漫画『黒執事』は、巧妙に散りばめられた謎に多くの読者が虜になっています。いまだ明かされていない謎を含め、これまでの情報を整理しつつその魅力をキャラクターから考察していきましょう。
2007年から「月刊Gファンタジー」で連載中の、枢やな原作による人気漫画『黒執事』。その美しさに彩られた世界観に多くの読者が虜になっています。
また、ストーリーのなかに繊細に散りばめられた謎も魅力的で、読んでいるうちに『黒執事』の世界に惹きこまれること間違いなしです。あなたもその魅惑の世界を、一度体験してみませんか?
枢やな原作のダークファンタジー漫画『黒執事』では、普通に読んでいるだけでは分からないような、多くの謎が巧妙に散りばめられており、いまだに明かされていないものも少なくありません。それが「違和感」となって生じていて、多くのファンがその謎を紐解こうと様々な考察をしています。
この違和感こそが、『黒執事』に隠された謎を解く鍵となっています。原作者の枢やなによると、「違う視点から考えるとすぐに分かる」ということですが、それ見つけたときの達成感がやみつきになること間違いなしです。
しかし『黒執事』の魅力は、謎の解明だけではありません。枢の入念な下調べにより、物語の舞台となっているイギリス文化や時代背景など、現実の世界とリンクしているものも多いのです。実際に起こった事件も、見事にストーリーに溶け込んでいます。また、建物や風景、キャラクターたちの洋服などすべてに時代が反映しているので、『黒執事』を読むことで、当時のイギリスが手に取るように分かるのも魅力のひとつなのです。
また何といっても、細かいところまで行き届いた、繊細で美しい絵に惹かれている方も多いのではないでしょうか。さらに、キャラクターひとりひとりも個性的で魅力的というのも評価が高い理由となっています。
すでに『黒執事』の愛読者という方にも、これから読もうと思っている方にもお役に立てるよう考察していきます。ネタバレを含んでいるのでご注意ください。
本作の主人公セバスチャン・ミカエリスは、ファントムハイヴ家の少年シエルが、とある集団に囚われた際に行われた儀式で召喚された悪魔です。シエルの悲痛な叫びとその強欲さに惹かれて契約し、彼の命を守りながら、その願いを果たすまで、執事として仕えています。
契約の印は左手の甲に浮かび上がっており、普段は白い手袋で隠れています。正体を知る者は多くありませんが、セバスチャンの名セリフ「あくまで執事」は「悪魔で執事」という意味で、周りが気がつかないだけで自ら正体を明かしているのです。
- 著者
- 枢 やな
- 出版日
- 2007-07-27
セバスチャンはシエルと契約を結んでいるとはいえ、それはお互いに信頼し合わなければ成り立たない関係でもあります。阿吽の呼吸とも言える、その関係性が見え隠れするのも魅力的なのです。
「本当に捕まるしか能ががありませんね貴方は」(『黒執事』2巻から引用)
信頼し合っているからこそ、こんなセリフが言えるのです。
「どこへでもお供します。最後まで、たとえこの身が滅びようとも私は絶対にあなたのお傍を離れません。 地獄の果てまでお供しましょう。」(『黒執事』2巻から引用)
というように、一見従順そうな言葉ですが、その反面決して逃がさないと釘を刺しているようにも聞こえますね。
セバスチャンの本来の姿(悪魔)というのは原作にも描かれていませんが、赤い目、口には牙、まるでハイヒールのような足先、そして大きく黒い羽が舞い上がっていることから、ファンの間ではカラスのような姿をしているのではないかと言われています。
セバスチャン曰く、本来の姿は主人の目にさらすことなどできないほど醜い姿とのこと。真の姿が見えないからこそ魅惑的ですが、ソロモン72柱の悪魔、黒鴉ナベルスか、ラウムのどちらかがモデルになっているとの声もあがっています。
両方ともカラスの悪魔ですが、ラウムは人間の姿に変身することができるということなので、モデルとしてはラウムの方が有力かもしれませんね。
セバスチャンに続く主人公、シエル・ファントムハイヴは、何者かに両親を殺害され家を焼かれ、彼自身も謎の組織に連れ去られたという苦い過去があります。その組織によって、悪魔召喚の儀式の生贄となる寸前に、セバスチャンとの契約によって命を繋ぎとめました。
両親を殺害された復讐をするかのように思えますが、実際は「自分をこんな目に遭わせたやつら」への復讐であって、少年ながらにも強欲で自ら闇に向かっていく様が、痛々しくも黒く美しいのです。人一倍プライドが高いからこそ、自分を戒めた者が許せなかったのでしょう。
セバスチャンとの契約印は右目に浮かびあがっており、普段は黒の眼帯で隠されています。若くして玩具メーカーのファントムハイヴ社を取り仕切っている実業家で、傲慢で誇り高き伯爵です。
