片想いは切ないもの。でも好きという気持ちは簡単に諦められないですよね。今回ご紹介する『失恋ショコラティエ』では、そんな「片想い」をテーマに様々なキャラクターの恋愛模様が複雑に絡み合います。リアルな恋愛が描かれていて人気を博しました。
- 著者
- 水城 せとな
- 出版日
- 2009-01-09
本作は、2014年に松本潤、石原さとみをメインにドラマ化もされた人気作です。
主人公の小動爽太(こゆるぎそうた)をメインとして、その周囲を囲む人々のラブストーリーが複雑に繰り広げられます。皆が恋に一生懸命だけど、簡単には報われないという切なさやもどかしさが描かれたことで、大人女子の心を掴みました。
王道可愛い系・モデル系・サバサバ系など、色々なタイプの女子たちとその思惑が出てくるので、必ずどこかで感情移入できるキャラクターが見つかるのも魅力。
今回は、そんな『失恋ショコラティエ』の魅力を、ストーリーとキャラクターを交えてご紹介していきます。
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出典:『失恋ショコラティエ』8巻
主人公である爽太は、高校生のときに劇的な恋に落ちます。その相手は紗絵子(さえこ)という1つ年上の女性。紗絵子に一目ぼれした爽太は彼女を一途に思い続け、専門学校生のときについに付き合うことになりました。
しかし紗絵子は可愛い外見とは裏腹に魔性の女。「付き合ってるけどエッチはしてない。最近元彼とヨリを戻した」とあっと言う間に爽太から離れていったのです。
大失恋した爽太ですが、それでも諦めまいと単身フランスに。チョコレート好きの紗絵子のためにショコラティエになることを決意したのです。
そして数年後、有名ショコラティエとなって日本に戻ってきた爽太。しかし、そんな彼の目の前に現れたのは、既に婚約して他人のモノになっていた紗絵子でした……。
しかし、爽太は「結婚していても諦めない」と決意します。一緒に店を立ち上げることになったフランス時代の友人オリヴィエ、昔からの知り合いでありしっかり者の薫子とともにショコラ専門店「ショコラヴィ」をオープンするのです。
人妻となっても関係なく爽太の前に現れては心を揺さぶっていく紗絵子と、一緒に働く薫子、美人モデルで気心知れたセフレでもあるえれななどと関わり、爽太の周りは騒がしくなっていくのでした。
出典:『失恋ショコラティエ』7巻
物語の特徴といえば、登場キャラクターのほとんど全員が「片想い」をしていることと、その一途さからなのか優しさからなのかは分かりませんが、爽太がモテることです。
薫子は爽太がフランスから戻ってきたときの昔とのギャップにときめいてしまい、えれなは過去に失恋した際に、隣にいて癒してくれた爽太に惹かれていきます。
紗絵子への想いを諦め、ずっと側にいてくれたえれなと向き合おうとしたそう爽太。その日、もえれなに会いに行くという約束をしていました。しかしそこへ、DV気質のある夫の元を飛び出してきた紗絵子がやってきたのです。
葛藤の末、爽太はえれなとの約束を破り、紗絵子を受け入れて体を重ねます。そしてそのまま、紗絵子はショコラヴィに住み着くことになりました。
えれなは当然落ち込み、薫子は嫌いな紗絵子が店に住み着いてしまったことにイライラしだします。しばらくして、えれなは気まずいなか爽太に会いに来ますが、それを見かけた薫子はえれなに、爽太と紗絵子の間にある事実を告げ、「結局図々しい子が勝つんだって!」と一喝しました。
自分も爽太に惹かれていたのに、彼の片想いを健気に応援し続けたえれなと、グチグチ言いながらも、ショコラティエとして爽太を身近で見続けていた薫子。けれど、二人とも自分から爽太が好き!とは言えないまま、結局は紗絵子にかっさらわれてしまいました。
結局押しが強いほうが勝つということなのかもしれません。
出典:『失恋ショコラティエ』2巻
愛され系女子の強みを理解し、ガンガン利用していく紗絵子。語尾にハートが付きそうなかわいい喋り方をしたり、ぽっと顔を赤らめたり、さりげないスキンシップもたくさんします。
爽太といちゃいちゃしていたえれなのことが気になり、爽太をデートに誘った紗絵子は、えれなとは真逆に「眉はふんわりチークはピンク。あえて普通の子メイク。昔と変わってないなって思わせる!」と狙うなど、あざとさに余念がありません。
