は、トルフィンが幼い頃にトールズの友人、冒険家レイフから聞かされた遥か海の彼方。豊かな草原の地、ヴィンランド。

それに先だって故郷アイスランドに戻り、懐かしい顔に対面するトルフィン。手荒い歓迎を受けた彼らは、ヴィンランドまでの航海に必要な渡航費を得るべく、近隣の有力者ハーフダンを訪ねます。

出資自体は断られますが、ハーフダンの息子シグルドの結婚祝いと引き替えに、貴重な一角獣の角を手に入れました。しかるべき場所へ売りに行けば、同量の金と同じ価値という値打ち品です。ヴィンランド行きの前に、まず角を金に換えるため大西洋とは正反対へ航海しなければならなくなりましたが、とにかく算段のついた一行。

ヴィンランドへの航海経験があるレイフの船に乗り込んだのは良かったのですが……そこに招かれざる客が紛れ込みます。亡くなったレイフの弟の妻だった、義妹のグズリーズが密航しようとしたのです。

このグズリーズはまだ若く、あらためて嫁いだばかりの新妻でした。しかもその相手は、ハーフダンの息子シグルド。結果的に花嫁を拐かした形に。

思わぬ珍客を乗せた一行はシグルドの追跡をかわして、シェットランド諸島に至ります。そこにはレイフの友人一家がいるはずでしたが、近隣のいざこざに巻き込まれて村ごと焼き払われていました。生き残りは赤ん坊のカルリと、その子を守ろうとする犬のみ。里親を探すため、彼らを旅に連れて行くことに。

さらに東へ進み、スカンジナビア半島へ上陸したトルフィンらは、そこで1人の狩人に出会います。ヒルドという名の女の狩人。彼女は8年前、アシェラッド兵団に襲われた村の生き残りでした。ヒルドは弩をトルフィンに向けながら告げます。トルフィンは彼女の父フラヴンケルを殺した張本人だと。

当人が忘れていても、当事者は決して忘れない。消えることない過去の罪が、トルフィンに襲いかかります。

やがて本当の戦士となるひとりの少年の生きざま【1巻ネタバレ】

 

かつて西ヨーロッパの各地に出没し、略奪をくり返して恐れられる蛮族がいました。デーン人を主体とするヴァイキングたちです。11世紀初頭、そんなヴァイキングの一団のひとつ、アシェラッド海賊団に主人公のトルフィンはいました。

まだ幼さの残る年齢でありながら、その実力は大人の戦士にも比肩し、戦場でも目を見張る活躍をします。他の享楽的なヴァイキングと違って、彼はとても冷めた少年でした。なぜなら彼の目的は、一団の首領アシェラッドにあったのです……。

 

著者
幸村 誠
出版日
2006-08-23

 

首は飛び、四肢は斬られ、泥臭い戦いのなかで人々が落命する、剣は刃こぼれし、使った矢は回収する……本作では西洋ファンタジーには見られない、リアルな中世ヨーロッパ観でヴァイキングの戦争が描かれていきます。

ヴァイキングというと、現在のイメージでは海賊の元祖のような扱いですが、実際には水陸問わずあちこちを転戦していました。彼らの特徴は、ロングシップと呼ばれる独特な平底の船を運用した機動力。その神出鬼没さは欧州全域におよび、冒頭でアシェラッドたちがフランク王国(現在のフランス、ドイツ地域)を荒らしているのもその表現でしょう。

トルフィンという人物の「物語(サガ)」としての壮大な叙事詩の幕開けにしては、血なまぐささが目立ちます。これは作者によると、最初から英雄である人物はいないはずで、英雄の人格形成をイチから追いかけるという狙いがあるためです。

少年トルフィンが何を見て、どう感じ、どんな選択するのか……じっくりと見ていくことにしましょう。

 

本当の戦士を貫いた父――トルフィン最初の転機【2巻ネタバレ】

 

10年前、幼少のトルフィンはアイスランドのとある村に住んでいました。近隣集落との軋轢はあるものの、家族は揃い、友達にも恵まれ、つましいながらも満ち足りた生活でした。

しかし、北海最強軍団「ヨーム戦士団(ヨムスヴァイキング)」のフローキが、トルフィンの父トールズを探しにやって来たことで状況が一変します。フローキに村の安全をちらつかされたトールズは、苦渋の決断をして旅立ちました。

そしてそうと知らないトルフィンは、無邪気な冒険を夢見て軍船に密航するのでした。

 

著者
幸村 誠
出版日
2006-09-22

 

当時、普通の男の子がそうであるように、トルフィンもまた冒険や戦いに憧れる純粋な子供でした。交易途中に訪れるレイフ・エリクソンの冒険譚は、彼の小さな胸を高鳴らせます。特に、遥か大洋の先にレイフが発見したという「草原の地ヴィンランド」の話は彼のお気に入りでした。

トルフィンを紹介する項でも触れましたが、レイフ・エリクソンは実在した人物。「赤毛のエイリークのサガ」や「グリーンランド人のサガ」にも登場します。彼こそが、ヨーロッパ人で初めてアメリカ大陸を発見した探検家なのです。

