福田和代のおすすめ文庫本5選!『迎撃せよ』など文庫本で読めるもの

更新:2021.11.8

硬いテーマなのに冒険小説のようなワクワクした気持ちで読める……そんな福田和代のおすすめ5作品を紹介します。

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知識が豊富で壮大な展開が持ち味の作家、福田和代

福田和代は神戸大学工学部卒業後、金融機関のシステムエンジニアになります。小説新人賞に応募を続けたものの受賞を逃し続けます。そして創作サポートセンターという創作講座に通っていたところ、作品が講師として参加していた青心社の社長の目に留まり『ヴィズ・ゼロ』で小説家デビューしました。

国家の防衛やテロを描いた骨太のテーマの作品が多く、国を巻き込んだスケールの大きいストーリーが魅力です。現代日本の問題点を浮き彫りにするようなたしかな着眼点は、同時に壮大なロマンを両立させていて、読む者を引き込みます。

身近なインターネットにさりげなく潜む恐怖

衆議院議員の矢島が自殺しました。政治家としては順風満帆、閣僚になるとも噂されていた彼はなぜ自殺したのでしょうか……。

理由はインターネット上に流された個人情報でした。さらに誰かが明確な悪意を持って矢島を中傷していたことも判明します。これは一体どういうことなのか……何者かの漠然とした力に怖さを感じながらも、不審に思った検事の湯浅と安見は調査を開始しました。

やがて二人は「オーディンの鴉」と呼ばれる組織に辿り着いたものの、彼らにも脅迫の矛先が向けられます。

著者
福田和代
出版日
2012-09-07

近年では人々の暮らしとインターネットがより密接になり、インターネット上での犯罪行為も身近になってきています。

システムエンジニアの経歴を持つ福田和代らしいところですが、作中にはどんなシステムにも簡単に侵入するスーパーハッカーは登場しません。いわゆるハッキングには地道な準備とそれ相応の時間がかかるという極めて現実的な描写が強烈なリアリティを演出していて、「もし自分がこんな被害に遭ったら」と背筋が凍ることでしょう。

現代日本の暗部が暴発した末路が読める福田和代作品

新宿に突如現れたのはカラフルな風船。爆弾が取り付けられていて、突然爆破されました。実行したのは「十二神将」と名乗るテロリスト。浅草寺、六本木ヒルズ、新丸ビルを次々と襲いながら、ついには一般企業であるエアリーフーズまで標的になりました。

爆弾テロの目的は何だったのか、そしてなぜ急に一般企業が狙われたのか……テロリスト集団と警察だけでなく、スポーツクラブ経営者の田代慎吾やペルーの捜査官であるミゲル・ヤマグチを巻き込んで事件の真相が明かされていきます。

著者
福田 和代
出版日
2013-03-01

社会派のテーマを扱った作品です。登場するテロリスト達はそれぞれ問題を抱えた人ばかりで、救いのない状況に陥っている人々でした。

日本という国家を相手にテロが大成功というストーリーではなく、現実と同じで犯罪者であるテロリストは最後まで救われません。

読後のやりきれなさが残るものの、福田和代が描きたかった強いテーマ性を感じられる一冊です。

戦闘機と航空自衛隊のロマンあふれる舞台設定

航空自衛隊の基地から戦闘機F‐2が盗まれました。そして搭載されていたXASM‐3ミサイル4発のうち一発が富士樹海に打ち込まれ、日本の都市を攻撃するという犯行予告動画がテロリストから届きます。

動画を見た航空自衛官・安濃は驚愕します。動画に映っていたのは彼がよく知る男でした。それは、恩師でかつての上官であった加賀山一郎、元一等空佐……。安濃は加賀山を探し始めます。

ミサイルは都市に向かって発射されてしまうのか。航空自衛官の戦いが始まります。

著者
福田 和代
出版日
2013-11-22

ミサイル防衛という現代日本とは切っても切れない関係のテーマに注目した作品です。現実と照らし合わせると、日本の防衛は本当に今のままでいいのか……そんな問題提起が浮かび上がってくるような、緊張感があるストーリー展開にはぐいぐいと引き込まれます。

軍事に詳しい人が読むには細かい設定で少し荒っぽいところがありますが、エンターテイメント小説としては楽しめるでしょう。「日本を救うんだ」というスケールが大きい小説が好きな人におすすめです。

福田和代が描く、落ち着いた雰囲気の友情物語

大阪府警薬物対策課の刑事・三田は休みの前日に浴びるように酒を飲みます。それも毎回同じ店ではなく、違う店を飲み歩くのを趣味にしているのです。

彼はある日、酔っ払いに絡まれていたアリサと名乗る女を助けたことがきっかけで「スクウェア」というバーへ行きます。そこで出会ったのは謎のバーテンダーのリュウと、元ボクサーの宇多島でした。やがて三田は店に通うようになり、3人には友情が芽生えます。

しかし、追っていた事件にリュウ達が関連しているかもしれない、と感じ始めた三田。彼はいったいどうするのか……。

著者
福田 和代
出版日
2016-03-22

大人の友情を描いたハードボイルド作品。派手さは無いものの、職務と友情の間に揺れる三田の心情を丁寧に描いていて、登場する小道具の描写も凝っていて洒落ています。

心の中で思っていることがあってもあえて言葉に出さない、はっきりとさせない、こういった大人ならではの「含み」がある気遣いが読んでいて温かい気持ちにさせられるポイントです。いつの間にか3人の応援をしてしまう……福田和代が描く不思議な一冊です。

現代の新定番!サイバー戦争を描いた福田和代の力作

サイバー攻撃に対処する為の新組織、サイバー・コマンドーが防衛省に新たに設置されました。その精鋭部隊の一人である明神がロシア人クラッカーの捜査をしていた際に、全国規模の通信障害が発生します。

中国のサイバー攻撃だと言われる大規模障害は日本中の各業界に影響を及ぼし、ついには死者を出す惨事へと発展しました。同時期にアメリカでも被害があり、アメリカは報復の為に中国海域に空母を派遣します。

緊迫していく国際情勢と、とっくに戦争に発展しているインターネット。日本がどうなるのか、その後の展開から目を離せません。

著者
福田 和代
出版日
2015-07-24

実際に中国から他国へのサイバー攻撃はどんどん激化しており、第三次世界大戦はもう始まっているとも言われています。中でも日本は、他の先進国と比較してサイバーセキュリティが手薄なことが問題視されているのです。

本作ではサイバー・コマンドーという精鋭部隊を持っていた日本でさえ、国内のインフラのシステムを狙ったサイバーテロの前には無力でした。一般企業のシステムは軍のように閉じていないので、使う人間のセキュリティ意識次第で簡単に侵入できてしまうのです。

現実に起こってもおかしくないリアルな恐怖を味わえる名作です。

スケールが大きい作品を多く発表している福田和代作品。壮大な読後感を味わいたい人におすすめです。

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