アニメも人気!美しきダークファンタジー『黒執事』をネタバレ紹介! 悪魔の執事・セバスチャンと少年貴族のシエルがさまざまな事件を追うダークファンタジー作品『黒執事』。美しい世界観と緻密な謎で組み立てられたストーリーで読者の心を掴み、不動の人気を誇っています。この記事では、27巻までの内容をもとに、本作に隠されている謎を徹底考察。物語はどのように完結するのでしょうか。
- 著者
- 枢 やな
- 出版日
女性を中心に絶大な人気を誇る漫画『黒執事』。美しい世界観や魅力的なキャラクターもさることながら、ストーリー自体が奥深く重厚なドラマを持っていることが人気の秘訣です。
そのストーリーを支えているのが、綿密に張られた伏線。読者の心をがっちりつかんで離しません。今回は、物語の根幹に関わる数々の謎を徹底的に解説していきます。
また、2008年と2010年、そして2014年と3度にわたりアニメ化した『黒執事』。声優の豪華さとアニメの美しさで多くの注目を集めました。
第1期は原作に忠実に、2010年の2期ではオリジナルストーリーで。そして、2014年では本編でも人気の高いサーカス編がアニメ化されました。(公式サイトはこちら)
漫画でもアニメでもダークな魅力を放つ黒執事!必見です!
作者の枢やなについてはこちらで紹介しています。
『黒執事』枢やなの経歴とおすすめ作品!人気の漫画家、実はBL作家?
スクウェア・エニックスの「月刊Gファンタジー」を中心に活躍する、日本の漫画家。代表作はアニメ化もされた『黒執事』です。同作はダークファンタジーの妙味も人気の1つでしたが、目を見張るべきは、その優れた画力です。繊細にして妖しい画風が、多くの読者を虜としました。 今回は、そんな枢やなについてご紹介しましょう。
- 著者
- 枢 やな
- 出版日
- 2007-07-27
舞台は19世紀末のイギリス。名門貴族のファントムハイヴ伯爵家当主である、シエル・ファントムハイヴに仕えるセバスチャン・ミカエリスが本作の主人公です。
まだ12歳と幼いながらも「女王の番犬」という二つ名を体現して、イギリスの裏社会を牛耳っていました。
シエルは悪魔であるセバスチャンの契約に関する暗い過去、復讐、とある事件の真相など、思い影に付きまとわれながらもさまざまな壁を乗り越えていくのです。
- 著者
- 枢 やな
- 出版日
- 2007-12-18
読者のあいだでは、準主人公であるシエル・ファントムハイヴと名乗る少年が、実は本当のシエルではない、という驚くべき説があがっていました。
彼はセバスチャンや家令のタナカから「坊ちゃん」と呼ばれており、その正体は双子の弟。兄である本当のシエルは、彼らの両親が殺された後に悪魔召喚の儀式によって殺されたとの見方が有力です。
そして26巻でついに、ファントムハイヴ家の息子は双子で、兄の方こそが本物のシエルであるということが明らかになりました。
それでは、これまでの伏線と、いまだ残っている謎について見ていきましょう。ここからは準主人公として登場している少年を「坊ちゃん」、本当のシエルを「真シエル」と書き分けていきます。
坊ちゃんは作中で何度も、自分の名前がシエルであり、ファントムハイヴ家の当主であることを強調してきました。
「指輪がなくともファントムハイヴ家当主は”シエル・ファントムハイヴ”〈この僕〉だ」(『黒執事』1巻より引用)
「この指輪は何度も主の死を見届けてきた 祖父…父…そして…」(『黒執事』1巻より引用)
「僕の名前はシエル・ファントムハイヴ その一つだけだ」(『黒執事』8巻より引用)
名前に固執する坊ちゃんと、彼に意味深な視線を送るセバスチャンが描かれました。このことから、セバスチャンも坊ちゃんの正体を知っていることがわかります。
「シエル・ファントムハイヴ伯爵<この名前>を背負ったからには もう前に進むしかないんだ」(『黒執事』14巻より引用)
ここでは、伯爵の位とよりも「シエル」という名前を背負ったことが強調されています。
セバスチャンがしばしば使う、「坊ちゃんが嘘をついている」という表現。この嘘の内容が双子説に関するものだと推測される場面がいくつか存在します。
「確かに坊ちゃんは嘘や秘密が多くていらっしゃいますよね」(『黒執事』7巻より引用)
「今度は…僕は絶対負けない ファントムハイヴ家当主シエル・ファントムハイヴとして…絶対に!」 「私には嘘を吐くなと仰るのに貴方はとても嘘吐きでいらっしゃる」(『黒執事』13巻より引用)