そうして純真に育っていたトルフィンの戦いと冒険への憧れが、2巻では無惨にも打ち砕かれます。偉大なる父の背中を見て、真っ直ぐに育つはずだった少年の心は、暗い情念に取り憑かれるのです。そしてこれ以後、少年期の彼を支える原動力になっていきます。

 

黄昏の時代の戦争で運命が動き出す【3巻ネタバレ】

 

時は1013年。イングランド国内のデーン人排斥に端を発するイングランドとデンマークの名もなき戦争は、デンマーク軍のイングランド本土上陸という局面を迎えていました。

イングランド側の防衛をかいくぐるデンマーク軍の快進撃は、商業都市ロンドンへと至り一時停滞してしまいます。ヨーム戦士団戦士のひとり、猛将「のっぽのトルケル」とその配下が寝返り、ロンドン側の守勢に回ったのです。

デンマーク王スヴェンが注目するロンドン攻略戦。スヴェン王についたアシェラッドは、勝機の糸口を求めてトルフィンを送り出しました。

 

著者
幸村 誠
出版日
2006-10-23

 

3巻では、後に重要な役割を果たすキャラクターが何人か登場します。しかしまず注目したいのは、やはりトルケル。のっぽのトルケル(トルケル・ザ・トール)の名は史実にも現れ、作中と同じようにロンドン側に雇われたとか。ここまで好戦的だったかは定かではありませんが、後の身の振り方も概ね史実通りです。

ヨーム戦士団の大隊長だったトルケルは、トルフィンの父トールズとは別ベクトルの強さを誇ります。その豪腕と豪快な性格はヴァイキングのイメージ通りで、とにかく凄まじい存在感です。2巻でもありましたが、ここで強調されているのは、トルフィンとトルケル(=一般的ヴァイキング戦士)の戦いに対する考え方の違いでしょう。

両者の差異が後に彼の行く末を決定付けます。そしてまた、アシェラッドが諭すように語るローマ、ブリテン、アングロサクソンの栄枯盛衰も意味深に響きます。

 

さまざまな思惑絡む敵地逃避行【4巻ネタバレ】

 

裏切りの将トルケルは、ロンドン攻略を一任されたクヌート王子の部隊を蹴散らし、さらに王子と側近を人質にして、デンマーク軍本隊を追いかけ始めました。本隊から離れていたアシェラッドはいち早く事情を察知し、王子奪還の報奨金目当てに一味を率いて単独行動を開始します。

アシェラッド一団はトルケルの隙を突いて、王子の身柄確保に成功。しかし、今度は一転して強敵トルケルから追われる立場になってしまいました。戦力差と王子の安全を考えれば、衝突は避けなければなりません。そこでアシェラッドは、誰もが思いも寄らぬ方法で敵地を逃れるのでした。

 

著者
幸村 誠
出版日
2007-02-23

 

少数の身軽さを活かした鮮やかな電撃作戦は、アシェラッドの知略を感じさせます。ところがトルケルも劣らず、王子を奪われたと見るやすぐさま体勢を立て直し、猛追撃を仕掛けてくるのです。

耳が良く、索敵に優れたアシェラッドの配下が正確に追っ手との距離を割り出すのが、逆に焦燥感を煽ります。アシェラッド隊100人に対してトルケルの手勢は500人。大人数にも関わらず、着実に距離を詰めてくる緊迫した場面です。

しかし、それをかわすアシェラッドの計略は意外なものでした。デンマーク軍にとってイングランドおよび周辺国は完全な敵地です。本来ならば救援など望めませんが、ここで彼の母方の故郷ウェールズとの接点が功を奏するのです。

 

忍び寄る死の影……終わりと始まりの予兆【5巻ネタバレ】

 

季節はめぐり、冬。ウェールズを縦断していたアシェラッド隊は雪中行軍を嫌い、デンマーク支配地域への最短ルートであるイングランド・マーシア伯領の横断を決行します。ところがこれが裏目に出て、猛吹雪に見舞われ足止めされてしまいました。

状況は徐々に悪化し、イングランド軍の追っ手が迫っています。アシェラッドは強行軍に舵を切ると同時に、クヌート王子擁立の企みを本格化させていきます。そのためには王子の側近であるラグナルが邪魔でした。

またたび重なる不運に、これまで一枚岩だったアシェラッド隊にも不和が生まれて……。

 

著者
幸村 誠
出版日
2007-10-23

 

4巻ではアシェラッドの本心と策謀がキーポイントでした。本巻ではその企みがさらに進みます。しかし順調に進むわけではなく、雪に足を取られたことが暗示であったかのような泥沼の様相を呈していきます。

奸計にはまったラグナルは、不承不承クヌート王子をアシェラッドに託しました。そこで語られた真実はまさに衝撃的な内容です。

思えば、ロンドン攻略はデンマーク軍本隊総力をもってしても困難でした。そもそも本隊でも手を焼く守将トルケルに対して、指揮経験のないクヌートに本隊より少ない別働隊を任せられたことがおかしな話だったのです。

クヌートの不穏な身の上に加えて、忍び寄るトルケルの魔の手。アシェラッドとトルフィンの行く手に暗雲が立ち込めていきます。

 

激突、そして王の資質の覚醒【6巻ネタバレ】

 

