漫画「マージナルオペレーション」最新12巻までネタバレ紹介!戦争と人の心

更新:2021.11.15

原作『マージナル・オペレーション』は芝村裕吏の小説です。うだつのあがらないニート・新田良太が民間軍事会社に入社し、タジキスタンで戦術家としての才能を開花。現場指揮官のオマルと24人の少年兵ともに戦場を生き抜き、彼らが戦わない生き方を模索することを決心をする物語です。 平和な日本に生きていたがために、当初はゲームのようにやらされていた戦争に戸惑っていましたが、タジキスタンの村落から捨てられるかのよう兵士になったジブリールら24人の少年少女と接するうちに、彼らとともに生きていこうと決意します。同じく彼らを守ろうとするオマルともに、独自の軍事会社を築くようになっていくのです。しかし、そこには非情な現実が待ちうけています。 今回の記事では、そんな本作の見所を中心にご紹介。ネタバレ注意です。

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漫画「マージナルオペレーション」が面白い!民間軍事会社の司令塔を描く!【あらすじ】

主人公の新田良太は、ゲームとアニメが大好きな典型的なオタク青年。ゲームクリエイターになりたくて専門学校に通いましたが、結局就職できず、7年間もニート生活を送ります。その後デザイン会社に就職しましたが、なんとその会社は3年で倒産。再び無職になってしまったのです。

年齢は30歳に入り、焦りを感じた彼は、ネットで発見した民間軍事会社「自由戦士社」の求人欄を見て応募。面接で彼は、隣の部屋にあるボタンを押すと、ネット経由でとある国の死刑執行部屋につながり、銃殺刑が執行される、と言われます。彼は嘘だと思い、躊躇無くボタンを押して、テストに合格しました。

研修と勤務先は中東の国タジキスタンになり、彼はそこで戦術と外国語を学びながらシミュレーションゲームのような業務をこなしてゆきます。しかし、それが殺し合いを前提とした本物の戦闘だと知って愕然とするのです。

同僚のキシモトや、言葉を教えてくれた売春宿の娼婦シャウイーに励まされて、彼はOO(オぺレーター・オペレーター)の道を進むことになります。

著者
キムラ ダイスケ
出版日
2013-11-22

やがてキシモトと別れて行動することになり、今度は、アメリカ人女性のソフィアと行動をともにすることになりました。

彼が配属されたのは、タジキスタンの自由戦士社のキャンプモリソンです、最初の任務は輸送部隊の警護で、そこにいたのはキャンプモリソンの近隣の村から徴収された少年兵たちと、彼らの指揮官となった自由戦士社の戦闘員オマルでした。

新田は彼らのOOとなり、的確な指揮で彼らを導きます。やがて少年兵たちとオマルの信頼を得た彼でしたが、そんな彼らには戦争の凄惨な現実が待ち受けていたのでした。

見所:司令塔から見た戦術の動かし方が面白い!

見所:司令塔から見た戦術の動かし方が面白い!
出典:『マージナル・オペレーション』1巻

本作の最大の特徴は、オペレーターが主人公という点です。通常ミリタリー漫画は、さいとう・たかをの『ゴルゴ13』のように前線で戦う者が主人公で、管制官や情報屋のようなポジションにある者はサポート要員であるのが普通です。

しかし近年は、ハッカーを主人公とした『BLOODY MONDAY』や『王様達のヴァイキング』のような作品が少しずつ出始めてきました。

これは湾岸戦争以降、軍事活動にコンピューターや人工衛星による偵察システムが本格的に導入されてきたため、戦場では徐々に索敵(敵を探り当てること)と情報処理が重要な位置を占めるようになってきたからではないでしょうか。

さて、そんな本作の主人公である新田は入社してからは、持ち前の記憶力とシミュレーション力を生かし、徐々にオペレーターとしての才能を開花させます。

彼はマップを頭に叩き込み、敵の戦力と味方の戦力、地形、兵の配置場所、動かし方などを1つ1つ頭に入れていきます。そして自分と敵の部隊の目的を照らし合わせ、いかに損害を出さずに目的を達成させるか、手順を考えていくのです。

そのなかでも特に重要になっているのは、地形。彼がマップを暗記しているのは、地形を完全に把握するためです。なぜなら戦場の環境によっては狙撃が有効であったり、突撃の方が有効である場合もあるからです。そして戦い方が違えば、兵隊の配置や使用できる武器も違ってくるので、それに応じて戦術を考える必要があります。

