日本のみならず海外でも人気の漫画『進撃の巨人』。キャラクターの詳細が明かされつつあるなか、アッカーマン家については、以前謎に包まれています。今回はリヴァイやアッカーマン一族に焦点を当てて、その正体を考察します。
諫山創が描く『進撃の巨人』は、2009年から「別冊少年マガジン」で連載中の作品で、単行本は2017年8月現在、23巻まで刊行されています。
壁内では巨人の解明も進み、調査兵団の活躍により、超大型巨人の力も手に入れ、ウォール・マリア奪還計画に成功を収めました。そして、いよいよ戦いの舞台が、マーレ国へと向けられることに……。
- 著者
- 諫山 創
- 出版日
- 2010-03-17
人類を巨人の脅威から守るため、そして巨人を駆逐するために結成された精鋭部隊である調査兵団。その中でも、人類最強といわれる兵士がいます。その兵士の名は、リヴァイ・アッカーマン。調査兵団の兵士長で、「リヴァイ兵長」と呼ばれる人物です。
彼が調査兵団に加入するまでの過程は、外伝「悔いなき選択」で描かれていますが、アッカーマン家については、その詳細が謎に包まれたままです。
ここでは、彼やアッカーマン一族に関して、判明していない謎や疑問点を考察していきます。
出典:『進撃の巨人』20巻
調査兵団の兵士長にて人類最強の兵士です。王都の地下街で育った彼は、エルヴィンとの取引に応じ、調査兵団に加入しました。
「その翼は本物」だと、エルヴィンに言わしめるほどの実力と、巨人駆逐能力の凄さはピカイチです。潔癖症で無愛想な性格ですが、本人曰く、よく喋るとのこと。
巨人と戦っている以上、いつ死んでもおかしくないという思いを持っているので、戦闘中も平常心と冷静さを見失わず、的確な判断を下す人物です。
アッカーマン一族については、本人もケニーの口から訊くまでは、自分がアッカーマンという姓だったことを知らなかった様子が窺えます。
また、アッカーマン一族については、彼本人も詳しく分かってはいないはず。この先、一体どんな情報が明かされていくのでしょうか。
出典:『進撃の巨人』16巻
14巻で明らかになったのが彼の苗字。叔父ケニーのセリフから突然判明しました。
「ところでリーブス。リヴァイ・アッカーマンって男を知ってるか?」(『進撃の巨人』14巻から引用)
ケニーも「アッカーマン隊長」と呼ばれたことで、ミカサ、リヴァイ、そしてケニーの3人が、アッカーマンの血を引く者だと判明しました。その関係性には様々な考察があがっています。また、すでに亡くなっていますが、ミカサの父やリヴァイの母もアッカーマンでした。
16巻では、ケニーの祖父からアッカーマン一族について語られています。アッカーマン家は、王政に恨まれているのではなく、恐れられている一族であること。
そして、彼らは王政の中枢のひとつであり、人類存続の担い手だったのです。過去の歴史を根絶するため、王はすべての人類の記憶を操作しました。ただ、アッカーマン一族は王の力の影響を受けず、それどころか王の考えに反発して背を向けたのです。
平和を理想とする王は、そんなアッカーマン一族の存在が脅威に感じたのか、一族の頭首を処刑。アッカーマン一族は、今後生まれてくる一族の子供を、王の粛清対象から守るため、その歴史を伝承しなかったのです。
そして、今もまだアッカーマンの血族は、根絶やしされつつあるとのこと。17巻ではケニーが死亡しているので、現在アッカーマンの血を引いていると思われる人物は、リヴァイとミカサの二人のみです。
しかし、なぜアッカーマン一族は、王の記憶操作が効かないのでしょうか。その理由のヒントとなっているのは23巻で判明した、アッカーマン一族は王家の伝承のみの存在だと思われていましたが、実際は「巨人化学の副産物」であったということ。