トルフィンとトルケルの一騎打ち。ロンドン橋で付かなかった決着の続きが、敵地敵陣の中で開始されます。トルケル軍の包囲網を生きて抜けるには、この決闘に勝利するほかありません。

一方、先行して脱出したクヌート王子も窮地に立たされていました。誰もがクヌートの意志を無視して、彼の身柄を抑えるために争い殺し合うのです。

そこでクヌートは、愛の本質、人間の業を目の当たりにしました。その大いなる悟りによって、軟弱だった王子が真なる王の片鱗を見せ始めます。

 

著者
幸村 誠
出版日
2008-06-23

 

この巻では2つの異なる場所で、2つの哲学的命題が提示されます。ひとつは、決戦の場では「本当の戦士」の強さとして、もうひとつはクヌートが感じ取った神の愛の本質として。これらは作中において、ほぼ同一のものとして登場します。

ほとんど無双としか思えない、怪物的強さを誇るトルケルでも、自分では敵わないと言わしめるトールズ。死してなお、影響を与え続けるトルフィンの父こそが、本当の戦士だと語られます。

そして悟りを得たクヌートは、人が変わったかのように振るまい始めました。元々備えていた資質が開花したのです。もはや彼は他人に運命を左右される者ではなくなりました。自らの手で覇道を切り拓く王となったのです。その気迫と覚悟は何者をも圧倒し、トルケルにトールズに似た面影を感じさせるほどになります。

 

毒蛇の巣くう庭。因果が巡る血縁対決【7巻ネタバレ】

 

年が明けて1014年、デンマーク軍本隊が駐留するゲインズバラにクヌート王子が帰還します。しかも彼が裏切りの将トルケルを従えているとあって、本陣では動揺が広がりました。スヴェン王との謁見では、アシェラッドの機転でことなきを得たものの、血の繋がった親子とは思えないほど一触即発。クヌートは王位への決意を新たにするのでした。

スヴェン王とクヌート王子の、血で血を洗う親子の争い。それはくしくも、アシェラッドが越えてきた道でもあったのです。

 

著者
幸村 誠
出版日
2009-02-23

 

良くも悪くも生身の闘争を描いてきた物語は、ここにきて暗く淀んだ政争へと様相を一変させます。クヌートが王の資質に目覚め生還したことで、スヴェン王の目論見は潰えました。軍団内は表向き平穏ですが、ここからがクヌートの正念場となっていきます。

注目すべきは、さらに深く掘り下げられるアシェラッドの生い立ちでしょう。普段はデーン人ノルド戦士として振る舞い、ウェールズに内通する謎に包まれた人物です。飄々とした性格の裏にある苛烈な憎しみの源泉が、まるでトルフィンを諭すかのように吐露されます。そしてまたその話は、スヴェン王と対峙するクヌートを暗示するようでもありました。

絡まり合った線が王位簒奪という一点に集中していきます。

この巻では「侠気のトルフィン(トルフィン・カルルセヴニ)」と渾名され、これは先述した「赤毛のエイリークのサガ」などで記述される、ソルフィンの名前(ソルフィン・カルルセフニ・ソルザルソン)を反映したものです。

 

8巻:少年期の終わり。トルフィン2度目の転機に次の道は示された

 

デンマーク軍によるイングランドの平定は事実上成立しました。春のイングランド王戴冠を待たずに、スヴェン王は新王朝の拠点を築くべく、交易の要衝地ヨークへと移動します。その軍団の水面下では、スヴェン王とクヌート王子の暗闘がくり広げられていました。

時間を稼いで諸将を味方につけたいクヌートと、クヌートの力を削ぎたいスヴェン王という構図です。

ことはアシェラッドの思い描いたとおりに進み、徐々に旗色が良くなっていくはずでした。しかし、事態は予想外の急展開を迎えることになります。

 

著者
幸村 誠
出版日
2009-09-23

 

前巻から引き続き、静かなる政争がおこなわれます。心理を読み切り、人心を操る術策の数々は、激しい闘争とはまた別種の醍醐味があるでしょう。知将アシェラッドの本領発揮です。

そのアシェラッドの存在が、物語を新たな局面へと導いていきます。トルフィンとクヌート、2人の少年の運命を決定付ける役目を、アシェラッドが背負うのです。理解の追いつかないあまりにもドラマチックな展開は、『ヴィンランド・サガ』全編をとおして1番の見どころといっても過言ではありません。

作者が長い序章と位置付けた少年編のラストをぜひご覧ください。

 

9、10巻:嵐の前の静けさ。青年期奴隷編

 

1年後、目的を失ったトルフィンは、流れ流れてユトランドの豪農ケティルの大農場にいました。ただ命じられるがまま、奴隷として開墾作業に従事する無気力な日々です。

しかし新たに奴隷仲間となった男、エイナルとの友情で、彼はこれまでになかった境地に至るのです。農奴としての経験がトルフィンを変えていきました。

平定されたかに見えたイングランド情勢は、スヴェン王の崩御でまたも混迷に突入していました。国外逃亡していたイングランド王エゼルレッドが、機に乗じて戻ってきたのです。侵攻の実権を握ったクヌートは、敵対するエゼルレッドに巧妙な工作を仕掛けていきます。

 

著者
幸村 誠
出版日
2010-06-23

 

