ゲーム「艦これ」のキャラクターデザインとして知られるイラストレーター・しずまよしのり。どこか淡い色彩で描かれる少女達は、ファンタジー世界から現実の世界まで様々な所を舞台に息づいています。ここでは、そんなしずまよしのりが挿絵を担当するライトノベルを5作品ご紹介します。
芝村裕吏のライトノベルの挿絵を複数担当している他、女性キャラクターに擬人化した第二次世界大戦の大日本帝国海軍の軍艦を集める人気ゲーム「艦隊これくしょん―艦これ―」では人気キャラクターのキャラクターデザインを担当するなど、知名度も人気も高いイラストレーターです。
どこか淡い雰囲気を残したイラストは、ファンタジーや青春物など幅広い物語に華を添えています。
夕暮れの森を、獣と人の姿が混じった男が1人、魔女の襲撃から逃げていました。男のように半人半獣の姿で生まれた人間は「獣堕ち」と呼ばれ、魔女はその首を道具として使うと言われています。そのため、「獣堕ち」は魔女に首を売りつけようとする荒くれ者から常に命を狙われる危険を抱えていたのです。
しかし、魔女自らに襲われるのはさすがに初めてだった男はだんだん追い詰められていきます。そんな時、夕飯のスープを作っている旅人に出会います。なりゆきで旅人を抱えて逃げることになる男でしたが、途中、旅人もまた魔女であることがわかって……!?
- 著者
- 虎走 かける
- 出版日
- 2014-02-08
2013年に電撃小説大賞で大賞を受賞、2014年には第1巻が電撃文庫より刊行され、以来、「ゼロの書」という略称で親しまれている人気シリーズです。2017年にはテレビアニメ化もされました。
ごく普通の人間の両親を持ちながら半人半獣として生まれた主人公は、その姿ゆえの力で傭兵として暮らしていましたが、それは言い変えればその姿ゆえにその生き方しかできなかったということでした。本編では語り手として「俺」と名乗っているだけで、その本名は明かされていません。
「獣堕ち」の者達は、その首を魔女の道具として狙われることも多いのですが、主人公もまた、物語の冒頭で魔女に襲われてしまいます。その逃亡中に出会ったのがゼロと名乗る魔女です。ゼロというのは本名ではなく、呼び名として使われています。
ゼロは、自ら作り出した魔法の書を盗まれてしまい、取り戻すために旅をしていたのでした。第1巻の表紙がこのゼロで、ゼロは魔法の書を作り出す天才魔女でありながら世情には疎いというキャラクターです。自分のことを「我輩」と呼ぶなどちょっと変わった雰囲気のゼロを、表紙からも感じることができるのではないでしょうか。
そんなゼロと、「俺」は傭兵として一緒に旅をすることになります。 読者の期待を裏切らない王道のファンタジー作品であり、最後まで一気に読むことができます。途中、立ち止まってしまうようなストレスもなく、直球でわかりやすい文章も物語を読みやすくしてくれているポイントかもしれません。
半人半獣であるがゆえに理不尽な扱いを受ける「俺」は、絶世の美女で強い力を持った魔女であるゼロなど、王道ながら個性のあるキャラクターの心理描写もきちんと描かれているので、舞台はファンタジーですがキャラクターに共感する方も多いでしょう。2人が旅の果てに何を得るのか、ぜひ手に取って確認してみてください。
新田良太は、ゲームクリエイターになろうと上京し専門学校に入学するものの、その後はどこにも就職できず、気が付けば1人暮らしの部屋に引きこもり、毎日ゲームに明け暮れるニートを7年も続けていました。
しかし、同じ「辛い」現実なら働いて「辛い」ほうがいいと一念発起し、デザイン会社に就職。しかし、ある日突然、会社が倒産し、良太は再び無職になってしまいます。職探しを始める良太は、ネットで見つけた外資系軍事企業PMSCsの求人へ応募しますが……。
- 著者
- 芝村 裕吏
- 出版日
- 2012-02-21
ゲームデザイナーでもある芝村裕吏が書いており、その経験がいかんなく発揮されている作品です。この作品には、「オペレーター」という仕事が登場しており、主人公の良太はなりゆきでそのオペレーターとなります。