過去エルディアで、巨人研究が進む過程で出来たのがアッカーマン。その戦闘能力の高さが評価され、「王家を守る存在」となったのではないでしょうか。また、彼らの戦闘力に影響を及ぼさないよう、他の血が混ざることを禁止し、単一の血統でのみ子を作ることが許可された、ということも考えられます。
知性巨人の多くを所有するマーレへの巨人対策のひとつだとすると、ジークでさえもう会いたくないと言わしめるほど戦闘力の高いアッカーマン一族は、マーレにとっても相当な脅威になるはずです。
また、アッカーマン一族が「巨人化学の副産物」ということは、エルディア人でもなく、マーレ人でもないと考えてもいいかもしれません。もともと王家はエルディア人なので、王の力がエルディア人にしか及ばないと考えれば、マーレやアッカーマンに通用しないというのも納得がいきます。
次に、アッカーマンの血を引く者にだけ見られる特徴の「リミッター解除」。リヴァイがミカサに「ある日突然、力に目覚めたような感覚になったことがあるか」と問いかけます。
「ある時…ある瞬間に、突然バカみてぇな力が、体中から湧いてきて…何をどうすればいいかわかるんだ…」(『進撃の巨人』16巻から引用)
ミカサも同じ症状がありましたが、彼にもその瞬間があったといいます。自分自身を支配する力とでもいうのでしょうか、これが化学の副産物の力なのかもしれません。
しかし、本編ではリヴァイの「リミッター解除」された瞬間は描かれておらず、一説にはケニーに鍛えられたときではないかという考察も上がっていますが、外伝「悔いなき選択」で彼の友人だったイザベルとファーランが、巨人に捕食された瞬間、という可能性もあります。
彼がまだ調査兵団に入る前、王都の地下街で盗んだ立体機動装置で、追ってきた調査兵団から逃げていたときのことです。エルヴィン団長から「調査兵団に入れば罪には問わない、しかし、入らなければ憲兵団に引き渡す」という取引に応じ、彼とファーラン、イザベルの3人が調査兵団へ入りました。
それから数ヵ月後、彼らにとって初めての壁外調査に出発。謎の男から持ちかけられたエルヴィンの持つ「ある書類」を奪えという取引により、リヴァイは一人でエルヴィンの元へ向かいます。
しかし、異変を感じた彼は、仲間の元へと戻ることに。そこでイザベルとファーランが、巨人に捕食される瞬間を見てしまったのです。その瞬間、彼の顔が一変。ミカサのリミッターが解除されたときと同じような顔つきです。
これが、その瞬間ではないかと推測されています。ただ、初の壁外調査で、エルヴィンがリヴァイの戦闘能力を「その翼は本物」だといってることから、ケニーに育てられた間、すでにリミッターが解除されていたのかもしれません。
彼がまだ少年だったころ、自分より体の大きい大人を倒して「一番強くなれ」というケニー。「やられるまえにやれ」ということを叩き込まれました。
ケニーは「リミッター解除」に関しての情報を知っていて、あえて彼には伝えず、鍛えることで解除させたとも考えられます。そして、それを見届けたからこそ、彼の前から姿を消した可能性もありえるでしょう。
出典:『進撃の巨人』19巻
彼は、巨人を前にしても一切怯むことなく、立体機動装置をフルに活用した見事な戦いぶりを見せてくれています。
しかし、そんな彼にも死亡フラグが上がっているのです。徐々に加速する「リヴァイ死亡説」を、立っているフラグを紹介しながら、その理由を考察していきます。
まず、彼は日頃から無愛想で、兵士の死にも平静な態度を見せていました。しかし、これまで笑った顔を一度も見せたことのない彼が、17巻で初めて笑顔を見せ、兵士たちに「ありがとう」とまで言っているのです。