坊ちゃんは、かつて両親を殺害された後、悪魔召喚の儀式をおこなう組織に連れ去られ虐待を受けていました。そのすえに悪魔であるセバスチャンと契約を結び、力を得ることになったのです。
坊ちゃんの心に深い傷を残していることから、作中でたびたび儀式のシーンが回想されますが、ここに1番双子説のヒントが隠されていました。
「捧げられた犠牲と享楽を引き換えに」
「『犠牲』『願い』そして『契約』によって私は主人に縛られる」(『黒執事』1巻より引用)
儀式の様子を匂わせながらセバスチャンから語られるこのセリフ。「願い」が坊ちゃんの復讐、「契約」はセバスチャンが坊ちゃんの魂を食らうことだとはっきりしていますが、「犠牲」とは何なのかが曖昧なままです。
これと儀式を関連づけると、真シエルは死んだ可能性があがってきました。
「貴方は私を召喚してしまった その事実は永遠に変わらず 払われた犠牲は二度と戻らない」(『黒執事』4巻より引用)
儀式の場にセバスチャンが現れたときのセリフです。犠牲=真シエルの魂が失われたことだと考えると、この言葉を「死んだ真シエルは甦らない」と解釈できます。これらのことから、真シエルがすでに死んでいることが推測できるでしょう。
さらに儀式のシーンでは、真シエルが坊ちゃんとともに監禁されていたと考えられる描写が多数存在します。
「おお…これは!」
「珍しいでしょ?」
「これは二人分以上の価値があるぞ!」
「どうしてぼくたちが」(『黒執事』4巻より引用)
儀式で大人に取り囲まれている場面です。「珍しい」「二人分以上」という表現に脈絡がないように見えますが、双子だからだと考えるとしっくりきます。
檻の中で膝を抱えてうずくまる少年の腕に、焼き印が見えます。しかし後に坊ちゃんが腕まくりをした際には、その焼き印がありません。かわりに彼は背中に焼き印をもっているので、腕に焼き印のある少年は真シエルだと考えられます。
また、よく見ると前髪の別れ方が右分けで左目に痣がある少年と、左分けの少年と、書き分けられているのです。右分けある少年は儀式の際中にナイフで刺され、その時左分けの少年は織の中にいました。
「違う 同じじゃない 僕は(今)檻の外にいて」
「シエルはもうここにいなくて」(『黒執事』12巻より引用)
真シエルが儀式の際に死んだことが比較的はっきり表現されています。
セバスチャンの目線で契約のシーンが描かれた場面。
「貴方のお名前は?」
「僕の名前は… …… シエル シエル・ファントムハイヴ」(『黒執事』13巻より引用)
名前を言うまでの坊ちゃんの沈黙とともに、少年の死体が背景に描かれます。この時彼の頭に、真シエルのことがよぎっていたと考えるのが自然でしょう。そしてそのあとのセバスチャンの反応が次のとおりです。
「ふふ… 成程 よいでしょう」(『黒執事』13巻より引用)
何かを見抜いているような雰囲気を醸し出しています。
「貴方は大きな犠牲を払った」
「渡り賃はしかと頂きましたから」(『黒執事』13巻より引用)
渡り賃とは、悪魔が食べるもの、すなわち何者かの魂です。坊ちゃんが払った渡り賃こそ、真シエルの死だと考えられます。
セバスチャンへの渡り賃として、坊ちゃんが真シエルの魂を売ったことへの深い罪悪感が現れているシーンがあります。
「僕なんか守る価値ない 僕だけが 僕なんかより もっと…」(『黒執事』19巻より引用)
また、坊ちゃんの夢に真シエルと思われる人物が現れた時のこと。
「本当は直視するのが怖いんだ 傍にある罪の証を」
「わかっているなら、お前はなぜ復讐をしようとしているの? 僕を犠牲に手に入れた力で」(『黒執事』20巻より引用)
真シエルが犠牲になったことでセバスチャンが召喚され、坊ちゃんは力を手に入れたことが示唆されています。
このほかにも、お墓の数や、サーカス団の黒幕・ケルヴィンの記憶など彼らが双子であることが疑われる描写が数多く登場しました。そしてついに26巻でその謎が明らかになったのです。
- 著者
- 枢 やな
- 出版日
- 2008-05-27
ストーリーの根幹で、なおかつ最大の謎といってもいいのが「ファントムハイヴ一家殺害事件」です。物語の発端でもあるこの事件ですが、これまで真犯人についてほとんど語られていません。
現在可能性がある人物として多く名前があがっているのが、ヴィクトリア女王と、坊ちゃんの兄である真シエルの2人。まずはヴィクトリア女王説から見ていきます。
