「天皇」の優しさに触れる3冊【藍坊主 藤森真一】

「天皇」の優しさに触れる3冊【藍坊主 藤森真一】

更新:2021.11.8

こんにちは。藍坊主のベーシスト・藤森真一です。激しい曲のみで構成したライブツアー「群情’17」が終わり、曲作り期間に入りました。「名曲が出来た! 」なんて意気揚々と作業場をあとにしても、翌日で聴いたら「微妙じゃん」なんてことはしょっちゅうです。

hozzy(Vo)、藤森真一(Ba) 神奈川県小田原市出身の4人組ロックバンド。ジャンル、サウンドのスタイルを様々に変化させながらも、秀逸なメロディーと2人のソングライターにより表現される「日常」と「実験的」な世界観の歌詞、確かな演奏力と透明感のあるボーカルが魅力のバンド。 2004年のメジャーデビュー後は数々のフェスやイベントに出演し、2011年5月には自身初の日本武道館公演を開催し大成功に収める。2015年には自主レーベルLuno Recordsを設立しより精力的に活動範囲を広げている。2016年9月14日(水)には『ココーノ』以来、1年9ヶ月ぶりとなる自身8枚目のアルバム『Luno』をリリース。 Vo hozzyは「MUSIC ILLUSTRATION AWARDS 2014」にてBEST MUSIC ILLUSTRATOR 2014を受賞する等、ジャケットデザインの描き下ろしの他にも映像作品の制作、レコーディング機材の制作や楽曲のトラックダウンを自身で行う等、アーティストとして様々な魅力を発揮している。2015年7月からよりパーソナルでコアな表現活動のためのプロジェクト「Norm」をスタート! Norm HP norm.gallery Ba 藤森真一は関ジャニ∞「宇宙に行ったライオン」や水樹奈々「エデン」等への楽曲提供を行う。 藍坊主公式HP http://www.aobozu.jp
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震災後に強く浮かび上がってきた存在

①歌っていて心が動くフレーズ(ミュージシャンとしての耳)

②聴いていて心が動くフレーズ(リスナーとしての耳)

この2つをどれだけ共存させられるかがキモなんだよな〜。長年やってきて気付いたのだけど、僕の琴線は「その歌が優しいかどうか」にあり、ミュージシャンとしてもリスナーとしても、それは共通してるっぽい。

音楽以外の日常生活でも同じで、誰かの優しさに触れた時に勝手に涙腺が崩壊してしまうのです。「優しい人になりたい」と思うたびに浮かぶのは、父や母、祖父や祖母の顔。

その中に、東日本大震災以降、思いも寄らない顔が加わりました。それは天皇陛下。そう。あの天皇です。自分でも意外に思っています。

子供の頃に「日本の象徴」と習ってから意識することは滅多になかったし、意識するとしても戦争映画や街宣車を見た時くらい。思い返せば、東日本大震災があって、自分がどれだけ驕って生きていたかを痛感し、無力感に教われている時期でした。

そのタイミングで天皇皇后両陛下の被災地訪問のニュースを見たのです。優しい笑顔に「頑張ろう」と思えました。被災者ではないのにね(震災直後の天皇陛下のビデオメッセージは現在もYoutubeなどの動画共有サイトでも見ることが出来ます)。

僕の中で、天皇陛下は日本の象徴であると同時に「優しさの象徴」です。外国人から見て「日本=優しさ溢れる国」と思われたなら誇らしいじゃん! ってね。

前置きが長くなってしまいました。今日はこんな思いから一風変わったテーマでお届けます。テーマだけ見たら違う見方をされそう……いや! その勘違いされたイメージを払拭出来る3冊を紹介します!

天皇とはどんな存在か? 

東日本大震災をきっかけに天皇について知りたいと思った僕は、近所の図書館へ向かいました。「誰でも理解る天皇! 」のようなタイトルのHow to本を探したのですが、そもそもそれが何のジャンルになるのかも分からない有様。

歴史? 宗教? 分からないので検索機で「天皇」というワードを打ち込みました。検索結果は、昭和天皇と戦争をフィーチャーした本ばかり。係の方へ「天皇について知りたいのですが、一番分かりやすいものを教えて下さい」と訪ねると、この本を教えてくれました。

「おぉ! イメージどおりのタイトル! 」と興奮気味に手に取ってみると、ページ数はかなりライト。海外の王室との比較、日本の皇室の歴史、内外両方の目線で皇室と皇族を解説してくれます。天皇とは何かをシンプルに知ることが出来ました。

それまでずっと、天皇は皇族の一番上に君臨していると思い込んでいたけど、天皇は皇族ではなかった。天皇は天皇。国民でもないから苗字もない。名誉職もない。だから国民の支配者にはなりえないのかもしれない。