カール・フォン・クラウゼヴィッツの『戦争論』によると、戦争の目標は相手の防御力を完全に無力化させることにある、と書かれています。

これは厳密にいえば、相手を無力化させないと戦闘行為は終わらないという意味。軍隊にはそれぞれ目的がありますが、この目的が達せられなければ意味は無いのです。

たとえば2巻で、最初にオマルと子供達の戦いをオペレートをしたとき、彼らの任務は輸送部隊の護衛でした。これは敵を全滅させても、味方の輸送経路が経たれたら意味がなくなってしまうためです。

そのため新田は現地で育った少年兵に、マップに載っていない道の存在を確認。その道を行くと廃村があるというので、オマルたちに偵察をさせ、そこにいると思われる敵の陣営を確認させました。

そして敵の場所を突き止めると、上司に相談して偵察機を飛ばしてもらい、上空から敵を迎撃してもらうよう手配したのです。これによって、敵を完全に無力化することに成功しました。

彼のやっていることは、情報収集、連絡、相談など基本的には地道な事務作業に近く、普通のサラリーマンがやっているようなことの延長線に過ぎません。それが、サラリーマンの落ちこぼれだった彼に高い適正があったのですから、皮肉としかいえないでしょう。

見所:ビジネスとしての戦争

タジキスタンでの戦いから1年経ち、新田とオマルは、子供達と生きていくために民間軍事会社を設立。そして新田は、日本で会社を興すという目論みも兼ねて、子供達の観光旅行のために日本に来ました。

彼らが日本に入国すると、彼らを監視している女性「伊藤幸恵」から仕事を依頼されます。彼女は日本政府の諜報機関に所属していて、どうやら名前も偽名らしく、その正体は謎に包まれています。その依頼の内容とは、国内にあるカルト教団の武装組織から、その教団の教祖の警護することでした。

新田自身も認識しているように、日本は基本的にそうしたものに対して、武力で鎮圧するのが難しい国。さらに伊藤によると、今回は警察に介入されたくない事情があり、だからといって依頼人側の組織に逮捕権もなく、だめ押しで依頼人側の組織がカルト教団の教祖と取引を交わしているといった複雑な事情があり、新田達を下請けとして使うと選択したのです。

このエピソードの場合、国内で暴力的な事件が発生したために、それに対応する力を持つものに国が力を借りることで、ビジネスが発生します。有名なアメリカの民間軍事会社「ブラックウォーター」も、需要が発生したのは1999年に起きた、コロンバイン高校生銃乱射事件がきっかけでした。

日本での仕事が終わった後、伊藤の手配でタイに渡った新田達は、新たなる依頼人で華僑の大物・李世欄(りせいらん)から、児童の人身売買組織の鎮圧を依頼されます。そこで目撃するのは、今なお存在する階級制度(カースト制度)という、日本とはまったく異なる社会システム。そして、美しく整ったタイの地に潜むスラム街という闇でした。

この回で新田達を使う理由は、階級社会というシステムです。警察が、李世欄に武器を横流ししているように、タイでは警察は上位階級の道具になっています。そのため警察は、売られていく子供を守ろうとはしません。下層階級の人に、警察は動こうとしないのです。そこでここでも、新田達を下請けに使うことになったのでした。

さらに、スラムの住民が生きていくために、子供が商品として売られていく現実を目の当たりにした新田は、案内をしてくれたNGO団体の代表メラニー・グレースの依頼で、傭兵に志願する少年を雇うことになります。

そこでは、国の体面や町の整備という名目で、社会の盲点になったスラム街の子供たちを利用する人身売買組織と、子供を戦争の道具に使う民間軍事会社が暗躍していました。

この手の武装勢力、もしくは犯罪組織は、社会の盲点に着目して商売を始めるという特徴があります。依頼人が、人身売買の組織より新田に任せたほうがマシ、という判断を下したことから、ビジネスが成り立ったのです。

つまり今回の場合、政府が何もやらないので新田に厄介ごとが回されて、それを彼がビジネスにせざるを得ないという状況として見て取れます。

さて、武力をつかったビジネスというのは、必ず遺恨というものがどこかで生まれてくるようです。タジキスタンでは、政府や民間軍事会社に支配された村人たち。日本では、殺した宗教系武装集団達と繋がりのある、反社会勢力。タイでは、人身売買に関わっている多国籍企業などです。

そして新田自身も、知らないどこかで恨みを買っているようでした。

残酷なようですが、遺恨を残さないようにするには、敵を殲滅することが1番手っ取り早いというのがセオリーです。しかし新田の目的は、あくまでも子供達が生きられるようにすること。そして任務を遂行することと、安全を確保することのみにおいて、戦闘行為をおこなうのです。

だからいくら敵が憎くても、殲滅するまで叩くわけにはいきません。こちら側に被害が出ては意味が無いからです。あくまでも交渉の余地を設けることが重要となります。そして、敵を潰してもまた新しい敵が生まれるように、武装勢力を潰しても、代わりの勢力が伸びるだけ。ならばどうやって秩序は手に入るのでしょうか?