このとき、叔父であるケニーが、命を落としたということも重なったのかもしれませんが、これまで一度も笑ったことがなく、嫌悪感むき出しの顔つきしか描かれてありません。そのリヴァイの笑顔に、死亡フラグが立っているのです。
しかし、理由はそれだけではありません。調査兵団は、巨人と戦う以上一番死に近い兵団です。何人もの仲間や部下を失ってきました。だからこそ、巨人を駆逐したいと思う気持ちは、人一倍あるはずです。
いままで、仲間や部下に対する気遣いや、心配する言葉、ましてや「死ぬな」という言葉など一度も発したことがありません。それは、仲間を信じているからということもあると思いますが、19巻のウォール・マリア奪還作戦の始まりに、こんなセリフを言っています。
「一人も死ぬな!!」(『進撃の巨人』19巻から引用)
こんなセリフは、誰に対してもいったことがありません。また、その時のシーンでは、息切れもしているので、明かされていない彼の年齢とともに、その意外な行動や言動から、近いうちに彼は死ぬのではないかと、注目されているのです。
そして、リヴァイのモデルとなっている人物からの、死因考察も浮かび上がっています。作者によると、彼のモデルとなっているのは、アメリカンコミック『ウォッチメン』に登場する、ロールシャッハというヒーローであるということ。
ロールシャッハは、悪を嫌い、決して妥協しない、それでいて強い正義感のあるヒーローです。そしてその死因ですが、正義のために悪を許すか許さないというところで、「妥協しないために死を選んだ」ということ。
リヴァイは、亡きエルヴィンと「獣は俺が仕留める」と約束していましたが、取り逃がしています。この先、彼が「妥協することなく」約束を守ろうとするのであれば、ロールシャッハのような死を迎えるのではないかと予想されているのです。
出典:『進撃の巨人』4巻
再び現れた超大型巨人に、トロスト区とウォール・マリアを繋ぐ門が破壊されたときのこと。エレンの巨人化能力を利用して、大岩で穴を塞ぐ計画が持ち上がりました。しかし、エレンの巨人化能力は、エレン自身も使いこなせていない不安定なもの。
エレンは巨人化するものの、味方を襲ってしまう始末でした。砲撃されて倒れこみ、巨人のまま意識を失ってしまいます。しかし、アルミンの声がけで意識を取り戻し、自分に課された任務を思い出し、穴を塞ぐことに成功しました。
しかし、壁内にはまだ多くの無知性巨人がはびこっています。巨人化が解かれて気を失ったエレンと、それを助けようとするミカサ、アルミンに巨人の脅威が迫ります。そこで現れたのがリヴァイ兵長です。
「オイ…ガキ共…これは…どういう状況だ?」(『進撃の巨人』4巻から引用)
出典:『進撃の巨人』3巻
巨人に最初に壁を壊されてから5年後。それでも調査兵団は、怯むことなく壁外進出を試みていました。また、リヴァイやミカサなど、一部の兵士の高い戦闘力によって、兵士の生存率も上がっています。
それでも、巨人に奪われた領域を取り返そうとするも、やはり損害が伴っていました。リヴァイは兵士たちと共に、奪われた領域で巨人と戦っているときのことです。
彼は次々と現れる巨人をテンポよく駆逐していました。しかし、犠牲になる者もけっして少なくありません。やはりここでも犠牲者が出てしまいました。
彼が倒れた兵士の側に寄ると、その兵士は虫の息で「自分は人類の役にたてたのか」と尋ねながら、血に染まった手を伸ばします。
「お前は十分に活躍した。そして……これからもだ。お前の残した意志が俺に”力”を与える。約束しよう、俺は必ず!!巨人を絶滅させる!!」(『進撃の巨人』3巻から引用)