女王からの依頼により、表に出せない裏仕事も請け負っているため、女王の番犬や悪の貴族とも呼ばれており、秘密裏に事件を解決していきます。
- 著者
- 枢 やな
- 出版日
- 2009-01-27
シエルは原作に描かれている様々な描写から、双子ではないかという説が浮上していました。25巻では、まさにその真実が暴かれる!というところまできているのです。
本当に双子だったとしたら、なぜ彼はその事実を隠していたのでしょうか。体が弱く、外で元気に遊ぶこともできなかった幼少期。セバスチャンと契約してから、何度か熱を出したり咳き込んだりといった描写もありました。
シエルの双子説を思わせるものは所々で描写されていますが、1つは「ファントムハイヴ当主はこの僕シエル・ファントムハイヴだ」というシエルのセリフにあります。
周りの者はシエルがファントムハイヴ家の当主だと知っているのに、あえて何度もくり返して言うのです。それは自分に言い聞かせているようにも聞こえ、周りにもそれを無意識に知らしめているかのように聞こえます。
同じことをくり返すという行動は、内面からでる不安の表れではないでしょうか。しかし、これだけではありません。シエルは謎の組織に捕まった際、背中に焼印を押されているのが6巻のサーカス編で確認されています。
その一方、4巻の回想シーンでは焼印が右腕にあり、これも双子説を裏付ける証拠の1つとなっているのです。
ジョーカーは、『黒執事』のサーカス編に登場するキャラクターです。物心ついたときからスラムで生活をする孤児でしたが、プアハウスを経営するケルヴィン男爵に助けられたあと、ノアの方舟サーカス団員のまとめ役となりました。
彼は生まれつき右腕がなく、義肢を装着しています。優しくて仲間思いのムードメーカーで、救われた恩があるためにケルヴィンの変態的な性癖に逆らうことができませんでした。
それは、子供たちをさらって薬漬けにし、見世物のような真似事をさせてから殺害するというもので、ジョーカーはその子供たちをさらってくる役目だったのです。
悪いことだと分かっていましたが、スラムから救われて生きると決めた以上、自分たちの生活を守るためだけにしてきました。彼がさらってきた子供たちと、自分を重ね合わせることをしなかったのは、その子供たちは五体満足であり、幸せな家庭で育っていたという嫉妬もあったのかもしれません。
- 著者
- 枢 やな
- 出版日
- 2009-06-27
ジョーカーは、こんな体でなければ、違う国に生まれてきていれば、もっと違う人生を送れたかもしれないと自分の人生を恨んでいたのかもしれませんね。
そんな彼に対してシエルは、自分の身を守るために他人を犠牲にすることは間違っていないといいます。所詮この世界は奪う者と奪われるものしかいない、自分の世界を守るために戦ったのだとしたら、それはそれでいいじゃないかと。
「何故俺達が誰にも見つからず子供を攫ってこれたと思う?目撃者が皆いなくなるからだ」(『黒執事』7巻から引用)
ジョーカーは、この事実を知っている者すべてを、団員が殺害していたからだといいます。そしてサーカス団は、仕事中に接したものはすべて殺害するとして、ファントムハイヴ家の屋敷に向かうのです。
「あいつらを誰だと思っているファントムハイヴ家の使用人だぞ」(『黒執事』7巻から引用)
しかしファントムハイヴ家の使用人たちは、ただの使用人ではありません。それぞれに過去がある最強の使用人たちです。いくらサーカス団員がプロだといっても、本物のプロに勝てるわけがありません。ジョーカーは、セバスチャンによって切り落とされた左腕からの出血により、動けない状態のまま仲間に生きてて欲しいと願うことしかできません。
その後ジョーカーの右腕の素材についても明かされます。右腕にはサーカス団の専属医が作った義肢を装着していましたが、彼はこの義肢が何で出来ているかを知りませんでした。実際は薬漬けにした後、殺害した子供たちの骨を使って作られていたのです。
専属医曰く、遺体を「どこかに捨てる手間もいらなくなるし最高のリサイクルだと思わないか?」「木よりも軽くて丈夫、そして陶器特有の無機質な美しさ…」(『黒執事』8巻から引用)
素材を集めるのが難しいからと、亡くなった子供たちの骨を再利用したというのです。これにはジョーカーもさすがに驚きを隠せず嘔吐。自分を守るためとはいえ、そこまで非情にはなりきれなかったようですね。
スネークは、ノアの方舟サーカス団の団員で、蛇の鱗で覆われた皮膚をしています。サーカスではヘビ使いを担当しており、ジョーカーたちとは違う場所で生活していました。