確かにファントムハイヴ家の当主が代々「女王の番犬」であることを考慮すれば、ヴィンセントが知ってはいけない王室の秘密を知ってしまった可能性は高いかもしれません。口封じのために殺されたのであれば納得できます。
また女王の若かりし頃から側近として仕えるジョンは、常にゴーグルのようなものをつけており、素顔が見えません。身体能力が異常に高いことから、彼は人間ではない可能性も考えられます。彼の能力をもってすれば、ヴィンセントを殺害することは難なくできるでしょう。
しかしここで疑問となるのが、なぜファントムハイヴ家の人間である坊ちゃんに「女王の番犬」を継がせたのか、ということです。彼女は坊ちゃんが次男であることを知ったうえで「番犬」を務めさせているのでしょうか。作中でもたびたび明示されているように、本来当主を継ぐことのない次男は家のことはあまり教わらないからです。
ただ女王の日頃の慎重さを考えると、あまりにも不用意な印象を受けますね。
では、真シエル説を考えてみます。
「お逃げください シエル様は… あなた様には酷すぎ…ッ」(『黒執事』4巻より引用)
このセリフを言った後、家令のタナカが何者かに切られます。柔術や居合の達人でかなりの腕前をもっている彼がなぜ反撃しなかったのかを考えると、相手が異常に強かったか、もしくは攻撃できないほど高貴な身分だったことが考えられるのではないでしょうか。
そして上記のセリフ「あなた様(=坊ちゃん)には酷すぎる」を考えてみると、犯人は真シエルである可能性の方が高いのではないでしょうか。
坊ちゃんと真シエルの2人は、幼いころは仲が良かったそうですが、26巻での再会は殺伐としたものでした。彼らのあいだに一体何があったのか、今後の解明が待たれます。
- 著者
- 枢 やな
- 出版日
- 2012-05-26
作中でもひと際異彩を放ち、謎の多い人物である葬儀屋。黒装束に身を包み、長い髪に隠れて顔は見ることができません。
前半では主に情報屋としてファントムハイヴ家に関わっていましたが、しだいに物語の根幹に関わっている人物であることがわかってきました。
まず、「豪華客船編」で彼の正体が判明します。それまで気配を消していて、セバスチャンや死神ロナルドも気づくことができませんでしたが、髪に隠されていたその瞳は、黄緑色。つまり、彼は死神だったのです。
しかしどうやら死神派遣協会からは半世紀前に離脱している様子で、その際に持ち出し禁止である「デスサイズ」を持って出たとのこと。離脱の理由も気になるところです。
またシエルから遺髪入れを引きちぎられた際、意味深な笑みを浮かべて次のようなセリフを言っていました。
「伯爵、それはしばらく君に預けよう」
「大事に持っていておくれ」
「小生の宝物なんだ」(『黒執事』14巻より引用)
いわくありげな遺髪入れですが、これにはシエルの祖母であるクローディア・ファントムハイヴの文字が刻まれていました。このことから、葬儀屋は彼女と何かしらの関係がある人物だとみてよいでしょう。
さらに21巻では、人間には見えないはずのドイツの死神に、シエルが気づく場面が。ここではドイツの死神が家系図を手にしているのですが、シエルの祖母にあたる人の夫は吹き出しに隠されていて見えません。
また、豪華客船事件のカギを握る動く死体、「歪んだ肉人形(ビザールドール)」を作り出した黒幕も葬儀屋でした。「まだ生きている」と錯覚させてゾンビのような存在を作り出すことに成功したのだといいます。
こうなると気になるのは、彼がヴィンセントの死に涙する22巻のシーン。
「かわいそうに 骨の髄まで焼けてしまって あんな死に方じゃもう…」(『黒執事』22巻より引用)
ヴィンセントの写真を見つめながらこう呟きます。すでに死んでいるのに「もう」という言葉が続くのは一見不自然ですが、葬儀屋がビザールドールを作り出せることを考慮すると、ここには「死体が残っていないからビザールドールとして蘇らせてやることもできない」と続くと考えられるのではないでしょうか。
つまり、彼は何とかしてヴィンセントを生き返らせようとしているのではないかと推測できます。
この後葬儀屋は、「ファントムハイヴ伯爵はまだいる」という言葉を残してその場を去るのですが、その後にシエルの双子の兄と思われる少年にある薬を飲ませている描写が。つまり「ファントムハイヴ伯爵」とはこの少年のことで、葬儀屋は少年を器にしてヴィンセントを生き返らせようとしていると考えられます。
上記を整理すると、
これらの理由から、葬儀屋はシエルの祖父である説が濃厚です。
- 著者