良太が再就職をしたのは外資系軍事企業で、そこではわざわざ紛争地域に赴き、戦場への指示を出す仕事をしていました。その仕事こそオペレーターで、良太は会社と契約後、中央アジアに派遣され、そこでオペレーターの訓練を受けることになります。
訓練の特徴は、それがまるでコンピューターゲームのようなものであることです。本当の戦争とコンピューターゲームの区別が付かないまま、ただ訓練をこなしていく様子には、ふと考え込んでしまう方も多いのではないでしょうか。
そんな世界観を、どこか淡い印象の表紙をはじめ、美少女系のイラストとはまた一味違うイラストがさらに強くイメージさせてくれます。また、良太自身も、訓練の過程でその才能を開花させていきます。ニートになってしまった主人公が、戦場での仕事を通して才能を開花、だんだんと変化していく様子は、読み進めるほど読者に刺激を与えてくれるでしょう。
ニートだった主人公が戦場での司令官となり成長していく姿を、ぜひチェックしてみてください。
漫画版の『マージナル・オペレーション』について紹介した<漫画「マージナルオペレーション」最新12巻までネタバレ紹介!戦争と人の心>の記事もおすすめです。
明治38年。日露戦争の最前線で戦う新田良造は、幼い頃から馬の世話を趣味とし、軍隊では騎兵科に属しています。
入隊した直後から優秀な成績を収めていた良造は幹部候補生となり、騎兵大尉となった今はこうして最前線で戦っていたのでした。しかし、後に黒溝台(こっこうだい)の戦いと呼ばれるその激戦で、良造は負傷、帰国することになります。
一方、深層の令嬢であるオレーナは、公女らしくあるために教育を受ける生活に窮屈さを覚えていました。そんなオレーナに、平民出身の将軍は外の世界のことを話して聞かせます。やがて外の世界で自由に生きることを夢見たオレーナは、とうとう家出同然に日本までやってきます。そこで出会った良造とオレーナの運命とは……!?
- 著者
- 芝村 裕吏
- 出版日
- 2013-11-15
「マージナル・オペレーション」に続き、芝村裕吏としずまよしのりがコンビを組んだ作品です。
舞台は明治時代、日露戦争の最前線で戦っていた陸軍大尉の新田良造が、一国の公女であるオレーナと出会い、世界を旅することになります。この辺りはとてもライトノベルらしい展開ではあるのですが、その流れはとても自然です。
良造とオレーナが旅をしながら距離を縮めていく様子はテンポ良く、スピーディに描かれているのですが、それでもご都合主義的なところが少なく、とても自然な流れの中で2人が距離を縮めているためリアリティを感じることができます。児童文学などにもありそうな絵柄も、その雰囲気をさらに強めているかもしれません。
だからこそ、良造達に共感することができ、物語に引き込まれていくでしょう。 その辺りは物語の前半、オレーナと出会う前の良造が最前線で戦う様子を描いた前半を同じで、難解過ぎず、しかし簡単過ぎもしない文章はとてもわかりやすく落ち着いて読むことができます。
時代ものですが、変に現代へ寄せるわけではなく、当時の雰囲気をしっかり描かれているのも面白いポイント。さくさく読めるというよりしっかり読めるといった雰囲気なので、読み応えもあります。良造とオレーナがどんな結末を迎えるのか、ぜひ確認してみてください。
都市国家コアの貴族・黒剣(くろがね)家の当主を父に、奴隷を母に持つフランは、幼い頃から父のいるところでは貴族の子として、いないところでは奴隷の子として扱われながら育ちました。
フランが8歳の時、奴隷の母が父に殺され、フランはコフ人への恨みを抱いたまま農園に火を放ちます。しかし、二番目の兄オウメスにそれを目撃されたことをきっかけに虐待を受けるようになり、フランはますます不遇の生活を余儀なくされてしまいました。
それから5年。13歳になったフランは、ある日、長兄のトウメスから、曇天神殿へ伝令の仕事を与えられます。赴いた先は、隣市ヤニアにある小百合(さゆり)家です。フランはそこで、イルケとオルドネーという2人の姫と出会い……。