ヘビと人間のハーフなので、当然ながらヘビと会話をすることも可能。見世物にされていたところをジョーカーらに救われ、恩義を感じています。自身が喋るときも「~って(ヘビの名前)が言ってる」と、まるでヘビの代弁者のような話し方が特徴です。
ジョーカーたちが裏で行っていた悪事については全く知らなかったので、ファントムハイヴ家の襲撃にも関わっていません。帰ってこない団員を案じて、シエルとセバスチャンの匂いをヘビに追わせ、ファントムハイヴ家にたどり着きます。ジョーカーたちが行方不明になったのは、セバスチャンとシエルに殺害されたからだと考え、伯爵邸に潜み、ヘビを使ってシエルを殺害しようとしたのです。
そしてこの事件は、『黒執事』ファントムハイヴ邸連続殺人事件編へと繋がっていきます。
ファントムハイヴ邸で晩餐会を開き、ジーメンス卿を接待して欲しいという女王からの要望の真の狙いは、ジーメンス卿の殺害。女王の執事であるグレイがファントムハイヴ邸でジーメンス卿を殺害し、その罪をシエルになすりつけようとしていたのです。
ジーメンス卿は殺害され、今度はスネークのヘビが寝室で寝ているシエルを狙いにいきます。しかし実際シエルの部屋にいて殺されたのは、事件に怖がって彼の寝室を借りていた無関係の御曹司だったのです。
ジョーカーたちを殺害したのがシエルたちだと思っているスネークに、シエルは彼らが誘拐犯だったことを話します。自分たちが彼らを殺したことは内緒にし、スネークには正体がバレそうになったので行方をくらましたのではないかと言います。さらに、君を助けたいから僕の屋敷に来いと、シエルはスネークに手を差し伸べるのです。
このときからスネークは、ファントムハイヴ家の従僕となりました。スネークの活躍の場は、次の豪華客船編にまで広がります。ここで彼はセバスチャンに代わってシエルの命を守り、従僕として仕えることの決意がみられました。
相変わらず、ヘビの代弁者という話し方に変わりはありませんが、それがまたファンの心を揺さぶる可愛らしさでもあるのです。
2017年5月に25巻が発売されましたが、物語が大きく動きだす内容でした。まず、23巻で起きたミュージックホールのできごとが、25巻でも続いています。
スフィアミュージックホールの向かい側に、ファントムハイヴミュージックホールを建てたシエル。スフィアミュージックホールでは、客から血液を採取しているという情報がありました。
- 著者
- 枢やな
- 出版日
- 2017-05-27
シエルの狙いは、スフィアの客が減れば、血液を確保するために無理な採血をするだろうということ。そして、無理な採血を繰り返せば、おのずと死者が出て、その遺体を処分するにはきっと土に埋めるだろう、その現場を証拠として押さえる、というものでした。
なかなかシエルらしい冷酷な計画ですが、まんまと乗っかってくれたスフィアは閉鎖に追い込まれ、関係者は姿を隠します。しかし、スフィアに行ったきりのエリザベスが一向に戻る気配がありません。エリザベスが戻らない理由……それは、「蒼きお星様」が原因のようです。
この「蒼きお星様」の正体が本作の鍵を握っていると言っても過言ではありません。ミュージックホールの首謀者と思しき人物であるお星様がたが敬意を込めて様づけで呼ぶ「蒼きお星様」の正体は一体誰なのでしょうか?
その正体に関しては本当のシエルに近い者であったり、タナカという説だったり、葬儀屋が絡んでいるという見方など多々あります。双子説が取りざたされる本物のシエルが最も有力な正体の候補かと思われますが、とにかく物語が終盤に向けて核心に近づいているということが感じられますね。
場面は変わり、ソーマとアグニのいるタウンハウスに馬車が到着し、ソーマが出迎えます。ソーマの口ぶりから親しいものであることが伺えますが、その相手が「気安く触れるな」と、彼に銃口を向けるのです。
一方でアグニは、暖炉にシエルが投げ入れた写真の燃えカスを見つけ、愕然とします。そして、急いでソーマの元に向かうのですが……そこで銃弾が放たれます。撃たれたのはソーマなのでしょうか、アグリなのでしょうか……。
『黒執事』の最新26巻。ソーマの執事アグニの死、もうひとりのシエル(ここでは現シエルを坊ちゃん、もうひとりをシエルと区別します)、蒼きお星様について考察していきましょう。
ファントムハイヴ家のタウンハウスで何者かに殺害されたのは、アグニでした。その直後、タウンハウスの部屋の壁に彫られたメッセージを見た坊ちゃんが驚愕した表情を見せています。
さらに、ファントムハイヴ邸に戻った坊ちゃんを待っていたのは、亡くなったはずのシエル。周囲が驚きを見せるなか、タナカがファントムハイヴ家の過去を語るのです……。
- 著者
- 枢やな
- 出版日
- 2017-12-27
アグニを殺害した犯人は誰だ!?