トルフィンは6歳でアシェラッド一味に加わり、それからの人生を戦場働きで過ごしてきました。荒事に関しては一流の戦士でも、こと農作業となると赤子同然。あらゆる生産的行為は新鮮な驚きの連続です。

略奪と破壊をくり返すヴァイキングから「カルルセヴニ」と恐れられた男の面影は、そこにはありません。形なしと言えばそうですが、生きるということは、本来生み出すこと。それを実感としてトルフィンは学んでいくのです。

戦士から奴隷となり、それと引き換えに人間性を獲得していきます。覇道を突き進み、人間味を失ったかのように残酷さを覗かせるクヌートとは対照的です。

ケティル農場には大旦那スヴェルケルや奴隷上がりの奉公人パテールなど良い人もいれば、もちろん問題のある人物もいます。気が小さく、プライドだけは高い次男オルマルもそのひとり。彼は奴隷編において成長を果たすキーマンとなります。

 

11巻:平和だった農場に暗雲が立ち込める

3年後、1018年。エゼルレッドと後継者エドモンドは病死し、クヌートは正式にイングランド王となっていました。スヴェン王亡き後、クヌートと版図を分け合ってデンマーク王に就いた兄ハロルドも病で危篤状態。クヌートがイングランド、デンマーク両国の王となるのは時間の問題でした。

そこで喫緊の課題として浮上してきたのが、イングランド駐留軍の維持費です。新参者のクヌートがイングランドをまとめるには、直属の実行部隊が絶対に必要でした。彼は莫大な維持費を賄うため、所領の接収を計画し始めます。

 

著者
幸村 誠
出版日

 

激動の少年期に比べ、奴隷編に入ってからは比較的平穏な日々が続いていました。もちろん個人レベルの諍いはありましたが、当時の感覚ではそれも日常の一部に過ぎません。

しかし、それもここまで。新王クヌートの施策が不穏を呼び寄せ始めるのです。短期的な増収のために、土地の徴収を始めます。増税は全体の不満を回避しつつ維持費を賄うという、理にかなった方策ですが、没収される側はたまったものではありません。

目を付けられたのは、トルフィンのいるケティル農場でした。長い労役を終え、今まさに奴隷から解放される寸前のトルフィンたちに戦禍が迫ってくるのです。

ケティル農場を接収する正統な口実を用意するため、オルマルが罠に掛けられます。ヴァイキングの慣習を逆手に取った非道な行為。卑劣な手も辞さない様相のクヌートは、王になって人が変わってしまったのでしょうか。

 

12巻:奴隷の定めと本当の戦士へ至る道

 

クヌートがケティル農場の接収に乗り出したのと同じ頃、農場では別の問題が起こっていました。

近隣のキャルラク家から、逃亡奴隷が出たのです。ただ逃げ出しただけでなく、一家を惨殺したというガルザルは、危険な男でした。しかも彼は、ケティルの奴隷アルネイズの夫だったのです。トルフィンとエイナルは、自分たちに親切にしてくれるアルネイズを見過ごせませんが……。

そして狂気に陥ったガルザルは、追っ手を振り切ってケティル農場に襲来します。

 

著者
幸村 誠
出版日

 

アルネイズはケティル付きの奴隷で、ほとんど妾に近い世話係です。彼女はケティルのお気に入りでした。美しく従順で、働き者の彼女をケティルが手放すはずがありません。

当時の価値観で、奴隷への処遇を考えれば、死ぬまで奉公するのは当たり前。自由への道があったトルフィンの方が例外なのです。アルネイズを抜きに考えれば、ケティルは豪農とは思えないほど寛大な人物です。

しかしこれは仕方ない……そう割り切るべきなのでしょうか。そこでトルフィンはある考えに至ります。そもそも、奴隷制度がおかしいのだと。そしてそれを生み出す戦争も。

トルフィンはようやく進むべき道を見出しました。

 

13巻:最初の手段……巨大な力を前にして本当の戦士が目覚める

 

アルネイズに肩入れしたトルフィンとエイナルは、当然ケティルの雇った者に捕らえられてしまいました。

処罰を待つことになるのですが、ケティルが戻り、それどころではなくなります。ケティルたちは逆賊の汚名を着せられており、クヌートが率いる近衛隊が迫りつつあったのです。

狂乱したケティルは、せめてもの抵抗に人手を集めるのですが……。

 

著者
幸村 誠
出版日

 

窮地に立たされた時ほど、人間の本性が露わになるのかもしれません。ケティルの豹変がまさにそうです。

王にはめられ、財産を丸ごと没収されそうになり、あまつさえ心の拠り所だったアルネイズにまで裏切られる……これだけの逆境に立たされれば無理もないことなのかもしれませんが。それにしても彼の変貌ぶりには目を見張ります。

物語はケティルの顛末をとおして、支配者はより強大な支配者に屈することを示唆します。ヴァイキングが体現する弱肉強食の世界ですが、トルフィンはそれに敢然と立ち向かい始めるのです。

支配者に従うしかない弱者の生きる意味……本当に目指すべきものは何なのでしょうか。
 

 

14巻:奴隷編クライマックス。2人の男が至った2つの手段

 

戦闘行為はほぼ終結しました。双方被害は出ていますが、ケティル農場側は壊滅寸前です。当主代理のオルマルは降伏を決断し、こじれた問題の責任を負うべくクヌート近衛軍の下に向かいます。

