無名の神、夜トと、ひよりの出会いからはじまり、神々と彼らに仕える神器たちとの戦いを描く『ノラガミ』。因縁が絡み合うたび引き起こされるバトルシーンは必見です。今回は作品の魅力であるキャラクターと、最新19巻までのストーリーから『ノラガミ』の魅力をご紹介します。
『月間少年マガジン』で2017年現在も連載中の『ノラガミ』。作者は女性2人組漫画家のあだちとかです。キャラクター画を担当しているのが安達、背景画担当が渡嘉敷という苗字の漫画家だそう。変わったペンネームはそこからきているのですね。
現代にも通ずる日本の神様を取り込んだキャラクター設定と、神たちの迫力満点の激しいバトルシーンが見どころのファンタジー作品です。
- 著者
- あだち とか
- 出版日
- 2011-07-15
本作では主人公の夜トを始めとする個性の強いキャラクターたちがたくさん登場します。夜トは祀られる社がない無名の神。「デリバリーゴッド」を名乗り、5円という破格の値段で便利屋のような仕事をしています。
そのほか、七福神の一柱で最強武神の毘沙門天、商売人の恵比寿、貧乏神の小福、学問の神様の菅原道真など、実際に名前を聞いたことがある神様が出てくるのも面白いポイントです。
それぞれの神には、武器となる「神器」が仕えており、夜トには雪音という幼い男の子の神器がいます。神器となるのは、本人が望まないまま死んでしまった人間。雪音は売れない神である夜トに対し、最初は不満だらけでしたが、物語が進むにつれて成長し、やがて彼を守る立派な神器へと育っていきます。
このふたりの関係性のように、神と神器の繋がりも見所。それぞれの神様の過去エピソードなどは見ていて泣けてきてしまうものもあります。
いつもジャージ姿でマイナー神の夜トは、少年から依頼をされていた猫の捜索をしている最中、走行していた大型トラックの前に飛び出してしまいました。それを助けようと後ろからタックルしてきたのが、女子中学生のひよりです。
そもそも神は人間が意識をしないうちは視えない存在であるはずなのに、自分のことが当然のように視えている彼女の様子に、夜トは驚きます。
一方のひよりは、助けた瞬間に身体から魂だけが抜け、それ以降その体質が定着して半妖となってしまいます。人間として生きていながら妖も視えるようになり、頻繁に身体から魂が抜けるようになった彼女は、この体質を治してほしい夜トに頼みました。
そしてその依頼を夜トが受けたところから、物語は始まります。
彼は妖と戦うために必要な「神器」を持っていなかったため、雪の日に行き場なく漂っていた死霊を雪音と名付け、自分の神器にします。神器は神が使う武器であり、戦いを共にする一心同体の相棒です。
夜トと雪音は2人1組となってひよりの依頼をこなそうとする中で、様々な神と出会い、時には神同士での戦いをくり広げていきます。
名の通っていない神であるため、人間が住むいたるところに自分で連絡先を書くなど、滑稽な布教活動に励む夜ト。「様付け」で呼ばれたり、「強い」「かっこいい」と言われるだけで舞い上がってしまうお調子者です。
しかし神器で妖を斬る腕は確かで、自分の神器である雪音に深い親心を持ち合わせるなど、心の優しい人物でもあります。
- 著者
- あだち とか
- 出版日
- 2015-04-17
七福神のひとり、毘沙門天からは、かつて彼女の神器を斬った恨みとして命を狙われるも、実はそれが彼女を助けるために起こした行動だった、というエピソードがあります。
幼いころに父から人を斬ることを植え付けられ、さらに神器の元の名前を明かすという神のタブーを犯してしまった一面もあり、単純そうに見えて悲惨なことも目の当たりにしてきました。
言葉や態度は悪くも、自分が傷つくことには恐れず、相手を守り続けることができる強さを持っているのが魅力的です。
ひよりの高校の先輩として現れた藤崎浩人は、見た目がイケメンで、モテるタイプ。高校の仲間でテーマパークに行った際は、ひよりにキスをしてきたチャラい男子です。
- 著者