全員が平等になったら、全員が不平等になる感覚って理解出来るかな。「平等! 平等! 」と叫びながら、私利私欲に走るヤツが絶対に出てくるイメージ。

だからこそ、どんな状況下でも国民を常に「大御宝」として第一に考える「大御心」を天皇は持って、「優しさのお手本」を示してくれているのかもしれません。
著者
広岡 裕児
出版日

「天皇の下ではすべての民は平等」の本当の意味

次に紹介する本は『ゴーマニズム宣言』。漫画です。漫画だけど内容はすごく濃い。著者が等身大の思いで書いているので、感情移入もしやすいと思います。

「『君が代』は他人の永遠の幸福を祈る馬鹿馬鹿しい歌。」と一刀両断していた過去を振り返りつつも、すごく勉強して書いているのだと伝わる本。そして、「日本の皇室は欧州の王室よりもローマ法王に近い。」と言っています。天皇はエンペラー(皇帝)ではなく「祭司王」だというのです。

日本国憲法第一章第一条の英訳は思いっきりエンペラーになってますね。

The Emperor shall be the symbol of the State and of the unity of the people, deriving his position from the will of the people with whom resides sovereign power.(天皇は, 日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、 この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。)

僕は地元のお囃子会で笛や太鼓を演奏していたし、正月になれば神社へ行き、食前には手を合わせる習慣があるから感覚的に理解できるけれど、訳されたアメリカの方にはきっと分かりづらいんだろうな。

外国人からみれば「天皇は神話に起源を持ち万世一系で続いてきた存在で、祭祀は神に繋がる回路」という論理もオカルトだと思われてしまうかも。

天皇陛下の年間スケジュールは、1月の四方拝、歳旦祭、元始祭、奏事始、昭和天皇祭、孝明天皇例祭に始まり、12月の賢所御神楽、天長祭、大正天皇例祭、節折、大祓まで沢山の祭祀があります。

1年中「国平らかに、民安かれ」と祈っているのです。僕には音楽中心の生活をやめて、顔を見たことのない人の幸せを祈り続けることは出来ない。一君万民。天皇の下ではすべての民は平等。抵抗のあった言葉が理解出来るようになった作品です。
著者
小林 よしのり
出版日
2014-11-06

万人にとっての優しさの象徴

さて、その『天皇論』は20万部を超えるヒット作になり、続編の『新天皇論』も発売されています。ヒットといっても反響には賛否両論あり、その中の「否」の方に対抗することで、自分の論理をより説得力のあるものに変えていった作品。だと、僕は思っています。

今作の一番の論点は「女性天皇は容認か否か」ということ。著者は容認派(容認では失礼にあたるとのことで「公認」と言っています)で、前先『天皇論』の最後では「元々、天照大御神は女性神である。ならば日本の天皇は女系だったと考えることもできる! 」と表現し、かなりのバッシングにあったそうです。

しかし怯まず皇室典範改正を切に訴えています。ページ数の大半を使っているのでかなりの危機感を持っているのでしょう。今上天皇が崩御され、現在の徳仁皇太子殿下が天皇に即位した場合、現行の制度では「皇太子」の地位に就く人がいなくなってしまう。

すると、天皇と皇太子しか昇殿出来ない神人共食の祭儀は、そのやり方が継承出来なくなってしまう。即ち、天皇が祭司王ではなくエンペラー(皇帝)になってしまうというのです。

今年(2017年)に入ってから知ったのですが、あと1年半で今上天皇が生前退位され、2019年の元旦には新しい元号になる予定とのこと。「平成」の次は何になるのでしょうか。楽しみであると同時に心配でもあります。

著者
小林 よしのり
出版日
2010-12-15

前述したとおり、僕の中で天皇は「優しさの象徴」です。僕にとっては父親も母親も祖母も祖父もそうですが、万人にとっては違います。「万人にとっての優しさの象徴」になれる人が他にいるか。強いて言うならアンパンマンかミッキーマウスかな。いや、やっぱちょっと違う。

もうすぐ夏休み。お盆に父親が帰省した時には、岩手の祖父や祖母の笑顔があった。優しくされると理由なく涙が溢れそうになるあの感じ。その感動を象徴にして触れられる3冊を紹介しました。よし! 今からまた曲作り頑張んべ! 最高のパンクロックを作りたい! それではまたお会いしましょう。藍坊主のベーシスト・藤森真一でした。

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  • 本と音楽

    バンドマンやソロ・アーティスト、民族楽器奏者や音楽雑誌編集者など音楽に関連するひとびとが、本好きのコンシェルジュとして、おすすめの本を紹介します。小説に漫画、写真集にビジネス書、自然科学書やスピリチュアル本も。幅広い本と出会えます。インタビューも。

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