カントに関する知られざる5つの事実!ドイツ古典主義哲学の祖を知る本を紹介

更新:2017.7.26 作成:2017.7.26

哲学の歴史において、ドイツ観念論を提唱したことで名を残すカント。今回は、そんなちょっと難しそうな哲学の分野に挑戦し、カントの考えを知ることが出来る本をご紹介します。

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ドイツ観念論を提唱したカントとは

1724年、イヌマエル・カントは現在のロシア領である東プロイセンのケーニヒスベルクという港町で、馬具職人の家の四男として生まれました。

幼いころから進んで勉学に励み、ケーニヒスベルク大学に入学した際には、当時ニュートンの登場などで発展し始めていた自然学に興味を持ち、日夜研究に没頭していました。

1746年、父の死によって大学に通うことが出来なくなったカントは、一度大学を離れることに。しかし1755年に復学して大学を卒業。大学の哲学教師に就任し、様々な論文を発表する生活を続けます。

1770年、そんな彼の哲学論を評価したケーニヒスベルク大学から哲学教授としての招聘を受け、彼の生涯の職業となる哲学教授へと転身。ケーニヒスベルク大学の教授として職務を行う傍ら、人間について、大学時代学んだ自然学について、そして平和についてなどの様々な哲学論を生涯に渡って発表し続けます。

カントについては今も多くの哲学論が研究され、人々に親しまれています。

あなたが知らないカントにまつわる5つの事実

1:カントは故郷のケーニヒスベルクから60マイル以上離れなかった

カントは生まれつき病弱で体力がなく、さらには彼の神経質な性格から、普通以上に自身の体をいたわり、遠出するという考えを持つことは生涯ありませんでした。また、彼の故郷・ケーニヒスベルクは非常に栄えた港町であり、どこかへ遠出せずとも世界の情勢やさまざまな情報が容易に入手できる環境にありました。この自身の体質と環境から、カントは生涯ケーニヒスベルクを離れることはありませんでした。

2:カントは父の亡き後、収入が全くなくなり、家庭教師をして苦しい生計を立てていた

在学中に父が亡くなり学費を払うことが出来なくなったカントは、中途退学のように大学を離れ、数件の家庭教師の仕事をしながら苦しい生活をつないでいました。しかし9年後には、大学に学位論文を提出して学位を取得。大学の職業的哲学者として採用され、哲学者としての道を歩み始めます。

3:カントは世界の最新情報に詳しく、その話題の広さに感嘆されていたが、哲学の話をするのを嫌がった 

港町での生活のなかで、世界中の最新情報を容易に入手し、それについて友人と話題にすることを好んでいたカント。しかし彼の専門分野である哲学の話をすると途端に嫌な顔になり、それ以降会話が続かないことも多くあったそうです。

4:カントは時間に正確で、規則正しい生活習慣だった

彼は毎朝同じ時間に起床するために人を雇うほど時間に正確で、彼の散歩する様子を見た町の人が、その散歩の時間に合わせて時計のずれを修正するほどでした。

 5:ルソーを尊敬していたカントは、恒例の散歩を忘れるほど彼の本に没頭した

散歩の時間でさえ正確なカントが、ある日突然家から出てこなくなりました。 町の人々は何かあったのではないかと大騒ぎになったのですが、実はその時彼はルソーの『エミール』に集中しており、日課である散歩の時間を忘れていたのでした。カントのルソーに対する尊敬はとても強く、「ルソーが自分の考えの誤りを正してくれたことにより、人間を尊敬することが出来るようになった」と述べています。

平和のためにカントが真剣に考えたこと

人権宣言や憲法制定などを筆頭に、今の民主制の起源の一つであるといわれるフランス革命。市民が王政を倒し、マリー・アントワネットが処刑されたこの革命の6年後、新たなフランスが誕生したこの時期にカントは『永遠平和のために』を書きました。

1700年後半の時代背景としては、ナポレオンの侵攻を筆頭に様々な侵略戦争や略奪行為が横行し、権力のある者が人間をただの戦争の駒であるかのように扱い、人々の命は今より軽いものとして扱われていました。

そんな時代を生きた哲学者であるカントは、同じ人間が争い、奪い合うような世界の話を聞くごとに、そんな世界の情勢を憂い、世界平和のための提言として本書を執筆しました。

著者
カント
出版日
1985-01-16

平和への願いについて書かれている書籍は沢山ありますが、本書をおすすめする理由はその内容の奥深さからです。

「国と国とが、どのようにして永遠の平和を生み出すか」

「国家間の永遠平和のために、とりわけ必要なこと」

(『永遠平和のために』より引用)

このように本書はただ平和を願っているのではなく、実際にどのように行いを変えていけば平和になるのか、永遠に平和を続けるためにはどのような方向へ努力すべきなのか、哲学論を通じて提言しています。

読めば読むほどに意味が深く、国家間の友好関係だけでなく、人と人との人間関係についても気づかされることが多く、多くのことが考えられる一冊です。

人間の認識について

カントの死から2世紀以上の時が経過しているにも関わらず、彼の名は哲学の分野において今も第一人者として輝きを保ち続けています。 そんな彼の名を後世にまで残す要因になった彼の3冊の批判書のひとつが、この『純粋理性批判』です。