一方、トルフィンとエイナルは奴隷身分から解放され、自由の身となりました。しかし彼らはそのまま立ち去ることを良しとしません。世話になった奉公人のパテールや、大旦那スヴェルケルに恩を返すため、ケティル農場を救おうと独自に行動し始めるのです。

 

著者
幸村 誠
出版日

 

この巻では終始、トルフィンの固い意志が描かれます。復讐に取り憑かれ、がむしゃらに戦っていた少年の面影はどこにもありません。理想を実現するために立つひとりの男です。

彼が決断したことを実行する姿は、涙なくしては見られません。その気迫は、荒くれ者集団のヴァイキングにも畏敬の念を抱かせるほど。「最初の手段」で暴力に立ち向かうトルフィンの姿は、あのトールズを彷彿とさせます。

彼の強さは、オルマルにも影響を与えました。くだらない慣習とプライドに縛られた男を変えたのです。

そして、手段が異なるだけで、クヌートの目指す理想もトルフィンと同じものでした。クヌートは暴虐なだけの王になっていたわけではなかったのです。

権力の有無に関わらず、トルフィンとクヌートは対等な関係となりました。そして同じ理想を目指す2人の道は、ここで完全に別れます。これから彼らは理想で結ばれた同志として、正反対の手段で楽園の実現に動くことになります。

クヌートは力によって現在あるものを塗り替え、トルフィンは非暴力で常識から爪弾きにされた者のために新天地を目指す……ヴィンランドを目指す物語は、ここから始まるのです。

 

15巻:新章開幕。戦士は古き因習も断ち切れるか

 

晴れて奴隷身分から解放されたトルフィンとエイナルは、理想の国づくりのためのヴィンランド行きをレイフ・エリクソンに相談します。レイフの協力がなければ大西洋を渡り、新天地に辿り着くことはできません。ヴィンランドへ向かうにはさまざまな人材が必要でした。

彼らはトルフィンの生まれ育ったアイスランドへ帰郷し、出資者を募ることにしました。そこで待ち受けていたのは、懐かしい人々と、凝り固まった風習だったのです。

 

著者
幸村 誠
出版日
2014-10-23

 

前巻では、ようやくタイトルであるヴィンランドへの旅が決まりました。ヴァイキングの常識から爪弾きにされた人々を救う、理想国家の建設……言うのはたやすいことですが、トルフィンたちにはクヌートのような権力も財力もありません。理想を実現する前に、まずは先立つものが必要となります。

すっかり肝っ玉母ちゃんと化したトルフィンの姉ユルヴァ、その尻に敷かれてしまっている幼馴染みアーレ、老いても気丈で息子の夢に理解を示してくれる母ヘルガ……そんな懐かしい顔ぶれに混じって、トルフィンのヴィンランド行きを後押しするのは意外な人物です。

そして今巻から、グズリーズという新しいキャラクターが登場します。良い意味で女らしくない人柄で、外の世界に目を向け、船乗りに憧れる女性です。年の離れたレイフの義理の妹なのですが、彼女もまた「赤毛のエイリークのサガ」などに名前が出てくる実在した人物。レイフとの関係性は史実とはやや異なるようです。

本来の歴史ならグズリーズはトルフィンと……いや、今後物語上でどうなるかはまだわかりません。

 

16巻:人が自由に生きられたなら

 

紆余曲折を経て、新たな仲間を加えたトルフィン一行の旅が本格的に始まりました。まずは入手した物資を換金すべく、ギリシアの都ミクラガルドを目的地として出発します。

イングランドとデンマークの大規模戦争が終結しても、争いがなくなったわけではありません。トルフィン一行はシェトランド諸島のとある島で、それを目の当たりにします。生き残りは赤子ただひとり。諍いの火種は未だ燻っており、トルフィンを思い悩ませるのでした。

 

著者
幸村 誠
出版日

 

これまでのところ本作の登場人物は、トルフィンとクヌート以外基本的にはすべて大人でした。彼らがするのは死を強く意識させる行為ばかり。子供、ましてや赤ん坊はひとりもいなかったのです。

そのため、孤児カルリの登場は何かを示唆しているようでもあります。生まれたばかりの乳児は、「死」と正反対に位置する「生」そのものです。「死」の戦いから脱却しようと足掻くトルフィンの転換期に登場したのは象徴的な出来事だといえるでしょう。

カルリの母親の最期も印象的でした。瀕死の重傷を負いながら、最後の一瞬まで我が子を守り抜こうとする気迫は、トルフィンすらもたじろがせます。

ヴァイキング、ノルド人社会でカルリが負わなければならない責任があり、ここでもまた戦士のルールががんじがらめとなって現れてきます。理想はまだ彼方にあって、とても手が届きそうにありません。

 

17巻:復讐の連鎖。過去がトルフィンを襲う

 

ノルウェーはスカンジナビア半島西岸に辿り着いたトルフィンたちは、ある狩人の女と出会いました。ヒルドという名の女は、「凪の入り江」フラヴンケルの娘……8年前、まだアシェラッドの配下にしたトルフィンが、自ら手に掛けた男の娘でした。