自分を犠牲にしてソーマを護ったアグニの死は、想像を絶するほど残酷なものでした。
「あとは私が」(『黒執事』26巻から引用』)
ソーマに銃を当てた人物と、アグニを殺害した犯人は違うのではないでしょうか。アグニを殺害した犯人のこの言葉からも、複数の人物がいたと推測できます。25巻での銃口の角度などから、シエルではないかと予測できます。
このことについては、本巻でタウンハウスに駆けつけた坊ちゃんの顔を見たソーマが、殴りかかっていったことが何よりの証拠ではないでしょうか。セバスチャンはソーマが混乱しているからだと言っていましたが、彼の瞳にはしっかりと坊ちゃんの顔がしっかり写っていたので、間違えるはずはありません。
アグニを殺害した人物の特徴は、素早い動きと強い力です。アグニはかつてセバスチャンと互角にやりあった人間で、坊ちゃんも悪魔と勘違いするほどの強い人物でした。そんな彼の反撃を許さなかった犯人は、悪魔や死神並に強い人物なはずです。もしくは女王の執事たちといったところでしょうか。
ただ女王の執事たちには、ソーマやアグニを殺害する理由が現時点では見当たらないので、悪魔や死神の線が濃いと考えられます。
またいずれにせよ犯人の本来の目的は、アグニやソーマの殺害ではなく、坊ちゃんに知らしめるためのものではないかと推測できます。
シエルは本物のシエルなのかを考察!
「ただいま」と帰って来たシエルですが、かつて悪魔儀式の際に犠牲となり、その魂と引き換えに坊ちゃんがセバスチャンと契約したはず。なぜ、今になってその姿を見せたのでしょうか。
それは、アンダーテイカーが作ったビザール・ドールであると考えています。ただビザール・ドールは豪華客船編で失敗していましたし、シネマティックレコードを繋ぐだけでは生きているとはいえません。
そこで必要なのが、魂と血液です。
シエルの血液型は、双子である坊ちゃんと同じシリウス型ですが、とても貴重だったことが25巻で描かれていました。またヴァイオレットも同じシリウス型で、必要以上に採取されていたことが26巻で描かれた腕からわかります。
では、無くなったはずのシエルの魂はというと、そこにヴィンセントが関わってくると考えられます。
「君はどっちかなァ~?まぁどっちでもいいか
小生にとってはどっちもファントムハイヴだ」
(『黒執事』26巻から引用)
アンダーテイカーにとっては、シエルも坊ちゃんもどちらもファントムハイヴであることに変わりはなく、どちらかに執着している様子はありません。ただヴィンセントの死に関しては、涙を流す場面もありました。
しかしファントムハイヴ襲撃事件の際、ヴィンセントの魂が回収されているシーンは描かれていないので、元死神であるアンダーテイカーがそれを行なっていたとしてもおかしくないでしょう。そのまま彼がヴィンセントの魂をシネマティックレコードに繋ぎ、シエルの死体を土台にしていたと考えると……という可能性もあります。
また、129話でフィニアンがシエルを「坊ちゃんではない」と言う場面、130話の扉絵、セバスチャンの名に反応したときのシエルの目、さらに131話でディーデリヒと話している時、132話の扉絵と協会に立ち寄った時のヴィンセントの目がソックリなのも気になるところです。
蒼きお星様の意味は?その正体を考察!
スフィアミュージックホールに関係していた「蒼きお星様」。まず、アグニが殺害されたタウンハウスで壁一面に残されていたメッセージを紹介しましょう。
「Who stole the candy from my tummy.」(『黒執事』26巻から引用)
セバスチャンいわく「お腹のキャンディ盗ったのだあれ?」ですが、お腹のキャンディとは、悪魔儀式でシエルが犠牲になる前に飲み込んだ「ファントムハイヅ伯爵」を示す指輪のこと。そしてレイチェルはその指輪をこのように表現しています。
「星のきらめきを閉じ込めた深い青」(『黒執事』26巻から引用)
星ときらめきといえば、スフィアミュージックホールのことを差しているので、「蒼きお星様」というのはシエルを意味していると考えられます。
アンダーテイカーが黒幕だとして、シエルのビザール・ドールを完成させるための血液を確保するには手っ取り早い方法だったのではないでしょうか。
『黒執事』の伏線を考察した<漫画『黒執事』の伏線を最新27巻までネタバレ考察!シエルは双子?>の記事もおすすめです。気になる方はぜひご覧ください。
シエル復活にはまだまだ謎が隠されているようですね。果たしてヴィンセントのシネマティックレコードをつなげたのか、それとも別の理由があるのか、この先も目が離せません。