その日のショッピングデートでも、爽太が手に取ったものを「可愛い!」と言い、と爽太の腕にぎゅっ!あげくの果てに「旦那さん、まだ帰ってこないよ……」と家に誘うるうるの上目づかい。男心をくすぐる可愛さです。
その他も、爽太と家に二人きりだと分かっていて短いスカートをはいてきたり、「バレンタインにショコラティエさんにチョコレートを渡すのも変だから」と手作りのチョコレート型ストラップをプレゼントしてみたり……。
そんな紗絵子は、友達や薫子にモテテクを聞かれたときもスラスラと答えてしまいます。思わず「なるほど!」と思ってしまうようなテクニックをたくさん知っているだけあってモテモテなんですね。
出典:『失恋ショコラティエ』2巻
ここまでで紗絵子の可愛さやあざとさをご紹介しましたが、やはり表裏一体。表面上は思いっきり可愛らしくしている紗絵子ですが、時折描かれる本心や考え方はとてもクールでドライです。
そもそも旦那さんも「年上」、「次男」、大手出版社の副編集長とのことで「高収入」。専業主婦を希望する多くの女性が求める条件を完璧にクリアしています。26歳で結婚すると決めていた彼女は、そのとき候補にいた三人の中から冷静に選んだのです。なんともかしこい生き方ですね。
さらに、特に好きでもない男の人と食事に行くか迷っている薫子に対し、「他の人を経由することで結果的に本命と上手くいくこともある」と諭します。それを登山に例えて「いつか目標の山に登頂成功するために、他の山に登ってみることも必要だったりするでしょう?」と。
また、他に好きな人がいると言う薫子に「どんなに大好きでも片想いならいつかどうでもよくなる」とバッサリ言い切ります。「だってこっちを好きにならない人でしょ?だったらそんなの存在しない人と同じだもん」と、冷めた笑顔で。数々の男と浮名を流してきた紗絵子なだけあって、言葉に重みがあります。
結婚してから夫が実は粗野で乱暴なところがあると気付き、結婚生活に嫌気が差していたときも「妻っていうのが私の仕事。プロに徹する。」とバッサリ髪を切り、爽太の店に行くこともやめ、家事に従事することを決意。外見とは裏腹に、計算的で思い切りが良いところも、紗絵子の魅力なのかもしれません。
出典:『失恋ショコラティエ』5巻
物語が進むたびにドロドロになっていく恋愛模様。皆がそれぞれ誰かを想ったり、想われたりしていますが、こじらせ女子には厳しい現実が……。「薫子だけは誰にも想われていない」のです。
薫子はいい意味では意識が高くてマジメ、悪く言ってしまうとプライドが高く意地っ張りな性格です。爽太に好意を寄せつつ、セフレがいる爽太のことはどうしても認められません。それゆえに紗絵子のこともえれなのことも嫌っています。
「皆はなんでマジメな恋愛をしないのか。自分はマジメなのに。一途に爽太だけを想っているのに」
作中ではこういった考えを持っており、報われない自分にずっとイライラしています。
爽太がお店のメンバーでの打ち上げを断り、落ち込んでいるえれなの元に行こうとしたときも、爽太のこと、紗絵子のこと、えれなのことを思いっきり罵倒します。こうして爽太も怒らせて泥沼に……。
紗絵子いわく、人は「好かれる努力が必要」なのだそうです。お菓子だっておいしいけど、かわいくデコレーションしないと買ってもらえない。競争に勝てない。そんなことを薫子に言います。でも薫子は「素のままの自分を好きになってくれなきゃ意味がない」という姿勢です。
薫子の気持ちも分かりますが、最終巻では皆がそれぞれの恋愛に決着をつけ、幸せな様子が描かれる中、薫子だけは誰とも結ばれていません。この結果を見るとやはり「自分の良いところをアピールする」という努力は必要なのかもしれません。
『失恋ショコラティエ』や『窮鼠はチーズの夢を見る』などの作品を生み出している水城せとな。そんな水城のおすすめ作品を紹介した<水城せとなおすすめ作品4選!リアルな心情描写に胸が締め付けられる・・・>の記事もおすすめです。
いかがでしたか?何人もの気持ち、思惑が複雑に絡み合ってリアルな恋愛模様を描いた漫画『失恋ショコラティエ』。色々な教訓が含まれている名作です。恋に迷ったときなどに是非手に取ってみてください。