著者
カント
出版日
1961-08-25

『純粋理性批判』はその難しい言葉の並びにあまり馴染みがないかもしれませんので、概要を説明しましょう。

まず私たちのすべての行為について、何が良い行いで何が悪い行いなのか?そしてそれをどのような基準で判断するのか?このような問題定義から始まる本書は、人間の取る一つの行いには、感性をはじめとする3つの能力によって、その行いについて認識し、行動すると説明されています。 しかし人を傷つけたという行為であっても、悪意によって攻撃したのか、それともやむを得ず攻撃しなくてはならなかったのかで大きく意味が変わるでしょう。

さらに、その状況を見ていた他人からはどのように見えていたのか。いじめのような暴力であれば悪人に写り、戦争映画の敵を倒す場面であれば感動的な場面に変化します。このように一つの行為においても、その良し悪しは目線一つでまるっきり変わってしまうのです。

しかし人間は共通の道徳的な認識として、人を傷つけることは可哀想であるという考えを持っています。そのような可哀想な行為を誰も行わないことが理想であり、人間はその共通の理想に向かって行為を選択することが良い行いであるというのが『純粋理性批判』の大まかな流れです。

簡単に紹介させていただいた本書ですが、実際の内容は更に深く、最終章では神の存在の必要性にまで発展し、読み進めていくのも容易ではありません。しかしページを開くたびに新たな発見があり、本を通じて学ぶ行為こそが読書だと思える充実した時間を過ごせる内容が詰め込まれています。

人間の道徳のために必要なこと

カントの哲学論について、上記の『純粋理性批判』と並んで、彼の哲学書として今も読まれているのが、この『実践理性批判』です。 本書は1781年の『純粋理性批判』の発表から7年後の1788年に発表され、『純粋理性批判』に記された様々な定義の補足として、また彼の哲学論をさらに発展させた本として発表されました。

著者
カント
出版日
1979-12-17

本書『実践理性批判』の目的は、「道徳の根拠を規定すること」です。

例えば、先ほどと同じように人を傷つけてはならないという道徳的な考えについて挙げると、人を傷つけることに喜びを覚え、悪いことではないと考える人も少数います。そのような人たちは自らの道徳に反し、他の人たちの道徳に合わせて生きなければなりませんが、それは仕方がないことであり、人間は誰しもが何かしらの欲求を持ちながら、他の大勢の道徳のためにそれを抑えて生きることが当たり前である。

本書の最後には子供の道徳教育における利益や不利益について述べ、自らの理性で正しいことを判断できる人間に育てるべきだという内容で締めくくられます。

カントの教育論ともいえる『実践理性批判』の内容は、主に児童教育の場における思想を学ぶために活用されることが多いですが、ビジネスや経営の分野において、コンプライアンスに関する教育に関しても参考にする会社が多いようです。

カントの力強い言葉の数々

道徳的な哲学論や思想で有名なカントですが、その他の分野でもいくつかの思想を残しています。 彼の哲学研究のいわば番外編である哲学論がオムニバス形式で納められているのが『啓蒙とは何か 他四篇』です。

著者
カント
出版日
1974-06-17

5つのタイトルの哲学論が納められた『啓蒙とは何か』。  タイトルにある「啓蒙」とは「人々に正しい知識を与えて合理的な考え方に導くこと」ですが、カントは本書において、 「啓蒙とは人間が自ら招いた未成年状態から抜け出ることである。  未成年状態とは、他人の指導なしには自分の悟性を用いる能力がないことである」 (『啓蒙とは何か 他四篇』より引用) と定義しています。物事を自分で考えず、誰かに従って行動するのは、自らの責任を逃れていること。カントは、そのような状況を脱却し、自らの言葉に責任を持って考えようとすることこそが啓蒙であると述べているのです。 このように自立して自分の責任で生きていくことの重要さを伝えてくれるカントの言葉は、読む者を鼓舞し勇気づけてくれるはず。 他の4つの哲学論でも、自らの信念を持つことの大切さに触れることができる内容になっています。自身を失った時、新しく挑戦することが不安な時などは、この本を読むことでカントが未来に進むための力を与えてくれることでしょう。

初めてカントの哲学に触れるならこの一冊

カントの哲学書というと『純粋理性批判』のような批判書が挙げられることが多いですが、どれも少々難解な内容で、読み進めるのに結構な時間を必要とします。 そこまで時間をかけずに、簡単に彼の思想に触れてみたいと思った方に、入門書としておすすめなのが『道徳形而上学原論』です。

著者
カント
出版日
1976-01-01

1785年に執筆された本書は、彼の思想が開花した全盛期に書かれた道徳に関する思想や哲学に、分かりやすく触れることが出来ます。道徳がなぜ必要なのか、道徳に従うことによって目的が実現することになる、という彼の哲学思想が順を追って記載されており、哲学書に初めて触れる方でもスムーズに読み進めることができるはずです。

本書は、3つの批判書で定義した思想を、実際の人間に当てはめて説明していく、いわば人間学についての彼の思想の集大成であり、カントを知るうえでとても重要な一冊です。

以上、カントについて語る上で欠かすことの出来ない哲学論について紹介しました。非常に難解で読み進めるのも一苦労ですが、一人の人間が一つの物事について考察した本が、何百年もたった現在でも読み続けられているというのは、やはり人間にとって大切なことが書かれているということです。ゆっくり時間をかけて読み進めれば、きっと何か新しい発見があるはずです。