- 枢 やな
- 出版日
- 2010-09-27
ファントムハイヴ家に家令として仕えるタナカは、先代のヴィンセントのころから仕えているので、この家の過去の事情にも詳しいはず。しかし作中で彼に焦点が当たることは少なく、謎多き人物です。
セバスチャン同様「坊ちゃん」という呼び名を使い、双子の弟の方がシエルを名乗っていることを知っているというのがキーポイントでしょう。
「ファントムハイヴ一家殺害事件」で刺された際は、犯人の顔を正面から見ているにも関わらず、「見ていない」と主張しています。兄の真シエルをかばうためなのか、弟の坊ちゃんをかばうためなのかは分かりませんが、真犯人に関することを知りつつも何かの事情で隠しているのは確実です。
彼の動向が、2人の今後にどのような影響を及ぼすのか注目です。
現時点でかなりの謎の存在である「スフィアミュージックホール」のトップ、「お星様」と呼ばれる4人。このなかのシリウスの正体に関して、双子の兄「真シエル」なのではないかという説があがっています。
シエルは、「星の加護」を受けていると言われています。これは血液型によって4つに分けるもので、シエルとシリウスは同じAB型。2人は一卵性双生児なので血液型も同じはずです。
またバイオレットが目の前のシエルに一瞬びっくりした後に、「あ…君か…」と安堵するシーンが描かれています。バイオレットは目の前の顔をシリウスだと勘違いしたのではないでしょうか。
- 著者
- 枢 やな
- 出版日
- 2011-12-27
シリウスが本物のシエルだと考えると、リジーがミュージックホールから戻ろうとしない理由も説明することができます。
彼女は現在のシエルは双子の弟、つまり偽物で、本物のシエルではないという事実を知ってしまったのでしょう。
「あたしじゃシエルを助けられない」(『黒執事』23巻より引用)
このセリフは、シエルとリジーは「星の加護」が違う、すなわち血液型が違うため輸血をしてあげることができないということ。こと時の「シエル」は兄の真シエルのほうを指していて、彼女は自分の本当の婚約者である彼を助けるためにホールに留まっているのです。また、
「あたしだけは そっちに帰れない」(『黒執事』24巻より引用)
この言葉からは、真実を知っている数少ない人間として、自分が本当のシエルを救わなければならないという意識が感じ取れます。セバスチャンを排除しようとしたのも、彼は偽物である「坊ちゃん」側の人間だからなのでしょう。
そもそもリジーは以前から彼に対し違和感を募らせていました。顔つきや性格が変わってしまったこと、イースターの時の記憶がおかしいこと、持病のこと……坊ちゃんの前では明るく振る舞っていましたが、試すような嘘までついています。
また26巻では、彼女のメイドのポーラが次のようなセリフを言っていました。
「お嬢様はお嬢様のいるべき場所に向かわれました」(『黒執事』26巻より引用)
ここでいう「いるべき場所」とは、偽りの婚約者ではなく、本当のシエルのもと。これこそが、彼女がホール留まり続ける理由ではないでしょうか。
さて、ここまで作品を読む上での考察ポイントをご紹介してきましたが、最新27巻ではついに物語が終わりに向けてその真相を明らかにし始めます。
27巻ではまるまる全部使って、シエルの過去、セバスチャンとの出会いが語られます……。
- 著者
- 枢やな
- 出版日
- 2018-07-27
結論から明かしてしまうと、「シエル」とは、作中で今までそう呼ばれてきた少年ではなく、彼の兄の名前でした。ファントムハイヴ家を惨殺した一連の展開の時に彼は死んでしまいました。こちらの詳しい内容は後から重要になりそうな伏線も多々あるので、ぜひご自身でご覧ください。
そして彼との別れこそ、セバスチャンとの出会いでもありました。
そこでそれまで兄に頼りきりだったか弱い少年は、特技のチェスを思い出し、頭脳をフル回転して悪魔と3つの契約を結ぶのです……。
読者までをも暗い気持ちにさせるこの過去回想。しかしそれにショックを受けながらも気になるのは、まだまだ残されている謎。死んだはずのシエルやタナカの存在、主人公の少年の名前がまだ明かされていないこと、そして何と言っても黒幕の正体です。
どんどん面白くなっていく物語!どのように完結するのか。ぜひその血塗られた歴史をあなたの目で紐解いてみてください。
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