ビジネスとしての戦争は、恨みを買い、不幸の種を増やしていきます。望まずして、そこに足を踏み入れてしまった新田。彼はどうやって、これらの問題に立ち向かっていくのでしょうか。

見所:心の葛藤に引き込まれる!

見所:心の葛藤に引き込まれる!
出典:『マージナル・オペレーション』1巻

新田は、ゲーム感覚でやっていた業務が命のやり取りだったと知って愕然としますが、周囲に励まされてからは味方を全滅させないような戦術を模索していくようになります。そんな彼は、しだいにオマルや少年兵達から信頼されていくようになります。

そんな少年兵達は、キャンプ付近の村から、捨てられるように徴兵された子供達でした。そこで、突如襲撃される、キャンプモリソン。犯人はなんと、その近隣の村の住人でした。彼らは元々、政府軍と対立した際に、見せしめとして村を焼き払われてしまっていました。

そのうちの1つは、新田がオペレートした部隊の仕業。村人達は服従を誓わされ、子供達を兵士として差し出すはめになったため、彼らは報復をたくらんだのです。そして新田達は、政府軍と戦うことになった村人達に雇われることになり、彼らを逃すための、決死の撤退戦をおこなうことになります。

本作には、こうした理不尽な戦いが待ち受けています。それでも新田は、オペレーターとして冷静に対処しなければなりません。そんな彼を信頼し、手足となって戦うのは24人の子供達と、指揮官で戦闘員のオマルなのです。

彼は自由戦士社を離れた後オマルと協力し、24人の少年兵とともに軍事会社を設立しました。そして各地の紛争地域を巡り、彼は「子供使い」という異名で呼ばれるようになります。しかし彼についてまわるのは武名だけでなく、子供達を兵隊に使っているという悪評も立つことになってしまうのです。

そしてタイに来たときに、彼は慰みものや軍事利用される子供たちと直面します。子供たちには戦い以外の道に進んでもらいたいと思っている彼でしたが、そこでは誰かの慰みものにされるぐらいなら戦う道を選んだほうがよい、と考える子供たちがいたのです。

彼は心の奥では、子供達に戦争以外の道を進んでもらいたいと思っています。しかし実際は、彼らと暮らしていくのがやっとという有様でした。

彼は、時間がかかっても話し合いが大事と考えるタイプですが、それは平和ボケ的な思考ではなく、修羅場をくぐった人間ならではの、戦いを避けるための考えです。しかし彼に仕事の依頼がくるときは、話し合いができる状況はすでに過ぎ去っているのでした。

それは彼が戦いをビジネスとしているからであり、戦いの才能があるからです。そして依頼人は彼に武力行使を依頼するのでした。

そのために戦いを避けることや、遺恨を残さないようにするのは無理なもの。それでも新田は、子供達が戦わずに生きていける道を模索し続けているのです。

見所:恋愛展開にも注目!

本作は暗く重たい話になりがちですが、恋愛模様は明るく語られていて、読者を和ませてくれます。もっとも新田は恋愛経験の無い男なので、いざ女性から好意を持たれても恋愛と結びつけることができず、適切な対処のおぼつかない人物です。

彼に好意を抱くのは、同僚のアメリカ人ソフィアと、少年兵の1人ジブリール。ソフィアはもともと日本のアニメに夢中で、それが元で彼に興味を抱きます。しかし、しだいに彼の実直さや思慮深さのほうに惹かれていくようになるのです。

一方ジブリールは、タジキスタンで新田のオペレートで生き延びた少年兵で、以来彼を慕っています。新田に「イヌワシ」という異名をつけた張本人です。

彼女は思春期の少女ということもあり、恋愛感情をコントロールできず、依頼人であっても彼に近づく女性に妬きもちを焼いてしまいます。(実際依頼人であるイトウや李は、徐々に彼に好意を抱いているのですが)

もっとも彼自身は歳が離れているため、娘に近い感情しか抱くことができません。彼女もそれが不満で、時折子供扱いされるのを嫌います。

そんな彼女の恋を他の子供達は応援していくようになりますが、そのなかの1人ジニも、彼に好意を抱いているのです。

そして11巻ではとうとうタジキスタンで娼婦や通訳として働き、傷心の新田を励ましてくれたシャウイーと再開します。どうやら恋愛模様も波乱が待っているようです。

「マージナルオペレーション」11巻の見所をネタバレ紹介!

