2016年にドラマ化、女子の本音漫画ブームの到来にも関わらず、なぜかあまり名前を聞かない漫画『ラブラブエイリアン』。こんなに面白いのになぜ売れないのか!?そんなちょっと残念な本作の魅力をご紹介します!
面白いのに売れていない。
失礼かもしれませんが、それが本作を端的に表した言葉です。その残念さは2014年にはそのことを議題にして作者・岡村星と犬山紙子のトークイベントも開催されたほどです。
そのトークの一部では担当編集者や書店のコミック担当者を交え、具体的に売れない理由が話されました。ぱっと見でどんな漫画なのか分かりにくいこと、どちらかというとガールズトークが注目されることが多いのに宇宙人の可愛さを押し出してしまったことなどなど。すべての意見が的を射ており、それぞれの作品への思いが伝わってきます。
2016年には深夜枠とはいえ実写ドラマ化もなされたのに、その後もなかなか名前を聞くことはありません。本当にもったいない作品なのです。
本作は語りたくなる、知らない人におすすめしたくなる魅力が詰まっています。
ある日、ソノミ、ユヒ子、チズルなどが暮らす女性専用アパートに宇宙人がやって来ます。彼らは事故で不時着してしまい、宇宙船の修復が終わるまでここに滞在させてほしいと言ってきます。
最初は半信半疑だった彼女たちですが、彼らが一瞬で壊れた窓を直したり、ソノミの彼氏を瞬間移動させたりするのを見て本物の宇宙人だと認識します。
しかし彼女たちの今の最大の問題はソノミが彼氏と別れるかどうか。宇宙人そっちのけでその話に花を咲かせ、宇宙人の能力を利用して仲直りしてしまいます。そして、何か便利かも、くらいのポジションで彼らと暮らすことになるのでした
素晴らしすぎる順応力で宇宙人を受け入れた彼女たち。宇宙人相手に地球人の醜い生態を晒しまくりの日常生活が始まります。
- 著者
- 岡村 星
- 出版日
- 2013-11-28
「…いいか女共 もうくだらないお喋りは終わりだ
今日やらせる奴だけここに残れ」
合コン開始数分、金髪野郎がその場の女子全員に突きつけた宣告です。とっても効率的。
本作はガールズトークのぶっちゃけ感が魅力のひとつなのですが、vol9、10の合コン回は男子の本音もぶっちゃけられた神回となっています。
宇宙人によって本音で話すように操られた男女はこの世の終わりのような会話の応酬をし始めるのです。
出典:『ラブラブエイリアン』1巻
醜い……。そして最高に面白いです。
彼女はタダでやれる女の総称、日本は優しくて生活力のある男しかタダでやれないシステムになっていること、男性参加者はおっぱい星人やゲイというメンツ、女性参加者のうちふたりは亀頭ヘアだということが明らかになります。もうめちゃくちゃ。
しかも彼らが本音で話すところを見たいからと操ったにも関わらず、宇宙人の幹部たちは地球のごはんに夢中でまったくその様子を見ていません。
ナレーションも「さすがに今回 宇宙人やりすぎじゃね☆」と合いの手を入れますが、ノリが軽すぎです。
収集のつかない本音がとっちらかったまま展開されていくスピード感が癖になります。
- 著者
- 岡村 星
- 出版日
- 2013-11-28
こんな宇宙人ほしい。
そう読者を悶絶させるのが本作に登場する宇宙人です。作者と担当編集者が作品の看板にしたくなるのも分かります。
まずその見た目。大きな目に頭、3頭身という見た目で肩乗りサイズです。そんなキュートなフォルムでありながらも地球人の何倍も賢く、基本的に私たちを見下しています。そして20分あれば地球など滅ぼすことができるけれど、ダサいからいらないと言うのです。
「お前らよくこんなださい星住んでられるな 罰ゲームでも受けてんのか?」
「俺らが本気出したらこんな星20分で征服できるから(中略)
60億のうち40億人口減ったらイヤでも言う事聞くだろ」
酒に酔った勢いでいつもの敬語からいきなりタメ口になる宇宙人たち。偉そうだけどこの小ささで言われると可愛いです。そして最後にはこんな姿になってしまいます。
出典:『ラブラブエイリアン』1巻
可愛すぎ!!
地球人の何倍も賢くて怖いのにとても可愛い宇宙人。某猫型ロボットに負けず劣らずの欲しさです。
- 著者
- 岡村 星
- 出版日
- 2015-03-28
本作では宇宙人が地球について徐々に知っていくという流れなのですが、同居人の女性たちの地球に関する偏った知識の教え方、雑さが面白くもあります。
ある日の彼女たちはバーゲンに行こうといそいそと準備を始めます。せっかくだから宇宙人も行こうよ、と誘いますが、彼らはナサに身バレすることを恐れ、それが行く価値のあるものなのかを聞きます。彼女たちは適当にバーゲンについて説明します。
「地球人の醜い消費行動の一部よ(中略)
愚かな生態を間近で観察できるし行きましょうよ」
「地球人見下せる要素が増えるし多分楽しいよ」
早々に自分たちが見下されていることに慣れる彼女たち。それをダシに宇宙人を連れ出そうとするほどとは……。
そんな彼女たちに慣れた宇宙人は、もともとなところもありますが、さらに地球についての認識が下がって行きます。ある日いっしょに野球を観戦しにいったあと感想を聞かれてこんなことを言います。
すごい言われようww
このあとも「自分の暴力性を制御できない地球人と一緒にしないで頂きたい」とまで言って、なかなか地球のイメージが上がることはなさそうです……。そのままその認識を放置する彼女たちにそれでいいかと肩を揺さぶりたくなりますね……。
天の声。それは下々の者を優しく包み込む手の届かない存在からの教え。
本作でもナレーションが天の声のように登場人物たちを包み込み、物語をビシッと締めてくれます。時には格言のような言葉。
「ミスは誰でもする事…繰り返さない事が大事だよね☆」
「合う合わないは人それぞれ……難しいよね☆」
そしてある時は身近すぎる生活の知恵的な教え。
「◯◯が好きな奴は◯◯な事が多い…って勝手な理論 当たってるとこ見た事ないよね☆」
「女は大抵適当に褒めときゃちょろいからね☆」
星マークでフランクに作品を締めてくれます。2話またいで天の声が教えっぽくない時はちょっとがっかりしたり、共感できるところにはあるあるとうなずいたり、なくてはならない存在です。
- 著者
- 岡村 星
- 出版日
- 2016-11-19
面白いのに売れない女の本音漫画の本作。この面白さはやはり読まなければ分かりません。ぜひ読めばハマる事間違いなしの世界を覗いてみてください!