「嘘」と「正直」について

更新:2021.12.13

「嘘ついたら針千本飲ーます!!」。子供の頃、よくこんな約束をしました。 これから稽古が始まる舞台のタイトル「嘘より、甘い」。とてもインパクトのあるタイトルで、「嘘」という言葉が気になっております。「嘘」より「甘い」わけですから、「嘘」は何かしらの味がある。ということか。……ん? 嘘を甘い辛いで考えたことないぞ! ん? 「甘い」というのは比喩の表現か!? そこから、嘘スパイラルにはまっていきました。

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「嘘ついたら針千本飲ーます!」

「嘘」という言葉を聞いて、一番最初に連想した言葉です。「それくらいの気持ちで、絶対約束破らないでね! 嘘つかないでね!!」という約束の言葉。しかし、この約束自体は正確には嘘です。なぜなら、針千本は飲まないからです。こんなに恐ろしい言葉は無いです。針を1本飲むだけでも相当な覚悟なのに、それを千本飲むなんてことは、想像を絶します。また針を飲ませるほうの気持ちの強さも、かなり強靱でなくてはなりません。ゆえに、この言葉自体は嘘。

だから「嘘ついたら、針千本飲ーます!」を嘘無しで言葉にすると、「嘘ついたら、針千本飲ーますって口では言うけど、本当は飲ませられないから、それくらいの覚悟を持った約束をかーわす!」です。でも、さすがに普段イチイチこんな約束をしてくる面倒くさそうな友達はちょっと嫌です。

「嘘ついたら針千本飲ーます!」の短い言葉には、約束破らないでね!!という意味の共通認識があります。「約束を破らない覚悟」を「実行不可能な言葉」に置き換えて、ユーモアとともに約束を交わす。とても小粋な嘘です。
そんなことを考えながら「嘘」はないかな、「嘘」はないかな、と本屋さんを歩きまわっていたところ、見つけました!『正直』という本。ビビッときました。嘘について知るにために、正直から攻めてみよう。そんな経緯で手に取った正直の本です。

正直

著者
松浦 弥太郎
出版日
2015-04-03

とてもお恥ずかしいのですがこの本を読むまで、松浦弥太郎さんのことは存じあげませんでした。著書も多く出されていて、生活総合雑誌『暮らしの手帖』の前編集長さんだそうです。50歳を目前に今の自分を点検して、見つめ直し、しっかりと50代に突入する。そんなコンセプトで書かれているこの本はどの世代の人が読んでも、必ず自分に当てはまる部分があり、弥太郎さんの教訓がグサリと胸に刺さる1冊でした。

28のセクションに分かれているこの本では、セクション毎は短く、1セクションに1つは必ず教訓が書かれています。1セクション、1グサリ必至の本です。この本を読んで一週間経った今でも、本書の中の言葉が胸に残っています。“世の中で起こっていることのすべては自分に関係している”。特にこの言葉が印象的でした。自分も日々の生活の中で、これは関係ない、これは自分は必要ない分野だ、と思うことが多々ありました。しかし、自分に関係ないことは一つも無いと思えば、より積極的に生きれるなと感じさせてもらえました。

また、本文中でたくさん出てくるキーワード「きっと素敵なこと」。探そうとしなければ、見つからない。そんな「きっと素敵なこと」を探すことで、仕事もプライベートも日々がより充実したものになる……というメッセージ。とても素敵な本でした。

イソップ物語

著者
イソップ
出版日

「オオカミ少年」では「オオカミが来たぞー!」と毎日嘘をついていた少年は皆から信頼されなくなり、本当にオオカミが来た時も信じてもらえなかった……という物語。嘘をついてはイケナイんだと一番最初に思ったのは、この本を読んでからです。いつも嘘をついていると、真実を口にした時でも、信じてもらえない。このストレートなメッセージは子供ながらに、嘘はついていけないんだと、ダイレクトに伝わってきた作品でした。

義務について

著者
キケロー
出版日
1961-07-25

「オオカミ少年」と同じメッセージを伝えている古代ローマの哲学者、弁論家、政治家のマルクス・トゥッリウス・キケロ氏。彼は「うそつきは、真実を語っても信じられることはない」という言葉を後世に残しています。ごもっとな考えだけれど、侮るなかれ、著書『義務について』では嘘について多角的な考え方が記してある。キケロ氏は、記憶術の永遠のバイブルとして親しまれている『ヘレンニウスへ』の著者でもあり、今、自分がとっても気になっている人物です。

本を読む時は大抵、何かを求めて読むことが多い自分。 
例えば今回も、嘘について、正直について知ろう……という動機があって読み始めるのですが、手に取る本のほとんどがその動機とは違う方向性の内容が多いです。しかし、その方向性の違いから得られることがたくさんある。紙の辞書を引いて、知りたいと思っていなかった言葉の意味を知れる。みたいな。

今回の3冊は正直について、嘘について、核心を得た答えを教えてくれた訳じゃないけど、多くの方向と、視野を広げてくれました。嘘については、これから始まる舞台の稽古の中でも探して行きたいと思います。

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