ヒルドはかつてトルフィンがアシェラッドを狙ったように、トルフィンの命を狙っていました。過去を悔い、生き方をあらためた彼の前に、過去からの復讐者が現れたのです。

 

著者
幸村 誠
出版日
2016-01-22

 

この巻の展開は、まさに皮肉としか言いようがありません。復讐に身をやつしたトルフィンが、改心してから復讐の対象となってしまう……ただヒルドの恨みは真っ当なもので、誰も彼女を責めることはできません。

女狩人ヒルドの半生は、壮絶のひと言です。人生の転落を経験し、すべてを投げうって狩人として暮らし始めたのですが、女が枠をはみ出して生きるのは容易なことではありません。

女が女であること、男が男らしくあること、そしてノルド人社会の掟。15巻以降、これらの慣習がくり返し取り上げられるのは、おそらく意図的なものでしょう。
 

トルフィンの目指す理想国家をつくるには弱者の救済だけでなく、弱者を生み出す構造、言い換えればヴァイキング社会自体を打破する必要があるのです。

しかしそれもこれも、復讐に取り憑かれたヒルドと真っ向から向き合った後のことです。

 

18巻:逃れ得ぬしがらみ。戦士の血が争いを呼び寄せる

 

4ヶ月後、1019年の4月。トルフィン一行はスカンジナビアを南下して、デンマーク王のお膝元であるイェリングに到達していました。イェリングは人と物で溢れた都市です。ギリシアまでの長い航海を前に、トルフィンたちは物資の補給を兼ねて交易のいろはを学ぶはずでした。

ただこの場所は言わばヴァイキングの最重要拠点です。トルフィンのかつての勇名「カルルセヴニ」を知る者は少なくありませんでした。

 

著者
幸村 誠
出版日

 

またしても、過去のしがらみで争いに巻き込まれていきます。イェリングで彼が再会したのは、あのトルケルでした。

そしてもうひとり、正確には初対面ですが、彼の運命に大きく影響を与えたヨーム戦士団のフローキです。

デンマークはイングランドとの戦争を終え、クヌートの治世で安定に向かっていました。しかし水面下では、デンマークの保有する最大戦力であるヨーム戦士団の中で内紛が起こっていたのです。先代の団長が亡くなったことで、フローキとヴァグンという2派に分かれた後継者争いの真っ最中でした。
 

トルフィンの母ヘルガは、先々代軍団長シグヴァルディの娘。トルケルと一騎打ちをし、これに勝った「トルフィン・カルルセヴニ」の名は今でもヴァイキングの間では語り草となっています。

これはつまりどういうことかと言うと、ヨーム戦士団の次期首領に名実ともに相応しい人物だということです。本人の意志は二の次で、その威光を借りたい者、邪魔に思う者の思惑が錯綜していきます。

戦いから身を引き、新たな人生を歩むことを望むトルフィンでしたが、運命は容赦なく彼を戦乱に引き戻そうとしていました。

 

19巻:最強で最凶の刺客ガルム登場

空白になっている団長の座をめぐり、ヨーム戦士団ではフローキ派とヴァグン派の争いが続いていました。トルフィンも候補として巻き込まれ、ヴァグン派に客人として迎え入れられました。

それを知ったフローキは、ガルムという手下を刺客として送り込んできました。

著者
幸村 誠
出版日

このガルムという男、見た目は飄々としているのですが、強い者と戦うことを常に望んでいる血に飢えた人物。目的を達成するためには手段を問わず、残虐な行為も平気でやってのけます。

しかも勢いだけでなく腕も確かで、特に素早い身のこなしと槍の扱いは圧倒的。そしてヴァグンを倒してしまうのです。すると相手を横取りされた形になったトルケルが憤慨。なんとヴァグン派の戦士を煽り、フローキとの対決へと進めました。

またガルムは、トルフィンと本気の決闘を望むことから、エイナルとレイフ一行を人質にとってしまうのです……。

さらに19巻では、トルフィンが父親の仇とするべき人物がもうひとりいたことを知ります。その瞬間怒りに囚われるのですが、我にかえり「もっと優しい人間になりたいのに」と思う気持ちが切ないですね。
 

20巻:バルト海が赤に染まる

 

先代首領が亡くなった後、次期首領の座を巡ってヨーム戦士団はフローキ派とヴァグン派が内部分裂を起こしていました。フローキは自身の孫で先代の息子でもあるバルドルを担ぎます。

しかし実はこの内紛、イングランドおよびデンマーク統一王であるクヌートが画策したものでした。さらに、彼の指示で内紛に介入しようとバルト海に進軍していた猛将トルケルは、クヌートの目論見を見破って独自の行動を取りはじめます。

トルケルはフローキ派との正面衝突を望みますが、フローキはそれに焦りを覚え、全面対決を避けるべく自身の配下であるガルムを差し出すのですが……。

 

著者
幸村 誠
出版日

 

一方のトルフィンは、先々代ヨーム首領だったシグヴァルディの直系として、さまざまな思惑から狙われることに。なんとか切り抜けられましたが、レイフたちが人質になってしまったことを知ります。この犯人はガルムで、決闘に応じないトルフィンを焚き付けるためのものでした。
 

