不可抗力で食べたいものが食べられない状況でも、「あぁ、○○食べたいな」と思う時点でそれは活力になると思いますし(たとえ、その為には稼がなくては! その為に健康にならなければ! 早く仕事終わらせよう!といった方向でも)、食べるということは、その前後も楽しくしてくれるものだと思います。
調理補助のバイト経験からか料理すること、食べることが楽しくてとても好きです。こう書くといかにも料理上手な健康自炊男なイメージを持たれそうですが、カップラーメンも好きですし、野菜は丸かじりのそのままが一番好きですし、外食ならおしゃれな場所よりも瓶ビールのケースがテーブルになってるような小汚い屋台居酒屋の煮込みや焼き鳥がむしろ好きですが、ただ自炊する際は変な方向に全力を尽くします。
カップラーメンなら生の刻みネギは用意する、きっちりタイマーで30秒前でフタを開けて出来上がりを3分ジャストに、野菜は買って帰宅したらすぐしっかり流水にさらしてから冷蔵庫に入れてみずみずしくなるように仕込みをしておく。焼き鳥は串1本であっても打ってある部位の順番で、どういうコース料理になっているか楽しむ(串から外す人嫌い! 串は1人1本!)、炭火なら場所によって火力に違いがあるはずだから素早く場所を変えながら、均一にきつね色にするべく火を入れたであろうその職人を想像する。
さぁ今日は何を食べよう!
ごはんぐるり
日本の料理から海外の料理、ジャンク飯から正統派まで様々な料理が著者の思い出とともに綴られたエッセイです。食には記憶が宿ります。あなたにもそんな一品があるはず。思い出したら今晩のおかずに是非。また、活字でおいしくなるものといったお話があって共感。確かに「ほうれん草のお浸し」より「ほうれんそうのおしたし」、「バター」より「バタァ」の方が絶対おいしい。
ヤッさん
主人公・タカオはとあることからホームレスへと転落、流れ流れて銀座にてダンボール暮らし。そこでホームレスのヤッさんと出会う。ヤッさんは食の達人、築地と高級料理店を行き来して生活するグルメなホームレスだった。ホームレスでありながら誇りと立場をわきまえるといった生き方のヤッさんに弟子入りするタカオ……というあらすじのユーモアたっぷり人情小説。
とにかく食にまつわる膨大な情報量と、取り巻く外食産業の仕組みがあくまで愉快に書かれていて、東京の料理文化も楽しめると思います。料理は人でおいしくなる時があるけど、その瞬間をギュッと濃縮したような小説です。