- あだち とか
- 出版日
- 2014-07-17
しかし彼の本性は、夜トの父に当たる人物「父様(ととさま)」なのでした。何百年ものあいだ他人にとり憑いて生き続け、敵対視するや否や、ひよりの実家が担う病院を妖に襲わせて残酷な仕打ちをするという、冷酷な人物です。また神たちを「神ごとき」と吐き捨て、自らを「創造主」と主張する堂々たる姿が印象的です。
幼い夜トを人斬りで遊ばせ、死人の耳を持ってこさせていました。また神々の争いの大元となっている人物でもあります。
無名の夜トが消えずにいられるのも父様が存在しているのが理由と言われていますが、詳細は不明のままです。
- 著者
- あだち とか
- 出版日
- 2011-10-17
夜トとは真逆で、メジャー中のメジャーな神様、七福神の一柱である毘沙門天。最強武神で多くの神器を従える有名人で、スタイル抜群かつ露出多めの美人神として描かれています。
過去に夜トが自分の神器を斬ったことから、彼に並々ならぬ恨みと殺意をもっており、その剣幕は恐ろしいものがありました。すでに和解をし、時には彼を助ける行動もみせるようになっています。
最強武神としての強靭たるイメージを持つ反面、身内には優しく、自分の神器はとても大事にしていて、並々ならぬ愛情を感じられる人柄です。そんな彼女の神器たちも、みな一様に彼女を慕い、全幅の信頼を寄せるのでした。
多くの神器を率いる力は、神としての戦闘力だけでなく、彼女の根本的な性格にもあると言えそうです。
今までに起きた争いや凶事はすべて藤崎浩人が仕向けたことだったと分かり、毘沙門天は神器を置いて、自分だけで彼に戦いを挑みます。しかしそれに気付いた神器たちも、毘沙門天を追いかけるものの、彼女は寄せ付けません。
一方、天との闘いに参戦していた夜トと雪音は、毘沙門天を助けようとするものの、誤って彼女を斬ってしまいました。天につかまった2人が大逆の騒動について責められていたところ、夜トが反論の意を叫んだことにより、周りは静まり返ります。
そこへ神々のトップ天照大神が三種の神器とともに現れ、天に逆らった罰として雪音を「不死の刑」として闇に閉じ込めてしまいました。
夜トが天照大神を呼ぶことになったこの場面は鳥肌必至です。
- 著者
- あだち とか
- 出版日
- 2017-02-17
雪音を刑から救うため、また天への大逆を払拭するためには、手段は唯一「誓約の儀」しかありません。天神こと菅原道真の申し出により、三種の神器の首をかけ、3回勝負の誓約が始まります。
夜トの行動に賛同する神が、自分のトップ神器の首を差し出す姿には涙が止まりせん。
勝負は五分五分。最後に賭けに出るのは、夜トたちと親しい小福の神器、大黒です。ハラハラする展開に目が離せないところで18巻は終わります。
果たして今までの行いから夜トを信じて命を賭けた神々の思いは届くのでしょうか?19巻が待ちきれません!
毘沙門の大逆の最後の審判の結果が気になる19巻。みなが固唾を呑んで見守るなか、3つ目の結果が明かされます。
それは、非。
毘沙門の犯した罪はめでたく不問となったのです!小福や道真たちはひと安心し、つい力が抜けてしまいます。
夜トはそのなかを急いで雪音に駆け寄りますが、彼は怯えた表情のまま身じろぎすらしません……。
- 著者
- あだち とか
- 出版日
- 2018-08-17
19巻は恵比寿の誘拐事件も見所ですが、雪音に訪れた変化が見所でしょう。術師、つまり夜トの父が彼の周りを動き始めるものの、彼について注意を促そうにも、それは神の秘め事、つまり生きていた時の記憶に関わり、なかなか言えません。
その間にも雪音は自分が一線を超えそうになった時のことが頭から離れず、自分も野良のようになる可能性があるのではないかという不安を膨らませていました。しかもちょうどそんな時に野良が現れ、雪音に予想外の行動をとるのです。
これをきっかけに、自分のすべきことを再認識した夜ト。ストーリーがまた大きな局面を迎えようとしていることが感じられる内容です!