トルフィンはレイフ、エイナル、グズリーズを救出するため、まさにフローキ派とトルケル軍がぶつかろうとしているヨムスボルグへ向かうことを決意するのです。

殺しを嫌い、デーン人としての生き方を否定するトルフィンの思いとは裏腹に、戦禍は否応なく彼を巻き込んでいきます。

 

21巻:絡まり合っていく因果と血の宿命

暗雲立ちこめるバルト海は、和平を蹴ったトルケル軍によって戦端が開かれました。ついにヨーム戦士団の本陣、ヨムスボルグへの攻撃が始まってしまいます。

ガルムによって捕虜となっていたレイフらは、内部の手引きによってかろうじて脱出することが出来ましたが、グズリーズだけ取り残されてしまいました。そのことを伝え聞いたトルフィンは、彼女の救出に向けて動き始めました。

著者
幸村 誠
出版日

そんななかトルケルの副官アスゲートは目ざとく動向を察知し、監視役としてシグルドを差し向けます。かくしてトルフィンとヒルド、それを追跡するシグルドとその仲間達によるヨムスボルグ潜入が始まったのです。

ストーリーは緊張の場面の連続、目に見える戦争と、密かな暗闘が交差していきます。

一枚岩かに見えたヨムスボルグ……一連の権力闘争の中心に据えられた人物の思わぬ人柄と、フローキの存在が、トルフィンの心を揺さぶります。そして彼はついに、父トールズ殺害の真相を知ることとなるのです。一体その真相とは?

血に飢えた狼と狐が巣くう砦、ヨムスボルグ。今や内外に火種を抱えるそこへ、解き放たれた狂犬ガルムまでもが迫っていました。容赦なく押し寄せる闘争の波は、果たしてトルフィンをどこに導こうとしているのでしょうか。

22巻:バルト海戦役、遂に終結!

シグルドを撃破し、グズリーズを奪還したヒルド。トルフィンに加勢すべく彼の元へ向かったが……?

熾烈極まるバルト海で、遂にトルフィンとガルムの戦いがはじまった!ヨーム継承戦争、いよいよ終結!

著者
幸村 誠
出版日

長かったバルド海戦編も、遂に完結!第22巻の見どころは、なんといってもトルフィンとガルムの死闘です!

ヒルドは無事にグズリーズ達を奪還することに成功しましたが、その裏でトルフィンは迫りくるガルムとの戦いを始めていました。

序盤、「殺不の誓い」を持つトルフィンは、戦いを避けようと防戦一方でした。強大な相手と闘う事だけを考えて生きる戦闘狂であるガルムとトルフィンの考えは間反対でしたが、次第にトルフィンは考えを改めるようになります。

思考を振りきったトルフィンは、ガルムに対し真の戦いを仕掛けます。しかし、それでもトルフィンは、とある制約を自らにかけていました。

果たして、トルフィンとガルムの死闘はどのような結末を迎えるのでしょうか?そして、ヨーム継承戦争の行く末は?バルド海戦編、クライマックスです!

23巻:それぞれの新たなる門出

グズリーズを追って故郷を飛び出したシグルド。途中でバルト海戦役に巻き込まれるトラブルがあったものの、軍船を手に入れてグズリーズの身柄を無事確保できました。

あとは連れて帰るだけでしたが……戦後処理の最中、シグルドはグズリーズの本心を知ってしまいます。トルフィンへの想い。シグルドは「必ず連れて帰る」という誓いを反故にして、グズリーズをトルフィンの元に向かわせ、自分は故郷アイスランドへ戻るのでした。 

著者
幸村 誠
出版日

物語全体の主人公はもちろんトルフィンですが、この巻に限ってはシグルドが事実上の主人公。

トルフィンおよびグズリーズ追跡の旅を通じて、シグルドの心境は大きく変化しました。彼が本当に求めていたものとは、名誉でも尊敬する父ハーフダンの後を継ぐことでもなく、むしろ逆――自分を縛る運命からの解放、つまり自由だったのです。

自由のために足掻くトルフィンとグズリーズこそ、シグルドの理想といえます。共感や憧れこそあっても、もはや憎む気持ちは一切ありませんでした。しかし、ハーフダンにシグルドの意思や理屈は通じません。シグルドは鉄鎖によって人を縛ってきたハーフダンと、真っ向から対立することになります。

自分の気持ちに正直になったグズリーズ、シグルドの第2夫人ハトルゲルドなど、魅力的な女性陣の行動にも心動かされる巻です。

24巻:ヴィンランドを目指す仲間集め

一角獣の角を売って得た利益。ハーフダンから取り付けた協力。トルフィンは1つ1つ障害を取り除いて、ヴィンランドへ旅立つ日が近づいていました。

しかし、まだ足りないものがありました。トルフィンの目指す争いのない国の理念に賛同し、ヴィンランド開拓を手伝ってくれる人手です。近隣住民を集めた民会(シング)で移住希望者を募るトルフィン。

すると、人目を避けるようにして、彼らのよく知る「あの男」によく似た人物が現れるのでした……。

著者
幸村 誠
出版日

 いよいよ新章「ヴィンランド建国編」の開幕。トルフィンの最終目標がヴィンランドへの到達と開拓なので、これが『ヴィンランド・サガ』の最終章になるかもしれません。とはいえ、まだまだトルフィン一行がいるのはまだアイスランドです。新大陸までの道のりは遙か遠いまま。