10巻ではキシモトとの悲しい戦いの末、とうとう犠牲者が出てしまいます。ソフィアも乱暴され、トラウマを抱えてしまいます。彼女はアメリカで様々な事情を抱えてしまったため帰国することは出来ず、タイで療養生活を送ることになってしまいました。

そして仲間の埋葬にも手間取ってしまいました。仏教国であるタイは墓を持つ習慣が無く、自然葬が普通だったからです。どうにかして墓を見つけた新田は、今度は中国人民解放軍との戦いの依頼を受けます。

そして新田達はミャンマーの国境付近でキャンプを築き、タイのスラム街から来た新しい少年兵達ともに、新しい生活と戦いが待ち受けていたのでした。

マージナル・オペレーション(11) (アフタヌーンKC)

2018年08月23日
キムラ ダイスケ
講談社

11巻ではミャンマーが舞台になります。新田は、中国人民解放軍に占領された村を1つ1つ取り返してきますが、村人たちのミャンマー政府への不信が強く思うようにいきません。

その原因として、ミャンマーの少数部族の住む地域には道が舗装されておらず、中国の資本を受け入れたほうが得という考えがありました。しかしそれを良しとしない政府は、力で村人を支配しようとします。

新田はそうした状況と、前回のキシモトとの戦いを鑑みて、戦争を終わらせても、遺恨やこじれた関係をそのままにしておくと新たな問題を残すと思い、どうやったらこの戦争を終わらせられるのか模索していました。

戦いのさなか、新田は新しく入った子供達の世話に追われていました。子供達もたくさん増え、彼らのために学校も設立しました。しかし成長し10代半ばになった年長者の進路や、心理的葛藤についても頭を悩ませるようになり、思春期の子供を持った父親のような悩みを抱えてしまうのです。

今回では、ジブリール、イブン、ジニなどの年長者組が成長し、新しく入った子供達の指揮官や教育係になっています。

以前より大所帯になり、ますます子供達に慕われるようになった新田は、彼らの世話に追われて休む暇も無いのにどこか楽しそうです。凄惨な戦いの癒しでもあるようなアットホームな雰囲気と、心身ともに成長したために、以前より新田への思いを募らせたジブリールとの関係が一番の見所。

その一方、微笑ましくなった新しいキャンプの様子とは裏腹に、ミャンマー政府とミャンマーの少数部族との諍いと、強大な戦力を誇る中国軍の不穏な動きにも注目です。そして、偵察員としての才覚を発揮する新キャラクターサキの存在も眼を向けてほしいところです。

ミャンマーとの国境を巡っての、日本を含むアジア諸国利権の問題と、子供達との絆、そして恋の行方は果たしてどうなるのでしょう。

「マージナルオペレーション」12巻の見所をネタバレ紹介!

ミャンマー軍の卑怯なやり方から、どうにかして村人たちを救おうとする新田。悔しさや怒りを抱きながら、今自分が何をすればいいのかを考えます。

しかし現状は、なかなか芳しくないもの。少人数の部隊は疲弊してきているのに対し、本隊は手持ち無沙汰になってしまっているのです。

しかしその現状は聞いて何やらひらめいた新田。それは2000人の兵力を750組の小隊に分けるという、傍目には無謀な作戦で……。

著者
キムラ ダイスケ
出版日
2019-01-23

本格戦闘はまだ行われませんが、そのための準備が着々と進みつつあります。新たなキャラや再登場のキャラなども登場しつつ、実戦になるまでに本来の目的を再確認するなど、実戦に向けての助走がなされているのが感じられます。

また、恋愛展開についても再登場キャラが波乱を巻き起こしつつ、どんどんハーレム的に。新田としては頭を抱えるところでしょうが、読者としてはニヤニヤしてしまうこと間違いなしです。

しかも12巻最後にはそのハーレム展開も極まれりなラッキー展開が!どうする新田!?

シリアスとギャグが巧妙に織り交ぜられながら進んでいくので、辛いながらも無理なく読み進められる内容です。

本作は情報収集と作戦会議がメインであるため、『シン・ゴジラ』や『攻殻機動隊』などが好きな人におすすめの漫画です。

また日本が舞台のエピソードは、押井守の『機動警察パトレイバー2 the Movie』のような、ポリティカルフィクション(政治的な内容のフィクション)的な展開となっています。こうした作品が好きな人は、ぜひ読んでください。

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