血だらけの兵士の手をしっかり握っているのは、亡くなっていく者こそ、大切に思っていたからかもしれません。リヴァイ兵長は、生きてる者への罵倒はあっても、死にゆく者の悪口は決して言わないのです。それだけ命の重さを知っているからなのでしょう。
出典:『進撃の巨人』6巻
6巻の女型の巨人捕獲作戦では、彼が率いる「リヴァイ班」のみが、巨大樹の森へ侵入するよう命令がありました。しかし、木が生い茂る森の中では、巨人の接近や回避もできないとエレンは言います。その時兵長は、以下のように言いました。
「周りをよく見ろ。この無駄にクソデカイ木を…立体機動装置の機能を生かすには、絶好の環境だ」
「そして考えろ。お前の大したことない頭でな。死にたくなきゃ必死に頭回せ」(『進撃の巨人』6巻から引用)
エレンは、自分で学ぶ必要があるのだと思いましたが、先輩兵士の様子を見る限り、誰もその状況を理解できていないようです。そして、リヴァイ自身もエルヴィンから、作戦の内容を聞かされていなかったのかもしれません。
そこに現れた女型の巨人。やってきた増援に守られながら、ただ馬で駆け抜けるだけの自分に嫌気がさしたエレンは巨人化して助けようとしますが、兵士の一人が止めます。自分たちを信じて欲しいと……。
そう、リヴァイ班の任務は、「エレンを殺さず守り続けること」だったのです。自分たちがエレンを守るから、信用して欲しいということなのでした。
さらにその際、兵長はエレンにこう告げます。
「自分を信じるか、俺やコイツら調査兵団組織を信じるかだ。俺にはわからない、ずっとそうだ…自分の力を信じても…信頼に足る仲間の選択を信じても……結果は誰にもわからなかった…だから…まぁせいぜい…悔いが残らない方を自分で選べ」(『進撃の巨人』6巻から引用)
このセリフは過去形になっていますよね。リヴァイが過去に起こった出来事を、ずっと背負ったままでいる……そんな感情が伝わってくる、重みのあるセリフです。
出典:『進撃の巨人』20巻
ウォール・マリア奪還最終作戦を決行中、獣の巨人らの攻撃になす術もなく、逃げ惑う新兵たち。その状況にリヴァイは、エルヴィン団長に「反撃の手立てがなければ敗走の準備をする」と言います。
しかし、エルヴィンは「自分と新兵の命を捧げれば」、リヴァイが獣の巨人を仕留められる可能性もあるといいます。
エルヴィンは、何度も死んだ方が楽だと思いつつも、いつか巨人の謎が解明される瞬間を、自分で見ることを希望していました。しかし、死んだ仲間が「捧げた心臓がどうなっているのか知りたい」と、自分たちを見ている、ということも悟っています。
エルヴィンが、多くの仲間の命を犠牲にしてまで巨人の謎を解明しようとしていたのは、子供の頃から解決されなかったパズルピースを繋げるためでした。すべてはこの日のために、人生を捧げてきたのです。
リヴァイはエルヴィンがどれだけ重い荷を背負っていたのか、どれほど「この日」を待ち続けていたのか、犠牲になった「仲間の死」の苦痛から、逃れられないのも分かっていました。
楽にさせてやりたい……そんな思いもあったのでしょうか、エルヴィンをこの地獄から、この悪夢から解放してあげようと思ったのかもしれません。
「夢を諦めて死んでくれ。新兵達を地獄に導け。「獣の巨人」は俺が仕留める」(『進撃の巨人』20巻から引用)
リヴァイにとっても、エルヴィンを失うとわかった上での、苦しい判断だったに違いありません。それでも、まるでエルヴィンの心残りを断ち切るように言ったのは、エルヴィンを心から信頼している証なのでしょう。
- 著者
- 諫山 創
- 出版日
いかがでしょうか?リヴァイには、まだまだ謎が多そうですよね。この先、物語が進んでいくなかで、アッカーマン一族に関することも、徐々に明かされていくことでしょう。また、ジークとも再び顔を合わすことも予想されますので、今後の展開も期待です。