この巻では新しいキャラクターが何名か登場します。特に注目していただきたいのはコーデリアです。なんとトルケルの実子で、見た目も体格もそっくり。生物学的には男でハルヴァルという名前がありますが、複雑な生い立ちから本人の性自認は女性。性格は父親と正反対で、争いを嫌う優しい人物です。

彼女を巡るやりとりは、ここまでの物語の総括といってよい出来事。トルフィンの「最初の手段」が頼もしい一方、彼の理想が極めて危ういバランスで成り立っていることが窺えます。新天地への航路と開拓が上手く進むのかどうか……。

25巻:夢にまで見たヴィンランド

移住希望者を乗せた船団を組んだトルフィンは、ひとまずグリーンランドにあるレイフの農場へ立ち寄りました。この地にいる希望者の乗船と、第2次船団へ向けた準備のためです。

復路の保証がない危険な旅路。多くの者は北欧神話で語られる「平面世界の端」を恐れますが、開拓船団は北大西洋の航海を無事にやり遂げました。夢にまで見た草原の地、ヴィンランドへの到達。本格的に移住の行程に移る一行。しかし、そこにも争いの小さな種が……。 

著者
幸村 誠
出版日

トルフィン開拓船団の旅は、予想よりスムーズに進んでいきます。が、それはあくまで船旅の話。最大の目的である移住と開拓には、いくつもクリアしなければならない点があります。

たとえば意見の一致。最初に平和の理念と目的を話したにもかかわらず、道中の苦難から挫折感を覚える者が少なからず出ました。トルフィンはリーダーではありますが、命令権を持つ権力者ではありません。この先、いかに人心をまとめるかがポイントとなってくるでしょう。

他には現実化しつつある先住民との接触です。現在は開拓団、先住民ともにお互いの境界線で探り合う状態ですが、アイスランドから参加した武闘派のイーヴァルは先住民との戦闘を想定すべきと主張。

いずれにしても重要なのは、やはり「最初の手段」です。武力を用いない交渉が、開拓の成否を分けるといっても過言ではありません。

最新26巻:先住民と交流を深める日々

ついに先住民と直接対面したトルフィンたち。お互いの言葉はまったくわかりませんが、とにかく最初の接触は友好的に終わりました。

先住民の部族の名は「ウーヌゥ」。開拓団と彼らは徐々に交流を持つようになります。トルフィンはいずれ贈り物のやりとりから物資の交換、商取引へ発展させることを考えていました。

トルフィンたちは森を切り拓き、畑を耕し、種をまく。並行してウーヌゥ人の文化、言葉を覚えていきます。すべては順調に進んでいるように思えました……が、あっという間に畑を広げる姿を見て、ウーヌゥ人のシャーマン(呪術師)ミスグェゲブージュは言いようのない不安を覚えるのでした。

著者
幸村 誠
出版日

 ついに実現した先住民とのファーストコンタクト。事前の不安とは裏腹に、和やかなやりとりが行われました。屈託のない交流は希望に満ちており、平和と共存の象徴にようでした。

しかしその一方、開拓団とウーヌゥ人それぞれに不穏な予兆が生まれつつあります。

イーヴァル一派が密かにアイスランドから持ち込んでいた武器の存在。自衛が主目的とはいえ、最初の接触の時点で剣を抜きかけた描写があり、非常に危ういです。

さらに厄介なのは、シャーマンのミスグェゲブージュと弟子ニスカワジージュの見た予知。遠い遠い未来を示唆するイメージが、彼らにどういった決断をさせるのか。

さまざまな思惑をよそに、季節は着実に進んでいきます。実りの秋。開拓団によるヴィンランドでの初めての収穫がもたらすのは、はたして喜びだけなのでしょうか。

『ヴィンランド・サガ』アニメ第2期制作決定!

アニメ『ヴィンランド・サガ』第1期は2019年7月から12月まで放送されました。少年期トルフィンのオリジナルエピソードを除くと、アニメ版ストーリーはおおむね原作通りに進み、ハイクオリティな映像と演出もあって国内外を問わず評価が高いです。

第1期終了直後から続編が熱望されていましたが、およそ2年の時を経て、2022年6月に正式に第2期が発表されました。

アニメ『ヴィンランド・サガ』第2期は2023年1月放送開始予定。第2期の内容はトルフィン青年期の奴隷編となります。

主要人物はトルフィン役の上村祐翔、クヌート役の小野賢章は第1期から続投で、新たに加わるエイナルを武内駿輔が演じます。そのほかにもアルネイズ役の佐古真弓や蛇役の小松史法、オルマル役の林勇、トールギル役の楠大典といったキャスティングが発表済みです。

今のところ第2期でどこまでアニメ化されるか不明。第1期は2クールで8巻分進んだので、放送スケジュールが同じなら原作16巻前後まで進むはずです。ストーリー上でキリがいいのは奴隷編クライマックスの14巻ですが、そのままだと2巻分の余りが発生するため、新展開を先取りする形で冒険編15巻から16巻の内容を含むかもしれません。

今からアニメ『ヴィンランド・サガ』第2期の放送を楽しみにしつつ、原作漫画で予習しておきましょう!

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