- 著者
- ["芝村 裕吏", "しずま よしのり"]
- 出版日
- 2016-11-16
『マージナル・オペレーション』、『遥か凍土のカナン』とタッグを組んでいた芝村裕吏としずまよしのりが再び手を組み、作り上げたファンタジー超大作です。
主人公のフランは、父親を貴族に持ちながら母親が奴隷であるために、父のいる時は貴族、いないところでは食べるものさえ困る奴隷の子として扱われていました。奴隷の時のフランは、食べるものがなくバッタを食べることさえあったので、あだ名をバッタと付けられ、蔑まれています。
そんなフランの母親は、フランが8歳の時に殺され、フランは2番目の兄から性的な虐待を受け奴隷のように使われながら、5年という月日を過ごすことになるのです。
13歳の時、兄の使いで赴いた先でフランが出会ったイルケとオルドネーというのは姉妹で、イルケが姉、オルドネーが妹です。2人は小百合家の家宝であり不思議な力を持つ鏡「水鏡」を持ち、その力をもってイルケは人馬の姿になり、イリューイルドという木の精を得ることになりました。
オルドネーはフランの兄トウメスに結婚を申し込まれているのですが、フランと交流を持つうち、フランとの結婚を望むようになりました。2人との出会いが、悲惨な過去に捕らわれていたフランを動かし、彼は新たな人生を歩み始めることになります。
ファンタジーといっても剣と魔法が溢れる明るい雰囲気ではなく、どこか憂いを帯びたようなダークな雰囲気があります。独特なファンタジー世界は慣れるまでは少し戸惑うこともあるかもしれませんが、慣れてしまえばあっという間に虜になることは間違いありません。
淡い印象ながら繊細に描きこまれたイラストも、ファンタジーの世界へ入り込む手伝いをしてくれるでしょう。そんなふうに世界観を作り出しているイラストに、ぜひ注目してみてください。
夏の陽射しが残り、入道雲が空に浮かんでいる10月。男子高校生の褐葉貴人(かつばたかと)は、屋上で転校生の久遠かぐやと相対していました。 日本人形のような美少女の彼女は、なぜか貴人が捨て去ったはずの過去の証拠を持っています。
会ったはずもないかぐやがどうしてそんなものを持っているのかと同様する貴人ですが、不意に、彼女が「クドリャフカ」であることに気が付きます。 「クドリャフカ」――それは、かつてカルト的な人気を誇った伝説の覆面少女歌手で……。
- 著者
- 大樹 連司
- 出版日
- 2009-12-18
読みやすい文章で描かれた青春小説です。少年向けライトノベルですが、萌え要素は少なく、そのぶんちょっと変わった高校生達の青春をしっかり楽しむことができます。 青空がパッと目につく表紙も、まさに青春小説といった印象ですね。
主人公の貴人が通っている私立イトカ島学園高校は、文字通りイトカ島という場所にある学校です。そこには、何かと問題を起こして本土の学校には通えない高校生達の集まる学校でした。 貴人は、中学生時代にクドリャフカに心酔した結果、怪文書のようなファンレターを大量に送りつけ、結果、クドリャフカが干されてしまう原因を作ってしまったという過去を持っています。
一方、クドリャフカ――久遠かぐやは、すっかり自分の歌が嫌になり、唯一の慰めは携帯電話に宿った宇宙人だけでした。もちろんそれは、かぐやが信じているだけなのですが、かぐやが彼を宇宙へ返したいと思ったことから、物語は動き出します。
物語は、貴人達がロケットを作ることをメインに進みますが、決して難しいものではありません。かといって、もちろん適当に書かれているわけではなく、ロケット作りに関する描写にはリアリティがあり、本当に作れそうだと思わせてくれます。
魅力的なキャラクターと共に、様々な過去や問題を抱えた高校生達が全力で今を生きる、まさに青春物語。彼らがどんなクライマックスを迎えるのか、ぜひ手に取って確認してみてください。
いかがでしたか? どこか淡い印象を持つしずまよしのりのイラストは、ファンタジーや青春のストーリーにピッタリです。ぜひ一度チェックしてみてください。